中上健次のレビュー一覧

  • 作家と酒

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    酒という媒介によって、執筆者に対する誼の深さを問わず、ある種の古き良き時代を醸し出す文化の中で各人が実態的に肉付けされていく行程は、人類史を通じて連れ添ってきた存在の重みを改めて見せつけるものとなっている。

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    2023年03月27日
  • 岬

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    どうしようもなく暗い。救いがない。系譜としては長塚節の『土』の系列。ただ、地主から見ていない確かな土着性と現代性がある。本来『暗夜行路』の主人公だって、こういうふうにねじれてもおかしくないはずである。
    生き変はり死にかはりして打つ田かな 村上鬼城 という俳句を思い出す。 「岬から山にあがったこの墓地に葬られている人々は、昔から、水は、雨水を飲み、海がすぐ目と鼻の先にあるのに船を着ける湾がなく、漁もできずに、暮らした。山腹を開いて畑を打ってくらしたのだ。」という文章が示すものはそれだ。
    角川春樹と中上健次との対談で、角川春樹は熊野が褻の土地である、すなわち再生を孕むのだと指摘する。この峡暮らしに

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    2022年12月26日
  • 岬

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     とても複雑な血縁関係。どれも中上さん自身をモデルにされているらしく、母親が複数回結婚している人で、母親と初めの夫との間に出来た姉、兄、母親の今の夫の連れ子であった血の繋がらない兄がいる。そして主人公自身は母親と“あの男”と呼ばれている悪名高い男との間の子で、主人公には腹違いの同い年の異母妹が二人いる。母親は主人公がお腹にいる時にそのことを知り、その男とは別れ、しばらくひとりで行商をして四人の子供を育てたが、男手一人で男の子を育てていた今の夫と出会い、まだ小さかった主人公だけを連れて再婚した(四話ともどれも同じような血縁関係なのですが、「岬」に焦点を当てて書きます)。
     この親族関係がドロドロ

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    2022年10月22日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    最初に手をつけた中上健次作品が、千年の愉楽という特殊な読み始め方をしてしまったので、こうして彼の原点に変えると最後まで貫かれ続けた何かが感得される。
    それは傷だらけのマリア様→オリュウノオバというイメージの変遷でもあるのだが、現実の虚構は徹底的に暴かれ、死も生もすべて無効化するこの作品群は、しかし確実に救済の文学なのである。
    それだけは、記録に残しておこうと思った。

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    2022年04月18日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    中上健次と一緒に歩き、立ち止まり、考える
    差別という物の怪を
    この国の闇の構造を
    この本はそのための手がかり

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    2021年10月26日
  • 岬

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    二度目にして目を洗われた。

    これだけ複雑な血縁関係を背景にして、よく筋の通った物語を書いたもんや。

    二つの頂点で高く釣り上げた分、物語の幅が出ていて、それを複雑に入り組んだ登場人物で固め、それが力強いうねりとなってる。

    方言によって土地に吹く風を与え、それになびかない人間関係を描くことによって、逆にその土地に根付いた地場の力を表現しているんやと。

    テーマがあまりに近く感じるのは、偶然なのか著者の力量なのかわからんけど思わず自分の血縁を振り返ってしまう。

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    2021年06月26日
  • 千年の愉楽

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    血と土地と宿命と
    彼らはそれに縛られているのか?
    はたまた誰よりも自由なのか?
    縛られているとしたらそれは果たして本当に血なのか?
    刹那的に生きることでしか彼らは生きられなかったのではないのか?

    オリュウノオバの語りで三次元という小説の一般的な枠組みを超えて、物語は過去と現在と未来をつなぎ、路地から世界へと、全てが並列につながる。

    この作品の到達点こそ、日本文学の誇りであり、改めて中上健次という圧倒的な才能に震える。
    何よりこの作品には切実さがある。ここにある物語は語られねばならなかった物語たちなのである。

    出会えて良かったと心から思う作品だ

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    2021年03月16日
  • 岬

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    血生臭い表現であるのに、温度がない。
    薄暗い日本的(昔の)田舎を感じる。
    岬に限らず、血縁、地縁、一族的考察はどうにも暗いテーマである。

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    2021年02月14日
  • 岬

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    ネタバレ

    『推し、燃ゆ』で芥川賞を受賞した宇佐美りんさんが、受賞インタビューで好きな小説家を聞かれて、中上健次と答えていた。買って読んでいなかった『岬』が家にあったので、中上健次ってどんなもんだろうと軽い気持ちで読み始めた。中上健次を読むのは初めてだった。

    そしてあまりの男くささに驚いた。

    次々に変わる情景を的確に描写してゆくスタイルで、僕が読んできた小説家の中では一番テンポが早い。登場人物がどんどん増えていく。野暮ったい説明がなく、リズムがいい。そして内容が凄まじい。

    岬には4つの短編が収められているが、どの作品もどぎつい内容になっている。抗えない血筋に対しての嫌悪感が全開で、なんとも男くさい作

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    2021年01月31日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    表題作の『十九歳の地図』のみ読んだ。

    19歳という子供でもなく大人でもない不安定な時期の鬱屈を、主人公がアルバイトの新聞配達で担当しているエリアの住民に悪戯電話をして発散する。

    このようなテーマはありきたりに思えたが、「かさぶたのマリア」と近くに住む家族のギミックが面白い。予備校生として上手くいかず落ちていく主人公は、落ちた人達を嫌いながらも、その苦しさに否が応にも共感してしまう。中でも「かさぶたのマリア」の言葉がリフレインする場面ではそれが顕著だろう。

