中村能三のレビュー一覧
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ネタバレ【再読】
ヘンリーとルーシーのアンカテル夫妻のホロー荘に招かれた面々。平凡な妻と平凡な暮らしに倦むジョン、ジョンに従順で生きづらさを抱えたガーダ、芸術家として理想の美を求め続けるヘンリエッタ、ヘンリエッタを想う地味なエドワード、他人を見下すデイヴィッド、掴みどころのない妖精のようなルーシー、遠い昔を懐かしみながら日々の労働に神経を擦り減らせるミッジ。
ジョンは、この度の訪問を通してヘンリエッタへの抑えていた思いに気がつく。そんな中で、ジョンの昔の恋人ヴェロニカが現れるなど、波乱の予感が。そしてついに事件が起こる。ジョンが何者かにプールで射殺されたのだ。現場にはリボルバーを手にした妻ガーダの姿があった。
パーティに招待されていたポアロはちょうどその場に居合わせ、捜査を開始する。ガーダはジョンに抑圧されており、さらにジョンはヴェロニカやヘンリエッタらの女性とも関係をもっていた。そのため事件は単純なものと思われたが、ガーダが手にしていたリボルバーはジョンを殺したものではなかったため捜査は混迷をきわめる。
最終的にポアロは、犯人としてガーダの名を告げる。ガーダは拳銃を二挺用意し、ジョンを殺したのではない方の銃を手に持っていた。最初は疑われても、後に銃を調べれば凶器でないとわかることを知っていたからだ。現場でそのことを即座に見抜いたヘンリエッタはわざとガーダから銃を取り上げてプールに落とし、指紋を消して捜査を撹乱させた。さらに、ガーダが使った本物の凶器の銃を巧妙に隠したのだった。ヘンリエッタの行動は、死に際に告げられたジョンの言葉が、自分にガーダを護るよう頼むものだと考えたからだった。
ポアロの目の前で起きた、まるで芝居のような殺人。そこに至るまでに綿密に織りなされる人間ドラマ。登場人物の個性と魅力、物語の完成度はシリーズ屈指。
人から馬鹿にされ、生きづらさをを抱えていたガーダ。しかし彼女は愚か者ではなかった。そこがまた哀しい。そして頭の回転の早いヘンリエッタが捜査を撹乱したことにより、ポアロたちは翻弄されることになったのだった。「演出された殺人」というポアロの直感が最後まで鍵となる。
●見どころ
・訪問早々の殺人事件を趣味の悪い芝居だと勘違いするポアロ
・ミッジの店に潜入し、女性の労働の過酷さを目の当たりにするエドワード。
・愛さえあれば、ゴキブリすらも愛おしい
●名言
「あら、エドワード、ごきぶりが出てきて、あたしたちを見ているわ。かわいいごきぶりじゃない? あたし、こんなにごきぶりが好きになれるなんて思ってもみなかったわ!」 -
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ネタバレクリスマス当日に読みました。なんて素敵な短編集。いつもよりほんの少し慈悲深くなれそうな、かつお説教臭くなく読書の楽しみも与えてくれる、クリスマス期間中に読むのにぴったりの作品でした。クリスティ作品は結構読んだけど、これは恥ずかしながら知らなかった。タイトルを『クリスマスの奇跡』的な感じにして、カバーデザインももっと華やかに、かつハードカバーにしたらクリスマスプレゼントとして随分売れるだろうにと思うんですが、どうでしょうね早川さん?
