根来龍之のレビュー一覧
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IT・webサービスの競争戦略の研究を長年続ける著者によるプラットフォームビジネスに関する基本的な概略書。
ここでのプラットフォームの定義は意識的に広範に取られており、ゲーム・webサービス・ブラウザ・OSなど、広範な事例を踏まえて、帰納的にその定義や、成功のポイント、1人勝ち(Winner Takes All)が発生するメカニズムと一度発生したWTAを覆すための競争戦略の類型が整理されている。
特に、WTAを覆すための競争戦略類型(収益モデルの破壊と拡張、上位・下位レイヤーからのプラットフォームの包囲、プラットフォーム間橋渡し、プラットフォーム互換など)は実務上の示唆が大きく、役立ちそう。 -
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【要約】答えはないがヒントはある、そのために定石(ビジネスモデル)を学べ
【所感】とてもいい先生だと思う
【メモ】
・ノイジーマイノリティ、あるお客さんから届いた声が必ずしも全体と一致している訳ではない。
・玉子屋モデル
・規模創発的
☆規模(単位あたりコスト低下、規模創発的効果、クリティカルマスに達するまで効果は無い。換言すれば意図的に狙う)、経験(経験蓄積にる単位あたりコスト低下)、範囲(製品拡大、シナジー)、ネットワーク(利用便益の拡大) の経済
・ソフトバンク初期のホワイトプラン、セブン銀行の
・自己強化のループ、例トヨタ
☆利益率よりも資源蓄積を優先、CSKのおおかわさんはシステム受託の会社にするというつぎの構想を持って意図的に取引先を選んだ。
・楽天のM&Aは範囲の経済の意識的追求
・マイクロソフトはサイド間ネットワーク効果狙い(利用者と補完製品開発業者に働くネットワーク効果)
・SNSの会社はサイド内ネットワーク効果狙い(利用者間に働くネットワーク効果)
☆意識の3層構造(byアンソニー・ギデンズ):言説意識(行為主体が言葉で説明できる)、実践意識(言語化できないが主体が知っているのは確かな暗黙知。うまく説明できなんだけど、どうすればいいか知っているような事。社会の構造はこの実践意識の中に取り込まれれている。コンテキスト分析とは実践意識の言説意識化を図るもの)、無意識 -
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ネタバレビジネスの考え方、各種モデルについて、思考法・考え方などについて整理された本。考える力、使う力が養われる点で良著。
<メモ>
・因果関係について。
自然科学①AはBに時間的に先立つ(先行性)
②AがなければBは起きない(不可欠性)
③Aだけ起きればBは起きる(普遍性)があるもの。
一方、社会科学は①の先行性はあるが、
②Aがなくても、CがあればBは起きる(代替原因の存在)③Aに加えて、DもなければBは起きない(原因の部分性)などが存在する。自然科学のように強い法則性を主張することは難しいが、それをやった方が成功しやすい。といったようなそういう性質は確かに存在する。経営学は普遍法則ではなく、傾向法則であるとされる。
・時間軸だけは、上記のとおり、社会科学でも成り立つ。
・ファイブフォース理論で5つの力が決めるもの
①業界の平均的収益率を決める
②業界の成長性や規模をきめるものではない。
③5つの力の影響力は業界内の戦略グループによって異なる。
・誰が業界内にいるのかを決めることはファイブフォース理論ではとても重要。ポーターは業界を「互いに代替可能な製品を創っている会社の集団」。
抽象度をあげると代替品の範囲は広がるが、分析が無意味になる。抽象度を上げすぎないために、技術が同じもの、機能が同じものを代替品とみなすという考え方がある。
・製品志向よりも市場志向のほうが変化に強い。化粧品ではなく、希望を売る。鉄道の運営でなく、人と物資を運ぶなど。
・資源ベース戦略論の基本メッセージ
①ある企業が優れた業績を上げるのは、他社よりも優れた経営資源や能力を持っているからだ。
②他社に真似されにくい、自社独自の能力(コンピタンス)や資源の蓄積が競争優位の源泉となる。
・企業の経営資源の種類
→一般に企業の経営資源とはすべての資産、ケイパビリティ、コンピタンス、組織のプロセス、企業の特性、情報、ナレッジなど、企業のコントロール下にあって、企業の効率と効果を改善するような戦略を構想したり、実行したりすることを可能にするものである。
・経営資源は次の4つのカテゴリーに分類される
①財務資本 ②物的資本 ③人的資本 ④組織資本
・企業内部の強み、弱みを資源に基づいて分析する際に発すべき4つの問い ①経済価値valueに関する問い
②希少性rarityに関する問い ③模倣困難性imitabilityに関する問い ④組織organizationに関する問い
・ビジネスモデルとは何か
ビジネスモデル=どのような事業活動をしているか、あるいは構想するかを表現する「事業活動の構造」のモデル。少なくとも以下の三つのモデルが必要
①戦略モデル:どんな顧客に何をどう魅力付けして、どんな資源を保有して、どのように提供するかを表現する
②オペレーションモデル:戦略モデルを実現するための業務プロセスの構造を表現する
③収益モデル:事業活動の利益をどう確保するのか。収入を得る方針とコスト構造を表現する。
・時に必要となるモデル
①市場モデル:市場の構造や顧客の特性分布を表現する
