【感想・ネタバレ】日本の路地を旅するのレビュー

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Posted by ブクログ 2015年05月03日

路地(被差別部落)出身の作者が全国の路地を旅するノンフィクション。

小中と同和教育が盛んな学校に私は通っていて、ずっと何故盛んなのか不思議に思っていた。

積年の謎が少しだけ解けた。

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Posted by ブクログ 2015年04月27日

東京生まれ東京育ちの自分は、ほぼ同和問題とは無縁の生活を送ってきたが、何故か、惹かれる。不謹慎なのは承知してるが、怖いもの見たさや、知らない世界を教えてくれるような気がする。

人間の本質なのか、人より優位に立ちたいという思いが、差別を産み、より弱いものいじめに走る。なんともやりきれない。

作者は...続きを読む、何を求めて「路地」をさまようのか。本書を読んでも分かるような分からんような。仕事柄、「路地」に行くこともままあるが、そこでの対応には、やはり気を使うこともある。同和も人権も言葉としてはあまり好きではないが、要は、差別する人の心の有り様が問題なんだろう。今の国際情勢は差別がものすごく進んでいる気がするが、何れも、自分の正当性を声高に叫んでいるのだろう。

日本が、国内的に真の解放を成し得ることが出来れば、世界的にも今の情勢を変え得る処方箋を示せるかもしれない。

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Posted by ブクログ 2014年07月30日

日本全国の被差別部落を歩く旅行記。
あくまでも現在を知るための本なので詳しい歴史に関しては塩見鮮一郎なんかの本と合わせて読むのがいいかも。

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Posted by ブクログ 2013年04月24日

路地=被差別部落、そして同和。エタ、非人など、タブー視されてきた問題に力む事なく、しかし力強く迫った渾身のルポ、か?

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Posted by ブクログ 2012年10月24日

本書はかつて中上健次が「路地」と呼んだ被差別部落。自身もその出身者である著者が日本全国に存在する路地を旅する異色のノンフィクションです。ある意味で貴重な記録であると思います。彼らの息遣いが聞こえます。

「被差別部落」行政用語で言うところの「同和地区」。作家の中上健二氏はそこを「路地」と称していた...続きを読むことや、彼自身の「路地」の出身者であることを僕はこの本を読んで知ることができました。この本は自身も「路地」の出身者である筆者が日本全国の「路地」を訪ね歩き、そこで暮らしている人の生活や生業などについて記した異色の一冊です。

この本の元になった連載を掲載していた雑誌は僕も愛読している「実話ナックルズ」ですが、残念ながら僕は読み飛ばしてしまい、こうして単行本になったことで読むことができて少し安堵したことを覚えております。

印象に残っているのは東北で生皮をなめして太鼓や剥製をを作る職人や山口の「路地」では幕末の際に「屠勇隊」という「路地」の人間で構成された部隊があったり、威信のさきがけとなった吉田松陰が獄中で通した純愛の相手である高須久子が身分違いの相手と情を交わしたことがきっかけで獄に入ることになったという話などは、非常に衝撃を受けたことを覚えております。さらに「山口、岐阜」のくだりで描かれている猫の皮を使った三味線を作る話と動物愛護団体の軋轢や、牛肉偽装問題についての地元の見識。さらには彼らが先述した東北で太鼓に張る皮を作り、剥製も作る職人のことを知っていた、というくだりには「路地」の人間独自のネットワークが息づいているのだな、という感慨深いものを読みながら覚えてしまいました。

僕の中でなぜかはまだわかりませんが、どうもこういう本を読む傾向があるらしく、日のあたらない問題だからこそ、自分の中で追求してみたい、というものがどこかであるのかもしれません。筆者が自らの足で訪ね歩いた「貴重な記録」だからこそ、これは後世に残ってほしいなと、個人的にそう思える一冊でありました。

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Posted by ブクログ 2021年05月16日

上原善広の別の本『断薬記 私がうつ病の薬をやめた理由』を読んで、その後にこの本を読みました。
被差別部落の内容を書いた内容ですが、真実かどうか?ともかくとして、内容が大変面白かったです。
父親の一生を描いている内容ですが、すべてが真実である必要はないのかな、と思いながら楽しんで読めました。
親のこと...続きを読むを、フィクション部分があったとはいえ、時代背景も含めてここまで描けるって、すごいなーって思いました。

