中上健次のレビュー一覧

  • 岬

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    まさに紀南の夫の実家に帰省中、大勢の親戚たちに囲まれたり話を聞いたり、辿れば遠い親戚だったりする彼の地元の友達と会ったりしているときにこの小説を読んだ。
    買ったのも夫の地元の鄙びた書店。
    血縁のつながりの強い紀南の家族の在り方をちょうどリアルタイムで感じながら読んだので、物語の雰囲気はよく掴めたし登場人物が多くても没入しやすかった。
    登場人物の方言も、夫のおばあちゃんのしゃべり方で脳内再生された。

    ただ、中上健次は紀南の最下層を描いているので(男はもれなく土方で女はもれなく女郎、みたいな世界観)、「紀南は確かに田舎だが、いくらなんでもそこまでひどくはなくないかこの土地は?」とは思ってしまった。
    『岬』以外に4作品入っているが、どれも登場人物が少し被っていたりして緩やかにつながっている。

    全編に共通して言えることは、暗いのとミソジニーがすごい。
    女はヤリまくる馬鹿だと思っているのだろうな…という描写ばかり。おそらく母親への屈折した感情から来ると思われるが、当然ながら読んでいて気分の良いものではない。
    DVシーンも複数あり、それは複雑な家庭環境、血の濃さ、生きづらさゆえなのだろうけど好きにはなれない。

    中上健次は生涯この生きづらさを克服できなかったのかが気になる。

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    2023年08月14日
  • 讃歌

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    『日輪の翼』から一応話が続いているが、切り離して考えた方が良い本作。爆発的な性の奔流が全篇渡って迸る。コンセプチュアルが故、中上の悪いエゴが出過ぎている気が。。
    感覚的に描きたい事は分かるが、読ませる気はいつも以上に無い。

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    2023年04月15日
  • 岬

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    こんな気持ちの良い天気の時に読まないと落ち込んでしまいそうな、一族のしがらみに生気を絡め取られる話。しかし,地方でなくても多くの人は本当は避けて通れないことだと思う。
    人間関係が分かりにくく、何度か戻って読み直すことを繰り返してしまった…

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    2023年04月10日
  • 岬

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    真の意味での身寄りがあるようでない、
    そこにいるようでいない、
    ただ梢を揺らす木のようにして佇む若人の運命は非情でグロテスクだった
    また彼の搾り出したかのような復讐は結局は空虚なものにすぎなかった

    全体を通して「む、難しい、、、」と感じっぱなしだった
    はっきり言えば『岬』に関しては、自分の中での感情移入および心の揺れは大して感じられなかった
    もちろん大枠としての彼の「地理的にも血縁的にも閉ざされ縛られることへのどうしようもない憂鬱」のようなものは感じられるが、今の私には秋幸の心の機微は完璧には解読し難い
    偏に想像力不足、偏に感受性不足なだけかもしれない、だとしたら本当に憂鬱だ

    そもそもの文章構成も難解で、定型を破壊しているとも言えるが、単に読みづらいと感じる人も少なくないだろう
    加えて、
    「『卓袱台』という漢字が読み書きできるようになったことがこの本を読んで最もよかったと思える点である」、そう言いたくなるほど本文に登場する漢字でも躓いてしまった
    おそらく私の漢字弱者っぷりも影響しているだろうが、それでも現代の漢字使いとは大きく異なる文章に翻弄されることも多々ありその都度調べてなんとか読み進めなければならなかった

    ここからは短編ごとの感想を述べる
    『黄金比の朝』
    この短編を読み終えて初めてこの文庫本が短編集なことに気づいた(遅すぎる)
    「女」は大義を掲げる兄から下らない人間の一面を引き出す要素なのではないか
    やがて「ぼく」は自分も兄や社会と変わらない中途半端な存在であると理解し歓喜する

    『火宅』
    燃え盛る家屋のように男の運命は尽きる
    あまりに複雑な人間模様に圧倒される
    そして「彼」も同じく血と運命には抗えず、、、
    兄だけが良い人

    『浄徳時ツアー』
    老若幼の要素がそれぞれある、私自身は若者の分類に入るからなのか、老人の方々の溌剌さに羞かしささせ感じ度々憤った
    終盤にかけての畳み掛けがすごい
    人生で何度も読み、振り返りたくなる作品だろう

    『岬』
    秋幸は「解放」されたのか?おそらく違うだろう、彼が異母妹と姦ることで彼は救済されるどころか憎っくき「あの男」と完全に同化してしまった
    救済の術を知らないあたりも田舎ならでは、、、

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    2023年01月16日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    作者の魂の故郷とも言える和歌山のルポタージュ。
    ぐるぐると縁の深い土地を回りながら、土着の逸話やそこに住む人々の話を、10p弱で区切った短編集形式。にも関わらず内容は重く、非常に読み進め難い。
    作者の思い入れが強すぎて、あまり楽しんで読めなかった印象。ただ、故郷を通して彼の伝えたい事・想っている事は感覚で入ってきた。他作をスムーズに読むには必読書なのかもしれない。