②競合モデル:ライバルや新規参入者に対してどう競争しようとしているかを表現する
③サプライチェーンモデル、パートナーモデル:どういう企業とパートナー関係をつくりどういう関係をつくるかを表現する(拡張されたオペレーションモデル)
④コミュニティモデル:コミュニティとどういう関係をつくるかを表現する
⑤課金モデル:誰にどういう方法で課金するかを表現する
・最も重要なことは「顧客は誰か?」である
とくに重要なことは「顧客にとっての魅力を高めること」「ライバルが追随できないようにすること」
・戦略モデルキャンバス
コスト構造・収入モデル・価値提案・ターゲット顧客・チャネル・機能魅力・ライバル代替品・活動・資源・パートナー取引先・コンテキスト
・市場の境界線を引きなおす6つのパス
①オルタナティブな産業 業界内のライバル企業に照準を合わせるのでなく、オルタナティブな産業を見渡す
②戦略グループ 戦略グループ内部のポジションに注意を向けるのでなく、業界内の様々な戦略グループを見渡す
③購買者グループ 買い手の要望によりよく答えることに力を注ぐのでなく、業界の購買者グループを定義しなおす
④補完製品やサービス 業界の枠組みの中で製品サービス価値を最大化しようとするのでなく、補完的な製品とサービスを見渡す
⑤機能や感性の方向性 業界の機能感性の方向性に沿って価格パフォーマンス比を改善するのでなく、業界の機能あるいは感性の方向性を問い直す
⑥時間 外部トレンドへの適応を目指すのでなく、将来にわたって外部トレンドの形成にかかわる
・ERRCグリッド コストダウンと付加価値の向上を同時に行う
①減らすReduce 業界標準と比べて思い切り減らせる要素は何か
②創造するCreate 業界でこれまで提供されていない今後付け加えるべき要素は何か
③取り除くEliminate 業界常識として製品に備わっている要素のうち取り除けるものは何か
④増やすRaise 業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か
・クリステンセンの破壊的イノベーションの3つの法則
①過剰満足(既存品が機能過剰)あるいは非消費の顧客をターゲットとすることから始める
②「good enough」が大きな価値を持ち得ることを認識する
③既存の競合他社にとって魅力がない、あるいは関心がないと思われるようなことを行う
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早稲田大学根来教授の著書。同期が紹介してくれて琴線に触れたので読んでみた。フレームワークや理論を実務で使えるためのヒントが分かりやすく詳細に書かれている。
まず、今の自分の置かれた状況における「答え」を探すことが必要であり、そのためには経営学を知っていると仮説の精度が高まったりしたり、また理論の限界を意識することはとても大事であることを学んだ。さらにインプット(学習)、例えば理論、フレームワーク、成功者体験、事例を基に自分の中で①どんな問いをして、②どうやって推論して、③どうモデル化するか、を考える必要がある。その結果戦略やビジネスモデルと言ったアウトプットが創出される。
優秀なビジネスパーソンがやっていることは以下。
①パターンを作り上げて、好循環させること
②理論やフレームワーク(の限界を意識して)具体化させながら、オリジナルを作り上げる
⓶-1間違った使い方をしないために理論やフレームワークの思想と概念を理解する必要がある。
⓶-2分類したりするときは、「抽象度」と「着眼点」を設定する。
③理論と持論を相互作用させる
概念と言葉
①社会科学の言葉は、「共有できているようで、できていなくて、でも何となく共有できている」レベル。
⓶任意の2つの事を「同じ」と取ることも「違う」と取ることもできる。つまり分類は「着眼点」で決まる。何に着眼するかは、社会もしくは価値観が決めるもの。また、この価値観は明確にする必要がある。
③社会科学の因果関係は、時間先行性、代替原因の存在、原因の部分性がある。
④因果関係は、「もしこれが無かったら?」を考えると良いが、どれも恣意性がある。
⑤理論の多くは「不在要因」を加えてモデル化している。共通性を見出す時は、必ず捨てている部分がある。概念を設定して、共通した因果関係を取り上げる。特殊な部分は捨てる。これが理論化。現象そのものがくくられているのではなく、設定された概念によって現象がくくられているので、どういう概念設定するかは大事。概念化とは何かの属性に着眼すること。
⑥社会科学がある命題を主張してもその多くは時代や社会背景にして成立しているため、安定的ではないため、あまり信用しない方がいい。
思考実験の手がかり
①ビジネスには一般的に主張する原理があり、知っておくとビジネスモデルを設計する時に良い。
①-1規模の経済:単位当たりコスト低下。「今何個作るか」
①-2経験の経済:経験によるノウハウ蓄積による単位当たりコスト低下。「今まで何個作ったか」カーブはやがて寝る。
①-3範囲の経済:シナジー効果による単位当たりコスト低下。
①-4ネットワークの経済:利用者の拡大が便益の増加へ。サイド内ネットワーク効果は「その利用者が属するグループにとって、製品価値が向上あるいは下落する効果」を言う。電話やfacebook。サイド間ネットワーク効果は異なる種類のプレーヤー間で働くネットワーク効果。ゲーム。
⓶アドバンテージマトリクスは規模の経済性を利用したり、例外を追及したりするときの参考にして、批判的な見方をする。
