根来龍之のレビュー一覧
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根来先生の著作は、総じて読みやすい。本書も例に漏れず、お弁当の玉子屋等の複数の具体例を通じて、事業の成り立ちが平易な言葉で語られていく。
個人的な理解だが、本書の肝はいわゆるVRIOフレームに近い観点を用いながら、それぞれの要素が有機的に繋がっていることで競合優位が成立している構造を、図で直感的に捉えさせてくれる点にある。強みを「点」としてではなく、「関係性」として見る視点が、自然と身に付く。
一方で欲を言えば、その優位性がどこを起点に生まれ、どのような過程を経て積み上がっていったのか、あるいは有機的につながっているがゆえに、どのようなパラダイムシフトに脆さを抱えうるのか、といった時間軸や揺らぎの話まで踏み込まれていたら、さらに思考が広がった気もする。
もっとも、それは読み手に委ねられた宿題なのかも。構造を紹介された後は、その構造が崩れる可能性まで自分で考えてみる。そういう余白を残している点もまた、本書の誠実さというか、ただ読んで納得して終わらない良いところかもしれない。 -
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世の中のビジネスモデルが一通り学べる本。
新事業、スタートアップを検討しているビジネスモデル初学者におすすめです。イラストを多用しているため視覚的にも楽しめます。
末尾のワークショプを活用してスタートアップのアイデアを膨らませることができました。一方で顧客の求めるニーズはヒアリングや調査を別途行った方がいいと思います。
使い方としては以下がおすすめです。
3部のビジネスモデルの作り方に目を通す⇨1部のビジネスモデルとはを読む(初学者の場合)⇨ビジネスモデル大図鑑で自社ができそう・関連しそうなビジネスモデルを読む⇨3部のワークショップを実際に行う。
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ネタバレVUCA時代の重要なキーワードである「Disrupt」と「Digital Transformation」を融合した、まさに”Disrupt, or to be disrupted, that's the question.”という問いへの回答の一助になる一冊。
デジタルトランスフォーメーションの本質は、単なるコスト削減ではなく、顧客への提供価値を高めることを目的としている(その上でコストも下がる)。3つのバリューはその方向性を検討する上で重要。
そのために、データドリブンな組織の構築(ビジネスアジリティ)は必須。
カタカナの造語が理解にしにくく、訳が頭に入ってこないの等の欠点はあるものの、デジタルを理解した経営戦略を体系的に学べる。
以下、本書からの学び
【「破壊者」ではなく「破壊の力学」に注目する】
重要なのは「ディスラプター」ではなく、「ディスラプション」。
【デジタル・ディスラプションの破壊力】
デジタル・ディスラプションと従来の競争力学とのちがいは、「変化の速度」と「利害の大きさ」。
業界ごとのデジタル・ディスラプション(p.338、表A4)
製薬業界ではデジタル・ディスラプションの可能性は低いが、影響を免れるというわけではない(パーソナライズ、デジタル・マーケットプレイス等)。
既存企業の強み(資金調達力、ブランド力、顧客基盤)は「規模」頼み。デジタルによって規模は容易に突破可能。ディスラプターは規模の不経済から利益を得ている(小規模の方が良い)。
ディスラプターはバリューチェーンの構築なしにバリューを創出。重要なのは、「バリュー」そのもの。
