中上健次のレビュー一覧

  • 岬

    Posted by ブクログ

    いわゆる「紀州サーガ」二冊目にあたる「枯木灘」を先に読んだ。「岬」が一冊目。
    「引用」に移した文章は本編ではなく後記のもの。
    作者は紀州の路地に住む一族の複雑な血縁を形を変え目線を変え書いているけれど、吹きこぼれるように表現したい自分の世界があるのですね。

    ===
    予備校に通う主人公の下宿に転がり込んできた右翼活動者の兄、主人公の友人、彼らが妹を探す娼婦と関わることになった一日。
    /黄金比の朝

    「枯木灘」と家族関係はほぼ同じ。
    枯木灘で秋幸にあたる人物の兄の幼少時代から始まる。兄が引き入れた「男」が母を孕ませ、長じて母に捨てられたと兄は自殺する。
    主人公の鬱屈も激しく、父を憎み想い飲んで暴

    0
    2014年05月14日
  • 讃歌

    Posted by ブクログ

    性のサイボーグとか、第三の性とか、そんなたいそうなものではなくて、ただ中上健次がバブル時代のマイノリティ・カルチャーをドヤ顔で描いてみせたという感じ。はじめにコンセプトありきで、ポストモダンやニューアカの影が少しうるさい。フランスから来た「フー子」とか「ロラン子」とかが出てきて、それも時代だなぁと。中上健次の巧さは端役の使い方とエピソードのつなぎかもしれない。イーブに捨てられた白豚がそのまま後を歩いて追いかけていって、イーブの仲間たちと一緒にバーに入り、居座るところ。途中でフレームアウトさせず、次のシーンまで残らせるところが、なにげにすごい。

    0
    2014年07月07日
  • 千年の愉楽

    Posted by ブクログ

    本の雑誌12月号で「中上健次ならこの十冊を読め!」の記事があった。
    僕は枯木灘しか読んでいない。路地を舞台にした物語群を知り、読む気になった。
    産婆のオリュウノオバが語る中本の家の澱んだ高貴な血のもとに産まれる男達。女がほっておかない色男で、彼らは女たらし、ヤクザ者、泥棒、大陸浪人。そして運命のように短い命を終えていく。

    紀州の山と川と海しかない土地。山で行き止められた路地。濃厚な生と死と血の匂いがぷんぷんと湧きたつ。性表現もアブノーマルでかなりドギツイのだが、何故かこの世のものとも思われない。
    異種婚姻の誕生譚もあり、どこか神話のようでもある。
    時に、彫琢せずゴロリと目の前に転がされた文章

    0
    2012年12月29日
  • 千年の愉楽

    Posted by ブクログ

    路地と呼ばれる被差別部落を舞台に、
    美しくも呪われた血筋の男たちの生と死を
    オリュウノオバを語り部に描く。

    どろどろとした欲や情念はそのままに
    その中に垣間見える、人間らしさ、というものを
    世界中にに掘り起こそうとしている。

    0
    2012年08月31日
  • 千年の愉楽

    Posted by ブクログ

    薄い文庫ですが、中身は濃厚で、土俗的な雰囲気。
    改行も少なく、ぎっつり畳みかけるように。
    熊野の地で、「路地」の若い者のすべてを取り上げた産婆オリュウノオバが見守っていく。
    中本の一統という血をひく様子が、色々な子に現れる。
    蔑まれる貧しい暮らしでも、なぜか生まれつき見た目は良く、色白で顔立ちが整っていて人を惹きつけ、先祖に貴族でもいたのか、それも放蕩を尽くした千年前の平家の家系でもあったのではと思わせるほど。

    しかし、男達はどこか危なげな性格で、澱んだ血が内側から滅ぼしていくかのように早死にしてしまう。
    主人公は一話ごとに変わっていくので、やや読みやすい。
    男ぶりが際だっていた半蔵は、女の

