石川智健のレビュー一覧
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物語の舞台は第二次世界大戦下の東京、1944年から1945年にかけて、当時は非国民とされた洋装姿で若い女性が首吊りの遺体として発見される事件が相次ぐ。キレイな遺体で花のように広がったスカートが特徴的であったため、「釣鐘草の衝動」と揶揄される事件を、警視庁の写真室所属の巡査「石川光陽」と、“吉川線”を発表した内務省の「吉川澄一」の2人が明らかにしていく…。このおふたりは実在された方々なんですね!
この作品の表紙も好きです。正しく“エレガンス”ですね!
でもそれだけじゃないんです。もうね、読んでください…!!東京大空襲がどんなにひどかったか…!そして、彼女たちが最期まで“エレガンス”であ -
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プロローグ
「パン パンパーン!!!」
街の何処かでクラクションが鳴いている
私は、そうした喧騒もどこ吹く風で
シャッターを切りまくった
私の手の中には、ライカМ6が収まっている
レンズは、ズミクロンМ35mmアスフェリカル
街のスナップショットにはもってこいの画角だ
尚、“Leica”とは会社名のLeitz Cameraの略である
過去には、アンリ・カルティエ・ブレッソンや
ロバート・キャパ、木村伊兵衛といった
名カメラマンもこのライカを使用している
世界的な名機なのだ!
ファインダー越しにサングラスをかけ、スカーフを
頭に巻いた女性が映り込む
出し抜けにファインダーから目を上げる -
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yyさんのレビューで興味を持ち読みたくなりました。
yyさんありがとうございます。
1944年12月。
警視庁の写真部付属の石川光陽は、裂かれたシーツで首を吊っている女性の遺体を当時六百円するライカDⅢのカメラで撮ります。
美しい遺体でした。
長いスカートが放射線状に広がり、まるで花冠のようで”釣鐘草の衝動”と風聞される死が続いています。
”釣鐘草の衝動”と言われて亡くなった女性は四人となり、さらに続き五人、六人と増えていきます。
女性はドレスメーキング女学院の生徒ばかりです。
最初はみな自殺とされますが石川と組んだ警視庁の吉川は皆、遺体の首すじに吉川線と呼ばれるひっかき傷があることから -
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考えてみれば当然のことなのだが、B29による爆撃によって燃え尽くされていた太平洋戦争末期の東京においても、空襲に怯え、窮乏に苦しみながらも、人々は日々の暮らしを送っていた。そこでは、警察による犯罪捜査もおこなわれていたし、同調圧力に屈することなくお洒落な洋装で身なりを美しく保とうとする人々も存在した。あらゆるものが戦争と全体主義に埋没していたわけではない。おそらく今のウクライナやガザにおいても、程度は違えど同じ状況があるのであろう。平和な境遇に馴化してしまった我々のバイアスを取り除く、本作のリアリティは実に力がある。
石川光陽氏も、吉川澄一氏も、実在の人物であることを読後に知り、改めて重みを感 -
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戦時下の東京が舞台で、事実に基づいたミステリー小説です。緻密な取材による実話ならではの臨場感があり、事実に物語性をもたせる構成が見事でした。読者の心を惹きつける良質な一冊と思えます。
事実とは、実在した登場人物、①石川光陽(警察官・写真家で戦時の惨状などの撮影に携わった)と②吉川澄一(警視庁鑑識課課長で戦前戦後の科学捜査の発展に寄与した)、そして③「釣鐘草の衝動」(若い女性の首吊り自殺が相次いだ事件)です。
石川光陽と吉川澄一が組んで、上記事件を捜査していく展開です。吉川は殺人だと決めつけていますが、石川は乗り気になれません。捜査を進めるに連れ、石川の揺れ動く心理が、空襲におびえる -
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★5 1945年東京… 死と隣り合わせの時代、自分らしく生きぬく美しい女性たちの物語 #エレガンス
■あらすじ
1945年1月の東京、洋裁学校に通う女学生が連続で首吊り死体として発見された。警視庁で写真記録係だった石川光陽に再捜査の依頼をされる。光陽と組むのは内務省の吉川、彼は頸部の傷があることから他殺を疑っていたのだ。
二人のもとに捜査の協力をしたいと申し出る女性が現れる。戦時下でも洋装をまとい、美しさにこだわる意識の高い女性たちであった。
■きっと読みたくなるレビュー
★5 死と隣り合わせの時代、弾圧にも挫けず自身の生き様を貫いた美しき女性たちの物語です。
戦後80年ですね、私も含 -