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Posted by ブクログ 2020年07月05日

身近にあった路地。よく知っているつもりだったけど、知らないこともたくさんあった。素朴な疑問。屠場で働く人は差別されるが、肉は高級品。何故だ?屠殺が汚らわしいてか?命を射るもの、命を食すもの、同じやん。

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Posted by ブクログ 2020年04月09日

路地とは、かつて中上健次がそう呼んだ被差別部落のこと。筆者は自らのルーツである大阪更池を皮切りに、全国の路地を訪ねていく。私も大阪の下町で育ち、作者とほぼ同年代であるから、その雰囲気くらいはわかる。友人にも路地の子がいた。全国には6000を超える路地があるという。おそらく気がついていないだけで、身近...続きを読むな地域に路地はある。
筆者自らスケッチと語るように、まとまりのいい体裁とはなっていない。学術書ではないため出典も明白ではなく、成否を論ずることは難しい。しかし、路地のウチとソト、その境界を行き来できる著者だからこそ書けたルポと言える。

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Posted by ブクログ 2019年02月18日

地方を含め様々な同和地区を探索したエッセイ。
同和地区の成立ちや文化等無知な部分多かったため、非常に興味深く面白く読めた。

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Posted by ブクログ 2018年04月25日

私が通っていた小学校には同和地区がなかったため、被差別部落という言葉すら知りませんでした。中学生になったとき、1学年に10人はいるかいないかの割合で、英数国の主要3教科の授業だけ別室で受ける生徒がいる。促進学級と呼ばれるそのクラスでは、被差別部落出身の生徒が先生と1対1で授業を受けていました。親が十...続きを読む分な教育を受けられなかった影響が子どもにも及び、いわゆる勉強のできない子どもたちの遅れを取り戻すいう理由で。

路地とは、被差別部落出身の作家・中上健次が部落を表現するために用いた言葉。本書の著者もやはり大阪の被差別部落出身で、日本中の路地を巡る旅を続けています。

保育園に行くのが嫌で路地から脱走を試みたりする幼少時代の話には笑みもこぼれますが、その先は当たり前のことながら重い。性犯罪を起こして逃亡した実兄についても隠すことなく書く著者。路地出身だということを堕落の免罪符にしたくないという意志が見て取れます。著者自身は差別を受けたことがないというものの、「生まれた環境は選べないのだから、それを嘆くよりもどう生きていくかが重要。どんな地域や社会的階層の生まれであろうと、その人の可能性を信じるしかない」、この言葉が路地出身でない者から発せられたら、何もわかっちゃいないくせにとなるでしょう。淡々と書かれているだけに、心を揺るがす本。

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Posted by ブクログ 2018年02月24日

知らない世界でどんなことなのかを知りたかった。都会に住んでいると分からない世界だけど、小さな世界ではとても大きな根強い問題なのだと思う。

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Posted by ブクログ 2017年12月11日

「路地」とは作家中上健次氏のいう「被差別部落」である。東日本に居ると実感が持ちにくいが、部落問題は東洋のカーストと称され差別が遺恨とその後の特権を生んだ、戦後社会に蔦のように絡み付く問題であった。昨今、世代交代が進み良くも悪くも風化しつつある路地を筆者は巡る。筆者自身が「路地」である更池出身であり、...続きを読む旅情気分で淡々と路地を訪問しているようで神経を抉り取られるような思いで自らのルーツに向き合っていることが読み取れる。

『血縁』の章は綺麗事一切なしの剝き出しの現実がそこにあり哀しさと美しさが残る。敗残者として南西へ逃避していった兄と向き合ったとき、現実は劇的な事など起こりようもなく無味乾燥で酷薄なものなのであろう。客観を保つことが難しい自身の深淵な傷を眺める、ドキュメンタリーの何たるかがこの章に込められている。

おまけで西村氏のあとがきがなかなか面白い。

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Posted by ブクログ 2017年10月29日

のっぴきならない境遇と矛盾を抱え社会から逸脱してしまうものに、シンパシーといくばくかの憧憬を覚えてしまう。ヤクザ、在日、風俗嬢、そして部落。

被差別部落出身である著者の、部落を旅し、つなげる道程を綴った力作には3.5点をつけたい。
文章はさほどにうまくないが、肉体性はある。感性が鋭いというよりも、...続きを読む強い。なにより被差別部落出身の著者だからこそ、日本の影をフラットに、日常として映し出すことに成功した。