③業界は「互いに代替可能な製品を作っている会社の集団」であり、ビジネスをどういう抽象度で考えるかによってライバルが変わってくるので大事。抽象度は上げ過ぎないために、「技術」、「機能」が同じものでみるといい。プラス「程度」も。
④この抽象度の程度を取り込んだのが「戦略グループ」という概念。つまり業界の中にあって、似ている企業のグループ。製品、顧客層、販売地域の専門度、ブランド指向型、プッシュかプルか、流通業者の選択、品質政策、技術のリーダーシップ、垂直統合度、コスト競争力、サービス提供度、価格政策など。
⑤ポジショニングとは、「どの戦略グループに入るか」。
⑥ビジネスモデルによって、利益率が変わるので、ビジネスモデル設計は重要。
⑦RBVは「ある企業が優れた業績を上げるのは、他社よりも優れた経営資源や能力を持っているから」ということを主張であり、A社とB社の業績格差を説明したいもの。そのフレームワークがVRIOである。
ビジネスモデルのプロトタイピング
①ビジネスモデルとは「こういうビジネスをしたい」という構想を組み立てたもの。
⓶戦略、オペレーション、収益モデルは絶対必要。
③最も重要なのは、「顧客は誰か?」であり、「顧客にとっての魅力を高めること」が重要である。次に「(仕組みを作ることで)ライバルが追随できないようにすること」。お客様が求めているのは「機能」。
④戦略モデルは自己中心的に考える。顧客は誰か?を決めた上で、事業インパクトの魅力(価値)と持続的な競争優位性(隔離)を考える。
⑤価値とは「どんな機能を求めていて、何が魅力なのかを特定」すること。
⑥機能は必要不可欠なもので、魅力は付加的なもの。
⑦ライバルとは「お客様がどっちにするか?」と迷う者。
⑧戦略モデルはディスカッションツール。顧客、機能、ライバル、魅力、価格、仕組み、コンテキスト要素が必要。
➈収益モデルの基本は、収入が何に比例して、比例しないか、誰から収入を得るか。
⑩戦略モデルキャンパス
⑪ブルーオーシャン戦略は、既存の競争相手と激しく戦うのではなく、新しい市場を想像することを目指す理論。競争の軸をつくること。ストラテジーキャンパス
⑫市場の境界線を引き直す「6つのパス」
⑫-1オルタナティブな産業を見渡す
⑫-2業界内の様々な「戦略グループ」を見渡す
⑫-3業界の「購買者グループ」を定義しなおす
⑫-4「補完的な」製品とサービスを見渡す
⑫-5業界の機能あるいは感性の方向性を問い直す
⑫-6将来に渡って外部トレンドの形成に関わる
⑬減らす、取り除く、創造する、増やす
⑭バリューインパクト分析、満足原理(これでもう十分満足だ)、インパクトを極限まで追求しても得策ではない。
⑮顧客分析の基本は、分けて、選んで、位置付ける
⑯コンテキストとは「自分のやろうとしていることがうまくいく前提、あるいはそれをやることが好ましいと思う前提」。
⑰妥当性と正当性をチェックする。妥当性:よくあてはまること、ぴったりあてはまること。正当性:ただしく道理にかなっていること。 -
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ネタバレ[読んだ理由]==================
新聞の書籍紹介コーナーにあって興味をもった。「定石を超えた独創的なビジネスモデルを構築した企業の経営方針をわかりやすく解説」という所が気になった。
[読んだ後の感想]==============
独創的な企業の例が色々と挙げられているけど、単発の紹介で終わるのではなくて、それを単なる偶然としてではなく、論理的な理由を持って説明してくれてるので、参考になった。
■出発点
・ビジネスモデルは「理想・意図」、対してビジネスシステムは「現実」。
前者は整合性を志向するが、後者は常に不整合な部分を含んでいる。
この不整合を如何に手直しし続けるかが、事業を進化させるという事。
・ビジネスモデル設計の出発点は「戦略モデル」。
「顧客にとっての価値を高める」と、
「競合との競争に持続的に勝てる」の2つを必須事項にして組み立てる。
■因果関係
・ターゲット/顧客を決めないビジネスモデル設計は有り得ない。
やろうとしてるビジネスの「顧客は誰か」がはっきりしなければ、
例えば5force分析時の「業界」も、厳密な線引きが出来ない。
・ビジネスのロジックは、筋が通っていなければ破綻する。
その点、玉子屋のロジックは合理性が高い。
「こうすれば、こうなる」という因果関係が上手く組み込まれている。
・企業は、ターゲット顧客を設定し、その顧客に大きなインパクトを与える点を持ち、
劣る点が有ったとしても大きなマイナスを与えないようにするべき。
後者については「グッドイナフ=十分満足」という評価を得られれば良い。
・経済性原理にはそれなりの一般性があるから、
経済性原理を意識しておくと、ビジネスモデルを設計する時には参考になる。
しかし意識し過ぎると戦略が縛られて、誰でも思いつく発想をする事になる。
寧ろ例外を追求する戦略を取るほうが、大きな成功に繋がりやすい。
■妥当性と正当性
・新しいビジネスモデルは仮説に満ちている。
そのモデルが実現する=「できる」と思えるかは「仮説(コンテキスト)」次第。
・2種類のコンテキスト
1.妥当性:ビジネスモデルに現実性が有るかどうか。
4つのポイント(価値、隔離、価値と隔離の連結、収益性)でチェック
2.正当性:ビジネスに関係するステークホルダー(顧客や株主、従業員、取引先)
にとって、「このビジネスは正しい」と感じられるかどうか。
