中上健次のレビュー一覧

  • 千年の愉楽

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    秋幸3部作よりも、鳳仙花や千年の愉楽のような女性視点で描かれる中上健次作品が好き。
    例えば、夕焼けがきっぱりと夜に包まれるまでの描写一つにしても、その美しさに衝撃で震える。谷崎潤一郎も真っ青。

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    2023年10月22日
  • 新装新版 枯木灘

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    肉体労働の描写、山や梢、風や光の美しさの表現がとどまるところを知らない。(温かい日を受けた葉が光を撒き散らすように等)内容としてはちょっと飽きるというか、またその話〜?みたいな感覚は否定できないのだけど、たまにくる繊細で顎にクリーンヒット!みたいな、思わず手が止まるような感覚の文章が出てくるから最後まで読んだ。

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    2023年10月11日
  • P+D BOOKS 鳳仙花

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    ネタバレ

    女の一生。
    あまりの緻密な描写に中上健次は実は女だったのでは?と疑うほど。2度読み返したが情景描写があまりにも美しくてうっとりする瞬間瞬間。

    最初は説明描写が多いなーと思っていたが、気がついたら言葉の海で泳いでいた。
    カルマの渦中で生きて行く生々しいフサの一生。
    矛盾と心細さと強さが、その時の空気のままの母の姿と重なるように描かれている。

    私は女なので、随所に出てくる男からの目線や性差を前にした時の無力、恐怖感、手籠にされることへの羞恥と恐れなんかがあまりにもリアルで、気味の悪さまでも感じるほど。
    三部作も読み進めていきたい。

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    2023年10月01日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    土や動物さらに排泄の臭いがまとわりつく生活空間に厭世観が漂う。若者、社会に抗う彼らの心情に時折共鳴するも隔絶も伴ってしまう。それは読者自身の俯瞰化なのか、登場人物への蔑みなのか、それとも言葉では明確化できない混沌した感情なのだと結論づけても物語は完結へと向かわない。筆者、中上健次は結末の道程を読者に投げつける。それは現在未来にどのような形で帰着するのか、それとも過去の悔恨に囚われるのか、放出される主題は “しこり” ではなく “余韻” として心に響く。

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    2023年09月25日
  • 奇蹟

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    中本の一統、高貴にして穢れた血の最終章とも言うべき一冊。
    主人公は若死にする運命の中、駆け抜けるように生きたタイチ。
    中上健次の作品に出てくる男性は、どんなに零落してもかっこいい。嫁より朋輩を大事にするなど、昭和的ではあるが、たしかに一昔前の男性はそういった強さを持つ人が多かったような気がする。今は多分、違う強さを持つ男性が多いのだろうけど。
    千年の愉楽、本作の中本の一統の物語、岬、枯木灘、地の果て至上の時といった熊野サーガの一群は、本当に面白い。

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    2023年08月22日
  • 岬

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    朝日新聞の和歌山文学紀行での紹介本である。読んでみて、岬へ家族でピクニックに行くことと甥っ子がクジラを見に行くということで和歌山ということがかろうじてわかる程度である。最後が性交で終わる。

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    2023年07月04日
  • 千年の愉楽

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    「路地」の高貴で穢れた血筋を持って生まれた男たちの美しくも儚く短い一生を、彼らを産婆として取り上げたオリュウノオバと呼ばれる女性の目を通して描いた短編集。
    運命づけられた一生を懸命に生き切ろうとする姿を神話的な要素を交えながら描いており、全編を通して生の力強さを感じさせる作品です。
    いい意味で脂ぎった物語を読みたい方は是非。

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    2023年04月15日
  • 岬

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    一つの段落で時間軸が過去と未来で変わったり、一人称のようで三人称だったり、それでも読者が混乱せずに読める文章が不思議で、とても面白い作家でした。
    よく南米文学と比較されるようですが、確かに肉感的で時間軸を自在に操る感じがガルシア・マルケスに似ている気がして、文章の存在感がグイグイ読ませます。
    押し寄せてくるヒューマン・ドラマ、といったら月並みかもしれませんが、正にそんな作風です。

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    2023年04月03日
  • 作家と酒

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    酒という媒介によって、執筆者に対する誼の深さを問わず、ある種の古き良き時代を醸し出す文化の中で各人が実態的に肉付けされていく行程は、人類史を通じて連れ添ってきた存在の重みを改めて見せつけるものとなっている。

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    2023年03月27日
  • 岬

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    どうしようもなく暗い。救いがない。系譜としては長塚節の『土』の系列。ただ、地主から見ていない確かな土着性と現代性がある。本来『暗夜行路』の主人公だって、こういうふうにねじれてもおかしくないはずである。
    生き変はり死にかはりして打つ田かな 村上鬼城 という俳句を思い出す。 「岬から山にあがったこの墓地に葬られている人々は、昔から、水は、雨水を飲み、海がすぐ目と鼻の先にあるのに船を着ける湾がなく、漁もできずに、暮らした。山腹を開いて畑を打ってくらしたのだ。」という文章が示すものはそれだ。
    角川春樹と中上健次との対談で、角川春樹は熊野が褻の土地である、すなわち再生を孕むのだと指摘する。この峡暮らしに