ただ、各地の部落の状況は、ほぼ同一の印象。
発祥は、部落が武士とともに(皮革や刑罰執行のため)その地に連れられてきたというパターン。
いまではほとんど一般住宅地と見分けがつかない(地方都市の街の景色はどこもほとんど同じだが、そうして画一化することで、こうした日本の闇も消されていくのだな)。
人へのインタビューにしても、「差別は現在はさほどでもない。昔はあった。これからはなくなるだろう。」と判を押したように言う。

しかし、こうした情景描写の中にも、
・全国の路地の人々の交流が、現在に至る肉(近江牛)や皮革の産業分布につながっていること
・弾左衛門の存在と後継者の選び方(まるでダライ・ラマのよう)
・浄土真宗を振興する人が多いこと。悪人正機説にいかような痛切な思いをかけていたか。胸に詰まる。
・犬肉を食していた戦前、吠える犬の口につばを吐き捨てだまらせ捕獲する犬とり名人の話。
・万歳という被差別部落の芸能が漫才のルーツだったこと。
・稼ぎの上前を撥ねる弾左衛門は「乞食の閻魔様」と揶揄されていたこと。
・江戸時代から武士を中心に獣肉は食されていたこと。
・吉田松陰の万人平等の考えに、エタと寝た高須久子の影響があったこと。
・三味線の音は犬皮はソリッドで猫革はまろやか。猫は国産の方が質が良い。
・全国の城下町には必ずと言っていいほど路地があること。

など、この本でしか知り得ないような発見があり。
加えて、貴賎の差はあれど、やはり日常と非日常をつなぐものとして、天皇と被差別部落の類似性は面白い。芸能というのも、本来そういうものだ。

そして、知識よりももっと彼の個性が光るのは、ある種のうらぶれた感性。
たとえばp197-203の、別府の温泉街での一夜はまるで泉鏡花かつげ義春のようだ。生臭い老婆女将と隣室の生気のない声、場末感あふれるストリップ。
P168の犬の口につばを入れて捕獲する名人の話。
最終章の沖縄、首里城と安仁屋村の近しさと朱さと兄の哀しさ。
熊本の被差別部落出身の若きヤクザとの交流も良かった。

こうした民話のようなリアリズムが、知識としての被差別部落の話より染み渡る。
その意味では、解説の西村賢太の言葉通り、かれは私小説家的なのだろう。

それにつけても、路地という表現はなんと的確なことか。被差別部落の背負う悲しさ、猥雑さ、暴力性、そして目抜き通りとの結節をイメージさせてくれる。路地という奥深い言葉を世に膾炙しただけでも、著者の功績は大きい。

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Posted by ブクログ 2017年09月09日

この本は、かなり、面白かった。昔から部落問題が言われていたが、それらが、日本の地方の暮らしに深くかかわっていて、今は、平穏に見えるかその土地も身分、家、部落などのしがらみの中で、生活してきたとわかり、今の寂れた地方の底流にあるものが見えた気がした。しかし、その場所を本から特定して、地図で、確認したい...続きを読むと思っても、取材される側に遠慮をしているのか、不正確にしか書かれていないので、場所が特定できない場合が多かった。また、見方が若干、被差別再度よりと思える部分も感じた部分もあった。犯罪者、犯罪に関する部分などが、個人的にそのように感じた部分も一部あったように思った。後は、訪ねて行ったが、いなかったときに、引っ越し先に行って、その話を聞くなど、もう少し、掘り下げてもらいたい部分もあったが、あの的ヶ浜にある旅館に長期滞在している中年女性の話、この旅館の様子などの記述は、素晴らしかった。また、路地を訪ねて旅をするうちに、日本の地方の古い、裏のことを探っているようで、面白かった。また、もう少ししたら、路地、部落のことも、わからなくなると思うので、記録を残す意味でも、いい本と思いました。面白かったです。夢中で、読みました。

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Posted by ブクログ 2016年02月21日

日本中に点在する「路地」と呼ばれる非差別部落と、その痕跡を辿る旅。自分の周りではほとんど話題にならないテーマだったため、大変興味深く読んだ。

北は北海道から南は沖縄まで、タイトル通り幅広く日本各地を取材している。著者の上原氏自身も大阪の部落出身であるため、このような取材が可能だったのだろう。ちなみ...続きを読むに日本には今でも6000か所の路地が存在するらしい。

路地の中でも解放運動が盛んな地域と、逆に「寝た子を起こすな」という言葉の通り、出身や境遇を隠したがる地域も多いそうだ。上原氏が行った取材の中でも、地域や人によってそのリアクションは様々であった。