・仮説/コンテキストが大胆であれば有るほど、
なかなか成立しないかもしれないが、その分、追随してくるライバルは少ない。
そういうリスクを取るかどうかを判断しなければならない。
■模倣困難性
・強い会社を分析して、何か参考にできることを見つけるときには、
全体を見る事も重要だが、強く繋がっている部分を捉えることも重要。
・強い会社は、部分ではなく、全体の「システム」としての優位性が有る。
部分だけを模倣しても意味が無い、システム全体を模倣する事はできない、
しかし「部分システム」を真似ることは可能。
・部分システムを分析/提案する時は、差別化システムは「差別化」から書いていく。
そして、それを支えている活動や資源は何か、と遡る順序で分析する。
(差別化に結びつかない資源は、分析しても意味が無い)
・差別化システム論:
資源と差別化のあいだに「活動」というレイヤーを加える。
資源と差別化の直接的な繋がりを否定し、「活動」というレイヤーを加えて考える。
資源は活動の手段でしかない。「活動」を如何に習慣化するか、が重要。
■発展性
・ビジネスは、やることによってますます強くなっていくようにする事が重要。
同じようなことを繰り返しているようで、実は毎年良くなっている、
そういう自己強化の構造を作り上げていくことが重要。
・自分がどういう自己強化のループを回したいか、意識化する必要がある。
「どうすれば会社は良くなっていくか」の確信の共有。
仕組みが強くなると成果が上がる。結果が出る事で確信が深まり、自己強化が進む。
[備忘録]======================
■第一部:出発点
■第二部:因果関係
一般的に弁当屋さんというのは何種類ものメニューを用意しているのが普通です。1品に絞るという考え方はふつうじゃない。その「常識」に挑むことで、玉子屋は成功しているわけです。
目先の競争に勝とうとする会社は、コストを下げたら価格を下げてお客さんを増やそうと考える。玉子屋はそうではなくて、コストを下げた文を食材に還元して質で勝負することにしたわけです。
「良い物をより安く」ということを素朴に追求する。そして、お客さんを増やして従業員にも還元する。玉子屋が競争優位に立つことができた理由は、古き好き日本経営のもっとも美しいものを追求したことに有るわけです。
ビジネスのロジックは、筋が通っていなければ破綻します。その点、玉子屋のロジックは合理性が高い。「こうすれば、こうなる」という因果関係が上手く組み込まれています。
ガンバリズムというのは、実際には他社とあまり差を付けられません。なぜなら、他社も同じように頑張ることができるからです。
例えばホテルなどで、意見を自由に書いてもらって支配人に届くようにしていることが有りますが、そういう意見には注意が必要です。その声がノイジーマイノリティーである可能性があるわけです。
企業は、ターゲット顧客を設定し、その顧客に大きなインパクトを与える点を持ち、劣る点が有ったとしても大きなマイナスを与えないようにするべきなのです。後者については「グッドイナフ≒十分満足」という評価を得られることが必要です。
「自分たちは「美味しさ」で競争したい。だから食材費は絶対にケチらない。その代わりに食材以外のコストを徹底して下げる。だから弁当の廃棄率を下げたい。そのためには配送効率をあげなければいけない。配送効率を上げるためには、配送員のやる気を高めなければいけない。だから給料は相場より高くする」そういうことを強く意識しているから、玉子屋は競争優位が持続する構造を作り上げることができた。経済性原理に従って規模の効果を発揮したいとか、「全体最適」にしたいとか、ビジネススクールで勉強するような概念からスタートしたわけではない。
経済性原理の場合は、例外なく全てのビジネスに当てはまるとは限りません。但し、それなりの一般生があるから、経済性原理を意識しておくと、ビジネスモデルを設計する時には参考になるわけです。
しかし、経済性原理を意識し過ぎると戦略が縛られて、だれでも思いつく発想をすることになってしまいます。寧ろ例外を追求する戦略を取るほうが大きな成功に繋がりやすいということは、多くの成功事例が物語ります。
■第三部:妥当性と正当性
ビジネスモデルのリアリティの欠如を回避するために、自分の頭のなかに有るビジネスモデルが現実と対応しているかどうかのチェックが必要になる。新しいビジネスモデルか仮設に満ちています。それが実現する=「できる」と思う理由は仮説なのです。
仮説とは、実現のための「前提」。コンテキスト。
1.妥当性:ビジネスモデルに現実性が有るかどうか。価値、隔離、価値と隔離の連結、収益性という4つのポイントに寄ってチェックできる
2.正当性:顧客や株主、従業員、取引先などビジネスに関係するステークホルダーにとって「このビジネスは正しい」と感じられるかどうか。
新しい事業構造を作る時には、将来に向けて仮説的前提を設けることになる。仮説的前提というのは、今、成り立っていなくても構わない。いかにしたら将来成り立つ可能性があるか、その前提を設計する。その前提が大胆であれば有るほど、なかなか成立しないかもしれないけれど、追随してくるライバルは少ない。そういうリスクを取るかどうかを判断しなければならない。
■第四部:模倣困難性
サウスウエスト航空は、他社にはない様々な要素がつながり合っていて、活動の相互依存性が高い。つまり高いシステム性がある。この高いシステム性によって、サウスウエスト航空は模倣困難性を実現している。
