あらすじ
遊廓の名残りをとどめる、大阪・飛田。社会のあらゆる矛盾をのみ込む貪欲で多面的なこの街に、人はなぜ引き寄せられるのか! 取材拒否の街に挑んだ12年、衝撃のノンフィクション。
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Posted by ブクログ
「性」を売るということは
そのまま、命を売るということだ――
精神を削り、捨て、私は何も感じてないと
嘘をつき、ついた嘘のぶんだけ消耗し
ひたすらに擦り減っていく。
心も体も。
常に命がけの病気と背中合わせで
守ってくれるものは何もなく、
時として、剣より強いペンにさえ
面白おかしい玩具のように表現される。
なぜ、そこにいるのか?
なぜ、そこでしか生きられないのか?
真剣に向き合っている本。
著者の結論としての
「行くなら金を落とせ」という言葉も
一つの真実だとは思うけれども
命を削って売らなければ
生きられない世の中はどこかが
なにかが、歪んでいるとしか思えない。
Posted by ブクログ
あとがきに思っていたことがほぼ全て書かれていた。
純粋な疑問として、なぜ消費センターや警察に相談しないのかと思うことがあったが、私の無知が原因だった。
この世の仕組みから零れ落ちてしまう人たちがいる。
零れ落ちるという言葉が適正ではないかもしれないが。
飛田が舞台なので女性がメインだが、男女問わず両親などの幼い頃から青年期まで社会とはどんなところかを教えてくれる存在の不足がずっと続いてしまう。
連鎖は一度走り出したら止まらないのかもしれない。
遊郭の成り立ちを知りたいと思い関連する本を読んでいるが、そういう意味では遊郭そのものの成り立ちとは違うが飛田遊郭の成り立ちが参考資料を元にとても丁寧に記されていた。
女性の権利のために戦ってくれた人たちがいる。
その人たちがいてくれたおかげで今日の女性の権利が向上したのも事実。
だが、遊郭でしか働けない、働いたことがない人たちにいきなり「売春をするのは悪いことです、これから遊郭は閉じます」と宣言しても行き場がないのではないかと思っていたので、ページは忘れたが保護施設で娼妓の方がこれからどうするんだと怒鳴り込んだという記述は腑に落ちた。
やはり、行き場のない人たちがおり保護しますと言われても短時間では言い方が悪いが教養は身につかず、結局今まで就ていた仕事に戻ってしまう。
それは仕方のないことだと思う。きっと世間の目も厳しく働き続けるには難しかったのではないかと思った。
売買春が悪、根絶したいとするならばその後の行き場を作ってから取り締まらないといつまで経っても同じことの繰り返しだろうなと。
篠原無然さんのことを知ることができ、いつか記念館を訪れたいと思う。
本当のところはその時代を生きたものですらよくわかっていないのかもしれないなと思った。
結局人が人に話すことには色々なフィルターを通す。
都合の悪いことは記憶の中で薄れていくだろうし、そうでないときっと苦しんでしまう。
歴史は今この瞬間だけが真実で時が経ったものに関しては真実だろうけど、全くの真実とは少し異なるのかもしれない。
p166の喫茶店の方の言葉に不覚ながら涙が溢れた。
「ダメ。もうこんなところへ来たら絶対にダメよ。こんなとこを知ってると言うてもダメ。どこから知られるかわからへんから、もし今後どこかで飛田の話がでたら、『知りませんっていわなダメ。』言うて送り出したげた…」
その地で働いている人がそう言わねばならない世間の目、その目の中に私も含まれている。
お好み焼きのおばちゃんの話で、私自身曳き子のおばちゃんのことを十把一絡げで見ているなと実感してしまった。
おばちゃんもそれぞれ違うのに…
少し下に見てしまう根本的な原因はなんなのか新しく疑問に思った。
著者の胆力、凄いなと途中ハラハラする箇所がありつつとても勉強になった。(ヤクザの事務所のチャイムを押したところは肝が冷えた。)
難しいテーマの取材をし、本を出版していただいたことに感謝しかない。