あの世とこの世が繋がっている場所を舞台にした〈幻想〉シリーズ第九作。今回の舞台は『世界のハテ商店街』。
ふざけたネーミングだが物語はシリアス。だが文体は軽快でコミカル。〈幻想〉シリーズらしい話。
新しく出来た大型モールへの移転を迫られる『世界のハテ商店街』。移転していく店が増える一方で立ち退き断固
...続きを読む反対を訴える店もある。主人公の小学生・ホタルの祖父もその一人で反対派と共に市役所の担当者と闘っている。
そんな中で『交差点のアカリさん』なる女性の怨霊が現れるようになり、彼女の祟りを気にして立ち退く者が増えていく。
これまでのシリーズ作品では、コミカルな語り口やキャラクターの一方で残酷な展開になることもあったので心配したが、そこまで酷いことにならずホッとした。
しかし立ち退きをさせようとする不動産屋と市役所職員がキツイキャラクターで強敵。しかも二人とも他人から見ればしょうもない理由で頑なになっているのだから怖い。
物語の本筋は商店街の立ち退き問題。しかし『交差点のアカリさん』が何故商店街を祟るのか何者なのかも気になる。
また週に一度の逢瀬を楽しんでいる戦死した夫とおばあさんとの夫婦に危機があったり、ホタルの祖父が初恋相手のおばあさんの態度に一喜一憂したり、ホタルの同級生・田辺が『交差点のアカリさん』の祟りに悩んだり、様々な要素も肉付けされる。
シリーズキャラクターの赤井局長と狗山比売、青木さんも出てくる。
ホタルの大人びた生意気キャラクターでグイグイ読み進めるが、全体的には苦しい場面は少なく、ホタルの活躍譚として読めた。ただパンチはあまりないかも。結末はホッと出来る。