高いシステム性は、活動感に整合性があって、活動がお互いにフィットし、強め合う状況から生まれている。こうした「戦略的フィット」が競争優位と卓越した収益性を生み出す。
強い会社を分析して、なにか参考にできることを見つけるときには、全体を見る事も重要ですが、強くつながっている部分を捉えることも重要です。
部分システムを分析したり提案する時には、差別化システムは「差別化」から書いていく。そして、それを支えている活動や資源は何か、というふうにさかのぼるという順序で分析する。
差別化に結びつかない資源を分析しても意味が無いから。
差別化システム論は、資源と差別化のあいだに「活動」というレイヤーを加えた形になっている。つまり、資源と差別化の直接的なつながりを否定して、「活動」というレイヤーを加えて考えるのが差別化システム論です。
■第五部:発展性
大川さん(CSK)は、受託開発の技術をいに付けられるようなお客さんを意図的に選んできたと明かしています。五月蝿いことをいう相手だとしても、自分たちの資源蓄積になると思えるお客さんを選んできたというわけです。言い換えると、ファシリティーズマネジメントで、利益率のイイお客さんを選んでないのです。「システムの受託開発が出来る会社に変わっていくためには、このお客さんと付き合って行きたい」というお客さんを選んでいる。
ディー・エヌ・エーはモバオクをやっていた時に、出品者と入札者が頻繁にコミュニケーションするということに気づいたわけです。そのままモバオクだけ続けていくつもりなら、気づいただけで終わってしまうでしょうが、ディー・エヌ・エーはそうではなくて、「次」を意識した。そしてモバオクだけなら必要ないようなコミュニケーションツールを企画して、サービスを拡大するわけです。 -
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企業の組織環境における「規模」や「相互依存性」「ダイナミズム」を把握し、そうした状況下で変革を実現するための方法を理解することには困難がつきまとう。使えるのが従来の技術と概念的なツールだけなら、なおさらだ。これこそが、実践者のまえに立ちはだかる「変革のジレンマ」の本質だ。
ジョン・コッターはチェンジマネジメントの創始者とされている(実際、そのとおりだ)が、彼が考案した組織変革のための有名なフレームワーク「8つのステップ」は、その性質上、直線的なプロセスを採ることになる(注12)(図表1-8)。しかし、デジタルビジネス・トランスフォーメーションとは、事業の「複数」の側面に大きな変化を起こすことだ。だからこそ、複雑にもつれた組織に大きな変化を起こすためにも、従来のチェンジマネジメントは不向きなのだ。広範かつ全社的な変革ではなく、分離した単独の変革努力に一貫して集中しているからこそ、企業は従来のチェンジマネジメント手法(たとえば、プロサイ社のADKARモデルなど)に頼り、そうしたモデルに頼ってしまうからこそ、単独の変革努力に集中してしまうとも言える(注13)。以前から考えられてきたように、組織のもつれがなく、機能的に自律しており、変革の対象範囲がかぎられているなら、チェンジマネジメントで事足りるだろう。しかし、こうした条件がそろっていても、大半の組織変革が失敗に終わる。「足元に火がついている」と従業員に奮起を呼び掛けたり、変革を先導するチームをつくったりするなど、効果実証済みの手法がまちがっているわけではないが、それでもほとんどの大組織は、デジタル・ボルテックスという緊急事態を踏まえて大規模な変革をおこなうために必要な理解とアジリティ(くわしくは後述する)を有していない。
そうした変革を実行するには、従来のチェンジマネジメントの先にある領域に足を踏み入れなければならない。それが「オーケストレーション・ゾーン」(図表116の右上部分)だ。このゾーンに入ることで企業は、組織が持つネットワーク的な性質に対処し、いま求められている前例のない規模の変革に取り組めるようになる。企業は、組織を横断するかたちで変化を促し、多方面で事業の成果をあげる。それを何度でも繰り返せる。オーケストレーション・ゾーンでの変革は、高度な結びつきのアプローチを採ることを意味している。
「オーケストレート」とはどういう意味だろうか。DBTセンターでの定義は、「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」だ。
▫️変革目標
変革目標の第1の要素は、カスタマーバリュー創出のための組織的アプローチだ。リーダーは何よりもまずこれを念頭に置き、「顧客にとってどんな価値があるか」を明確に定義しなければならない。顧客第一主義を標榜する企業は多いが、これは遵守するよりも違反するほうが名誉になるといった類いのものだ。とはいえ、変革を成功させたいのであれば、カスタマーバリュー創出は絶対に不可欠だ。
ディスラブションの核にあるのは、新しい、よりよいかたちのバリューを創出することだ。これは、収益や利益ではなく、最終顧客のための価値だ。シンプルに言えば、ディスラブターは、よりよいカスタマーバリューを提供する方法を発明して、市場に変化をもたらしている。
前著の執筆準備中、私たちは、大きな成功を収めているディスラプター100社以上を研究して、彼らの「やり口」に共通する特徴を3つ発見した(図表2-1)。彼らが顧客価値を創出する方法は、コストを下げる、もしくはなんらかの経済的見返りを生み出す(コストバリュー)、②より迅速で、より便利な、よりパーソナライズされた顧客経験をもたらす(エクスペリエンスバリュー)、③たとえば買い手と売り手、講師と受講生のあいだに、これまでなかったつながりを創出する(プラットフォームバリュー)の3つだ。