「自らをディスラプト」は、会社が顧客に価値を提供してきた方法がどれだけ強固かを疑うところからはじめる。
【デジタルが可能にしたビジネスモデル】
デジタル技術が新ビジネスモデルを可能に。
デジタルがもたらす3つの「カスタマーバリュー」
①コストバリュー(p.52、表1):競争におよぼす効果が最も強い。製品・サービスの非物質化。解析を駆使した情報優位、また情報優位による業務最適化。
中間業者として商取引に介入。
②エクスペリエンスバリュー(p.58、表2):製品・サービスをアンバンドルし、安価に提供。
③プラットフォームバリュー(p.66、表3):ネットワーク効果(メトカーフの法則)。
組合せ型ディスラプション:ビジネスモデルが組み合わさり、3つのバリューの破壊的な組合せが顧客にもたらされる。
【バリューバンパイアが市場の利益を飲み干す】
自らの競争優位により市場の売上・利益を縮小させるディスラプター。既存企業のマージンを枯渇、時代遅れの存在にさせる。市場の急激な変化を促進。
大きなイノベーションを経験していない市場では、多くの顧客が既存サービスに不満。
デジタル化可能なあらゆるものがデジタル化される。製品そのものではなく、「チャネルや消費行動のあるステップ」がデジタル化の可能性。
事例:ナップスター(p.91、表4)
顧客はデジタル・ディスラプションには大きな価値があると理解。
デジタル・ディスラプションによって、新たな市場機会生じる。一時的な空白地帯。『ホワイトスペース戦略』参考。
既存企業が3つのバリューを創出し、攻勢にまわれるチャンス。
『ブルーオーシャン戦略』の「市場の境界線」「模倣を防ぐ壁」は無意味に。
事例:アップル(p.111、表5)
【ディスラプターとどう戦うか―4つの対応戦略】
防衛的戦略:収穫戦略、撤退戦略
攻撃的戦略:破壊戦略、拠点戦略
①収穫戦略:ディスラプティブな脅威を遮断。顧客、提携業者、規制機関、世論形成者、資本提供者との関係を利用。法的措置、マーケティング活動、料金引き下げ等。低迷期間中に引き出せるだけのマージンを引き出す。デジタルで効率性を向上。収穫戦略が唯一の対策ではない。(p.124)
②撤退戦略:今の市場から離脱しニッチな市場に逃げる。事業維持コスト>利益 の場合。
③破壊戦略:デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを駆使して3つのバリューの創出に専念。
提供業者としての自らの役割から離れ、顧客の気持ちになって考える。
コストバリューとエクスペリエンスバリューは一般的には相容れない選択肢だが、デジタル・ディスラプターは違う。
④拠点戦略:ディスラプションにおける競争上の利益を維持。
ディスラプションをもたらした企業が最終的な勝者になるとは限らない。
「新設」「買収」「提携」のいずれを採るべきか?
戦略ごとのカスタマーバリューの形態(p.145、図13)
技術コストは指数関数的に減少していく(ムーアの法則)が、既存企業は高い技術コストを負わされている。コスト曲線の自らの立ち位置を「リセット」することが課題。
【アジリティを高める3つの組織能力】
ディスラプターのスピード、柔軟性、有効性に対応できる能力(p.304、図18)
「察知力」「情報に基づく意思決定力」「迅速な実行力」
3つの能力には連続性がある。
時には、ディスラプターのデジタル技術が必要な能力獲得を助けてくれる。
【これまで手に入らなかった情報を集める―ハイパーアウェアネス】
察知力:関連するデータ・洞察を収集し、自社が置かれた環境の変化を察知し、監視する能力。
どんな洞察を得たいか?何を監視するか?そのためにどんなITインフラ・人的資源が必要か?
