中上健次のレビュー一覧

  • 日輪の翼

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    盗んだ冷凍トレーラーで七人の老婆を載せ全国の霊場を巡るロードノベル。こう書くと何が何だかわからないが読んでも何が何だか何だか分からない。しかしほかの中上作品と同様言い知れぬ迫力と熱量は備わっている。

    根底にあるのは「路地」すなわち被差別部落の紀州に土着したサーガであるが、そこを流離し流浪し性と暴力を伴いながら根無し草のように振る舞う。オバたちの神仏に献身する姿と傍若無人な振る舞いの対比が印象的だ。世俗を超越した存在のようで姿かたちは極めて俗物的なオバらを、享楽を追い求めるツヨシと田中さんが導くさまが本作品の複雑性を織り成している。

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    2018年04月23日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    鬼らが跋扈する「鬼」州、霊気の満ちる「気」州、中上氏の原点である紀州を巡るルポタージュである。彼が問うたのは自身の源流と紀州サーガであり、それらを霧のように包む被差別と非差別を解き解し、剥き出しの本質を探り出そうとしている。作中の突然の屠殺願望などは、中上氏のなかに眠る「濁った高貴な血」の放出なのかもしれない。

    紀伊半島は紀伊山地を挟み近畿至近にありながら隔世感がある。私自身串本に観光へ行ったことがあるが勉強不足でその隣に「枯木灘」があることも知らなかった。その「路地」で育った(いわゆる部落)中上氏は、紀州の溜へ足繫く通い、血脈と被差別について推敲を重ねる。

    ルポタージュという形式でありな

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    2018年04月02日
  • 新装新版 枯木灘

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    勉強不足だったが、中上健次が「紀州サーガ」と呼ばれフォークナーやマルケスを源流とし世界文学の潮流として彼らに比肩する作家であることを初めて知った。文章から滲み出る鬼気は圧倒的だ。

    中上氏の言う「路地」とは被差別部落地区を指すが、作中には差別に関する事柄は一切なく、そこに土着する「穢れた高貴な血」への異常な執着の物語だ。秋幸が繰り返し繰り返し意識する実父「龍三」の血だが、根底にあるのは憎悪ではなく承認欲求とアイデンティティ認識のためなのかもしれない。個人的には「千年の愉楽」のほうが好きだが、端的にはなかなか言い表せないサーガを、小説という手法を使って書き上げた凄い作品だ。

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    2018年03月13日
  • 千年の愉楽

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    6篇の短編集。路地の若者達の人生を産婆の目を通して眺める視点。時代を超越し、時間の経過をかき乱す文体。読み進むうちに脳内に浮かぶビジュアルが印象的。売り飛ばさずに本棚に残す本。

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    2016年09月16日
  • 中上健次

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    学生時代に『岬』『枯木灘』『鳩どもの家』は読んだことがあった。が、それらは中上健次のほんの一部にすぎなかったということを思い知らされた。
    特に『鳳仙花』は名作。
    他の中上健次の作品も読まなければいけない気にさせられた。

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    2015年10月21日
  • 千年の愉楽

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    美しさ=早世である
    女をよろこばせる⇒天性
    描写がとても官能的である
    理性にではなく本能に訴えるような表現だ
    淡々と悦に達し死に向かっている

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    2015年09月12日
  • 岬

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    いわゆる「紀州サーガ」二冊目にあたる「枯木灘」を先に読んだ。「岬」が一冊目。
    「引用」に移した文章は本編ではなく後記のもの。
    作者は紀州の路地に住む一族の複雑な血縁を形を変え目線を変え書いているけれど、吹きこぼれるように表現したい自分の世界があるのですね。

    ===
    予備校に通う主人公の下宿に転がり込んできた右翼活動者の兄、主人公の友人、彼らが妹を探す娼婦と関わることになった一日。
    /黄金比の朝

    「枯木灘」と家族関係はほぼ同じ。
    枯木灘で秋幸にあたる人物の兄の幼少時代から始まる。兄が引き入れた「男」が母を孕ませ、長じて母に捨てられたと兄は自殺する。
    主人公の鬱屈も激しく、父を憎み想い飲んで暴

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    2014年05月14日
  • 讃歌

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    性のサイボーグとか、第三の性とか、そんなたいそうなものではなくて、ただ中上健次がバブル時代のマイノリティ・カルチャーをドヤ顔で描いてみせたという感じ。はじめにコンセプトありきで、ポストモダンやニューアカの影が少しうるさい。フランスから来た「フー子」とか「ロラン子」とかが出てきて、それも時代だなぁと。中上健次の巧さは端役の使い方とエピソードのつなぎかもしれない。イーブに捨てられた白豚がそのまま後を歩いて追いかけていって、イーブの仲間たちと一緒にバーに入り、居座るところ。途中でフレームアウトさせず、次のシーンまで残らせるところが、なにげにすごい。

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    2014年07月07日
  • 千年の愉楽

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    本の雑誌12月号で「中上健次ならこの十冊を読め!」の記事があった。
    僕は枯木灘しか読んでいない。路地を舞台にした物語群を知り、読む気になった。
    産婆のオリュウノオバが語る中本の家の澱んだ高貴な血のもとに産まれる男達。女がほっておかない色男で、彼らは女たらし、ヤクザ者、泥棒、大陸浪人。そして運命のように短い命を終えていく。

    紀州の山と川と海しかない土地。山で行き止められた路地。濃厚な生と死と血の匂いがぷんぷんと湧きたつ。性表現もアブノーマルでかなりドギツイのだが、何故かこの世のものとも思われない。
    異種婚姻の誕生譚もあり、どこか神話のようでもある。
    時に、彫琢せずゴロリと目の前に転がされた文章