そんなそろばん勘定はともかく、構成も素晴らしい本作品。はじまりのお話は、イエス様を出産されたばかりの若き母・マリア様。そしてマリア様の最期を描いたお話で締める。本全体に聖母マリア様の慈愛の心が流れているようです。
クリスティはマリア様のことをどう捉えていたのだろう。自分も母親として、重ね合わせる部分があっただろうか。
個人的にいちばん面白く読んだのは「いと高き昇進」。有名な聖人もそうでない聖人も、魅力的に人間臭く描かれていて、もうこの14人は今後忘れないだろうなと思う。「承認といったのか、それとも昇進か?」と念のため確認する疑り深い聖トマスとか。
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購入済み
面白かった
フィクションであり、
現代日本の価値観とは異なる部分も小さくないが
それでも、登場人物全員が、
長所も短所も持ち合わせていて
こういう人いそうだなと思わせる
生々しさを感じた。
真相も、好みに合うかどうかは別として
たしかにそうだなと、納得の結末です。
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購入済み
ああ怖い
悪党は飽くまで悪党で
それでいて、普通の人が突如殺人者に変わる。
犯人とその動機が明かされると
まるで実在の事件のような気になってしまう。
やはりクリスティの小説は、
人物描写が素晴らしい。 -
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ネタバレこ、これはまたすごいものを読んでしまった……!クリスティーの引き出し、どこまであるんだ。。
ポワロシリーズも残り10冊ちょっととなり、何を読もうかと迷って手に取った本書。なんと解説があのはやみねかおる先生!すっかり懐かしくなって、「夢水清志郎シリーズ」ぽちってしまいました〜(^^♪
さて。
いつもレビューを読んでくださる皆様はおわかりの通り、私は普段ミステリーしか読みません。ヒューマンストーリーや恋愛ものは、なんだか冷めてしまって飽きてしまうのです。
そんな私ですが、500ページ近くを費やして描かれる濃密な人間関係に、すっかり引き込まれてしまいました……!
被害者であるジョンはモラハラ野郎なので1ミリも同情しなかったのですが、登場する女性陣のクセの強さ、人間性、自活することと忘れられない過去への葛藤……それらが生き生きと描かれ、退屈するヒマなんて全くありませんでした。
クリスティー以外のミステリーを読むと、そのステレオタイプな女性像にうんざりすることが多いのですが、時代を経てなお、はっきりと息遣いの感じる女性を描くこと、それにクリスティーは本当に長けていたなと感じます。
だめんず製造機なヘンリエッタの行く末にはハラハラし通しでしたが、ラストの姿にも感動。芸術家としてしか生きられない孤高さには胸を打たれました。でもジョンに魅力を感じるのはどうかとおもう!
だんだん「ホロー荘」がつかめない幻影のように思えてくる過程もぞっとしましたし、なにより唯一応援したくなったミッジが幸せになれそうでよかった。
逆にミステリー好きでなく、人間ドラマ好きな方々にもオススメしたい一冊ですね。
これは、ポワロシリーズの中でも忘れられない作品だ。。
【印象深いセリフ】
p200
「…でも、わたし、相手がだれであろうと、世の中にその人しかいないみたいに考えるのは、よくないと思っていますのよ」
p470
「…あなたにとっては、人の心が傷つけられるのは耐えがたいことです。しかし、ある人々にとっては、それ以上に耐えがたいことがあります。――わからない、ということです。…科学的な精神の持主にとっては、真実が第一なのです。どんなに辛かろうと、真実は受けいれることができ、人生の模様に織りこんでいくことができるものなのです」 -