【解析力を高めてバリューを見抜く―情報にもとづく意思決定力】
情報に基づく意思決定力:データを解析して知見を吸収し、適切な人材を引き込みつつ、一貫して正確な意思決定をするための能力。
良い意思決定ができるかは、良いデータ解析ができるか、社内外の専門家たちが必要なデータにアクセスし、適切な段階で意思決定プロセスに関与できるか。
【リソースとプロセスを動的にする―迅速な実行力】
迅速な実行力:うまくいっていない、時代遅れのアプローチを捨てて迅速かつ効果的に実行する能力。
【いかにして競争力を高めるか】 -
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プラットフォームの教科書 超速成長ネットワーク効果の基本と応用
著:根来 龍之
プラットフォームというのは、お客さんに価値を提供する製品群の土台になるもの。 つまり、「他のプレイヤー(企業、消費者など)が提供する製品・サービス・情報と一体になって、初めて価値を持つ製品・サービス」を意味する。
従来型の産業は「バリューチェーン構造」として捉えられていたが、プラットフォームビジネスは「レイヤー構造」として捉えると理解しやすい。それぞれの改装にいろいろなプレイヤーが参加して、エコシステムを形成する、そして、ネットワーク効果がエコシステムの成長に大きな役割を果たす。エコシステムに参加するのは、企業だけではなく、個人の場合も多い。GAFAのビジネスは、一般大衆を参加者として巻き込み、強大化した。シロウトが主役になるアマチュアエコノミーとしての側面がある。
本書の構成は以下の3章から成る。
①プラットフォームの基本
②プラットフォームの広がり
③プラットフォームの戦略
わかっているようでわかっていない「プラットフォームビジネス」。本書のわかりやすさは群を抜いている。新しい概念、広い概念を私たちがよく知ってる企業を例に挙げ、黎明期から現状と今後にまでスポットをあてながら体系的に紹介されている。
メリットだけではなく、デメリットやリスクについても触れてあり、書名通りプラットフォームの教科書としての導入本として持ってこいである。
巻き込むことがひとつの大きなキーワードとなるプラットフォームビジネス。まだまだこれからの概念。走りながら正していくというビジネスモデルを取り入れるにはそれなりの度胸が必要。リスクを許容しながら前向きに捉える長期的視点の姿勢でかつスピーディーに対応することが肝となりそうである。 -
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ー デジタル・ディスラプターが狙っているのは「バリューチェーン」ではなく「バリュー」そのものだ。そのためB2B企業は価値がどこで生み出されているのかを理解しておかなければならない。残念ながら私たちが調査してきたB2B企業の多くは、高いハイパーアウェアネスを持っていなかった。
これはおそらく、生み出された価値が最終顧客(すなわち消費者)によってどう消費されるかという観点から数歩離れたところにいるからだろう。 ー
体系的で分析的で現実的で面白い。
ディスラプターが重要なのではなく、ディスラプトという事象そのものの方が重要。ディスラプターの成功や失敗が重要なのではなく、ディスラプトそのものの当社への影響を考えることの方が重要。
本質を見誤らない議論が重要なんだなぁ〜。
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非常にわかりやすい本です。にもかかわらず、自分の語彙力(ターム)と理解力のなさを痛感します。
プラットフォームはランチャーなど複数の言葉に置き換えられるものと思います。
ビジネスモデルの構造としてのプラットフォームの説明が体系的に書かれています。
もとは学術論文で、それを一般向けにわかりやすく再構築リライトしたものとのことです。
ここのところ、ネットや新聞ではGAFAを始めとするプラットフォーマーという言い方の方が多く見受けられるように思いますが、その元となるものがプラットフォームです。
ここで言われるプラットフォームとは目新しいモデルではなく、ベースとなる大きなシステムがあり、それにアタッチメントとしてのサブシステムが乗っかるということです。
最近それが顕著に観られるのがITの分野であり、例えばOS上を走らせるアプリケーションソフトがそのモデルにあたります。
現実にはさらに多様性があり、複雑になっていきます。
印象に残ったタームとしては「スイッチングコスト」「マルチホーミング」などがありました。 -
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ネタバレユニコーン企業トップ10(2017年10月時点)のうち、プラットフォームをビジネスモデルとする企業は8つを数える。ユニコーンとは企業価値が10億ドルを超える非上場のベンチャーを指す。UberやAirbnbが代表格。圏外であるが日本企業では、メルカリが有名だ。プラットフォームビジネスがなぜこれほど急成長し注目を浴びるのか、紐解くため手にとる。