    0
    2012年06月10日
  • 紀州 木の国・根の国物語

    Posted by ブクログ

    ノンフィクションでいったらその手の作家たちが必ず薦める本書はやっぱり重厚だった。紀伊半島を六ヶ月旅して記した歪みの構造を見つめるルポであり物語でもある。読んで損することはこれぽっちもない。改めてニッポン人とは何者なんだとういうことを著者は全身の触手を伸ばしてボクらに教えてくれる。彼が偉大だということもほんとによくわかる。

    0
    2011年09月15日
  • 十九歳のジェイコブ

    Posted by ブクログ

    まだ2冊しか読んでいないけど、中上健次は一貫しているなと思う。
    解説の「彼本人と話が切り離せない」とあるように、中上文学を知ることは中上氏本人を深く知ることでなし得るのである。
    彼自身に非常に興味があるのでほかも読んでいこうと思うが、それにしても本屋にないので、古本屋で宝物を探すような読書生活はまだまだ続きそうだ。

    0
    2009年10月07日
  • 十九歳のジェイコブ

    Posted by ブクログ

    ジャズ、セックス、ドラッグがこの話の磁場をつくっているとしたなら、

    セックスがエロス

    ドラッグがタナトス

    ジャズがその二つをつなぐ装置としてつかわれてる、のかも。

    とかかなり自由な解釈をしてみたら面白い。

    0
    2009年10月04日
  • 千年の愉楽

    Posted by ブクログ

    独自の、確固とした世界観を持った、圧倒的な物語だった。
    倫理も法も縁のないような埒外の世界には、人ならぬ者が決めたような、自然のままに出来上がる秩序のようなものがある。

    その路地で子供が産まれる都度、産婆として一人一人をとり上げてきたオリュウノオバからは、何世代もの時の移り変わりによって自ずと形成される、「血」としか言い様がない宿業のようなものが見えるのだろうと思う。

    その、逃れようのない連続した生命の流れを俯瞰しているような視点は、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」に似たものを感じた。しかし、片方はこの業を「孤独」ととらえて、もう片方は「愉楽」と名づけている。

    古代ギリシャの神々や、日

    0
    2020年07月15日
  • 岬

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    表題作のみ読んだ。
    田中慎也「共喰い」を想起した。
    平易な単語ばかりで、句読点が多く軽快な文体で読みやすい。しかし、内容は極めて難解に読んだ。
    噛み砕ききれず、だがなにか心を掴まれたような気がして、秋幸になにか自分と似たところを感じた気がした。
    人の解説を読んでようやく少しずつ掴めてきた気がする。他人にがんじがらめになっているところが、秋幸に共感したんだと思う。
    紀州サーガをまた読もうと思う。

    262 彼は一人になりたかった。息がつまる、と思った。母からも、姉からも、遠いところへ行きたいと思った。あの朝、首をつって死んでいた兄からも自由でありたかった。

    0
    2025年11月23日
  • 新装新版 十九歳の地図

    Posted by ブクログ

    力強く鬱屈してる。
    ブルースでありグランジロックでもある。
    最後に涙したのが救いあるところなのかな?

    0
    2024年08月23日
  • 紀州 木の国・根の国物語

    Posted by ブクログ

    著者の唯一とも言えるノンフィクション。熊野地方を1年近く旅をしたルポである。歩くのではなく車を使う。したがって行ったりきたりもする。
    全編に渡って「差別」をキーとしている。和歌山はそうなのか。中にも書かれているが東北の人間にはわからない事だという。そう私には全く分からない。

    0
    2024年03月17日
  • 岬

    Posted by ブクログ

    表題作をまず読んだ。
    舞台は紀州。日常風景に主人公の親戚縁者が登場。読み進めていくうちに関係性が徐々にわかっていくが、最初はすんなり入ってこなくて何度かページをめくる手が止まってしまった。
    だが、明け透けなセリフからは登場する人たちの体温がムンムンと伝わってくる。人の死が大きな事件に思えてこない不思議。むしろ大事件が起こるラスト3Pのために全てがあるように感じた(初見にて)。

