石川智健のレビュー一覧
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「絶対的な悪は存在しない。同様に、絶対的な正義もない。」このフレーズは、悪に取り憑かれずにいきるためのひとつの指針だろう。
だが、人間とは弱い者でいつ被害者になる加害者になるかわからないのである。
その怖さが読んだ後にも付いてくるようだ。
物語は、四つの短編からなる連作である。
それぞれ異なる事件から始まるのだが、それらが繋がってひとつの長編となっているところも「悪」とは何かを問うているようであり、法律や道徳に関することも絡めていて複雑である。
だが登場人物が個性的であり、魅力を感じながら楽しめるのがいいのかもしれない。
柔らかく中和させているのが、警視庁捜査一課刑事・青山の同窓生である小 -
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覚せい剤密輸現場で逮捕された、暴力団員の雨夜。彼はその前に起こった暴力団幹部殺害事件の犯人を知っているといい、それをネタに司法取引を持ち掛ける。雨夜の証言によって犯人は逮捕され、その犯行も確実視されるものの、まだ終わった感のない事件。真相はいったい何なのか。
雨夜の謎めいた行動の数々に振り回されます。「いい刑事」っていったい何なんだ、とか。釈放されたにも関わらずあえて警察の護衛を依頼するのも疑問だし。そして冒頭で描かれた、あまりに奇怪な拉致事件の意味がさっぱりわかりませんでした。何のためにわざわざあんなことしたの?
もちろんすべてはきちんと明かされ、そして理解したときに雨夜のとてつもない計画に -
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医者の名家の自殺事件と都内での刺殺事件を通して、人間の二面性がよく描かれてる
だれもが心の奥に闇を潜めているが、周囲との関係と自分自身を保つために、それを吐き出して楽になる事はできない
そんな中庸一郎の生き様が家主として断トツに賢くカッコ良く見えてしまったなあ
でも警察の偽証は腑に落ちない、、もっと綺麗に容疑者を落としてほしかったし、できれば舞子のシーンは見せ場なはずだからもっと鮮明にドラマチックに表現してほしかった、、これは個人的な好みだけど、、
ため息に溺れてしまいました、と書いた時に以前そう口走った伊藤の影を見て、もしかしたら障害があっただけでお互い気持ちがあったのではないかとか思ってし -
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ネタバレ本の帯に惹かれて購入。
帯の通り最後10ページで世界ががらっと変わる。
主人公は刑事。地域の名士である蔵元家で起こった自殺事件の再調査に巻き込まれる。
自殺した指月は、天涯孤独ながら周囲に愛され、医師になり、跡継ぎのいない蔵元家の養子に迎えられた。蔵元家の娘と結婚もし、医師としても申し分なく見えた。
なぜ彼は自殺したのか。本当に自殺なのか。
主人公が暴いていくドロドロの人間関係。
その中で、最後の指月の思いにゾクっとした。
舞子のまっすぐ過ぎる思いも怖いが、指月の方が得体がしれなくて恐ろしい。彼は自分だけが大切だったようだ。
ちょっとした違和感の部分は最後で奇麗に回収していて読み応えがあ -
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太平洋戦争末期の東京。洋装の女性の連続不審死を捜査する内務省防犯課の技師・吉川と警視庁写真室記録係の警察官・石川。実在した二人を主軸に、戦争の地獄とその時勢でも抵抗を貫いた様々な人々を描く戦時下ミステリ。
ミステリ好きならピンとくる「吉川線」の生みの親吉川澄一が出てくるだけでも期待が高まる。空襲で多くの人が無惨に亡くなる中、自殺とも思える数人の女性の死を捜査する意義を見出せないでいる石川。「罪を見逃すのは、罪を許容することと同義なんです」吉川が語った言葉が重い。
空襲の惨禍、死にゆく人を記録写真に残すという任務に疑問を抱く石川が、吉川の毅然とした姿に自らの任務の重さを自覚していく過程がいい