中村能三のレビュー一覧
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「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『象は忘れない(原題:Elephants Can Remember)』を読みました。
『鳩のなかの猫』に続き「アガサ・クリスティ」作品です。
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推理作家「ミセス・オリヴァ」が名づけ親になった「シリヤ」の結婚のことで、彼女は先方の母親から奇妙な謎を押しつけられた。
十数年前の「シリヤ」の両親の心中事件では、男が先に女を撃ったのか、あるいはその逆だったのか?
「オリヴァ」から相談を受けた「ポアロ」は“象のように”記憶力のよい人々を訪れて、過去の真相を探る。
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ミステリと思う勿れ笑
季節に応じた作品に触れようの回。(今夏は横溝正史の『獄門島』)
オリエント急行もポワロ・シリーズも未だ手付かずなのに、いきなりソフトな面からお邪魔する。あとがきにも書いてあるけど心理描写が巧み。「何?どうなる⁉︎」とビクビクじゃなくてワクワクした気持ちで各話の続きが気になっていた。
彼女が料理したクリスマス・ストーリーズはどれも不思議な構成だった。短編集ではあるけれど「信仰」をキーワードに各話が一本の糸で繋がっている。(自分にとって短編は変わらずとっつきにくいものだけど、そう考えたら個々の話として楽しめた) 彼女の代表作もこのスタイルで展開していくのかな。『クリスマス -
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ネタバレちょい役が黒幕(この悲劇は誰の責任かと言うとこの黒幕の母親=愚鈍なのに割とちゃっかりしていて息子を甘やかし放題で極悪人にした被害者の伯母に負う所大だと思う)で、従犯者の叙述はアクロイド殺しと違ってアンフェアでは…また如才なく世の中をよく知っている女性が、いくら魅力を感じたにしても初めて会った悪人の話にころっと乗るのは現実味がない気がする。
ただし一人ひとりの登場人物の書き込みが丁寧にされていて読み応えがあり面白かった。ファラデー夫妻の顛末は結局筋と関係なかったけれど結構感動した。でも途中でアレクサンドラが「あの時それを知っていれば、今はもう手遅れ」と言っていたのは、小説の半ばごろでいきなり犯行 -
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あぁまた一気してしまった。ウィリアムアイリッシュはサスペンス小説の巨匠なのだが、私は最も好きな恋愛小説家は誰かと問われればアイリッシュと答える。彼の描く男女はいつも甘く切ない青春ど真ん中なのだ。そういう面で一番は暁の死線。幻の女も言うまでもない。殺人現場というドキドキのシチュエーション、揺れる心理、言えない秘密、逃げるふたり、それらは恋愛を引き起こすきっかけでしかない。まだ読んでなかった『死者との結婚』を読む。ニューヨーク行きの列車に一人乗った身重の貧しいヘレンは博打打ちの夫に捨てられ今後の不安に打ちひしがれていた。彼女にヒューとパトリスという婚約中の裕福なカップルが優しく声をかけてくれる。し
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ミステリーというとトリックや犯人探しのための本と思いがちだが、これは文学だったのだとわからせてくれる本。
冒頭の、ハロウィンパーティーの準備中の良くも悪くもぼんやりとした、穏やかではあるがつまらなくもある時間をそのまま描いている描写はアガサクリスティーの文才が如実に現れていた。
また、ポアロの友人である探偵小説家のオリヴァのキャラクターが愉快なのはもちろん、オリヴァの友人の娘であるミランダが非常に愛らしく、それだけに終盤の展開には焦燥感があって充実していた。
文学であり、小説であって、トリックや犯人にも気を配られた素敵なミステリー小説だ。 -
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結論だけ書くと「やっぱりクリスティーは巧かった」これに尽きると思います。
解説によるとクリスティー晩年の作品ということで、確かに派手なトリックや展開もなく、ポアロがひたすらに関係者の証言を集めていく、という地味な展開が続きます。
ただ地味な証言集めが続く一方で、幻想的というか、ポアロが美しい庭園に足を踏み入れる場面があり、そこがなかなか面白かった。その庭で出会う女の子は、キャラが濃くてこの作品でしか見られないのが、もったいないくらいです。
さて、なぜ自分がこの作品で巧さを感じたかというと、遺言状をめぐる展開もそうなのですが、犯人の動機の描き方が、なによりも巧い!
動機としてはか