テーマが根深いだけに寝た子を起こすような行動に、時には罪悪感を感じながらの旅だった事が作品中から読み取れるが、自分の生い立ちや、実兄が起こした犯罪についても赤裸々に描くことで、自身への折り合いを付けていたのだろうと思う。

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Posted by ブクログ 2016年01月13日

著者が、日本の「路地(=被差別部落)」を巡り歩いた記録をまとめたノンフィクション作品。大半部分が雑誌『実話ナックルズ』に連載されたもので、2009年に発刊(2012年文庫化)され、2010年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。
著者は自身が大阪・更池の「路地」(被差別部落を最初に「路地」と呼...続きを読むんだのは和歌山・新宮の「路地」出身である中上健次氏)の出身であるが、全国500以上の路地を歩き続け、かつ「路地」の人々と機微に触れるコミュニケーションを積み重ねてきた。そして、自ら「路地を書くにあたって、あらゆる角度から検討した。技術的にはもちろん、“心情的”にも手直しを繰り返した。心情的というのは、路地は残念ながら出身者でないとわからない独特な繊細さをもつため、その点の配慮が必要なのである」と語る繊細さをもって、本書を世に出したという。
著者によれば、自身の訪れた「路地」の人々の思いは、今や、年齢や地域などにより区々であり、著者はそのひとつひとつについて強く肯定も否定もせず、自らが見た「路地」の風景とともに淡々と記している。しかし、終章では、「路地の歴史は私の歴史であり、路地の悲しみは、私の悲しみである。私にとって路地とは、故郷というにはあまりに複雑で切ない、悲しみの象徴であった」と語っており、「路地」を訪ねる旅は、自身と、犯罪を起こして沖縄の離島に逃れ住む実兄のアイデンティティを求める、壮絶なものであったのだろう。
また、著者は「私はどんな悪いことであっても、路地が取り上げられるのは良いことだという“信仰”をもっている。日本人の心の闇、隠されてきた文化を明らかにすることで、日本人そのものが明らかにされると思うからだ」とも語っており、私は本書で初めて路地のことを詳しく知ったのだが(30年以上前の義務教育で「同和」について学んだことはあったが)、そうした観点からも本書の持つ意義は大きいと言えるのだろう。
(2015年7月了)

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Posted by ブクログ 2016年01月10日

「フクシマ差別」という言葉があるが、いつ聞いても不可解だ。
なぜかって、フクシマ差別される人は、2011年3月11日より前は差別の対象となる要素は何ひとつなかった。なのにある日突然、福島県境が差別を受ける対象となる土地への線引きに変わり、「放射能がうつる」などの忌避の対象となってしまう。差別される当...続きを読む人には原因はないし、差別の元となる科学的根拠も全く存在しないのに、である。

このフクシマ差別現象に私は部落差別と同根のものをみる。部落差別も、歴史的社会的な身分差別を起源として確かに土地に一種の境界線が引かれ、差別される者が住む一帯として、作者がいうところの“路地”が存在していたのは事実。
だが異論覚悟で言うと、フクシマ差別と同様に、部落差別も、土地への線引きが問題の根源ではない。逆にそれに固執してしまうと、物事の本質を見誤ってしまう。フクシマ差別、部落差別、その他の差別…問題の根源は土地にはなく人の心のなかに存在する。それぞれの人が心がなかで土地に線を引き、そのなかに関与する特定の階層を忌避するという、心の問題ではないか。

そうするとこの本の路地への旅は、差別の根源に迫るという面から言えば充分なものとは思えず、いわゆる新日本紀行的な満足度で終わってしまっている感がする。部落差別の土地を歩き、人と会い、そうすることで部落差別を1つの根として、フクシマ差別はなぜ起こるのかということや、ハンセン病回復者が医学的にも法律的にも解放されたはずなのになぜ差別は起こるのかといった、差別というものの正体や根源を見出してくれること(まさに中上健次がその著述によって成そうとしていたもの)をこの本に期待していたのだが…正直、自分のノスタルジアを探して歩いて終わってるかのような残念な思いが残った。

昔は日本中にあった、駅前の活気ある商店街を想像すれば、わかりやすいと思う。八百屋、肉屋、魚屋といった商店がアーケードに並び、コロッケを揚げるにおいや駄菓子をもった子どもの声であふれるような商店街は、ほんの一部は今も昔のまま残っているかもしれないが、ほとんどが郊外の大型複合店舗に取って代わられ、現在は閉じられたシャッターが多くを占める。だから、そのほんの一部残る商店街を探し当て、話を聞き、往時の姿を追い求める… それだけでは商店街というもの、ひいては日本の小売業が抱える問題には迫ることはできない。