プラットフォームの特徴としてレイヤー構造、ネットワーク効果、エコシステム、アマチュアエコノミーの4つが挙げられている。急成長という意味では、レイヤー構造、ネットワーク効果、アマチュアエコノミーのどれも重要だが、最も頭を悩ますのがエコシステムだろう。例として挙げられているのが、任天堂のファミコン。自前でゲームソフトをつくることもできたが、自社以外にも機会を提供し、その代わりゲーム機とソフトとの接着技術を特許化しロイヤリティ収入を得るビジネスモデルを構築したといった具合だ。
但し、勘違いしやすいのは、ロイヤリティ収入を得るエコシステムを構築する余り顧客ニーズを軽視してしまうことだ。これは載ってはいないが、同じゲーム業界で3DO(スリーディーオー)の事例が当てはまるだろう。任天堂より安いロイヤリティでサードパーティを集めることを目論んだが、小売価格が54,800円と高額だったため失敗に終わった。
プラットフォームの急成長が特に欧米で目立つのは、旧来型のビジネスに新しいエコシステムで、いかにゲームチェンジ(変革)を仕掛けていくかという視点を持ち合わせているからだと、エコシステムのwikiを併せて読んで納得がいった。そういう意味では規制が厳しい日本では既存産業を守る方向に力学が働き、生まれにくい環境になっているのかもしれない。メルカリで盗品や現金が出品されていた問題が起こったとき、メルカリが日本のみを市場としていたら、マスコミによって潰されていただろう。
最後に、プラットフォームの一人勝ちの条件や、反対に阻害要因を整理していたりと、企業同士が競争していく視点で書かれているのはビジネスをしている立場にとって嬉しい。プラットフォームのビジネスモデルを理解する上で読んでおきたいー冊だろう。 -
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第四次産業革命と言われる時代へ「既存企業の戦い方」という具体的書名に惹かれて。デジタル化するか、しないか、という設問はもはや存在しなくてデジタル化が当たり前である時、恐る恐るプロジェクト立てているような会社のリーダーにとって厳しい厳しいお話です。でも産業のための産業と考えるのではなくて、カスタマーファーストで考えるとこうなるよな、という真っ当なお話でもあります。コストバリューとエクスペリメントバリューとプラットフォームバリュー、そしてその組み合わせというビジネスモデルもわかりやすい。その上で、ナップスターに代表されるバリューバンパイアという破壊者の存在や、そのあと登場するアップルのコンピテンシーであるバリューベイカンシーというチャンスも納得です。でも一番響いたのは「プラニングは無意味」「必要なのはアジリティ」という指摘。今までプロトタイピングとか言って、やらやないよりはやった方がいいレベルとは違う行動の力を持てるかどうか?これが日本の組織に一番難しいかも。
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多くの企業においてデジタル化が至上命題とされ、既存企業がスタートアップを始めとするディスラプターの脅威を感じつつある中、シスコとIMDの優れた研究者らが、既存企業がどのようにそうした脅威に対抗していけばよいのかを、戦略論としてまとめた一冊。個人的な感覚にはなるが、マイケル・ポーターの「競争の戦略」を、”デジタル時代における競争の戦略とは何か?”という観点で書き起こしたら、このような本になるのではないか、というくらい、刺激的。
本書では学術的な研究メソッドに基づき、以下のような概念の定義がなされる。
・デジタル化が顧客にどのようなバリューを提供するかの観点から、デジタルのビジネスモデルは「コストバリュー」、「エクスペリエンスバリュー」、「プラットフォームバリュー」3つに類型化される。また、重要なのはこの3つを複合的に併せ持つことで、より企業としての競争力を高めることができるという点にある
・そうしたバリューを武器にして、市場はヴァンパイアのように荒らされる場合もあれば、逆に荒らされることによって一時的にかもしれないが、新たなホワイトスペースとしての市場が見つかる可能性もある
・そのリスクと機会に対して、既存企業は「収穫/破壊/撤退/拠点」という4つの対抗戦略を取り得る
・その対抗戦略を実行するために、既存企業は、3つの能力を身に付ける必要がある。「行動と状況を早いスピードで察知するハイパーアウェアネス」、「情報に基づく高度な意思決定力」、「動的/柔軟なリソース配分に基づく迅速な実行力」である。
本書が優れているのは、巷で騒がれるようなスタートアップを始めとするディスラプターそのものに目を奪われるのではなく、ディスラプションという事象自体に注目して、その事象・環境の中で、どう戦うか、という点に意識をシフトさせるべき、という点を明言している点にある。過去のディスラプターがそうであったように、特定のディスラプターが未来永劫に持続する保障はない(特にディスラプターの中には、法・規則を軽視しがちなプレーヤーがいるが、そうしたプレーヤーが長続きしないことは歴史が証明している)。だとしても、一度引き起こされたディスラプションは止めることができないのも事実である。MP3とナップスターの登場によって、音楽市場がかくも無残に破壊されたように。