▫️トランスフォーメーション・オーケストラ
ここで、私たちが「オーケストレート」という言葉を「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」と定義していたことを思い出してみよう。これはまさにオーケストラを率いる指揮者がやっていることだ。マエストロは演奏家たちの活動を監督し、彼らの能力の最もよい部分が表れた演奏を生み出す。全体として見れば、演奏は部分の総和を上まわるものになるはずだ。
変革目標の設定は、曲づくりに似ている。オーケストラの各部門(弦楽器や金管楽器、木管楽器など)に対し、適切なタイミングでそれぞれのバートを演奏するよう呼びかけるからだ。曲が完成したら(将来、どのような競争上の地位を達成したいかを決めたら)、次はそれを演奏(実行)しなければならない。
しかし、どうやったら演奏(実行)できるだろうか。どんなに美しい楽譜でも、楽器がすべて同時に演奏をはじめたら、もしくは全員が「楽譜の同じページ」を弾いていなかったら、耳障りな曲になってしまう。事業部門ごとの方向性を示した変革目標は、交響曲の「楽章」に該当する。これらをすべて集めると、企業が演奏しようと考えている交響曲(変革理念)となる。
私たちは、このフレームワークを「トランスフォーメーション・オーケストラ」と命名した。オーケストラを構成する8つの楽器は、組織内の8つの要素に対応している(図表4-1)(注1)。それぞれの要素には、会社の主力市場のモデリングや、利害関係者との関与の仕方、組織づくりの方法といった、リーダーにとって重要な検討事項が含まれている。トランスフォーメーション・オーケストラのフレームワークを使えば、リーダーは「脱部門的」な考え方で組織のサイ口から抜け出し、会社の目標を達成するために必要なあらゆるリソースをかき集め、活用できるようになる。
「楽器」は、組織リソースを合理的に分類したものだ。各楽器は、新しい製品やサービスの立ち上げや、デジタルによる新たな顧客経験の提供、企業文化の変革といった特定の仕事を実現するために連携する。変革に取り組むには、組織内のいたるところにあるリソース(楽器)をオーケストレートしなければならない。楽器は、部門や部署とイコールではないことに注意してほしい。これについては後述する。
華麗なオーケストラの演奏と同じように、デジタルビジネス・トランスフォーメーションを成功させるには「必要なとき」「必要な場所」に8つの楽器を参加させる。改革が必要な領域に優先順位をつけて、その順番を決めなければならないが、良質なオーケストレーションにするにはそれだけでは不十分だ(たとえば、弦楽器だけの演奏のあとにホルンの音だけが聴こえてくるような曲はめったにない)。
音楽における楽譜と同様、デジタルビジネス・トランスフォーメーションにおいても、組織内の異なる要素が調和して(同じタイミングで協力し合うかたちで)奏でられることが求められる。バイオリンのソロは力強いかもしれないが、ひとつの楽器だけではフルオーケストラのインパクトには到底およばない。製品やサービスを変えるだけ(たとえば製品とつながるようにするだけ)では、そのインパクトはかぎられている。私たちの調査によると、最良の変革(最も成功確率が高い変革)は、会社全体を対象としている。「組織全体」と「すべてのリソース」が関与するのだ。
私たちがトランスフォーメーション・オーケストラの核となる楽器を特定できたのは、DBTセンターの設立以来、さまざまなエグゼクティブたちと何百回にもおよぶ交流ができたおかげだ。そうして得た私たちの結論はこうだ。変革の成否は、トランスフォーメーション・オーケストラの3つのセクションに分類される8つの楽器がどれだけ必要かというバランスに左右される。
市場開拓セクション
1 製品・サービス(あなたの会社が売る製品やサービス)
2 チャネル(製品やサービスを顧客に届ける方法、市場までの道筋)
エンゲージメント・セクション
3 顧客エンゲージメント(顧客とどうかかわっているか)
4 提携業者エンゲージメント(提携業者のエコシステムとどうかかわっているか)
5 ワークフォース・エンゲージメント(従業員や契約スタッフとどうかかわっているか)
組織セクション
6 組織構造(事業部門やチーム、命令系統、プロフィットセンター、コストセンターの構造)やふるまいがどう報奨されるか)
7 インセンティブ(従業員のパフォーマンス
8 文化(会社の価値観や態度、信念、習慣)
トランスフォーメーション・オーケストラによって、変革の境界線を設けることもできる。多くのエグゼクティブにとって、デジタルビジネス・トランスフォーメーションは曖昧で、抽象的で、不安を掻き立てるものだ。そこに何が含まれていて何が含まれていないのか、あるいはどこから手をつけるべきなのかよくわからないが、「(3でも10でもなく)8つの楽器だけに集中すればいい」と示してやれば、そんな懸念を払拭できる。変革目標を実現するためにどう組織を変えればいいのかというタスクの範囲と構造がよくわかるからだ。
▫️変革目標を実行プログラムに落とし込む
①カスタマージャーニー・マップ作成
②ビジネスモデル設計
私たちが推奨するのは、少数の者たちにデザイン思考のトレーニングを受けさせることだ。そうすれば、彼らが社内外の人々に対して「ソリューショニング」することができる。
…
