作品一覧

  • 私家版 差別語辞典

    私家版 差別語辞典

    ビジネス・実用

    4.0
    1巻1,815円 (税込)
    被差別部落に根ざす隠語、あるいは心身障害や職業にまつわる言葉をめぐり、語源や歴史的背景、どこでどのように使われてきたのかなどを具体的に解説。また抗議と自主規制により「消えた言語」となってしまった現状も抉る。“路地”に出自を持ち、「差別の現場」を精力的に取材し続けてきた著者だからこそ書けた「言葉」たちの総覧。
  • カナダ 歴史街道をゆく

    カナダ 歴史街道をゆく

    小説・文芸

    4.0
    1巻1,426円 (税込)
    2017年7月1日、カナダは建国150周年を迎える。テロや政治状況などで暗雲たれこめるヨーロッパやアメリカに比べ、誰もが笑顔になれる、癒される国として注目を集めている。昨年、アメリカでトランプ政権が誕生することが明らかになったとき、移民を希望するアメリカ人たちがカナダの移民登録サイトに殺到したことも話題になった。 建国以来、世界中からの移民を受け入れ、多民族主義を宣言し、異なるルーツの人びとが幸福に共存する道を選んできたカナダ。その広大な国土を、ジャーナリスト上原善広氏が一年目はプリンス・エドワード島からウィニペグまで、二年目は東端の地ニューファンドランドを起点に、鉄道でトロントからバンクーバー、さらに北上して北極圏のタクトヤクタックまで踏破した。カナダ全土に張り巡らされた「トランス・カナダ・トレイル」(TCT)という古い街道や廃線になった線路跡などのトレイルを自転車でめぐったり、建国の礎となった大陸横断鉄道に乗って西海岸に到達し、先住民と共にユーコンで狩りをしたり、歴史をたどりつつ「今」のカナダを体感する気鋭のルポルタージュ。
  • 四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼
    値引きあり

    四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼

    小説・文芸

    4.2
    1巻990円 (税込)
    辺土(へんど)とは、遍路で生活する者である。 時に放浪者として迫害される彼らに密着取材! 誰も書けなかった「日本最後の聖と賤」たるもう一つの遍路を、5年をかけて描いた唯一無二のルポ! 【辺土(へんど)とは】 草遍路、乞食遍路、プロ遍路、職業遍路、生涯遍路とも呼ばれる。 長い歴史の中、「へんど」はやがて乞食を意味するようになるが、昭和三〇年代までは遍路といえば「へんど」だった。 一方で、八八ヵ所を経文を唱えて回る遍路は、ときに畏敬と畏怖の目で見られた。彼らは聖と賎を同時にそなえる存在だったのだ。 現代の草遍路を探し、共に托鉢修行も著者は行うだけでなく、福田村事件(関東大震災で起きた日本人による日本人虐殺)をはじめ、 路地の歴史もたどりながら5年をかけて遍路を続けた。 最後の聖域の本質を大宅賞作家が抉り出す、類書なき紀行ルポ! 「帰るところもなくなった生活を賭けて、托鉢と接待、野宿だけで何年も何周も巡礼することによって、その人は確実に浄化され昇華されていく。本質的な何かを取り戻すか、もしくは欠けていた何かを得ることができるようになる。  四国遍路で人は変わることも、再生することもできるのだ。私はこの目で、確かにその一例を目撃した」(本文より) 【目次】 第一章 辺土紀行 徳島――高知 第二章 幸月事件 第三章 辺土紀行 高知――愛媛 第四章 托鉢修行 第五章 辺土紀行 松山――香川 第六章 草遍路たち おわりに 参考文献一覧
  • 幻の韓国被差別民 「白丁」を探して

    幻の韓国被差別民 「白丁」を探して

    ビジネス・実用

    -
    1巻990円 (税込)
    白丁とは、朝鮮半島に存在した被差別民をいう。牛の屠畜・解体を業とし、柳細工なども営んだ。かつては厳しい賎視をうけたが、朝鮮戦争などによってその集落は失われた。その後、多くの末裔は牛肉を扱う仕事につく。被差別問題に関わる著者が、表面的には今はないと言われる彼らの現在の差別状況が、実際どういうものなのかをつぶさに取材した、入魂の第一ノンフィクション。
  • 今日もあの子が机にいない 同和教育と解放教育

