深木章子のレビュー一覧
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「敗者の告白」
転落死した妻子 残った夫。その妻が残した夫に対する告発文。「私が死んだらそれは夫の仕業です」と、息子が死する前におばあちゃんに送った一通のメール。「僕はお父さんとお母さんに殺される」
そして「妻は自分を殺そうとしていた。正当防衛だ」と無罪を主張する夫。果たして何が本当で何が嘘なのか、誰が誰に殺意を持っていたのか。
一見、視界クリアな道が開かれているように見えて、目的地が見えない不思議な旅だった。
この家族の「告白」から連なる関係者達の「告白」が、主に夫の担当弁護士に向けて語られ、徐々に真実が明らかになっていく。今となっては珍しくない構築だが、やはりジワジワと全容が見えてくる形 -
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昭和41年の夏、地方の有力者の家庭で起こった毒殺事件。当主の治重が自供し、無期懲役刑が確定。事件は片がついたかに思えたが、40年後、保釈された治重は、ある関係者に手紙を出す。「僕は無実です。本当はあなたもそれをご存知のはずです。」
本書の中心は、事件の真実を推理する書簡のやり取り。互いの手紙の文面を引用して、相手の推理を否定し、あるいは肯定して、何とか真実を探り当てようとするやり取りである。そして、そのやり取りはタイトルにある通り、「欺瞞」でしかない。物語は二転三転し、最後の最後でまたひっくり返される。お終いまで気の抜けない、秀逸なミステリだ。
深木章子さんの作品は初めて読んだ。元弁護士に -
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ネタバレ以下、ネタバレあります!(ぼかして書いているので、読んでいない人は何のことかわからないと思います。)
初めて読んだ作家だったが、非常によくできた叙述トリックもの。二重の一人二役トリックと言えるだろうか。途中「あの人」「あの人」と連呼し始めた辺りで、ははーんそういうことかと仕掛けを全て見抜いた気になっていたが、文芸評論社の編集者が司だと思い込んでいたことがネックとなって事件の全体像は掴み損ねた。ここら辺、実にうまく仕掛けてあると思う。簡単に言えば「名乗る前だった」ということになるだろうか。
ただ、叙述トリックが複雑なため、種明かしでもう少し説明して欲しくはあった。特に、一人称 -
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ネタバレタイトル、帯の煽り文、見取り図。満点です。ミステリスキーにレジに持って行かせるだけの卓越した一冊に出会えた時の喜びと言ったら、、、、。
というわけで、初めましてな作家さんです。深木章子先生。60歳を過ぎてから作家デビューされたようです。ビックリ。それでこういう古式ゆかしくも挑戦的な一本が書けるって凄いなァ。
作品のトリック自体は非常にシンプル。
明治時代に官憲の包囲の中、20名余りが忽然と姿を消した武家屋敷が舞台です。
謎の招待状で集められた5人の関係者が、折悪しくも襲来した嵐に足止めを食い、やがて2人の人間が土砂崩れに巻き込まれた直後、第1の人間消失事件が発生する。そして、疑心暗鬼の面々 -
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今、秘かに応援している推理作家、深木章子さん。
秘かにする必要などないけれど。何故もっと注目されないのかわからない。
遺産目的での義父殺害の嫌疑がかかる峰岸諒一は、頑なに無罪を主張していた。諒一に依頼された弁護士衣田は、肝心なところで言葉を濁す依頼人に翻弄される。
しかし、ようやくアリバイの証明がされ、諒一の無罪が確定し釈放される。
ところが、間もなく諒一の遺体が発見される。
今回の作品では、冤罪が描かれる。
弁護士ならではの思いが窺える記述もある。
また、裁判に伴う拘留の様子や、被告人と弁護人との面会の様子などにも弁護人ならではの記述があり興味深く読める。
こういった難しくなりがちな内容