変革ネットワークから生み出されるのは「プロセスの変化」と「よりよい能力」である。したっがって、このプロセスと能力の「ビフォー」と「アフター」を測定できる基準を設けておくべきだ。
たとえば、「この変革がおこなわれるまえはサービスコール1本当たりのコストは59ドルだったが、変革後は35ドルになった」というように。ただし、最初はゆっくりと物事を進め、関連するプロセスと能力の「ビフォー」を測定できるようにしておこう。
③ビジネスアーキテクチャ
④能力評価
⑤コミュニケーションとトレーニング
⑥社内プラットフォーム
⑦社内ベンチャーファンド
⑧アジャイルな作業方式
▫️デジタルビジネス・アジリティー変化するための組織能力
前著『対デジタル・ディスラプター戦略」の後半(第Ⅱ部)は、私たちが「デジタルビジネス・アジリティ」と呼ぶ組織能力の説明に割いた。私たちはそれをシンプルに「変化するための能力」と定義し、どうすればデジタル・ボルテックスによって変化しつづける市場に組織が適応していけるかを説いた。
デジタルビジネス・アジリティには、「ハイパーアウェアネス(高度な察知力)」「情報にもとづく意思決定力」「迅速な実行力」という核となる3つの能力があり、これらが調和することで組織にアジリティが生まれる(図表514)(注12)。
ハイパーアウェアネス(察知力)は、自社を取り巻く環境やワークフォース、顧客起点の変化を察知する能力だ。バリューチェーン上のどこにあろうと、競合他社や顧客、サブライヤー、物理的資産に関する情報を収集する能力がこれに含まれる。情報にもとづく意思決定力は、ハイパーアウェアネスによって得られた情報を使い、考えられるかぎり最良の意思決定をする能力だ。この能力を実現するには、きわめて包括的になり、集合知や専門知識を活用して、適切な決定をするために必要な情報や視点、意見を探し求める必要がある。また、データ解析の力も借りなければならない。
迅速な実行力は、デジタルビジネス・アジリティの3つ目の要素で、時宜にかなった効果的な方法で意思決定を実行する能力を指す。適切なリソースを必要な場所に動的に割り当てることも、これに含まれる。事業プロセスも動的でなければならない。迅速に実行するには、ンスが生まれたらすぐに新しいプロセスを生み出し、それを展開してテストし、変更し、さらに学習しなければならない。でなければ、破壞的な企業にチャンスを奪われてしまう。高レベルのアジリティを備えるディスラプターたちと渡り合うには、デジタルビジネス・アジリティこそが要であると私たちは考えてきた。私たちの調査と、世界中の何百もの企業と交流をしてきた経験も、その考えを裏づけている。アジリティは、デジタル・ボルテックスの渦中にある企業にとって本当の意味で成功の礎となるものだ。こうした変化するための能力があれば、オーケストレーターは必要に応じてリソースを活用して変革に引き込み、たとえ一時的であるにしろ、特定の需要に対処させることができる。
人のリソースのエコシステムから瞬間的に高レベルの専門知識を引き出す能力、私たちが前著で「人材クラウド」と呼称した能力は、変革ネットワークの機能に計り知れない恩恵をもたら組織リソースとしてのデータも、また重要だ。トヨタ・モーター・ノースアメリカのCDO.ザック・ヒックスは言う。「たくさんのデジタルビジネス・トランスフォーメーションがデータの力を解き放ち、サイロから奪い返しています。データと洞察が自由になることで、企業はよりよい、より迅速な意思決定ができるようになります」インフラ、とりわけIT資産は、優先順位の変化に合わせて動的にオーケストレートし、迅速かつシームレスに転用しなければならない。デジタルビジネス・アジリティは、結びつきを強化し、いつでも変革可能な企業を生み出す。新たな情報や関連する情報をもたらす「弱い結びつき」と、組織に信頼と連帯感をもたらす「強い結びつき」をつくり出すのだ。
弱い結びつきは、情報源の巨大なエコシステムからアイデアとデータを集めることで、私たちを「ハイパーアウェア」な状態にしてくれる。そのため、ビジネスの必要に応じて専門知識と洞祭にアクセスし、「情報にもとづく意思決定」ができるようになる。弱い結びつきが、分散したリソースを必要なときに必要な場所に転用できるようにすることで「迅速な実行」が可能とな強い結びつきは、変革プログラムの実行を妨げる組織的、技術的、個人的な障壁を乗り越えるために、情報をより効率的に伝達することで「ハイパーアウェアネス(察知力)」「情報にもとづく意思決定力」「迅速な実行力」を生み出す。
▫️企業がとるべき21のアクション
| 一般原則
1.デジタルビジネス・トランスフォーメーションを追求する際には、チェンジマネジメントに頼るのでなく、変化するための「結びつきのアプローチ」の必要性を受け入れ、オーケストレーション・ゾーンで活動する。
8.経営陣は「変革の方向性を強化する」と一貫して明言する。マネジャーや従業員に対しては「その方向性をサポートするよう計画し、投資し、実行してほしい」とはっきり伝える。
21.CTOが他の主要なリーダーたち、とりわけCIOやトランスフォーメーション・リードたちと協働できるようにして、会社全体のアジリティのレベルを高める。これは変革のための基礎能力となる。新たな情報もしくは関連した情報を提供してくれる組織リソース同士の「弱い結びつき」や、結びつきのアプローチに必要な信頼と連帯感を育む「強い結びつき」の促進もここに含まれる。
| 変革目標を設定する
11.顧客を、デジタルビジネス・トランスフォーメーションの中心に据える。新しい価値もしくは改善された価値をどうやって最終顧客に届けるか、顧客視点からさかのぼって考える。