    今日もあの子が机にいない 同和教育と解放教育

    ビジネス・実用

    5.0
    1巻968円 (税込)
    1970~80年代、学校教育の現場で部落差別問題に対処する、同和教育と解放教育という二つの取り組みが行われた。そこで「救われた」著者が、それらを回顧しまた総括する。
  • 一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート

    一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート

    小説・文芸

    4.2
    1巻924円 (税込)
    ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞作!(2016年度) 大宅賞受賞作家の上原善広が18年間をかけて聞き取りを続けた、まさにライフワークと言える作品。 18年以上の関係から紡がれる、ノンフィクションとしては異例の一人称文体。 「全身やり投げ男」。 1989年、当時の世界記録からたった6センチ足らずの87メートル60を投げ、その後はWGP(世界グランプリ)シリーズを日本人で初めて転戦し、総合2位となった不世出のアスリート・溝口和洋。 ■中学時代は将棋部。 ■高校のインターハイではアフロパーマで出場。 ■いつもタバコをふかし、酒も毎晩ボトル一本は軽い。 ■朝方まで女を抱いた後、日本選手権に出て優勝。 ■幻の世界新を投げたことがある。 ■陸上投擲界で初めて、全国テレビCMに出演。 ■根っからのマスコミ嫌いで、気に入らない新聞記者をグラウンドで見つけると追いまわして袋叩きにしたことがある。 無頼な伝説にも事欠かず、まさに陸上界のスターであった。 しかし、人気も体力も絶頂期にあり、来季のさらなる活躍を期待されていたにもかかわらず、90年からはパタッと国内外の試合に出なくなり、伝説だけが残った……。 その男の真実が、25年以上の歳月を経て、明らかとなる。 プロとは? アスリートとは? 天才と秀才の差とは? 日本人選手が海外選手に勝つための方法とは? 陸上界を貫き、競技を変えた漢を18年以上の歳月をかけて追った執念の取材!! 泥臭い一人の漢の生き様から、スポーツ界が、社会が、昭和と平成の歴史が彩られていく。 【目次】 プロローグ 第一章 発端 第二章 確立 第三章 挫折 第四章 復活 第五章 参戦 第六章 引退 エピローグ 著者あとがき 文庫版著者あとがき 解説
  • 路地の教室 ──部落差別を考える

    路地の教室 ──部落差別を考える

    小説・文芸

    4.0
    1巻880円 (税込)
    「路地(同和地区、被差別部落)って何?」「住所による差別なんて今もあるの?」「知らなければ差別はなくなる?」「同和教育、同和利権とは?」全国千か所以上の路地を歩いた著者が全ての疑問に答えます。差別について、他者について、イチから考えてみよう。
  • 被差別のグルメ

    被差別のグルメ

    小説・文芸

    3.1
    1巻880円 (税込)
    差別されてきた人びとが生きる場所には、そこでしか食べられないグルメがある。無名で、見た目もよくない、でも、これほど美味しい料理はない……。大阪のアブラカス、サイボシ、ゴシドリ。アイヌの鹿肉、川魚、鍋料理。北方少数民族の魚皮でつくったデザート。沖縄の島々に伝わるイラブー、ソテツ。そして在日韓国・朝鮮人から広がった焼肉など。垂涎の美味と異色の食文化を大宅賞作家が描く傑作ノンフィクション。
  • 被差別の食卓

    被差別の食卓

    小説・文芸

    3.8
    1巻814円 (税込)
    大阪のある被差別部落では、そこでしか食べられない料理がある。あぶらかす、さいぼし……。一般地区の人々が見向きもしない余り物を食べやすいように工夫した独自の食文化である。その“むら”で生まれ育った著者は、やがて世界各地にある被差別の民が作り上げた食を味わうための旅に出た。フライドチキン、フェジョアーダ、ハリネズミ料理――。単に「おいしい」だけではすまされない“魂の料理”がそこにあった。
  • 断薬記―私がうつ病の薬をやめた理由―(新潮新書)

    断薬記―私がうつ病の薬をやめた理由―(新潮新書)

    小説・文芸

    5.0
    1巻792円 (税込)
    二〇一〇年、うつ病と診断された。大量の向精神薬や睡眠薬を飲み、通院する日々。執筆意欲は衰え、日常生活を律することも叶わず、自殺未遂を三度も起こしてしまう。「薬はもう飲みたくない」。その思いから医療関係者への取材を敢行、「減薬」に挑み、そして遂に「断薬」に――。心の支えとなる主治医との出会い、専門医との協力、副作用への対処、荒行のような湯治……試行錯誤の過程をすべて明かした、大宅賞作家による衝撃の私記。
  • 異形の日本人