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1945年空襲警報が響く中、昨年の12月から4人目となるドレスメーキング女学院に通う女性の首吊り死体が発見される。
この空襲でいつ死んでしまうかわからない時世だから、世を儚んでの自殺だろうと決めつけていたのだが、内閣省防犯課から吉川が捜査に来る。
その手伝いとして警務部写真室の石川が手伝うことになった。
吉川は、遺書がないのに自殺として処理されていたことに、何故自殺と断定したのか、もし殺人ならどのような状況下であっても犯人を探し出さなければならないと…犯罪を見逃すのは罪を許容することと同義で、空から爆弾を落として罪なき人々を殺している行為を容認するのと同じだと言う。
カメラのレンズを通し -
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ネタバレ当たり前の日常が、目の前の命が一瞬で消える。死が常に目の前にある生活。慣れたくなくても慣れてしまう警報。明日がくるかわからない毎日。人も家も何もかも消し去る空襲。目の前で重なっている人々。炎の中、泣きながら親を探す子ども。目を背けたくなるほどの、生々しい戦争の惨禍を見た。
好きな服を着たい。好きな髪型にしたい。少しでも綺麗でいたいと思うことが許されない。このまま生きても、真っ黒になって、誰なのかすらわからない状態になるかもしれない。どうせ死ぬなら、綺麗に死にたい。あの時代を生きた人にしか本当の意味での理解はできないかもしれないが、私もきっとそう思ってしまうだろう。抵抗、といえばそうかもしれな -
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1.登場人物
香月百合…新宿の予防感染研究所研究員。獣医科学部に所属。
下村翔太…予防感染研究所研究員。感染病理部に所属。
加瀬祐司…予防感染研究所研究員。医学博士。細胞科学部に所属。
市川…予防感染研究所の管理人。定年退職後、ビル管理会社に再就職した老人。
一条…警察官。ゾンビ禍発生後、予防感染研究所に逃げてきた。
城田…男子大学生。ゾンビオタク。ゾンビ禍発生時、大学に避難していたが、大学がゾンビに襲われたため予防感染研究所に逃げてきた。
2.物語の始まり
香月百合は新宿区戸山の予防感染研究所に休日出勤する。研究熱心で優秀な下村翔太や、医学博士で女性所員憧れの加瀬祐司も出勤していた。日曜な -
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ストーリーの背後に日米地位協定がどっしりと鎮座していると感じた.荒くれ者4人とリーダーの北森、暴力班を呼ばれ、警視庁の組織から浮いている存在だが、連続殺人事件を捜査する.庁内には支援者の白鳥がいるが、北森たちは孤軍奮闘しながら、真相にたどり着く.ジョン・ホワイトが犯人だと分かったが所在がつかめない.在日米軍も捜査しており、ミレイとガンナーとも遭遇する.乱闘場面の描写が楽しめ、汗や血が紙面から吹き出てくる感じだった.北森がホワイトを見つけ銃撃されるが、相棒が現れホワイトを捕まえる場面が面白かった.日米の事情を把握しているミレイの存在、官僚風を吹かせる風間慎一、北森の国会議員の父の意向、暴力団組長
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シリーズ、第二弾。
前作『60』から、登場人物が少し変わっています。
『誤判対策室』に所属する女性検事・春名、再雇用の老刑事・有馬、そして新しく採用されたのは、企業の法務担当の青年・塩見。
ある日、三ノ輪警察署から連絡が入る。
殺人容疑者が、自白の相手に有馬を指定した。
その容疑者とは、元裁判官の紺野。
法律の裏も表も熟知する容疑者に、警察署内はてんてこ舞い。
そこで、容疑者・紺野が有馬に仕掛けた不条理なゲームとは?(なんとなんと)。
『二十号手当』や『ミュンヒハウゼン症候群』など、様々な謎が駆け巡る。
そして、容疑者の弁護に立ったのは、前作のかつての仲間・世良であった。
この辺りは -
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無罪を訴える死刑囚を再調査するため、新たな組織が編成された。それが『誤判対策室』。
そこに配属されたのは、女性検察官の春名、老刑事の有馬、そしてイケメン弁護士の世良。
それぞれ訳ありの3人が集まる組織に、どんな難問が降りかかるのか?
基本的に、誤判対策室は、警視庁や検察庁から疎ましく思われていた。
確かに、一度確定した判決の粗探しをするような組織に、好意を寄せるところなどあり得ない。
ある日、有馬が掴んだ冤罪の可能性のある死刑囚。
しかし、調査を進めても、冤罪の可能性を示すカケラもない。
果たして、この死刑囚は、本当に冤罪なのか?
本人も自白しており、周りの状況も、彼の有罪を示すものばか