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    2022年12月26日
  • 岬

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     とても複雑な血縁関係。どれも中上さん自身をモデルにされているらしく、母親が複数回結婚している人で、母親と初めの夫との間に出来た姉、兄、母親の今の夫の連れ子であった血の繋がらない兄がいる。そして主人公自身は母親と“あの男”と呼ばれている悪名高い男との間の子で、主人公には腹違いの同い年の異母妹が二人いる。母親は主人公がお腹にいる時にそのことを知り、その男とは別れ、しばらくひとりで行商をして四人の子供を育てたが、男手一人で男の子を育てていた今の夫と出会い、まだ小さかった主人公だけを連れて再婚した(四話ともどれも同じような血縁関係なのですが、「岬」に焦点を当てて書きます)。
     この親族関係がドロドロ

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    2022年10月22日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    最初に手をつけた中上健次作品が、千年の愉楽という特殊な読み始め方をしてしまったので、こうして彼の原点に変えると最後まで貫かれ続けた何かが感得される。
    それは傷だらけのマリア様→オリュウノオバというイメージの変遷でもあるのだが、現実の虚構は徹底的に暴かれ、死も生もすべて無効化するこの作品群は、しかし確実に救済の文学なのである。
    それだけは、記録に残しておこうと思った。

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    2022年04月18日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    中上健次と一緒に歩き、立ち止まり、考える
    差別という物の怪を
    この国の闇の構造を
    この本はそのための手がかり

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    2021年10月26日
  • 岬

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    二度目にして目を洗われた。

    これだけ複雑な血縁関係を背景にして、よく筋の通った物語を書いたもんや。

    二つの頂点で高く釣り上げた分、物語の幅が出ていて、それを複雑に入り組んだ登場人物で固め、それが力強いうねりとなってる。

    方言によって土地に吹く風を与え、それになびかない人間関係を描くことによって、逆にその土地に根付いた地場の力を表現しているんやと。

    テーマがあまりに近く感じるのは、偶然なのか著者の力量なのかわからんけど思わず自分の血縁を振り返ってしまう。

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    2021年06月26日
  • 千年の愉楽

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    血と土地と宿命と
    彼らはそれに縛られているのか?
    はたまた誰よりも自由なのか?
    縛られているとしたらそれは果たして本当に血なのか?
    刹那的に生きることでしか彼らは生きられなかったのではないのか?

    オリュウノオバの語りで三次元という小説の一般的な枠組みを超えて、物語は過去と現在と未来をつなぎ、路地から世界へと、全てが並列につながる。

    この作品の到達点こそ、日本文学の誇りであり、改めて中上健次という圧倒的な才能に震える。
    何よりこの作品には切実さがある。ここにある物語は語られねばならなかった物語たちなのである。

    出会えて良かったと心から思う作品だ

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    2021年03月16日
  • 岬

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    血生臭い表現であるのに、温度がない。
    薄暗い日本的(昔の)田舎を感じる。
    岬に限らず、血縁、地縁、一族的考察はどうにも暗いテーマである。

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    2021年02月14日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    表題作の『十九歳の地図』のみ読んだ。

    19歳という子供でもなく大人でもない不安定な時期の鬱屈を、主人公がアルバイトの新聞配達で担当しているエリアの住民に悪戯電話をして発散する。

    このようなテーマはありきたりに思えたが、「かさぶたのマリア」と近くに住む家族のギミックが面白い。予備校生として上手くいかず落ちていく主人公は、落ちた人達を嫌いながらも、その苦しさに否が応にも共感してしまう。中でも「かさぶたのマリア」の言葉がリフレインする場面ではそれが顕著だろう。

    また、近所に住む夫婦は喧嘩ばかりしているが、セリフとして描写されるのは妻のセリフのみである。そして、この妻のセリフが主人公を痛烈に批判

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    2020年08月05日
  • P+D BOOKS 鳳仙花

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    岬、枯木灘を呼んできて、鳳仙花を読む。
    フサの、矛盾するような女らしさや、葛藤が、生々しく伝わってくる。
    中上健次の本を読んでいるときは、瞳孔がいつもより大きくなっている気がする。数日間は余韻がある。

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    2020年05月09日
  • 新装新版 枯木灘

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    秋幸の仕事に対する気持ちと風景など、何度も何度も同じ描写が続き、それがまたこの物語に惹き込まれる要因になっている。
    読みやすいけど、ゆっくり味わいながら読むと、より楽しめる。
    田舎の親戚には、ユキみたいな人が必ずいる。

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    2020年05月02日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    中上健次氏の処女作「十九才の地図」を収録した短編集。

    「枯木灘」「千年の愉楽」と比べると迫力は劣るものの、のちの「紀州サーガ」に繋がる萌芽は感じさせる。「一番はじめの出来事」などは「岬」「枯木灘」「地の果て至上の時」三部作の源流が描かれる。「穢れた高貴な血」と称する路地に生きる者たちのサーガを描き、得体の知れぬ鬱積と暴力の絡み付きはありつつも、文体の未熟さは感じる。中上健次氏のほか著書を読んだあとに読むことをおすすめする。

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    2018年05月28日