    異形の日本人

    小説・文芸

    3.8
    1巻792円 (税込)
    虐げられても、貧しくとも、偏見に屈せず、たくましく生きた人たちがいた。哀しい宿命のターザン姉妹、解放同盟に徹底的に弾圧された漫画家、パチプロで生活しながら唯我独尊を貫く元日本代表のアスリート、難病を患いながらもワイセツ裁判を闘った女性、媚態と過激な技で勝負する孤独なストリッパー……社会はなぜ彼らを排除したがるのか? マスメディアが伝えようとしない日本人の生涯を、大宅賞作家が鮮烈に描く。
  • 日本の路地を旅する

    日本の路地を旅する

    小説・文芸

    3.9
    1巻733円 (税込)
    大宅壮一ノンフィクション賞受賞。中上健次はそこを「路地」と呼んだ。「路地」とは被差別部落のことである。自らの出身地である大阪・更池を出発点に、日本の「路地」を訪ね歩くその旅は、いつしか、少女に対して恥ずべき犯罪を犯して沖縄に流れていった実兄との幼き日の切ない思い出を確認する旅に。
  • 聖路加病院訪問看護科―11人のナースたち―

    聖路加病院訪問看護科―11人のナースたち―

    小説・文芸

    3.6
    1巻660円 (税込)
    たった一人で患者宅を訪れ、医療行為から生活面のケアまで全てをこなす「訪問看護師」。在宅介護や在宅死が大きな注目を集め需要が高まる中、その数は急速に増えつつある。そうした数ある訪問看護ステーションの中でも最先端を走るのが聖路加病院だ。11人のナースたちが昼夜を問わず飛び回る。終末期医療から難病の小児まで――「よりよく生きることとは何か」に正面から向き合う彼女たちの等身大の姿を描く。
  • 路地の子(新潮文庫)

    路地の子(新潮文庫)

    小説・文芸

    4.0
    1巻649円 (税込)
    昭和39年、大阪――。中学三年生の龍造少年は学校にはいかず、自らの腕だけを頼りに、天職と信じた食肉の道へと歩み始めた。時に暴力も辞さない「突破者(とっぱもん)」と恐れられ、利権団体や共産党、右翼やヤクザと渡り合いながら食肉業界を伸し上がった一匹狼――。時代の波に激しく翻弄されながら、懸命に「路地の人生」を生き抜いた人々の姿を、大宅賞作家が活写した、狂おしいほどに劇的な物語。
  • 発掘狂騒史―「岩宿」から「神の手」まで―(新潮文庫)

    発掘狂騒史―「岩宿」から「神の手」まで―(新潮文庫)

    小説・文芸

    4.2
    1巻649円 (税込)
    岩宿遺跡を発掘した在野の研究家、相澤忠洋。「旧石器の神様」と呼ばれた考古学者、芹沢長介。日本人の根源を辿る考古学界において、歴史を変えたその新発見は激しい学術論争、学閥抗争を巻き起こす。やがて沈殿した人間関係の澱は、日本を震撼させた「神の手」騒動に流れ着き――。微に入り細を穿つ徹底取材が生んだ骨太ノンフィクション。『石の虚塔 発見と捏造、考古学に憑かれた男たち』改題。
  • 「最も危険な政治家」橋下徹研究 孤独なポピュリストの原点

    「最も危険な政治家」橋下徹研究 孤独なポピュリストの原点

    ビジネス・実用

    -
    1巻110円 (税込)
    「改革」と称して次々と奇策を繰り出し、それを疑問視するものは徹底的にやりこめる。チャパツの弁護士から政治家に転進し、自身の政党まで作り上げたこの人物は、いったい何に突き動かされているのか。そして彼の思想、行動力はどんな環境が育んできたのか。新潮45掲載時に大反響を呼び、いくつもの後追い記事を生んだ「橋下徹研究」の嚆矢。

ユーザーレビュー

  • 断薬記―私がうつ病の薬をやめた理由―(新潮新書)

    Posted by ブクログ

    わかりやすくて読み易かった。専門用語もあんまり無いしハッキリと自語り(って言うとなんかイメージ悪いかも)してくれる。筆者はメンタル強そう。話をまとめるのが上手くて読んでて長すぎてイラつく事も無かったし、表紙がシンプルでこれを読んでるモレ…という気持ちでテンション上がる⤴︎

