▼調べた単語
・翻って(ひるがえって):1 反対の面が出る。さっと裏返しになる。「裾が―・る」2 態度・説などが、急に変わって反対になる。「評決が―・る」
・賢慮(けんりょ):賢明な考え。すぐれた考え。
・コンテクスト:文脈
・プラグマティズム:思考の意味や真偽を行動や生起した事象の成果により決定する考え方。19世紀後半の米国に生まれ、発展した反形而上学的傾向の哲学思想。
・涵養(かんよう):水が自然に土に浸透するように、無理をしないでゆっくりと養い育てることを意味する。「読書力を―する」
・インフォーマル:公式でないさま。形式ばらないさま。略式。
・逡巡(しゅんじゅん):(スル)決断できないで、ぐずぐずすること。しりごみすること。ためらい。「大学に進むべきか否か逡巡する」
・帰趨(きすう):(スル)物事が最終的に落ち着くこと。行き着くところ。帰趣。「勝敗の帰趨を見とどける」「人心の帰趨するところを知らない」
・フロネティック・リーダー:アリストテレスのフロシネス(賢慮)という概念に基づいて野中郁次郎一橋大学名誉教授が提唱したものです。この賢慮型リーダーシップには、①「善い」目的をつくる能力、②場をタイムリーに作る能力、③ありのままの現実を直観する能力、④直観の本質を概念化する能力、⑤概念を実現する政治力、⑥実践知を組織化する能力、の6つの能力が必要とされます。
・フロネシス:理念と実践の相互作用がなくして生成されることはあり得ず、その方法論は実践的推論です。実践的推論による結論は、演繹的三段論法のように論理的真偽ではなく、仮説検証型フィールドワークなどにより、仮説設定と修正を反復することにより導かれます。
・演繹(えんえき):普遍的命題から特殊命題を導き出すこと。一般的に、組み立てた理論によって、特殊な課題を説明すること。
・帰納(きのう):推理・思考の手続きの一つ。個々の具体的な事柄から、一般的な命題や法則を導き出すこと。
・拙劣(せつれつ):(技術や出来具合が)へたなこと。つたないこと。
・軍事テクノクラート:政治経済や科学技術について高度の専門的知識をもつ行政官・管理者。技術官僚。テクノクラット。
・狭隘(きょうあい):せまいこと。
・セクショナリズム:一つの部門にとじこもって他を排斥する傾向。なわばり根性。
・法匪(ほうひ):《匪は悪者の意》法律の文理解釈に固執し、民衆をかえりみない者をののしっていう語。
・悪弊(あくへい):悪い習わし。悪習。悪風。「悪弊を断ち切る」
・兵站(へいたん):戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食糧などの前送・補給にあたり、また、後方連絡線の確保にあたる活動機能。ロジスティクス。「兵站部」
・拙速(せっそく):できはよくないが、仕事が早いこと。また、そのさま。
・巧遅(こうち):出来ばえはすぐれているが、仕上がりまでの時間がかかること。
・俊英(しゅんえい):学問・才能などが人より秀でていること。また、その人。
▼付箋をした箇所
P.15
実践知を形成するための基盤の一つは経験である。とりわけ重要なのは修羅場経験、そして成功と失敗の経験だ。
論理を超えた多様な経験が欠かせない。
手本となる人物との共体験も、リーダーシップの形成に大きな影響を与える要素であろう。
もう一方では教養(リベラル・アーツ)も重要な要素である。哲学や歴史、文学などを学ぶなかで、関係性を読み解く能力を身につけることができる。
そんな弁論術も含めた政治力は、フロネティック・リーダーの重要な要素である。
P.17
直観を概念化する能力を挙げた。換言すれば、暗黙知を形式知化する能力である。概念化、言語化できて初めて、組織的な共有が可能になる。それにより、組織からのフィードバックを得て、直観をさらに磨くことができる。このスパイラルアップのサイクルは、言葉によって起動されるのだ。
P.20
いま実行すべきは、サイロの破壊とタスクフォースの創設を通じた機動的な知の総動員である。それが日本企業復活のカギだと私は確信している、
P.44
哲学は「どうあるか」という存在論と、「どう知るか」という認識論で構成され、その両面から、真・善・美について徹底的に考え抜く。それによって、モノではなくコトでとらえる大局観、物事の背後にある関係性を見抜く力、多面的な観察力が養えるのだ。
P.45
フロネシスを備えたリーダーを、私はフロネティック・リーダーと名づけた。そうしたリーダーは、以下六つの能力を備えている。
①「善い」目的をつくる能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのままの現実を直観する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
P.52
イノベーションは、ある理論を前提とし、そこから論理分析的に正しい答えを引き出す演繹的思考では実現しない。完全競争状態の市場という理想郷を不完全状態に変えることで、企業は利潤を手にすることができるという考えをモデル化したのがマイケル・ポーターだが、そういうやり方では現実の延長線上にある戦略や革新ならぬ改善しか生まれない。
それに対して、個別具体の現実から出発し、新しいコンセプトや物事の見方を打ち立てようという強い思いから生まれる帰納的思考が、イノベーションには不可欠となる。帰納的思考は最後には必ず行動につながる。行動によってみずからの考えや判断の正否がわかるからだ。
P.217
「ああ、兵は拙速を尊ぶ。巧遅に堕して時機を失うよりは、最善でなくとも、次善の策で間に合わせなければならない」
P.218
「目前の悲惨に覆われて全局を忘れてはならない。これは洋の東西を通じ、いつの世にも変わることのない指揮官の統率である」
P.230
彼らに共通するのは、戦に臨む不動の信念であり、臨機に重大決断を下せる柔軟な頭脳であった。そのうえ闘魂と敢闘精神はアメリカ人さえたじろがせるほどだった。彼らなら、南雲のように優柔不断を繰り返すことも、致命的な判断ミスを何度も犯すこともなかったろう。
P.249
インフォメーションがあったことはほぼ間違いない。問題は、それを適切に分析し、情報(インテリジェンス)に転換して有効に活用したかどうかである。