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    2022年10月12日
  • 岬

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    欲望と性、暴力、呪われた血縁。どうしようもない話。

    人間というものを正直に描こうとするならば、他にどんな方法があるっていうんだ?とでも言いたげな、ある意味での真摯さと、だからこその閉塞感。

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    2022年07月21日
  • 岬

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    ネタバレ

    「岬」路地三部作の一作目。自殺した兄と同じ二十四になった秋幸の、なにかが狂い始める。誰が悪いのか。俺を産んだ犬畜生だ。だからぶっ壊してやる。俺の血に関わるすべてを壊すために、あの男の娘を、この俺の実の妹を凌辱してやる。
    「火宅」私小説的な、路地シリーズにつながる短編。“男”とつるんでいた兄の眼を通して、かつての男の行いを追憶する。その暴力性を現在の俺も受け継いでいる。その男が死にかけているらしい。どこの馬の骨とも知れない男。俺の父。俺のほんとうの父。あの男は、俺にとっていったいなんだったのだろう。

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    2022年06月02日
  • 千年の愉楽

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    リービで解説というか分析されていたので読んだ。中上らしい性と暴力の小説である。オリュウノオバという産婆が自分が取り上げた赤子が若くして殺されることを、その子どもごとにいくつかの話にしたものである。
     全集5の中で読んだ。これがリービがいうほど素晴らしい小説かどうかがわからない。

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    2022年05月27日
  • 新装新版 枯木灘

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    連載モノだから繰り返しが多い。
    父親の血に苦しめられる息子の話。
    淡々とした文章で、死ぬほどややこしい血縁関係が語られる。聖書?
    人から後ろ指をさされ、罪をつくる元凶となった父を憎んでいても、やっぱり親子の交わりを諦めきれない秋幸のもどかしさを感じた。
    続編の『地の果て 至上の時』も読みたい。

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    2022年01月09日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    十九歳の地図を読んで

    何者でもない不安と何者でもない居心地の良さを兼ね備える何色ともつかない人生の一時。

    世の中を知っていたと言えるのは、本当はこんな時期なんじゃないか。
    大人になれば落ち着き場所を見つけ、その場所に意固地になる。
    こんな純粋な持て余した感情は持てないんじゃないか。
    だから曇りのない目で世の中を感じ悟れる。

    解説では、主人公の電話する行為を神からの「メッセージ」と書いているが、僕はそれを読んで丸善の洋書にそっと「檸檬」を置くあの作品を思い出した。


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    2021年10月30日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    宇佐見りんさんの推し作家ということで読んでみたかった中上健次。
    「一番はじめの出来事」「十九歳の地図」「蝸牛」「補陀落」の4編からなるこちらが第一作品集とのこと。
    いずれも独立した短編だと思ったのだけれど、補陀落を読んでいるうちに、これらは康二という一人の男の物語であることに気がつく。
    「一番はじめの出来事」は康二が小学5年生の時の話であるけれど、仲間と秘密基地をつくって遊んだりする無邪気さ、無垢さが、家族の父親がわりだった兄やんの自殺を経験していっぺんに損なわれていく様が苦しかった。子供は無知で、無力で、でもそれは救いでもあった。ずっと子供でいられたらよかった。多分これは重松清の疾走を読んだ時にも感じた閉塞感。
    ひとつひとつの短編としてみた中では、「補陀落」がいちばん好き。女と遊ぶ金をせびるために姉のところにやってきた康二。そこで姉からえんえんと語られる聞き飽きた家族の話。この文体は宇佐見りんさんのデビュー作「かか」に色濃く影響しているようにも思った。
    きっと宇佐見りんさんが紹介してなかったら読む機会はなかったかもしれない。泥臭さがとても好みだったので、今後もいろいろ読んでみたい。

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    2021年09月22日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    宇佐美りんが「推し」ている著者ということで手に取る。
    4つの中編が、当初は別々のものかと思いきや、最後の話しからどうも一人の男の小学生、19歳、20代半ばのことを書いていると読み取れる。
    社会の底辺で生きる若者、朝鮮への差別、、、「そこのみにて光り輝く」にも通じる重苦しさが、しんどいながらも読み切った。

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    2021年05月23日
  • 岬

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    芥川賞を受賞した表題作である「岬」など4編を収録。
    いずれも面白いという感想には至らなかったが、まさに純文学という感じは受けた。

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    2021年04月11日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    枯木灘や岬を復讐するようにこのルポルタージュを読んだ。
    差別、被差別の感覚は、ざらっとした感覚として持っていたけど、内面をえぐるような表現で、心を揺さぶられた。
    そして、改めて島崎藤村の破戒を読みました。