    また、近所に住む夫婦は喧嘩ばかりしているが、セリフとして描写されるのは妻のセリフのみである。そして、この妻のセリフが主人公を痛烈に批判

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    2020年08月05日
  • P+D BOOKS 鳳仙花

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    岬、枯木灘を呼んできて、鳳仙花を読む。
    フサの、矛盾するような女らしさや、葛藤が、生々しく伝わってくる。
    中上健次の本を読んでいるときは、瞳孔がいつもより大きくなっている気がする。数日間は余韻がある。

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    2020年05月09日
  • 新装新版 枯木灘

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    秋幸の仕事に対する気持ちと風景など、何度も何度も同じ描写が続き、それがまたこの物語に惹き込まれる要因になっている。
    読みやすいけど、ゆっくり味わいながら読むと、より楽しめる。
    田舎の親戚には、ユキみたいな人が必ずいる。

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    2020年05月02日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    中上健次氏の処女作「十九才の地図」を収録した短編集。

    「枯木灘」「千年の愉楽」と比べると迫力は劣るものの、のちの「紀州サーガ」に繋がる萌芽は感じさせる。「一番はじめの出来事」などは「岬」「枯木灘」「地の果て至上の時」三部作の源流が描かれる。「穢れた高貴な血」と称する路地に生きる者たちのサーガを描き、得体の知れぬ鬱積と暴力の絡み付きはありつつも、文体の未熟さは感じる。中上健次氏のほか著書を読んだあとに読むことをおすすめする。

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    2018年05月28日
  • 日輪の翼

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    盗んだ冷凍トレーラーで七人の老婆を載せ全国の霊場を巡るロードノベル。こう書くと何が何だかわからないが読んでも何が何だか何だか分からない。しかしほかの中上作品と同様言い知れぬ迫力と熱量は備わっている。

    根底にあるのは「路地」すなわち被差別部落の紀州に土着したサーガであるが、そこを流離し流浪し性と暴力を伴いながら根無し草のように振る舞う。オバたちの神仏に献身する姿と傍若無人な振る舞いの対比が印象的だ。世俗を超越した存在のようで姿かたちは極めて俗物的なオバらを、享楽を追い求めるツヨシと田中さんが導くさまが本作品の複雑性を織り成している。

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    2018年04月23日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    鬼らが跋扈する「鬼」州、霊気の満ちる「気」州、中上氏の原点である紀州を巡るルポタージュである。彼が問うたのは自身の源流と紀州サーガであり、それらを霧のように包む被差別と非差別を解き解し、剥き出しの本質を探り出そうとしている。作中の突然の屠殺願望などは、中上氏のなかに眠る「濁った高貴な血」の放出なのかもしれない。

    紀伊半島は紀伊山地を挟み近畿至近にありながら隔世感がある。私自身串本に観光へ行ったことがあるが勉強不足でその隣に「枯木灘」があることも知らなかった。その「路地」で育った(いわゆる部落)中上氏は、紀州の溜へ足繫く通い、血脈と被差別について推敲を重ねる。

    ルポタージュという形式でありな

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    2018年04月02日
  • 新装新版 枯木灘

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    勉強不足だったが、中上健次が「紀州サーガ」と呼ばれフォークナーやマルケスを源流とし世界文学の潮流として彼らに比肩する作家であることを初めて知った。文章から滲み出る鬼気は圧倒的だ。

    中上氏の言う「路地」とは被差別部落地区を指すが、作中には差別に関する事柄は一切なく、そこに土着する「穢れた高貴な血」への異常な執着の物語だ。秋幸が繰り返し繰り返し意識する実父「龍三」の血だが、根底にあるのは憎悪ではなく承認欲求とアイデンティティ認識のためなのかもしれない。個人的には「千年の愉楽」のほうが好きだが、端的にはなかなか言い表せないサーガを、小説という手法を使って書き上げた凄い作品だ。

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    2018年03月13日
  • 千年の愉楽

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    6篇の短編集。路地の若者達の人生を産婆の目を通して眺める視点。時代を超越し、時間の経過をかき乱す文体。読み進むうちに脳内に浮かぶビジュアルが印象的。売り飛ばさずに本棚に残す本。

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    2016年09月16日
  • 岬

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    子供の頃から、30年以上。
    本屋さんで見て知っていて。いつかは読もう、と思いながら。

    あんまり暗くて重そうで敬遠していた中上健次さん。記念すべき初の中上さんは、やはり読書会がきっかけでした。ありがたいです。

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    黄金比の朝
    火宅
    浄徳寺ツアー


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    の、四編が収録されています。

    1970年代前半に書かれた小説だ、という以外は、何の予備知識も無しで読みました。

    読書会に挙げてくれた人が「暗いですよ、暗いですよ、暗いですよ」と予め警告してくれていたんですが。
    読んでみると。

    暗い。

    重い。

    救いがない。

    強烈でした。小説としての、なんというか、ヘビー級な

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    2021年02月02日
  • 中上健次

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    学生時代に『岬』『枯木灘』『鳩どもの家』は読んだことがあった。が、それらは中上健次のほんの一部にすぎなかったということを思い知らされた。
    特に『鳳仙花』は名作。
    他の中上健次の作品も読まなければいけない気にさせられた。

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    2015年10月21日
  • 千年の愉楽

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    美しさ=早世である
    女をよろこばせる⇒天性
    描写がとても官能的である
    理性にではなく本能に訴えるような表現だ
    淡々と悦に達し死に向かっている

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    2015年09月12日