    0
    2026年07月09日
  • 一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート

    Posted by ブクログ

    日本人で初めてWGPという陸上の世界大会シリーズで2位となった槍投げ選手、溝口和洋さんのノンフィクション本。一人称であるが、実際は10年以上インタビューした作者が書いている。

    気に入らない記者を見つけて追い回してボコボコにしたり、朝まで女性と過ごしそのまま日本選手権に出て優勝したりと無頼派のエピソードが有名な選手だが、この本の面白さはそこではない。

    800gの棒を如何に遠くに投げるか、を徹底的に論理的に考え鍛錬していることに面白さがある。例えば槍投げは筋肉量が多い欧米人に有利な競技と捉え、身長と筋肉量で及ばない日本人は死ぬ気で筋トレした上で助走や投げ方の技術を磨くべきと考え必死にトレーニングする。ソックス一つとってもこれは自分に適しているか、と考え軸足になる左足はロング、右足はショートソックスにして足の固定感を向上させた。今では左右非対称なソックスは主流だが、溝口さんが始めたらしい。このように溝口さんは、全ての常識を疑ってトレーニングしていた。トップアスリートは、頭脳を絞った上で心技体が求められる。

    0
    2026年06月14日
  • 日本の路地を旅する

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「こうして一人で路地をまわる旅を続けていると、ふらりと一人の男が突然に訪ねてきて話を聞かれるだけでも、路地の人々にとっては、時に身を切られるように辛いことであろうと思ってしまうのだ。そう思うと、いたたまれない気持ちになる。路地をまわり始めて十○年以上になるが、あまりにも気持ちが重く、胃をいためて一年間どこの路地にも出られずにいたこともあった。
    だったらこんな、傷口に塩をなすりつけてまわるような旅などしなければいいのにと、自分でも思わないこともないが、不器用な私はいつまでも、このような人の心のひだを覗き込むような旅しかできないでいた。いくら同じように身を切ったとしても、路地の人にとって、それは所詮、他人の血であった。」

    西村賢太ってこんな感じだよなあと思ったら西村賢太が後書き書いてた
    雰囲気があってすごく好きだなあと思ったけど被差別部落のルポルタージュだからこんな感想を持ったことを言ってはいけないのかなと思ったけど、西村賢太が「感傷的に描いている」と言ってたからこの感想でいいみたい
    これを読んだどこかの編集者から小説の依頼も来たみたいだから、やっぱり書き方が上手なんだろうな

    西村賢太の後書きも面白かったので
    「被差別部落が、"路地"とも称されることは、これまで全く知らなかった。〜だから、そうした予備知識がなく本書のタイトルを眺めた場合、或いはこれを気のいいお散歩エッセイ風の内容に思う人も少なくないように思う。スローライフ提案型の、いかにも素っとぼけた味わいを意識した紀行文と思う人もあるだろう。
    が、本書はそんな虫酸の走る、毒にも薬にもならぬようなヤワな駄本ではない。その内容は戦慄を覚える程に毒となり、具合が悪くなるまでの強い薬となり得るものだ」

    私これすごく好きだった
    こんなシンプルな装丁の小さな本にこんなに広い物語が詰まってると思わなかった
    誰かに読んでほしい

    0
    2025年07月20日
  • 四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼

    Posted by ブクログ

    1782

    上原 善広
    (うえはら よしひろ)1973年大阪府生まれ。ノンフィクション作家。大阪体育大学卒業後、ノンフィクションの取材・執筆を始める。日本各地の被差別部落を訪ねた『日本の路地を旅する』で、2010年第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、「孤独なポピュリストの原点」(特集『「最も危険な政治家」橋下徹研究』、新潮45)で第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。『一投に賭ける』2016年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。著書に『路地の子』、『発掘狂騒史』など多数。


    徳島のある駅に降り立ち、一番寺へ歩いていこうとしたとき、突然見知らぬ女が詰め寄ってきてこう言った。 「遍路すると不幸になりますよ。真言宗は密教だから、遍路なんてやめた方がいいですよ」  これから遍路に出る者に対して、ずいぶんな歓迎だった。  後にわかったのだが、四国遍路では時おり「遍路すると不幸になる」と説教されることがある。おそらく他宗派を邪教とする、熱心な新宗教の信者ではないかということだった。そうと知っていたら確認したのだが、このときはただ面食らって通り過ぎてしまった。

