中上健次のレビュー一覧

  • 岬

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    1975年芥川賞受賞作。人物関係がややこしくて読みにくいです。出自という避けられない事実に苦しむ人間について書いてあります。今の世の中で「多様性」みたいに言われることの、本当の姿というものがあり、それが憑依して書かせた文章なので読みにくいのも仕方ないという印象。

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    2025年08月11日
  • 岬

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    性的描写がある作品のうち、最適な文量で最大限の役割を果たしているものって少ないから、そういう意味で性的描写とはこうあるべきだと示してくれる教科書のような存在
    最初は読みにくいけど最後が圧巻、流石芥川賞受賞作

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    2025年05月11日
  • P+D BOOKS 鳳仙花

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    『枯木灘』主人公秋幸の母親を主役にしたストーリー。
    2人の父親違いの子供の出生やその子達のうち一人だけを連れて再再婚相手と暮らし始めた経緯と心情がこの『鳳仙花』でわかる。
    一人の女の一生を通じて時代の移り変わりを生きる様が逞しくもあり悲しくもある。
    中上健次の心情や情景描写は素晴らしいと思う。

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    2025年04月21日
  • 新装新版 十九歳の地図

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    歌手・友川かずきの著書「一人盆踊り」に中上健次にまつわるエッセイが収録していたので興味を持った。

    そういえば、以前なぜ友川かずきが映画「十九歳の地図」に出演しているのか疑問に思ったことがあったが、当時親交があったからかと合点がいった。

    この「十九歳の地図」は4本の短編が収録されているが、解説等々を読むに全て同じ主人公とのこと。しかも著者本人の体験が強く反映されているようだ。

    上述の友川かずきも弟が列車で自殺しており、肉親の悲惨な死を経験しているもの同士何か理解うるところがあったのだろうか。


    肝心の小説の方は、少年期の原体験、青年期の鬱屈した精神、成人後の堕落が描かれていて、読んでいて

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    2025年03月30日
  • 岬

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    私たちの人格はどうやって作られたのか。先天的に与えられた部分と、後天的に獲得した部分がある、と言われるが、おそらくはそのいずれにも当てはまるのが、時代、そして地縁・血縁だろう。私という存在は、この時代に、この場所に、この親のもとに生まれるほかなかった。どんなに新しい未来を手にしようとも、出自から完全に逃れることは不可能だ。一般的に言われるように、文学というものが、何らかの意味で書き手にとって「やむを得ず」書かれるものだとすれば、自分という存在の根源に潜行し、そこから言葉を立ち上げてくる小説が、文学でないはずがない。そういう小説、そういう文学に、青年期にこそ出会いたい。
    中上健次は、一九四六年、

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    2024年10月06日
  • 岬

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    表題の作品のパワーが凄まじい。思わずじっくり読み進めている自分がいた。さすが芥川賞受賞作品。短い文での状況説明や心象表現が特徴的で、戦後直後の朴訥とした荒めで不器用な男っぽさがよく出ているように思った。

    「紀州サーガ」シリーズとして、同じ登場人物で同じ紀州で、また違った物語が展開するらしく、次の「枯木灘」も読んでみたい。

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    2024年06月10日
  • 岬

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    (引用)
    彼は、一人残っていた。腹立たしかった。外へ出た。いったい、どこからネジが逆にまわってしまったのだろう、と思った。夜、眠り、日と共に起きて、働きに行く。そのリズムが、いつのまにか、乱れてしまっていた。自分が乱したのではなく、人が乱したのだった。ことごとく、狂っていると思った。死んだ者は、死んだ者だった。生きている者は、生きている者だった。一体、死んだ父さんがなんだと言うのだ、死んだ兄がなんだと言うのだ。




    とことん下へ下へと潜っていくような気分。いろんなことが乱れたように事あるごとに思ってしまうのは、自分のせいであることを認める勇気がどこかのタイミングで必要だと思う。

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    2024年01月21日
  • 新装新版 枯木灘

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    重くて濃い。色々な反復に飲み込まれていく気分。フォークナーが引き合いに出されることが多いようだが、少し前に読んだフォークナーの『八月の光』と照らしてみても、確かに読後感が似ている。

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    2023年08月20日
  • 奇蹟

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    中上が連綿と描き続けてきた“路地”シリーズの終着点。
    “路地”の最後の生き証人、今は零落しアル中のトモノオジが中本の極道タイチの生涯を幻惑的に語る。
    蓮池の挿話、人物のカタカナ表記、終盤に現れる釈迦の掌と、浅学ながら深淵な意図とブッディズムを感じる。
    圧倒的な文学的魅力とエネルギーを備えた、誰にも真似出来ない文学世界の極地を味わった。

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    2023年03月22日
  • 日輪の翼

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    素晴らしいの一言。
    『地の果て 至上の時』で完結したかに思われた“路地”が、なんと移動を始めた。
    移動に使う冷凍トレーラーの比喩となる表題も見事。
    神的なもの(静)と迸る性(動)の混合、外から映る“路地”の異様さと、中上の当時表現したかったものやアドバンスが強く感じられた。

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    2022年12月21日
  • 日輪の翼

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    ネタバレ

    「路地」と呼んでいる被差別部落を立退でおわれ、7人の老婆と若者が改造した冷凍トレーラーに乗って、伊勢、諏訪、出羽、恐山、皇居と御詠歌を歌いながら旅をする。老婆たちは神々と出会い近づこうとし、一方で若者たちは性の享楽にのめり込む。中上作品は3冊目ですが、否応なく文体から五感を刺激し、老婆らの感じる音や匂いなどを共有する錯覚に陥る。「路地」へは二度と戻れない。冷凍トレーラーに身を預け、新たな「路地」を見つけるのか、「路地」から脱却するのか・・・。『讃歌』という続編があるようで早速注文しました。

