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紀州・熊野の貧しい路地に、兄や姉とは父が異なる私生児として生まれた土方の秋幸。悪行の噂絶えぬ父・龍造への憎悪とも憧憬ともつかぬ激情が、閉ざされた土地の血の呪縛の中で煮えたぎる。愛と痛みが暴力的に交錯し、圧倒的感動をもたらす戦慄のサーガ。戦後文学史における最重要長編「枯木灘」に、番外編「覇王の七日」を併録。
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Posted by ブクログ
重くて濃い。色々な反復に飲み込まれていく気分。フォークナーが引き合いに出されることが多いようだが、少し前に読んだフォークナーの『八月の光』と照らしてみても、確かに読後感が似ている。
「推し燃ゆ」の宇佐見りんの推しに中上健次が挙げられているのを知って手にした本書。 今ではコンプライアンスやらハラスメントやらで抑制された人間の根源的な衝動や欲望がむき出しにされている。日常的には道義的に許せないことが、この作品では、なぜここまで心揺さぶられるのか? 自分の中にもきっとそんな衝動や欲...続きを読む望が潜んでいて、この作品の持つ文学性によって呼び覚まされ、熱い生命力がみなぎってくるからだろう。 ひどい話ばかり繰り返されるのだが、なぜかこの一家の血のつながりが愛おしく感じるのだ
先日、神保町に立ち寄った時に三省堂で見かけ、10代の時に挫折したことを思い出して再読笑 ドストエフスキーの影響を感じさせるとともに、作者自身の経験からくる部落(作内では路地と表現)の小さな町での物凄く複雑な人間関係とそれによって起こる事件や悲劇を大変だけれど美しい土木作業や自然と対比して丁寧に描か...続きを読むれている。 しかし平坦な日常を送るには人間関係が過酷過ぎた… もし中上健次が存命だったらノーベル賞を取っていたかもしれないなと思わされるくらいの力強くも繊細な文体に魅了された。
日の光、土、夏芙蓉の香りと一体になって働いても浄化できない血の穢れ。再読して中上作品のなかでも随一といってよい透明感を感じた。肉体が、魂が、労働を通して純化されていくんだけど、底の底に沈殿していく。
肉体労働の描写、山や梢、風や光の美しさの表現がとどまるところを知らない。(温かい日を受けた葉が光を撒き散らすように等)内容としてはちょっと飽きるというか、またその話〜?みたいな感覚は否定できないのだけど、たまにくる繊細で顎にクリーンヒット!みたいな、思わず手が止まるような感覚の文章が出てくるから最後...続きを読むまで読んだ。
秋幸の仕事に対する気持ちと風景など、何度も何度も同じ描写が続き、それがまたこの物語に惹き込まれる要因になっている。 読みやすいけど、ゆっくり味わいながら読むと、より楽しめる。 田舎の親戚には、ユキみたいな人が必ずいる。
勉強不足だったが、中上健次が「紀州サーガ」と呼ばれフォークナーやマルケスを源流とし世界文学の潮流として彼らに比肩する作家であることを初めて知った。文章から滲み出る鬼気は圧倒的だ。 中上氏の言う「路地」とは被差別部落地区を指すが、作中には差別に関する事柄は一切なく、そこに土着する「穢れた高貴な血」へ...続きを読むの異常な執着の物語だ。秋幸が繰り返し繰り返し意識する実父「龍三」の血だが、根底にあるのは憎悪ではなく承認欲求とアイデンティティ認識のためなのかもしれない。個人的には「千年の愉楽」のほうが好きだが、端的にはなかなか言い表せないサーガを、小説という手法を使って書き上げた凄い作品だ。
連載モノだから繰り返しが多い。 父親の血に苦しめられる息子の話。 淡々とした文章で、死ぬほどややこしい血縁関係が語られる。聖書? 人から後ろ指をさされ、罪をつくる元凶となった父を憎んでいても、やっぱり親子の交わりを諦めきれない秋幸のもどかしさを感じた。 続編の『地の果て 至上の時』も読みたい。
同じ内容が繰り返される内容だったが、最後は引き込まれていった。自分の人生を振り返る良いきっかけとなった。このような名作を読みながら、考える。自分に置き換える。そういった作業が成長のキッカケになりうると思った。長い、小説であったが一度時間を開けてもい一度読んでみようかと思う小説であった。
熊野古道を歩いたのを気に色々と土地のことを知りたくなり読みましたが、フォークナーの換骨奪胎と思いきや、読後の後味は全然違いました。 誇大妄想に虚言癖、ペドフェリア、近親相姦、など現代でも普通いる人たち。文学ではおなじみのテーマ。そして山と海に挟まれた土地で血縁に囲まれ、路地では常に視線を感じる主人...続きを読む公。外がないので当然煮詰まっていきます。 唯一の外部として白痴の女の子を描いているのかな?だから最後のシーンで外からの視点でこの物語を笑っている、と解釈しました。
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