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そこは悪夢の島か、はたまたユートピアか。スミヤキ党員Qが工作のために潜り込んだ孤島の感化院の実態は、じつに常軌を逸したものだった。グロテスクな院長やドクトルに抗して、Qのドン・キホーテ的奮闘が始まる。乾いた風刺と奔放な比喩を駆使して、非日常の世界から日常の非条理を照射する。怖ろしくも愉しい長編小説。
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Posted by ブクログ
スミヤキ党員Qが遭遇する冒険がグロテスクに描かれています。諧謔・風刺がいっぱいの物語でした。konnokのお気に入りの1冊です。
革命をめざす前衛党に所属するQは、H感化院の練士に就職し、そこで「スミヤキ党」の教義にもとづく活動をおこなうことをもくろみます。ところが、彼には仕事らしい仕事はあたえられず、ほかの練士にならって院児たちの「巡回」をおこなうものの、その方法も目的もまったくあいまいでした。Qは、彼の奉じる唯物論の立場に...続きを読むおいて、活動の足場となるべき「労働」の実態すらも明確につかむことのできません。そればかりか、感化院では院長の体剃りをはじめ、常識はずれの奇妙な慣習と規律が行きわたっており、Qはそれらの事態に対して教義にもとづく解釈をくだし、活動の方針を定めようと、むなしい努力をつづけます。 やがて感化院では、院児たちの反乱が起こり、Qも騒動に巻き込まれることになります。彼は、抑圧された院児の解放に同調し、彼らの抵抗運動を革命へ向けて組織することを試みますが、彼のことばは院児たちにとどくことはなく、なすすべのないまま感化院を去っていきます。 唯物論に立脚する左翼理論が観念的なことばの肥大化をもたらすことを素材にして、パロディとアイロニーを駆使する作家である著者がその資質をぞんぶんに発揮して見せた作品といえるように思います。Qが実践するスミヤキ党の理論闘争は、カフカ的な官僚機構をその巨大な肉体によって象徴される院長の観念体系のうちに埋没し、そればかりか同僚の練士である神学者や文学者、あるいは確率論的世界観と決定論的世界観の対立を回転円盤ゲームと競犬の考案者たちの観念世界のなかに紛れ込んで引っ張りまわされます。他方で、現実の世界における院児たちの反乱が、彼らの観念遊戯とはまったく無関係に起こることで、Qの滑稽さが浮き彫りにされています。
本来なら35年くらい前に読んでても不思議ではない本。 (読んだ気もしたけど読んでなかった(^^;)) もっとも、当時読んでも猟奇系サイドカルチャー小説くらいにしか思わなかったかも知れないので、結局本というのは「読んだ時が旬」でいいんじゃろうね。 1970年の安保闘争の前年、國民(年若い学生が主だ...続きを読むったろうが)がまだ政府フザケルナと怒る根性を持っていた頃に書かれた小説。 スミヤキ党の「密命」を帯びてある島に降り立ち、その島にある「感化院」に潜入したスミヤキストQ、の冒険譚、である。 密命とは、その島での低層階級である「雑役夫」や「院児」を組織して「院長」ら権力層を殲滅することらしいのだが、Qが自己の劣情や奇怪な登場人物たちに絡め取られ、モタモタしているうちに、却って自身が殲滅されそうになるという話である。 閉塞状況の中で行き場を失うということではカフカの「城」とか安部公房の「砂の女」などを思い出すが(ちゃんとは思い出せないが(^^;))、あちらの(確か)静謐と諦観の漂っていた世界とは異なって、こちらの世界はエネルギッシュに飛散する言葉の横溢で埋め尽くされている。饒舌なのだ。 その閉塞状況の中の闘いで描かれるのは、宗教であり、セックスであり、食人であり、差別であり、文学であり、ギャンブルであり、そして(虐げられた者のハケ口としての)革命的思想であり…といった人間の最暗部にうごめくドロドロしたもの、要するに現代社会の似姿なのである。 その頃…高度成長期の國民の心のありさまを映しとり、当時人気を博した(というより物議を醸した)小説のひとつであろうけれども、社会が本質的に内包する「閉塞状況」を描き出したという点では(舞台設定も登場人物たちの思考も基本的にはピンと来ないが)、今に通じる普遍性は持っているように思われた。 …なんつーことを考えていたら、他者による評論の形を借りたあとがきで著者に、 この物語からなんらかの意味を読み取ろうとするのは「旧人類インテリの悪い癖」 と、バシっと言われてぎゃふんとなるのだが、一方その著者にして、 本作は「ドン・キホーテ(Don Quixote)」や19世紀ヨーロッパの革命的秘密結社「カルボナーリ(炭焼党)」をモチーフとしている とも記述しており、著者自身の風刺精神と問題意識は明確なのである。
なんなのだろう・・・・、途中のカタカナ文のところで頭おかしくなるーーー!! ぎゃー!!ってなりました。 ほんとに。 ヘンテコな話です。 食人文化の話が怖かった。
スミヤキ党員Qが、階級打倒のための革命を起こすという密命を帯びて孤島の感化院に赴く。その地での冒険譚(?)。 本書が学生運動に着想を得ているのは明らかである(著者はあとがきで否定してるが)。 特に本書の重要なモチーフとして出てくる「食人」を軸に読み解けば、それが共産主義革命への当てこすりであること...続きを読むは容易に推察できる(権力の打倒は次の権力を生み、最終的にはその権力も自壊する)。 とはいえ、本書は私のように当時のことに無知で、感覚として一切理解していない人間にとっても楽しい読み物である。 観念的な部分は置いておいて、Qの眼の前に次々現れる奇異な人物・事件を頭にイメージしながら、この不思議な(不気味な)小説世界を堪能するのが、本書を読む態度として一番ふさわしいのではないだろうか。
「全知の悪の肉化」という院長のキャラが秀逸。学生運動に対する諷刺・揶揄的な側面は感じざるを得ないが、それ以上にグロテスクな物語設定が面白い。
スミヤキストとは「炭焼き党」から連想される革命を起こすのが目的のある団体から、ある他の団体にスパイ&工作のため派遣された「Q」さんの物語。「Q」とはクエスチョンからきています。 書かれたのが昭和44年(1969年)ですからなにがなし全共闘が暴れた時代を彷彿させますが、そんなことは今となっては懐か...続きを読むしい昭和の時代の懐古調です。しかし、この小説は歴史的な詮索は関係なく「正義と信じたものを引っ提げて、硬直した集団の中でのひとり活動はコッケイでもあり、勇ましくもあり、果たして本人が信じているものがいいことなのか?とあれやこれや悩むのが人間というものだ、という落ちになるのでしょう。 とにかくこれぞ文学的だと文学好きが満足する小説でありました。
ある意味ダークホラー、暗黒小説。グロテスクな世界観が圧倒的な筆力で描かれていて、読み切るまで陰鬱な気持ちになりました。ドグラマグラより精神蝕まれる作品じゃないかと思いました。設定されている世界観や話の構成がパーフェクトなので、なんとか最後まで読みましたが、かなりキツかったです。好きな人にはハマる小説...続きを読むかもしれませんが、私は☆3つの評価が最高得点です。
主人公が超のつくポジティブ至高。 それか単にマゾヒストなのか。 結構グロいけどどことなく笑えて楽しかった。
『聖少女』、『暗い旅』と来て、『人間のない神』の次にこの一冊。あんまり難しいことを考えずに読みたいが…。この後は『夢の浮橋』、『アマノン国往還記』の予定。今年はしばらく倉橋由美子祭りでいきます。
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