    0
    2023年08月28日
  • 岬

    Posted by ブクログ

    まさに紀南の夫の実家に帰省中、大勢の親戚たちに囲まれたり話を聞いたり、辿れば遠い親戚だったりする彼の地元の友達と会ったりしているときにこの小説を読んだ。
    買ったのも夫の地元の鄙びた書店。
    血縁のつながりの強い紀南の家族の在り方をちょうどリアルタイムで感じながら読んだので、物語の雰囲気はよく掴めたし登場人物が多くても没入しやすかった。
    登場人物の方言も、夫のおばあちゃんのしゃべり方で脳内再生された。

    ただ、中上健次は紀南の最下層を描いているので(男はもれなく土方で女はもれなく女郎、みたいな世界観)、「紀南は確かに田舎だが、いくらなんでもそこまでひどくはなくないかこの土地は?」とは思ってしまった

    0
    2023年08月14日
  • 讃歌

    Posted by ブクログ


    『日輪の翼』から一応話が続いているが、切り離して考えた方が良い本作。爆発的な性の奔流が全篇渡って迸る。コンセプチュアルが故、中上の悪いエゴが出過ぎている気が。。
    感覚的に描きたい事は分かるが、読ませる気はいつも以上に無い。

    0
    2023年04月15日
  • 岬

    Posted by ブクログ

    こんな気持ちの良い天気の時に読まないと落ち込んでしまいそうな、一族のしがらみに生気を絡め取られる話。しかし,地方でなくても多くの人は本当は避けて通れないことだと思う。
    人間関係が分かりにくく、何度か戻って読み直すことを繰り返してしまった…

    0
    2023年04月10日
  • 岬

    Posted by ブクログ

    真の意味での身寄りがあるようでない、
    そこにいるようでいない、
    ただ梢を揺らす木のようにして佇む若人の運命は非情でグロテスクだった
    また彼の搾り出したかのような復讐は結局は空虚なものにすぎなかった

    全体を通して「む、難しい、、、」と感じっぱなしだった
    はっきり言えば『岬』に関しては、自分の中での感情移入および心の揺れは大して感じられなかった
    もちろん大枠としての彼の「地理的にも血縁的にも閉ざされ縛られることへのどうしようもない憂鬱」のようなものは感じられるが、今の私には秋幸の心の機微は完璧には解読し難い
    偏に想像力不足、偏に感受性不足なだけかもしれない、だとしたら本当に憂鬱だ

    そもそもの文

    0
    2023年01月16日
  • 紀州 木の国・根の国物語

    Posted by ブクログ


    作者の魂の故郷とも言える和歌山のルポタージュ。
    ぐるぐると縁の深い土地を回りながら、土着の逸話やそこに住む人々の話を、10p弱で区切った短編集形式。にも関わらず内容は重く、非常に読み進め難い。
    作者の思い入れが強すぎて、あまり楽しんで読めなかった印象。ただ、故郷を通して彼の伝えたい事・想っている事は感覚で入ってきた。他作をスムーズに読むには必読書なのかもしれない。

    0
    2022年10月12日
  • 岬

    Posted by ブクログ

    欲望と性、暴力、呪われた血縁。どうしようもない話。

    人間というものを正直に描こうとするならば、他にどんな方法があるっていうんだ?とでも言いたげな、ある意味での真摯さと、だからこその閉塞感。

    0
    2022年07月21日
  • 岬

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「岬」路地三部作の一作目。自殺した兄と同じ二十四になった秋幸の、なにかが狂い始める。誰が悪いのか。俺を産んだ犬畜生だ。だからぶっ壊してやる。俺の血に関わるすべてを壊すために、あの男の娘を、この俺の実の妹を凌辱してやる。
    「火宅」私小説的な、路地シリーズにつながる短編。“男”とつるんでいた兄の眼を通して、かつての男の行いを追憶する。その暴力性を現在の俺も受け継いでいる。その男が死にかけているらしい。どこの馬の骨とも知れない男。俺の父。俺のほんとうの父。あの男は、俺にとっていったいなんだったのだろう。

    0
    2022年06月02日