石川智健のレビュー一覧
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「エレガンス」で「このミス」8位にランクインした石川さんの最新作。
戦時中の連続不審死事件がテーマだった前作とはガラっと変わって、AIという最先端テーマを扱ったサスペンス。
ネットに突然現れ拡散された謎の生成AI「アニマ」を使った原発テロが計画・実行される。
原発に爆弾が仕掛けられ、東日本が壊滅の危機にさらされることに。
未曾有の事態に、国が極秘で開発を進めていた生成AI「エクスマキナ」の力を使って対処しようとするが…
後半にかけてどんどん緊迫感が増していき、夢中で読み進めてしまった。
10年前なら完全にSF作品だっただろうが、AI時代の今なら、「もしかして本当に起こりうるかも」というリアルさがある。
AIがどれだけ進化しても、AI自体に“善悪”を判断する力はなく、そこは人類の倫理観・良心に期待するしかないのだろう。
これまでの技術の兵器運用の歴史を見る限り、AIの技術発展についても、不安は拭えない。
悪意をもってAIを利用しようとする人は確実に出てくるだろう。
それでも、最終的には人類の善性・良心といったものを信じたい。信じてよいのでは。
本作を読み切ると、そんな風に思えた。 -
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ミステリーとしても楽しめたが、人のあり方問われる力作。戦争の悲惨さと人間の尊厳、美しくありたいという「エレガンス」な生き方。とても真似できそうにない。永井荷風やパーマ屋さんはじめ登場人物も魅力的。「このぬらりとして得体の知れないものが文学なのだ」「味方を殺す為の戦闘機を作って、若者に死ねと言う国に未来はあるのか」「犯罪を見逃すのは、罪を許容することと同義。空から爆弾を落として罪なき人々を殺している行為を容認することと同じ。」「エレガンスは、自由に、思いのままに生きるのと同義。こんな世の中だからと諦めたり我慢したりしたら、自由を完全に放棄することになる」心しておかねば。
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東京大空襲の描写は非常に生々しく、圧倒されるものがあった。燃え広がる街や逃げ惑う人々の姿から、戦争の恐ろしさと理不尽さが伝わってくる。国が始めた戦争によって、何の罪もない人々が翻弄され、人生を大きく変えられてしまう現実が印象的だった。
そのような時代の中で、個人主義は弾圧され、自由に生きることさえ難しい。しかし、ドレ女の女性達は「美しさ」を求め続けることで、戦争という大きな力に抗おうとしてるよう感じた。直接武器を取って戦うわけではなく、自分の価値観や美意識を守り続けることが、彼女にとっての抵抗だったのだと思う。
だからこそ、その姿はとても美しく、同時にどこか儚さも感じさせた。戦争という極限の状況の中でも、人が自分らしく生きようとする強さと弱さの両方を描いた作品だと感じた。 -
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ネタバレこのミスランキングで気になった本だが、ミステリというよりは戦争小説らしくない戦争小説というのだろうか、戦争そのものではなくそこに生きた人々の生活に迫った本として、ものすごく読み応えがあった。
舞台は戦時下の東京。
実在した警視庁所属のカメラマン石川光陽と、吉川線を考案した捜査のプロ吉川澄一の二人が、女性連続不審死の謎に挑むというミステリ。
光陽の視点と千世という女性の視点で、物語が交互に語られる。
はじめは別々だった物語が交わり一つになっていくにつれ、どんどんストーリーに引き込まれた。
ミステリというよりも、戦時下の人々や街の様子の描写がすごくリアルで、読み応えがあった。
これまで戦争中は質素で苦しい生活をしていたイメージだったが、そんな中でもおしゃれをしたり洋装をしたり美しく生きようとした女性がいたということや、劇団の存在なども知らなかった。
また、当時の人達がどういう思いでいたかということもすごくリアル。
「銃後が戦場となる」というフレーズが繰り返し出てくるのだが、それが実感できる内容だった。