また、著者が会った路地出身者の一人は「俺は部落出身で被爆者でしょ、もう敵なしですよね。まさにサラブレッド」と言っているが、福島県の田舎で貧しい農家に生まれて身体に障害を負うなど幾重の苦しさを味わった野口英世が「俺は超貧乏な農家出身で障害者でしょ、もう敵なし」とかそんな卑下したものの言い方って人前で絶対にしなかったと思うし、そんな感情をもっても何も前に進まないとわかっていたはず。何か、路地に生きる人たちの、自尊感情とは正反対のベクトルの向きの、ことさら卑下した感情が至る所に現れてきて、路地のほんの一面だけを拡大し強調したかのような、いびつな印象のみが残ってしまった。路地の問題って、路地出身者でなく、路地で生きた経験のない者にとれば永遠に蚊帳の外の問題で交わることは出来ないの? この本からはそんな思いまで起こされてしまう。

以上、かなり厳しい書き方になったが、これは上原さんのライターとしての可能性を評価しているから。この本には路地に生きる者として、差別がなくなったという建前が取り巻く現在も現実にななめ下を向きながら生きてきた(あるいは生きざるをえなかった)人が多く登場する。それらの人は路地に生まれた上原さんだから“同胞”として生の声を伝えたのだと思う。血の通った路地の者たちの一言一言が集まり、その結果、差別というものの一側面に迫っている。それは間違いない。(2013/4/14)

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Posted by ブクログ 2014年09月05日

被差別部落のことを「路地」と呼んだのは、作家の中上健次だそうです。
この本は、被差別部落出身の作者が、全国各地の被差別部落を訪ね歩いたルポルタージュです。
残念ながら私は中上作品は読んでいませんが、中上自身も和歌山の被差別部落の出身なのだとか。
恥ずかしながら、この本を読むまで作者の上原善広氏のこと...続きを読むを全く知りませんでしたが、「橋下徹研究」で結構有名人だったんですね(^_^;)
さて、橋下氏のことも含め、被差別部落のことをいろいろ書いてきて賛否両論ある作者のようですが、このルポルタージュ自体はなかなか良いと思いました。
エピローグで作者自身が語っているように、この旅は、作者自身の生まれた「路地」を探して再発見するためのものなのは明らかです。
こと更に差別の現実を暴き出すのでもなく、それぞれの被差別部落の人々の現在に心を寄せ、共感し、そこで自らのアイデンティティをも見出していく、そんなルポです。
この本を読んで、自分は被差別部落のことをほとんど知らなかったんだなあ、と痛感。
中上健次氏の作品も、読んでみたくなりました。

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購入済み

一つの文化と歴史がわかる

2013年07月16日

日本全国の路地を旅しながら、その土地の路地の歴史、文化を伝えている作品である。
その路地がどのような経緯でつくられたのか、そこで生活していた人々はどのような仕事をしていたのかといったことが良くわかる。
確かに、厳しい生活をしていたが、路地内の人たちはその中で普通に生活し、独自の風習や文化を形成し...続きを読むていたということが読み取れた。
続編が出てほしい。

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Posted by ブクログ 2013年06月13日

被差別部落問題ってなんとなくずっと心に引っかかっている。ふつうに学校の授業を受けている時間だけではこの言葉に出会ってこなかったと思う(ってもちろん私が聞いてなかっただけかもしれないけど)。それでもこれを知っているのは、高校の学校行事で行った広島旅行で、被差別部落を訪問するというコースを選択したからだ...続きを読む。今よりもっともっと世間知らずだった私、「どんな特殊な地域なんだろう?」という好奇心もあって選択したわけだが、行ってみると拍子抜けというか、とても普通だった。ますます、なにがどうしてなぜ差別をされているのかわからなかった。それから大学の研究旅行の中でも、三味線作りの見学に行ったとき、「皮を扱う職業は、アレなんで、デリケートな方もいらっしゃるんで、写真撮影はダメです」とだけ言われて、今思えばそこをアレで済ませて研究旅行としてよいのか疑問、という感じで帰って来た。結局なんなん?という気持ちがずっとある。