    私が遍路を歩こうと思ったのには、いくつか理由がある。  一九九〇年代、四国遍路は何度目かのブームを迎えていたが、信仰心の 欠片 もない私は、馬鹿々々しいことだと斜に構えていた。  しかし四八という歳にもなれば、そのようなわだかまりは小さなものになっていた。歳をとって、どうも自分は恥さらしの人生を歩んでいるようだと、 諦観 するようにもなった。恥さらしとはつまり、遍路に出たと聞いた周囲の人が「やっぱり」と思うような人生のことである。  遍路に出ようと思った直接のきっかけは、睡眠薬依存から脱するための運動療法だった。

    四国遍路が成立した背景には、この地が、訪ねることが難しい四国という 僻地 にあることが大きく関係している。江戸時代はもちろんだが、交通の便が良くなった現代においても、不思議なことに四国はそう簡単に行けるところではない。現代においても、四国への道のりは依然として精神的な僻地感を 拭いきれないでいる。  だから昭和三〇年代(一九五五~六四) 以降、交通の便が良くなって大きく変わったのは、四国までの距離感よりも、徒歩でしかできなかった四国遍路が車やバスでできるようになったことだ。それまで徒歩で二、三ヵ月かかっていた巡礼が、一〇日ほどで回れるよう劇的に変化した。そして高度経済成長をへて生活が安定してくるようになると、歩き遍路もきれいで清潔なイメージへと変化してゆく。  戦前までの四国遍路といえば、まだ歩いて回る人が多かった。当時は業病とされたハンセン病をはじめとして眼病、足の障害などの治癒を願って回る者も多かったし、口べらしのために四国遍路に出される者も多かった。遍路で生計を立てている者が多くいたのだ。

    「いろいろあるけど、たとえばオヤジ(組長) にこれで遊んで来いと言われて五〇万もらったら、パチンコ屋に行く。パチンコ屋もグルで、大箱を毎回出してくれるが、それは置いといて、わざと負けた振りする。それでわざと札束を出して客に見えるように数えてると、パチンコで負けた女がすり寄ってくるんだ。一緒に飯でも食べようと誘ってくるが、忙しいからと断ると、一万貸してほしいと必ず言ってくる。それで貸してやると、次もまた返さずに借りにくる。そこでしっかりハメて、肉体関係をもつんじゃ。女もよくわかっとる。大抵はよう返さんから、ソープに沈めるなりして金にして、オヤジに五〇万だけ返すんじゃ」 「つまりギャンブル依存症の女性を狙うんですか」 「そうよ。その他にもまだいろいろある。あるときはフィリピンの女を三人ばかりワンルームで管理したりな。やりたいときはトイレでやるからセックスには困らん。一人一日六〇〇〇円は稼ぐから、三人で一万八〇〇〇円。オヤジに八〇〇〇円渡すから、ワシは一万の 儲け。とっかえひっかえ女とセックスして、何もしなくても一日一万は入ってくるというわけだ。

    「確かに、同和地区ちゅうのは旧遍路道沿いにある。じゃのに同和と遍路が関係ないのは、そりゃあ昔は同和が番太(警備) やっとったからやろう

    「だって生活遍路というのは、昔から何か陰のある人が多かったでしょう。なぜ遍路を始めたのかと、こちらから訊くこともないし、訊いても本当のところは答えないというか、答えられない人が多い。もともと遍路している人に『なぜ』と訊くのはタブーだとされているくらいじゃからね。生活遍路に限らず、遍路に出る人はみな何かあるから遍路をする。何もない人は遍路になんか出ない。ましてや生活遍路は、やっぱりいろいろあったから遍路しながら野宿生活することになったわけでしょう。だから幸月さんが犯罪者だと聞いたときは、まあちょっとは驚きましたけど、そういうこともあるだろうなと思っただけでした。

    ハンセン病や身体障害などで、若いうちから故郷を追われて遍路になった者の中には、 歪んでしまって不良遍路になる者もいたが、そうした者も住民や 僧侶 の信仰によって立ち直ることも 稀 にはあったし、延々と寺巡りをするのに絶望して極道になる者、またはそのまま道端に 斃 れる者もいた。そうした意味では遍路は一種ゆるやかな自殺行為という側面もあったが、少なくともどのような道を選ぶかは遍路自身にゆだねられている。

    鑑別所では自由に本を読むことができたので、このとき飛躍的に勉強が進みました。いろんな本を読み 漁りました。もともと字が読めなかった父の代筆をするくらい活字が好きだったことが幸いしたのでしょう。難しい漢字も、書道もすべて鑑別所や刑務所で学びました。

