倉橋由美子のレビュー一覧
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本来なら35年くらい前に読んでても不思議ではない本。
(読んだ気もしたけど読んでなかった(^^;))
もっとも、当時読んでも猟奇系サイドカルチャー小説くらいにしか思わなかったかも知れないので、結局本というのは「読んだ時が旬」でいいんじゃろうね。
1970年の安保闘争の前年、國民(年若い学生が主だったろうが)がまだ政府フザケルナと怒る根性を持っていた頃に書かれた小説。
スミヤキ党の「密命」を帯びてある島に降り立ち、その島にある「感化院」に潜入したスミヤキストQ、の冒険譚、である。
密命とは、その島での低層階級である「雑役夫」や「院児」を組織して「院長」ら権力層を殲滅することらしいのだが、 -
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この本の解説が、先日読んだ
中井英夫『ハネギウス一世の生活と意見』に収録されていたので、
そう言えば未読だったなぁ……ということで
絶版につき古本を購入。
1963~1971年に文芸誌に掲載された短編を集めたもの。
現代の人権意識その他の良識的感覚からすると
眉を顰めたくなる表現も散見され、少し呆れたが、
作者はただ、自分にとってわからないものをわからない、
おぞましいものをおぞましいと率直に述べただけなのだろう。
最も衝撃的かつ面白かったのは「マゾヒストM氏の肖像」。
谷崎潤一郎×江戸川乱歩とでも言ったらいいか、
奇妙な人物にしばし日常を掻き回される女流作家の、
それでも冷徹な慧眼が小気味よ -
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文章が綺麗でほぅ…ってため息をついた。本自体古くて字が小さいから読むのをやめようか考えるんだけれど、独特の美しい言い回し、流れるような文体に魅せられてつい読んでしまう。
表題作である「ヴァージニア」よりも次の「長い夢路」、それよりもさらに「霊魂」が好きだけれど、ヴァージニアという名を冠していながら処女性の欠片もないヴァージニアにはすがすがしさを感じる。安易に美少女にしないところも好き。淀みの表現が上手くて、こんな陳腐な感想しか書けないのが申し訳なくなるほどに素敵な文章だった。
「霊魂」は淫靡で甘美でとろけるような読み心地。捧げられるものならすべてを、のいじらしさに切なくなって、ラストは少し恐ろ -
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【本の内容】
鬼に変貌していく老婆を捨てた息子と、その嫁の意外な末路とは…。
「姥捨山」や、織女と牽牛の「天の川」といった、有名な昔話をベースにしながらも、独特の解釈で綴られた10の物語。
大ベストセラー『大人のための残酷童話』の著者が、性欲や物欲、羞恥心といった、人間の奥底にひそむ感情を見事に描きだす。
[ 目次 ]
[ POP ]
「姥捨山異聞」「子を欲しがる老女」「臓器回収大作戦」など、おどろおどろしいタイトルが目立つ、10の残酷童話集。
昔話がベースだが、ほのぼのした温かさは皆無だ。
老人になるのが怖くなる-いえいえ、ここまで毒の強い話をすべて読破すれば、怖いものなんて -
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【あらすじ】時は21世紀、なお権勢を誇る元元首の邸宅に、一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった……。
首だけで生きているテロリストの青年の首を預けられた舞が、生まれた時からハイソな暮らししかしてこなかった女子の自分の世界目線で周囲を見る、と言うのが裕福が故の大らかさで逆に偏見がある様でない、と言う、あくまでも自分の興味中心なとことか。高い教養とか当たり前に自分にあるモノで、それ -
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ページを開いている間はそこにどっぷり浸ることを約束してくれる本。ちょっとした時間の合間に非日常を旅したいときに開く。といっても綺麗で美しいお花が咲き乱れて良い匂いがする世界がそこにあるわけでなく、凄まじいレトリックの嵐で普通の日常が生々しく気持ち悪く描かれ息が詰まる世界である。でもそれが逆に淫靡で妖しくて取り憑かれてしまうのだ。
どれもこれも面白いが、とりわけ「貝の中」は゛私゛のほぼ全体にわたる女性蔑視のあらゆる表現が異常すぎて面白い。普通の歯科女子学生の゛私゛の目に映る物全てが生々しく時には暴力的で、彼女が語る寮生活がとんでもない世界として映し出される。
V.スジコ、P.イクラ、Y.タラ -
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いくつもの宗教が共存し、華やかで洗練されながらも、どこか子どもっぽい文化が花開き、男性の姿は、宦官以外はほとんど見ないという驚異の女性の国。それがアマノン。どこにあるか知らないけれど、どこかで見たことのあるような国。
種子島への鉄砲伝来や16世紀のキリスト教伝来を思わせる導入部から、ニヤニヤ笑いがとめられない。政治家や経済界のトップたちなど、いわゆるVIPが10代の美少女を秘書(≒愛人)にする風習や、ブッダ教の尼僧・ムイン師によるアマノン国の宗教事情の説明、それに、社会的地位が高いほど、言葉遣いが馴れ馴れしくぞんざいな感じになるところなど、どうにもおかしくて笑ってしまう。とくに忘れ去られて