安房直子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこの本大好き!ファンタジーの魔法をかけてもらえるような素敵な本。
「急に、おばあさんは、楽しくなりました。めったにないようなすてきなことが、これから始まるような気がしてきました。」
これは本文中の一節なんだけど、おばあさんだけじゃなくて私も読んでいてほんとうにわくわくしてしまうのだ。大人向けの童話ということだけど、子供でも読めそうではある。
全編通して始まりにはしんみりした寂しさが漂っており、そこにやってくるファンタジーがぽっと明かりを灯してくれるようなお話が多い。動物たちとの素朴で楽しいやり取り、手のひらに収まる不思議な宝物。どれも好きだけど、「あるジャム屋の話」「星のおはじき」が特にお気に入り。
ただほんわかした話には収まらないところもあって、「星のおはじき」「天窓のある家」「日暮れの海の物語」は盗人・裏切りの物語だ。後ろめたい気持ちを抱えた人間と、木や動物のお話。「星のおはじき」はクラスメイトのおはじきを盗んでしまった女の子を柳が優しく慰め、おはじきと「あなたの心」を預かってあげると提案してくる。あくまで「預かってあげる」のがミソなのだと思う。預かったものは、いつか返してもらわなくてはならない(そこまではお話の中では書かれていないが)。その重さに耐え、罪を自分の中にきちんと収めて持っていなくてはいけない。他二編を読んでも、そういったことが前提されているように思うのだ。
不思議な交友の温かい思い出も、後ろめたい思い出もその人の中にあり続けて、ふとした時どこかから顔をのぞかせ、その人の胸の内に光と影を作るのだろう。読書の思い出も、そういうところがある。この本も、私の心に植わっていてほしいと思うような素朴で豊かな物語だった。また読みたい。 -
Posted by ブクログ
周りの動植物や物たちの心の声を具現化したかのようなやさしさが、望まずとも孤独を感じて生きていかねばならない人達に届けられる物語は、私のような、今でもひとりぼっちで暮らしている人間にとって、温かくも切ない思いに駆られます。
主人公たちの年代も、少女時代のささやかな思い出が蘇ってくる展開に、安房さんのやさしさを感じさせる、おばあさんが主役の話や、貧しい家庭に生まれながらも思いやりをもった、健気な女の子の話など、様々です。
特に、後者の「海からの贈りもの」での、お祭りに行く女の子に、病気のおかあさんが、「これですきなもの買っておいで」と、渡した五十円玉二枚を、自分のものを五十円分、おかあさんのものを五十円分、買いたいと思う女の子の気持ちを思うと、物語とはいえ、そのやさしさに込み上げてくるものを止められません。
また、もう一つ印象的だったのが、表題作の「春の窓」で、ここでの猫があたたかいという話に、実はとても共感できるものがありました。
というのも、この話を読んだとき、以前、住んでいた家から通ってた公園で、歩道の縁石に座っていた私の膝の上で、丸まって眠ったノラを思い出したからなんですけど、その時の温かさは、本当にひとりじゃない気持ちが芽生えた喜びで胸がいっぱいになって、しかも、それが幻想でなく、ノラの存在をはっきり証明する重さを実感したときの嬉しさといったら!
そうした体験を踏まえながらも、更に、その先の素敵な幻想世界を見せてくれる、安房さんの物語には、老若男女すべての人が持ちうる、ふとした時に感じるやり切れなさや孤独に、そっと寄り添って温めてくれる、ささやかな愛を感じられました。
しかし、その愛も、本書を読み終えた途端、現実に戻ってきたような感覚で消滅してしまい、行きどころのない壮絶なもの寂しさを感じた私は、思わず、庭の木々達に縋るような視線を向けていたのでした。 -
Posted by ブクログ
とうふやさんとすずめの「おくりもの」のお話
「とくべつのおねがいです。」
「とうふを 一ちょう、こしらえてもらいたいのです。」
ある朝、すずめたちが、とうふやにやってきて言いました。すずめ小学校の入学いわいに、ごちそうをしてあげたいと思ったのです。そこで、とうふやが、とうふやあぶらげを作ってやると、すずめはおれいを言ってかえっていきました。その日の夕方、すずめたちは、またとうふやにやってきます。「おすそわけに あがりました。」
すずめがくれた「おくりもの」は、とってもすてき。それに、とうふやさんが、とうふやあぶらげを作るようすも楽しいですよ。さしえもたっぷりで読みやすいです。