東京大空襲の場面は頭の中に自然と映像がイメージされ、現実はもっと悲惨だったんだろうけど読んでいて苦しかった。
これを書いたのが自分と同年代の、戦争を知らない作者であるということに驚き。
光陽や吉川をはじめ、作家の永井荷風、ドレスメーキング女学院の関係者、美容師の八並、バーで出会う人々…戦時下でも誇りと信念を持って生きていた人々のパワーに圧倒された。 -
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2026年版「このミス」国内作品8位にランクインした「エレガンス」の作者・石川智健さんの過去作。
止まない身内の不祥事対策として、警察トップはアメリカ諜報企業・リスクヘッジ社を、組織全体を監視する第三者機関として採用。
警察内部を監視する役割の監察官と、警察内の不祥事を察知&もみ消しに動くリスクヘッジ社の息詰まる攻防が、スリリングかつスピーディーな展開で描かれる。
単純にどちらが善・悪という構図ではなく、言うなれば「怪盗vs探偵」のような感じ。
最終章は意外な展開を見せ、ラストは爽やかな余韻を残す。
いやー、あっという間に読み切ってしまった。
ちなみに文庫化前の原題は「もみ消しはスピーディーに」で、個人的にはこっちのタイトルの方が好きだったかも(笑) -
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1.登場人物
香月百合…新宿の予防感染研究所研究員。獣医科学部に所属。
下村翔太…予防感染研究所研究員。感染病理部に所属。
加瀬祐司…予防感染研究所研究員。医学博士。細胞科学部に所属。
市川…予防感染研究所の管理人。定年退職後、ビル管理会社に再就職した老人。
一条…警察官。ゾンビ禍発生後、予防感染研究所に逃げてきた。
城田…男子大学生。ゾンビオタク。ゾンビ禍発生時、大学に避難していたが、大学がゾンビに襲われたため予防感染研究所に逃げてきた。
2.物語の始まり
香月百合は新宿区戸山の予防感染研究所に休日出勤する。研究熱心で優秀な下村翔太や、医学博士で女性所員憧れの加瀬祐司も出勤していた。日曜なのに全所員の8%ほどの計40人が研究所にいるようだ。席に着いてWHOのサイトに接続すると、気になる報告があった。アフガニスタンやシリアなどの紛争地域で人が突然気絶し、1分前後経つと狂暴になって人を襲い始めるという。しばらくすると研究所内の大型テレビに、現実とは思えないニュース映像が流れた。人が人を襲う暴動が日本各地で起こっているというのだ。いや、世界中で。画面に向かって所員が呟いた。「これゾンビでしょ」。
3.世界観・価値観
予防感染研究所は、日本でもっとも感染症を研究することに適した場所。
日本でもっとも感染症のことを考えている所員を擁し、日本でもっとも感染症について研究できる設備を整えている。
そこに集まった約40人の人間たちで、ゾンビ禍の原因を探っていく。
4.キーワード・テーマ
ゾンビの原型となるモンスターは1968年に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に登場。
その後、ゲーム『バイオハザード』に登場したゾンビは映画化までされ、世界中へと市民権を広げていった。
現在までに様々なゾンビが生まれているが、『ゾンビ3.0』は、これまでのゾンビ像を踏襲しつつ、新たなゾンビ理論を打ち出した。 -
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ストーリーの背後に日米地位協定がどっしりと鎮座していると感じた.荒くれ者4人とリーダーの北森、暴力班を呼ばれ、警視庁の組織から浮いている存在だが、連続殺人事件を捜査する.庁内には支援者の白鳥がいるが、北森たちは孤軍奮闘しながら、真相にたどり着く.ジョン・ホワイトが犯人だと分かったが所在がつかめない.在日米軍も捜査しており、ミレイとガンナーとも遭遇する.乱闘場面の描写が楽しめ、汗や血が紙面から吹き出てくる感じだった.北森がホワイトを見つけ銃撃されるが、相棒が現れホワイトを捕まえる場面が面白かった.日米の事情を把握しているミレイの存在、官僚風を吹かせる風間慎一、北森の国会議員の父の意向、暴力団組長の脇村.雑誌記者の歌野陽子 など、特異な登場人物の役割を見定めながら読破した.面白かった.