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    2020年05月06日
  • 新装新版 枯木灘

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    同じ内容が繰り返される内容だったが、最後は引き込まれていった。自分の人生を振り返る良いきっかけとなった。このような名作を読みながら、考える。自分に置き換える。そういった作業が成長のキッカケになりうると思った。長い、小説であったが一度時間を開けてもい一度読んでみようかと思う小説であった。

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    2018年09月17日
  • 千年の愉楽

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    感覚的にやや距離を感じた物語でした。血筋によって運命付けられているというその諦念には哀れも感じるが、取り上げた子らの生き様を見るオババの視点が面白い路地サーガ。

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    2018年05月17日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    紀州に横たわる漂泊者と非人の歴史。私が産まれた頃にはリアルだった歴史の残像。東日本にいると全く理解出来ない、この皮膚感覚。
    分からないから読むのですよ。

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    2017年12月11日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    1946和歌山県じんぐう神宮市生まれ 46歳の若さで逝去 拠り所のない鬱屈を瑞々しい筆致で捉えた青春小説の金字塔 朝鮮部落の豚小屋 抑揚の定まらない口笛 インディアンの襲撃の雄叫びの真似 万国旗と日の丸の旗 子供特有の想像力を展開 計画の進行をうなが促す刺激剤 才気煥発 白色レグホン 鮒 樫枝かしえだ あざけ嘲って 灌木種の枝 朋輩ほうはい 首つっとる 梢こずえ 人非人にんぴにん 猛った感情 功成り名遂げる 寒さにあらがい抗い 手練手管を語り始める 凍えた空気と自分の体の温もりが完全につりあう黄金比 蝸牛がつがうようにつがっていた 士気色 青色吐息 補陀落ふだらく 熊野の山奥 天王寺 針中野 チョッパリ 挑戦服 梅田のモダンジャズ喫茶店スウィング マリワナかハイミナール 古川日出男 あらわした著した 恣意的しいてき 萌すきざす 追従する者 康二 時代の帯からの疎石せせき 田麩でんぶ 焦点を結ぶ像 トポス=場所を表す概念 紀州熊野サーガ(物語)意味深長な一節 府中三億円事件 永山則夫1997死刑執行 寄稿きこう 瘡蓋のマリア 蟹江敬三 尾崎豊 オマージュとして知られている 高澤秀次

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    2017年08月24日
  • 千年の愉楽

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    他の方もおっしゃってるように、どことなくガルシアの『百年の孤独』を想起させるような、題名と内容。
    「高貴で穢れた血」を持つ者の生き死にを、路地唯一の産婆のオリュウノオバが追憶する物語でした。

    半蔵や三好など個々の人物とその淫蕩な人生に焦点を当てつつも、中本の一統の血筋への悲哀と諦念、そしてオリュウノオバによる生命の尊さ、清らかさの賛歌が全編に渡って貫かれている。淡々と流れるような言葉の紡ぎ方と、内と外の関係性、その三段階の視点の設定が特徴的。

    淫蕩で怠惰だけれど高貴で尊い、という矛盾を矛盾させることなく描いているのが素晴らしい、けれども繰り返し繰り返し同じ言葉で直接的に語るのは若干単純な気もする。

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    2016年10月01日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    わっけわっからーん。と思いつつ、あれ?これって一度読んだことあるかもしれない。高校ぐらいのとき……でもその時もわけわからんかったと思う。

    中上健次の作品では同じモチーフが容れ物を変えて何度も繰り返されるようだ。
    和歌山の川と海と山に囲まれた町、父親の違う兄妹、どこかからの流れ者、火つけ、兄の自殺、精神を病んだ次女、酒を飲むとカッとなる性格……などなど。

    ただ感じ方があまりにも自分とはかけ離れていると感じる。「十九歳の地図」の主人公は僕にとって異質なものだ。このド田舎の、言ってみれば人里離れた集落の、アヴァンギャルドで放恣な登場人物たちの姿や生活が、あまりにかけ離れすぎている。

    ・「一番はじめの出来事」
    小5、「秘密」づくり、異父兄弟、兄は母と離れて暮らしている、そして兄の自殺、火つけ――少年の瑞々しい感性と描写が光る。
    ・「十九歳の地図」
    新聞配達しながら、その下宿で男と一緒の部屋で暮らす予備校生、テロル、ルサンチマン。
    ・「蝸牛」
    バーで働く子持ちの女のヒモになった男、女は叔父に財産をすべて取られたと男に言う。男は包丁を持ち叔父の家に。手の指が二股にわかれた男。
    ・「補陀落」
    姉に金をせびりにいった青年が、姉が家族について語るのを聞いている。兄の自殺、そして青年だけが可愛がられていたこと、精神を病んだ次女?

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    2015年03月09日