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【ポアロ】
好きなクリスティー作品No.1が『ホロー荘の殺人』に入れ替わった。
やっぱりクリスティーの描く人間ドラマが面白くて好きだ〜。
ポアロが入る隙がないほど、登場人物だけで十分まわせちゃうくらいキャラが濃い人達。
脇役でも他の作品に出たら主役になれるんじゃない?と思うくらい、主役級のぶっ飛んだ人達が勢揃いしている。
あのポアロでさえ、この作品では霞んでしまうほどで出番も少ない。
攻略本によると、クリスティーは「この作品にポアロを登場させたのは失敗だった」と述べていたと書いてあった。
確かにこれはポアロシリーズじゃなくて、ノンシリーズ作品の方が合う。
『ナイル』『杉の柩』よりもっと複雑な愛のかたちが出てくる。
登場人物のそれぞれの心理描写が何とも切なくて、今まで読んできたどの登場人物よりも心に残る人達だった。
犯人が誰なのか全くわからなくて早く知りたいのに、犯人がわかったらこの好きな世界観が終わってしまう。最後の方は読みたいのに読みたくない…。クリスティーでこんなに読むのがもったいなく思ったのは初めて。
最後に犯人が言った言葉が切なすぎる…。
聞いたこともない作品だし、攻略本で4.5の作品でもこんなに心が揺さぶられる作品がまだあるなんて、まだまだ自分の好きな作品は隠れていそう。
ポアロ好きな人や推理ものが好きな人には、この作品はハマらないかも。
『ナイルに死す』のような人間ドラマが好きな人は好きだと思う。
●ぶっ飛んだキャラの登場人物たち
※ネタバレしないように書いたつもりですが、あまり知りたくない方はご注意ください。
◆ジョン
ガーダの夫で医者。モラハラ夫のような振る舞い。
◆ガーダ
ジョンの妻。頭の回転が悪く不器用。夕食の肉を温め直すかどうかで悩んで泣いてしまう。
◆ヘンリエッタ
ガーダとは対象的で頭が良くて何でもできて、気が利く女性。芸術家。ジョンと不倫中。
◆ヴェロニカ
エゴイストで全て自分の思い通りにしないと気がすまない女優。ジョンと昔付き合っていた。
◆ルーシー
アンテカル卿の妻。ホロー荘の主。たまに頭がおかしい発言をする不思議ちゃん。
◆ミッジ
上流階級の母親を持つが、父親が貧乏だったため生きるために必死に働く女性。
◆エドワード
上流階級なので何でミッジが必死に働くのか理解できないおぼっちゃまくん。ルーシーのいとこ。
◆デイヴィッド
アンテカル家の人間関係が不愉快で話しかけられるのも苦手。ルーシーの親戚。
★10 -
Posted by ブクログ
【ノンシリーズ】
ポアロが出ない「ノンシリーズ長編」
男を虜にする美女のローズマリー。
姉ほどは容姿に恵まれてない妹のアイリス。
その他の登場人物も全員魅力的なので、物語に入り込んで感情移入してしまう。
登場人物が少ないのもあるけど、登場人物表を見なくても初めて覚えられた。私でも覚えられるくらい人間ドラマが濃い。
ストーリー展開が上手いので続きが気になって朝方まで読んでしまった。次の日キツイのでダメなやつ…(+_+)反省
それぞれの回想パートで心情が語られる。
表面上ではわからなかったけど、回想パートを読むとそれぞれに秘密を抱えていて、全員に動機があることがわかる。
めちゃくちゃ好きなタイプで面白い!
もう何度もやられてるのに今回もまたクリスティーに騙されてしまった。ミスリードが自然で超絶上手いので毎回騙されてしまう。
毎回騙されて馬鹿だなぁと思うでしょうが、クリスティーは毎回パターンを変えてくる!
