石川智健のレビュー一覧
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冤罪事件を再捜査するため、誤判対策室に集められた刑事と検事と弁護士。それぞれの思惑や葛藤も絡めながら話が進み、とても面白かったです。
裁判員裁判の問題点も提起されているのが出色でした。
裁判の迅速化のため論点整理が行われ、論点に合わない証拠は開示されないだけでなく、その証拠があることは検察しか知りません。ほかにも容疑者がいると示すため弁護人が証拠開示を求めようにも、どんな証拠があるかわからないので開示請求できない、という問題です。
裁判を迅速に進めるための仕組みは、冤罪を生みかねない。その危うさと、国民が司法に参加することの意義を改めて考えました。起訴状なども載せられていて、物語を楽しみながら -
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「エレガンス」という言葉が、様々な意味をもって語られる。紹介し尽くせば、ネタバレになるので控えざるを得ないけど、そのすべてが重要な言葉だったと思う。
大学の頃、隣にあった研究室に「美学」という看板を掲げていた部屋があった。やっていたのは哲学だった。どうしてこの名前にしたのかずっと疑問だった。やはり広い意味をもった言葉だったのだと独りごちた。
推理小説ではあるが、この私でさえ、中盤で犯人も手口も動機(!)さえも見当がついた。では、面白くなかったのか?と言えば、非常に面白かった、と言わざるを得ない。その証拠に読んでいる途中で本書主人公の1人である石川光陽(警視庁所属カメラマン)の著書を3冊も取 -
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優雅さなんて、どこにもない。それでも“エレガンス”だった。
ミステリー小説によく出てくる「吉川線」を考案した吉川澄一と、実在した警視庁写真室巡査・石川光陽。
彼らが、戦時下の東京──銃後が戦場となった街で起きた「釣鐘草の衝動」と呼ばれる連続不審死事件を追う。
終盤にある、4ページ半にわたる東京大空襲の描写は圧巻。
空行も改行もなく、ただびっしりと文字が埋め尽くすページ。
その“文字の暴力”が、まさに空襲の暴挙そのものを表していた。文字だからこそ可能な、極限の表現だった。
物語の主眼は吉川でも事件でもなく、「戦争」そのもの。
ミステリーというより、“戦後80年の文学”として読むべき一作だ。 -
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大戦末期の東京。
警視庁で総監から空襲の記録写真の撮影を命じられた石川光陽。
数軒の家に匹敵する高価なカメラ、ライカDⅢを使う「警視庁のドラ息子」。
東京空襲と時を同じくして発生した、若い女性の連続自殺事件の謎を吉川澄一と追う。
吉川は絞殺死体特有の傷「吉川線」の発見や「手口分析」を普及させた鑑識の大家。
女性たちはいずれも洋裁学校ドレスメーキング女学院の生徒たち。
首をシーツで吊られた立位や座位で発見され、スカートが釣鐘草の形に見えることから、事件は「釣鐘草の衝動」と呼ばれる。
吉川は遺体に共通する吉川線から他殺と断定し、連続殺人事件の捜査に切替わる。
もう一人の主役は出版物の検 -
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『宮部みゆきのおすすめ本』で紹介されていた一冊
宮部さん曰く、
『私と同じようにゾンビに苦手意識のある方にも安心してお勧めできる、本書はゾンビパニック・スリラーではなく、上質の謎解きミステリーだ。』
わたしは宮部さんの反対で、ゾンビ映画はあれこれ観ていて(ブラピ主演の『ワールド・ウォーZ』が一番好き)、ドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズ全部観て、マンガなら花沢健吾『アイアムアヒーロー』全巻読んでいる
なので手の内は知り尽くしている (^^)
しかし!
『超自然現象や魔法でゾンビになるのが元祖であり、言うなれば"ゾンビ1・0"で、ウイルス説や細菌説が" -
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WHO(世界保健機関)の新着記事に、まるでネットニュースかのような記事の見出しが載った。『原因不明の病気蔓延によって、人が凶暴化する可能性。当局が警戒』という内容で、感染症かどうかも定かではない事象は全世界に爆発的に広がり、日本も例外ではなかった。〈ゾンビ〉としか思えない人間の出現。新宿区戸山にある予防感染研究所で働く香月百合をはじめとする所員の面々も迫りくる謎の事象の猛威から身を守るために、研究所に籠城を決意する。人が人を食い荒らし、噛まれてもないのに〈ゾンビ〉化する人まで現れ、感染症か人為的なものか原因も分からないまま、騒ぎは大きくなっていき――。
というのが本作の導入。変容していく