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    2022年09月19日
  • 千年の愉楽

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    全編通しバキバキに覚醒しており、水分が無くなるまで煮詰めた煮物の様な文体で脂の乗りまくった中上作品。本作以降に現れ始める“神話性”の様なものが、以降作品に強い魅力を加えていると思う。
    他作含め読み手を非常に選ぶのは間違い無い。

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    2022年09月03日
  • 新装新版 枯木灘

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    ネタバレ

    熊野古道を歩いたのを気に色々と土地のことを知りたくなり読みましたが、フォークナーの換骨奪胎と思いきや、読後の後味は全然違いました。

    誇大妄想に虚言癖、ペドフェリア、近親相姦、など現代でも普通いる人たち。文学ではおなじみのテーマ。そして山と海に挟まれた土地で血縁に囲まれ、路地では常に視線を感じる主人公。外がないので当然煮詰まっていきます。

    唯一の外部として白痴の女の子を描いているのかな?だから最後のシーンで外からの視点でこの物語を笑っている、と解釈しました。

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    2022年08月29日
  • 小学館電子全集 特別限定無料版 『中上健次 電子全集』

    購入済み

    サービス精神満載

    有名な紀州熊野サーガの世界観を中心にして、本作を読む際の登場人物関係図など、かなりの豊富な情報と合わせての作品収録がなされており、読者にとって親切設計だといえます。作品を読むに、中上先生は細やかなところまで描く性格がありそうです。

    #感動する

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    2022年03月01日
  • 新装新版 枯木灘

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    「推し燃ゆ」の宇佐見りんの推しに中上健次が挙げられているのを知って手にした本書。

    今ではコンプライアンスやらハラスメントやらで抑制された人間の根源的な衝動や欲望がむき出しにされている。日常的には道義的に許せないことが、この作品では、なぜここまで心揺さぶられるのか?
    自分の中にもきっとそんな衝動や欲望が潜んでいて、この作品の持つ文学性によって呼び覚まされ、熱い生命力がみなぎってくるからだろう。

    ひどい話ばかり繰り返されるのだが、なぜかこの一家の血のつながりが愛おしく感じるのだ

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    2021年07月29日
  • 新装新版 枯木灘

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    先日、神保町に立ち寄った時に三省堂で見かけ、10代の時に挫折したことを思い出して再読笑

    ドストエフスキーの影響を感じさせるとともに、作者自身の経験からくる部落(作内では路地と表現)の小さな町での物凄く複雑な人間関係とそれによって起こる事件や悲劇を大変だけれど美しい土木作業や自然と対比して丁寧に描かれている。
    しかし平坦な日常を送るには人間関係が過酷過ぎた…
    もし中上健次が存命だったらノーベル賞を取っていたかもしれないなと思わされるくらいの力強くも繊細な文体に魅了された。

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    2021年02月02日
  • P+D BOOKS 鳳仙花

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    主人公のフサは、作者の母がモデルです。若くして夫に死に別れ、5人の子を抱えてまた、他の男の子を妊娠するフサ。つらくても悲しくても、ただ強く生きるしかないフサの背に「生きろ」と声をかけ続けました。

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    2020年03月28日
  • 岬

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    「岬」には、James Joyceの短編集「ダブリナーズ(ダブリンの人々)」のなかの1作「死せる人々(The Dead)」との関係性を強く感じる。

    例えば、一族の物故者の影や息使いが、普段は姿を見せないものの、今を生きる者の言葉や立ち居振る舞いその他の様々な所作において、それが姿を現し、なおかつそれが明確な映像や音声となって立ち現れる場面しかり。
    そしてアイルランド人としてのアイデンティティからの逃避欲求があり、しかしそれに絡めとられ纏わりつかれも逃れられない宿命のようなものを改めて意識する場面しかり…

    他の3作品の通俗的な完成度から比して、中上健次がある日ジョイスの作品に出会い、そしてダ

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    2018年05月12日
  • 日輪の翼

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    中上はまだそれほどたくさん読んでいるわけじゃないけれども、これは今まで読んだなかではいちばん面白かった。就活の合間合間に読んだから細部をしっかりおぼえてないのだが、冷凍トレーラーは重要な役割をもっていたように思う。聖と俗が常に一体となって描かれていた。老婆らはとにかくグロテスクだったが、最後は妙な寂しさのようなものが残った。

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    2018年04月23日
  • 千年の愉楽

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    本作品には鬼が宿る。大江健三郎や三島由紀夫など読んだ瞬間に圧倒的才能を感じさせる天才が稀に居るが中上健次もその一人であろう。彼が「路地」と呼ぶ所謂部落出身者の湧き出る熱情を血で綴るように中本の一統の5つの物語を紡ぐ。説明的な読者への配慮は一切なく濃密で息苦しい程の言葉の茨が読者を捉える。

    極めて優れた表現だと思うが筆者がいう「高貴で澱んだ血」を受け継ぐ者たちをオリュウノオバを軸に暴力や女性蔑視の表現を以て語られる。時空間や常識の概念に捉われず「高貴で澱んだ血」に縛られる。

    芥川賞受賞作「岬」も凄い作品であったが本作はそれをも超えている。この作品がなんであったかは説明が難しい。ぜひ読書体験い

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    2018年02月19日