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他者との自由な関係を認めあった恋の、突然の破綻――“かれ”の失踪。“かれ”を捜しに暗い旅へと出発した“あなた”の心は、失われた愛を求めて過去へ内部世界へと退行してゆく。だが、絶望は次第にイマジネールなものの中に吸収され、最後に“あなた”は一つの小説を書くことを決心する。〈ことば〉の自己繁殖によって反世界の文学空間をきりひらく、倉橋由美子の処女長編。
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Posted by ブクログ
初めて読んだのは中学生の時。よくわからないまま引き込まれ、最愛の愛読書となりました。今もまだおそらく理解はできていませんが、時々読みたくなる本です。
ミシェル・ビュトールの『心変わり』に倣って、二人称を用いてストーリーが説かれる形式をとった作品です。 とつぜん失踪した婚約者のミチオをさがし求める「あなた」は、東京を出発して「第一つばめ」に乗車し、京都へ向かいます。そこで「あなた」は、叔母の元夫でフランス文学を講じる佐伯に出会い、彼と関係をむすぶ...続きを読むとともに、婚約者の消失を受け入れます。 著者は作品の末尾に付されている「作者からあなたへ」という文章のなかで、二人称小説という形式を採用した理由について、「これはあなたを遠隔操作するための装置ともいえます。あなたはこれまでのように作者から一方的にある物語を語りきかされるかわりに、小説のなかに招待され、参加することになるでしょう」と述べています。著者が読者を招き入れる世界は、耽美的な文章で構成されているものの、美しいものばかりが集められているわけではなく、どちらかといえば不愉快な気持ちにさせられる出来事もあります。 「あなた」は、失踪した婚約者が書きのこしたあらゆることばを蒐集し、「かれの断片を綴りあわせてかれの全体を構成すること、かれの《書かれなかった小説》を書きあげること」を決意するにいたります。婚約の解消という出来事を受容するとともに、その出来事がことばによる再構成への道筋が示されることで、読者は著者によって招き入れられることになった、あまりたのしいとはいえない世界が、創作の宇宙へと開かれていくのを体験することになります。
日本ではたぶんこれだけではないでしょうか。二人称小説。この作家は親がいくつか持っているはずなので、今度実家に帰ったときに家中漁ってみます。
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倉橋由美子
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