「あぁ、これは○○の作品みたいにこの人でしょ!」と余裕ぶっていると、解決編でクリスティーに「あなたもまだまだね…」と言われている感じで、また次の作品を読みたくなる。
毎回違う手法のミスリードで騙されるのが、嬉しいし楽しい。
この作品のようにポアロが出てこない「ノンシリーズ長編」は、自分の評価でほぼ★5を付けていることに気が付いた。
今まで読んだノンシリーズ長編と自分の評価
『そして誰もいなくなった』★5
『春にして君を離れ』★5
『終わりなき夜に生まれつく』★5
『ゼロ時間へ』★4.5
『忘れられぬ死』★5
ポアロが1人ずつ尋問する部分が、ノンシリーズでは登場人物の心理描写のページに使われているせいなのか、ポアロより人間ドラマが濃い。
推理ものが好きな人は「ポアロシリーズ」。
人間ドラマが好きな人は「ノンシリーズ」の方が好きなんじゃないかと思う。
でも★10を付けた大好きな作品は全てポアロシリーズなので、どちらも甲乙つけがたい。
(*´∀`*)今日は早く寝よう…。
◆あらすじ
1年前に自殺した美しいローズマリー。
その場にいた6人の男女全員に動機があった…
※解説本にも書いてあるけど、本の裏カバーのあらすじを見ないで読むのがおすすめです。
先に見るとこの本の面白さが半減します。
プロなのにそこ書いちゃうんだ…という感じ。
クリスティーが気の毒。 -
Posted by ブクログ
今作は僕がまだ読んでいなかったクリスティ作品の一つ。改めてクリスティの独創的なアイデアに衝撃を受ける事になった。
過去作の感想でも述べているが、クリスティ作品の魅力の一つは序盤の構成力であり、その作品から目が離せなくなる様な仕掛けがとにかく秀逸だ。面白い作品の殆どは序盤から面白いし、スタートがつまらなければ最後まで読み終える事はストレスになってしまう。
今作では、主要な登場人物それぞれが過去に起きた美しいローズマリーの死を回想し、それぞれの目線で彼女との関係ややりとりを明かしていく手法をとる。この時点でローズマリーの自殺とされた「死」が疑惑の残るものだと読者に浸透させ、彼女の夫のジョージや妹のアイリスの回想や焦燥を経て新しい事件への一連へと繋がって行く。
登場人物それぞれがローズマリーを思い出し回想しながらオムニバスの様に進行して行くストーリーは見事に尽きると思うし、更にはそれぞれの目線から事件ご語られる事により全員に感情移入してしまい、誰が犯人であればこの作品は綺麗に締められるのかと終盤まで気持ちが高揚してしまった(笑)。実は序盤からある程度の予測はしており、クリスティが好む犯人像とエンディングがある為、ある程度犯人の目星をつける事はできる。しかし、当然フーダニットの魅力は損なわれていないし、衝撃感もありながら楽しむ事が出来た。
トリックについてはある程度納得できるものでありながらも、映像がない中で単純にそうなるかなぁという部分もあるが、駐車場で自車と同じ車を間違えてしまう事がよくある僕にとっては、この様なトリックに騙されるだろうなぁと納得してしまった。
少し勿体ないのは、探偵役が唐突に現れる部分で、それぞれの登場人物達をもったいぶった挙句、とある人物が探偵としての役割を受け持ち始めた瞬間は流石に笑ってしまった(探偵役はある程度明かしていても良かったと思う)あくまでレイスはレイスであり、彼が探偵役では無い事は彼が登場する他シリーズからも読み取れる。最後、真相が明らかになった後、ハッピーエンドの側面と、バッドエンドの側面が上手に構成されていた為、個人的にとても満足感のある作品だ。
特にルシーラとルースの役割が見事だと思う。クリスティは年老いた女性、働く有能な女性の描写が上手く、この二人には特別思いやりをもってしまう。その他、政治家のファラデー夫妻、ルシーラの息子であり問題児のヴィクター、バトルを彷彿とさせる主任警部のケンプ、そして登場人物一覧に名前が挙げられない人々もそれぞれ魅力があり、何故存在しているかの役割が見事に果たされている。 -
Posted by ブクログ
ホロー荘の殺人
この作品のトリックは中々に特殊で。冷静に考えれば余り見た事がない。犯人が同様のパターンは知っているが、犯人を設けた上で進行していくポアロ達の一連のやり取りは、無駄を一切省いた整理された推理小説であり、様々な意見はあるがとても真っ直ぐなサスペンスミステリーだ。