12.変革目標を設定する。これには、「カスタマーバリュー」を創出し、供給、実現するための適切な「ビジネスモデル」と、それを実現するための「対応戦略」が含まれる。変革目標は事業分野ごとに設定すること。各事業分野のリーダー(ならびに経営陣)は変革目標をサポートしなければならない。各事業の変革目標を定めるのはCTOの仕事ではない。
13.事業分野ごとに異なる変革目標を立て「対応戦略のポートフォリオ」を作成する。
| 変革理念を明確に伝える
14.変革理念(会社全体の変革ゴール)を明確に伝えること。理念は、正確で、現実的、包括的で、簡潔、測定可能(PRISM)なものでなければならない。上級リーダーたちに変革のアンバサダー役を務めてもらい、それぞれのチームのコミュニケーションやブランニングの場で変革理念を強調してもらう。
| オーケストレーション能力
10.社内のあちこちで進行している大きなデジタル・プロジェクトを文書にまとめ、見通しをよくし、相乗効果を生みやすくする。しかし、オーケストレーターはこうしたブロジェクトを「所有」すべきではない。
9.適切な規模の「社内ベンチャーファンド」をつくり、部門間横断型の取り組みと事業成果を加速させる。
6.変革ブログラムがバリューに与える影響をモデリングできるリソースを従事させる。これにより、変革に向けた努力を軌道に乗せ、利害関係者、とりわけ上級管理職と取締役会のサポートを獲得できる。
| リソースを動員し、結びつきを機能させる
15.トランスフォーメーション・オーケストラのすべての楽器を網羅した「ビジネスアーキテクチャ・マップ」を作成する。存在している人やデータ、インフラのマップの他、それらの関係性とワークフローについてもまとめる。
16.変革目標から浮き彫りになった課題と最も関係が深い「楽器(あるいは組織リソース)」を突き止める。
17.変革を進める際に直面する課題に取り組むために、複数の「楽器」で構成された「変革ネットワーク」をつくる。それぞれのネットワークは俊敏に動けるよう小規模にとどめ、的を絞った特定の課題だけに注力させる。こうすることで、変革の進捗や影響が測定しやすくなる。
| オーケストレーションのための組織づくり
2.CTOを任命する。謙虚で、順応性があり、ビジョナリーで、積極的に関与してくれる人物を雇う。
3.デジタルビジネス・トランスフォーメーションをオーケストレートし、組織リソースを動員してその結びつきを機能させる責任を、CTOに与える。一方で、変革の結果については責任を分担し、共通のKPI(主要業績評価指標)を用いる。社内の各部署・部門は、それぞれの領域にデジタル能力を実装し、変革を推進することに集中する。
4.CTOに高いレベルの序列を与える。中間管理職やコルディナティ(調整役)としてではなく、組織内に大きな影響力を持つ経営幹部の一員として扱う。
5.CTOの下に「変革推進室」を立ち上げる。チームは小規模にとどめること。このチームには変革を実行させるのではなく、変革に関係する業務の大部分をオーケストレートさせる。
7.変革推進室に、「デザイン思考」や「ビジネスアーキテクチャ」などのオーケストレーション能力を持った人材を引き入れることを最優先する。能力ギャップを埋めてくれる人材がいないかどうか、エコシステムにも目を向け、機敏に人材を引き入れる(貴重なスキルや高額なスキル、たまにしか必要としないスキルを持った人材の「タレントブール」を開発するなど)。
18.CTOが他部門や他部署のリーダーたちと強力な信頼関係を築けるようにする。変革推進室は、他の事業と張り合うものではなく、イノベーションやアジリティ、スピードの源泉だと考える。
19.他のチームから「トランスフォーメーション・リード」を指名し、グループをまたいだ実行の「縫い合わせ」をサポートさせる。サイロ化した部門をつくるのではなく、「結びついた実行」をおこなうために「組織のファブリック」を織り、それを既存の組織構造の上にかぶせる。
20.変革推進室は、「新しいプロセス」と「よりよい能力」のインキュベーションに注力する。成熟期に入ったら、こうしたプロセスと能力の管理は事業部門に引き継ぐ。変革推進室はその後も時間をかけてアウトプットの調整に従事する。
▫️日本企業をがんじがらめにする「もつれ」
1強力なタテ構造
2組織人のメンタリティー
3ソフトウェアの価値に対する理解
3つ目は、ソフトウェアの価値に対する理解度が低いことである。たとえば、いまや、ソフトウェア能力でクルマが選ばれる時代になりつつある。消費者は、エンジンやボディーなどのハードウェアが優れているかどうかよりも、(それらについては一定の水準を満たしているという前提のもとで)ナビゲーションやインターフェースなどの機能性、すなわちソフトウェアの使いやすさを重視している。テスラがすごいのは、同社のクルマが、まさに優れたソフトウェアのかたまりだからである。にもかかわらず、日本企業でソフトウェアの価値に対する理解度が低いのは、なぜか。その理由は、そもそも経営層がこれまでITにあまり興味を持ってこなかったからである。多くの場合、日本企業ではシステム子会社に丸投げしてきた(だから日本企業のIT部門は欧米企業に比べて極端に小さく、経営者から遠い位置にある)。欧米企業の経営者は、ITやデジタルの価値をよく理解しているか、理解していなくても学ばなければいけないという意識が強い。このことは、日本企業が今後DXを推進するにあたって致命傷となる恐れがある。