中上健次のレビュー一覧
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重くて濃い。色々な反復に飲み込まれていく気分。フォークナーが引き合いに出されることが多いようだが、少し前に読んだフォークナーの『八月の光』と照らしてみても、確かに読後感が似ている。Posted by ブクログ
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素晴らしいの一言。
『地の果て 至上の時』で完結したかに思われた“路地”が、なんと移動を始めた。
移動に使う冷凍トレーラーの比喩となる表題も見事。
神的なもの(静)と迸る性(動)の混合、外から映る“路地”の異様さと、中上の当時表現したかったものやアドバンスが強く感じられた。Posted by ブクログ -
全編通しバキバキに覚醒しており、水分が無くなるまで煮詰めた煮物の様な文体で脂の乗りまくった中上作品。本作以降に現れ始める“神話性”の様なものが、以降作品に強い魅力を加えていると思う。
他作含め読み手を非常に選ぶのは間違い無い。Posted by ブクログ -
有名な紀州熊野サーガの世界観を中心にして、本作を読む際の登場人物関係図など、かなりの豊富な情報と合わせての作品収録がなされており、読者にとって親切設計だといえます。作品を読むに、中上先生は細やかなところまで描く性格がありそうです。
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日の光、土、夏芙蓉の香りと一体になって働いても浄化できない血の穢れ。再読して中上作品のなかでも随一といってよい透明感を感じた。肉体が、魂が、労働を通して純化されていくんだけど、底の底に沈殿していく。Posted by ブクログ -
表題作、十九歳の地図について。
素晴らしい読書体験だった。
ここには、青春のただ中にいる一人の青年の、本当のことしか書かれていない。
そう感じさせるのは、中上健次が、借り物の言葉ではなく自分の言葉で語っているからだろう。
僕は、今日が19歳最後の夜。
自分の、やりきれない十代の形にならない想いは、ち...続きを読むPosted by ブクログ