クリスティ作品の中でも屈指の「悲劇」であり、ヘンリエッタを中心として物語がどんどん進化していく。クリスティ得意の恋愛がふんだんに盛り込まれ、ミステリー、サスペンス、ロマンスのバランスもよく、更には読み進める障壁がない為スラスラとページを捲る事ができる。一つのドラマとして完成度が高く印象的な作品の為、一度読めば犯人や結末を忘れない強烈な小説だ。
(僕は今作は再読になるが、十数年前に読んだ記憶が残っており、物語の概要、犯人は頭の片隅にありながらそれでも読みたい、読もうと思った作品だ)
印象深い要因の一つ目として登場人物の描写が作品の中でも際立っており、先に述べたヘンリエッタを始め、アンカテル一族それぞれの個性や執事を含めた一族に従事する人達。クリストウ一家の存在感(子供達の印象も強い)アンカテル家の人々と交友のあるミッジ。近隣の別荘に暮らす女優のヴェロニカ。全員が間違いなく作中の役割を受け持ち効果的に生きており、悲劇的な作用を形成する。
印象深い要因の二つ目としてはポアロの役割であり、かれの立ち回りや真相にたどり着いた後の対応が、僕がこの作品を「悲劇」と位置付ける理由の一つで、想像にはなるが、数年後のストーリーを思い浮かべる事もできるし、「とある人物」がどの様な想いでこの真相を受け入れるのかを考えるとやるせない気持ちになる。クリスティは比較的事件解決後は登場人物達を前向きに描く事が多いが、今回はかなり厳しい結末を用意している。
ヘンリエッタについてもポアロが感嘆するほどのの人物であり、最後の彼女の行動は正しくイメージのままだ。現代作品で同じテーマの作品があれば、彼女の様な役割をもつ人物は設定しない(こういう感覚にならない)だろうと思う。人間の愛情や信頼は難しいが、作中ではとある人物への慈愛に満ちて生き生きしており、ミステリーとしての王道的なものよりも人間模様に特化したミステリーとした方が面白く読めるだろう。
今作も僕のおすすめだ。少し違ったクリスティの作風を感じる事ができるはずだ。 -
Posted by ブクログ
アガサ・クリスティーの才能が迸る物語。
小説家のミセス・オリヴァは、とあることから過去の事件について、関わった人たちから当時の話を集めて真相を解明しようとするも手に負えず、友人のエルキュール・ポアロに助けを求める。
『象は忘れない』のタイトルは、「象は過去のことを忘れないで、いつまでも覚えている」という逸話をもとに、オリヴァが話を聞きに行く相手のことを「象」と呼びだしたことからきている。
私には、もう一つの逸話「盲人と象」のように触った感触だけで「象」という生き物を語る人たちの情報を、ポアロが丁寧に全体像に置き換えていく状態も指しているように思えた。
ラストシーン、ミセス・オリヴァの締めくくりの言葉……「象は忘れない、でも、ありがたいことに人間は忘れることができるんです」
悲しくとも未来に向かって前向きな結末が、心地よい。 -
Posted by ブクログ
とある婦人の奇妙な質問から幕を開く本作、作中で描かれる殺人はその質問対象となる1件だけというのに退屈させないのは著者の卓越した構成能力故だろうね
昔に仲睦まじい夫婦が自殺した。果たして先に銃の引き金を引いたのは父か母かどちらだったのか
そんな取り留めのない疑問が多くの興味を掻き立て、過去への探求を始めさせるのだから面白い
十年以上前に終わってしまった事件。センセーショナルであっても迷宮入りではないから現代でもその事件を探り続ける者は居ない
ならヒントを探る聞き込みは出来ないかと思いきや、意外や意外に覚えている者が居る。勿論、断片的だったり間違っていたり思い込みが多分を締めていたりと事実全てを覚えている者は居ないのだけど、それぞれがそれぞれの尺度で何かしらを覚えている
そういった好奇心が凝り固まった噂を集める事で過去へ迫っていくわけだ
思えば探偵役となるオリヴァやポアロだって捜査を始めた理由は好奇心に似た感情
でも、事件の影を引きずる若いカップルが前面に出てくるに従って、二人の行動理由も変わってくる
だからこそ、次第に見えてくる事件の光明はその新しい行動理由にリンクしているし、最終的に到達する事件の真相もその類である事に納得できる
そうして積み上げられた諸々が美しく描かれるクライマックスで真相が明かされた際には思わずうるっと来てしまったよ……