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    2012年12月29日
  • 千年の愉楽

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    路地と呼ばれる被差別部落を舞台に、
    美しくも呪われた血筋の男たちの生と死を
    オリュウノオバを語り部に描く。

    どろどろとした欲や情念はそのままに
    その中に垣間見える、人間らしさ、というものを
    世界中にに掘り起こそうとしている。

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    2012年08月31日
  • 千年の愉楽

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    薄い文庫ですが、中身は濃厚で、土俗的な雰囲気。
    改行も少なく、ぎっつり畳みかけるように。
    熊野の地で、「路地」の若い者のすべてを取り上げた産婆オリュウノオバが見守っていく。
    中本の一統という血をひく様子が、色々な子に現れる。
    蔑まれる貧しい暮らしでも、なぜか生まれつき見た目は良く、色白で顔立ちが整っていて人を惹きつけ、先祖に貴族でもいたのか、それも放蕩を尽くした千年前の平家の家系でもあったのではと思わせるほど。

    しかし、男達はどこか危なげな性格で、澱んだ血が内側から滅ぼしていくかのように早死にしてしまう。
    主人公は一話ごとに変わっていくので、やや読みやすい。
    男ぶりが際だっていた半蔵は、女の

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    2012年06月10日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    ノンフィクションでいったらその手の作家たちが必ず薦める本書はやっぱり重厚だった。紀伊半島を六ヶ月旅して記した歪みの構造を見つめるルポであり物語でもある。読んで損することはこれぽっちもない。改めてニッポン人とは何者なんだとういうことを著者は全身の触手を伸ばしてボクらに教えてくれる。彼が偉大だということもほんとによくわかる。

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    2011年09月15日
  • 十九歳のジェイコブ

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    まだ2冊しか読んでいないけど、中上健次は一貫しているなと思う。
    解説の「彼本人と話が切り離せない」とあるように、中上文学を知ることは中上氏本人を深く知ることでなし得るのである。
    彼自身に非常に興味があるのでほかも読んでいこうと思うが、それにしても本屋にないので、古本屋で宝物を探すような読書生活はまだまだ続きそうだ。

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    2009年10月07日
  • 十九歳のジェイコブ

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    ジャズ、セックス、ドラッグがこの話の磁場をつくっているとしたなら、

    セックスがエロス

    ドラッグがタナトス

    ジャズがその二つをつなぐ装置としてつかわれてる、のかも。

    とかかなり自由な解釈をしてみたら面白い。

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    2009年10月04日
  • 岬

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    一年ほど前に岬は読んだ。それからしばらく経って今再び中上健次を読みたいと思うようになった。昔よりも悪くないなと感じた。それでも個性のような強いしぶきを感じることはできない。

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    2026年03月29日
  • 岬

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    ネタバレ

    表題作のみ読んだ。
    田中慎也「共喰い」を想起した。
    平易な単語ばかりで、句読点が多く軽快な文体で読みやすい。しかし、内容は極めて難解に読んだ。
    噛み砕ききれず、だがなにか心を掴まれたような気がして、秋幸になにか自分と似たところを感じた気がした。
    人の解説を読んでようやく少しずつ掴めてきた気がする。他人にがんじがらめになっているところが、秋幸に共感したんだと思う。
    紀州サーガをまた読もうと思う。

    262 彼は一人になりたかった。息がつまる、と思った。母からも、姉からも、遠いところへ行きたいと思った。あの朝、首をつって死んでいた兄からも自由でありたかった。

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    2025年11月23日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    力強く鬱屈してる。
    ブルースでありグランジロックでもある。
    最後に涙したのが救いあるところなのかな?

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    2024年08月23日
  • 紀州 木の国・根の国物語

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    著者の唯一とも言えるノンフィクション。熊野地方を1年近く旅をしたルポである。歩くのではなく車を使う。したがって行ったりきたりもする。
    全編に渡って「差別」をキーとしている。和歌山はそうなのか。中にも書かれているが東北の人間にはわからない事だという。そう私には全く分からない。

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    2024年03月17日
  • 岬

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    表題作をまず読んだ。
    舞台は紀州。日常風景に主人公の親戚縁者が登場。読み進めていくうちに関係性が徐々にわかっていくが、最初はすんなり入ってこなくて何度かページをめくる手が止まってしまった。
    だが、明け透けなセリフからは登場する人たちの体温がムンムンと伝わってくる。人の死が大きな事件に思えてこない不思議。むしろ大事件が起こるラスト3Pのために全てがあるように感じた(初見にて)。

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    2023年08月28日
  • 岬

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    まさに紀南の夫の実家に帰省中、大勢の親戚たちに囲まれたり話を聞いたり、辿れば遠い親戚だったりする彼の地元の友達と会ったりしているときにこの小説を読んだ。
    買ったのも夫の地元の鄙びた書店。
    血縁のつながりの強い紀南の家族の在り方をちょうどリアルタイムで感じながら読んだので、物語の雰囲気はよく掴めたし登場人物が多くても没入しやすかった。
    登場人物の方言も、夫のおばあちゃんのしゃべり方で脳内再生された。

    ただ、中上健次は紀南の最下層を描いているので(男はもれなく土方で女はもれなく女郎、みたいな世界観)、「紀南は確かに田舎だが、いくらなんでもそこまでひどくはなくないかこの土地は?」とは思ってしまった

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    2023年08月14日