    その後は九州を転々としながらヤミの売人をしていましたが、この頃、ヤクザと関係をもつようになりました。詳しくは話せませんが、いろいろありました。 別府 駅で知り合いのヤクザの女に声をかけたところを逮捕され、大分刑務所に三年ほど入ることになりました。鑑別所を入れれば、これが二度目の刑務所だ。

    人間はもともと矛盾に満ちた存在なのだから、行動に矛盾が生じるのは不可避なのだが、幸月の罪を追及する立場にある検察官と裁判官にはまるで通じる。

    「通常のお遍路は、事件の罪を償った後に、それを悔いて行うものだと思う。被告は罪をおかしたまま遍路をしており、しかも『両親の供養と自分の苦行』のためだと供述している。

    「お遍路をする人は誰しも陰をもっています。お遍路の心は同行二人であり、自分自身と向き合って反省するということなので、罪を償う前でも良いのだ。

    ──拝啓 朝夕は秋冷の候とは申せ日中は暑さつづきです。不肖遍路幸月の逮捕・拘禁と世間をお騒がせし皆さまに大変な御迷惑・御不興を与えました。心から深くお詫び申し上げます。  私にとって事件は十二年前のことであり、六年間にわたる遍路生活は両親の供養、自らの死に場所を求めての行でありました。思えば私が被害者を刺した時に激しく争われて握っていた包丁を取り落しました。 其の時落ちた包丁の先が丸く曲がり、其の後再び私は刺したが刺さらず断念しました。 之 は私が包丁を故意に曲げたものでも偶然でもない。私がそれ以上、危害を加えられず被害者の一命をも取り止めました。  今、私は神仏の啓示を見た思いです。人の一生は 棺 に入るまで解らぬと申します。私は運命を受諾し傷害を与えた罪を償いたいと思います。六年間の遍路生活は野宿で苦難でしたが幸福でした。お大師さまがいたからです。これからもお大師様と二人です(二〇〇三年九月二一日)

    ──身元引受人以外、住所氏名他人は一切記載することが出来ないので、年とともに御世話になった知人恩人の名前や住所がおぼろに消えていくのが哀しい。八十二才にして初めて辞書を買いました。お陰でいまは書くのが楽しみです。般若心経などの写経をしています。独居房ですのでお隣さんに迷惑にならないよう読経しています。扇風機の風もどこ吹く風、頭はボーッとなり胸や腹のあたりに汗が滲み溜まり、ブリーフの上部は濡れっぱなしになり乾くひまもありません(二〇〇五年七月一九日)

    ──連日の猛暑です。ここ堺でも毎日三十五、六度です。三畳一間に 団扇 一本、廊下側は鉄扉三十センチのガラス二枚分の窓では涼しい風は望めません。五時に身体 拭き一回、水の節約で厳しい規則です。そんな中で昨日、抹茶アイス、今日はコカ・コーラ一本支給されました。年に一度の 娑婆 を味わっています。八月一日に大阪刑務所長賞を受け取りました。何でも三年間懲罰なし無事故の褒賞だそうです。老齢ですが運動を心がけ、体調は 頗る快調です。  私が六年間過ごした遍路道で出会った人々との 絆、交わした握手は人の心を握るのと同じことでした。  或る日、私は遍路中に高知市から数日かけて高岡町を歩いていた。ふとしたことからさそいにのり、高岡町から 青龍寺 へ車にのり向かう 筈 だったのに、高知市のはりまや橋近くで放り出されていた。車で来た道をまた高岡へ歩き始めた。秋の日は暮れはじめていた。うしろから来た車の婦人に声をかけられた。「お遍路さん何処へ行くんですか」訳を話した。この道は青龍寺には遠回りになります、送ってあげましょうと云われ青龍寺近くで降ろして頂く。厚くお礼を述べると婦人はお布施ですと千円を渡された。そして婦人は石鎚山の行者であった父から絶えず諭された言葉があるといった。「お布施をさせて頂いてありがとうございました」と言える人間になれと。そう告げられて婦人は去られた。  刺した手です祈る手です 幸月(二〇〇七年八月二八日)

    0
    2023年11月06日
  • 発掘狂騒史―「岩宿」から「神の手」まで―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    相沢忠洋、杉原荘介、芹沢長介、藤村新一と続く日本の戦前戦後から現代までの旧石器時代の発掘の歴史が物語風によくまとまっている。

    0
    2023年06月07日

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