で、こういう本を読んでみて、全てが氷解!というわけではもちろんないのですが、「で、フラットに、当事者の人はいまどんなふうに過ごしているの?」という疑問に答えてくれる良書でした。全国の被差別部落(著者はそれを路地と呼んでいますが)を取材して歩く著者の原動力が、(どちらかに偏らざるを得ない)熱い正義感、とかではなく、ご自分のルーツ探しのようなところがあって、それゆえの謙虚さというか、時には立ち入り過ぎたことは聞けず収穫少なく帰ってくることもある、まんじり、みたいな余韻も、誠実でいいなあと思いました。ルポルタージュというものをそうそう読みつけていないので、取材する者の腕としての良し悪しはわかりませんが、自分は別次元の人間だーみたいに勘違いしてガツガツえぐり取っていくような悪いイメージが、ルポライターってあったので(ごめんなさい)、知りたいことは知れたけど自分も悪いことをしたような不快感ばかりが残るようだったらどうしよう、という不安は、杞憂に終わりました。
最近、美味しいなあと思っているかすうどんが、著者によると屠殺を生業にしていた路地の料理だそうで、びっくりした。屠殺、三味線作り、芸人さん、出産の時に出る胎盤の処理、、、などなどの職業が路地とは関わりが深いようだが、どれもこれも自分だってお世話になっている大事な仕事だというのに、なぜ人は差別するのでしょうね。かすうどんは美味しいし。やっぱり理解できないなー、そう思う反面、自分はそういう謎の差別をしていない/しないと言い切れるのか?胸に手を当てて考えてみる。そういう時間をくれる本でした。

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Posted by ブクログ 2012年12月27日

「路地」とは被差別部落のこと。中上健次は被差別部落を指してそう呼んだそうだ。自らも路地出身の筆者が全国に点在する路地を巡りその成り立ちや景色を描出する。
西日本では身近な路地も、関東では馴染みのないことが多い。しかし東京にも路地は存在したし、いま現在も路地はたしかにある。そうした路地の記憶を掘り起こ...続きを読むしながら筆者は旅をつづける。
やがてその路地巡りは、筆者自身のルーツ、そして家族と重なり合う。路地出身の筆者が路地を巡ること、それは図らずも自らの半生と路地との関係を再認識する作業となる。ここに至って、本書は単なるルポルタージュではなく、巻末で西村賢太が言うように私小説としての要素さえも獲得する。

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Posted by ブクログ 2012年12月13日

僕は北海道で生まれ育った。北海道にはいわゆる同和問題は少ない。そんな僕に同和問題とは何かを、肌で教えてくれた。

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Posted by ブクログ 2012年09月15日

文章力で読ませる半面、ルポ+私小説のような感じなので、好き嫌いはわかれるのではないでしょうか?

食肉文化と非差別部落との関係については他書より、参考になりました。

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Posted by ブクログ 2021年01月02日

当事者である著者でないとできない紀行。そして、いまだに残っているところもあることに純粋に驚く。東京だと、あの辺りが昔そうだった、くらいで今の住人はそんなに関係なく(たぶん)、本人が言わない限り分からない(と思う)。けど、この本を読むと、この地区は何戸、とかあって。戸数が分かるって‥消えてないんだな、...続きを読むと。居住地と名字で地元の人はわかる、と西日本の人から聞いたことはあるけれど、本当にそうなんだ、、息苦しいな、、
ルポとしては、前半は普通に読んでいけるんだけど、後半になるにつれて事件やヤクザ、著者の前科者の兄の話が出てきて重苦しい。その辺は私小説的。

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Posted by ブクログ 2018年05月14日

(01)
現代の日本の風景を考える上で,本書に現わされた内容は興味深い.
歩いていると,不思議な風景に出会うことがある.不思議さとして直観されるその風景には事情がある.その事情の一脈を「路地」として解きほぐしている.
文庫版解説の西村氏が氏らしく「知らなかった」と告白しているように,私も路地という呼...続きを読む称のこのような用法を知らなかった.中世都市に起源があるとされる狭い街路を指示する路地を考える上でも,この命名が再考を促す問題の範囲は,ことのほか広い.
「部落」という用語は,今でも地方に残るが,それは国土にある人の住む場所場所のおおよそ全てを含んでいた.「路地」についても同じことがいえ,それは近代日本になされた都市的な集住地のほぼすべてを網羅していたともいえる.その意味で,「日本の路地」は,ほとんど「日本の都市」(*02)と言い換えて,本書を読んでもよいだろう.

(02)
本書には,差別がその内部で階層化されている様子も描いている.エタと非人の関係もそうであるし,上下という路地内路地であるとか,職業間や路地間での競合的対立的な構造は,階層化される傾向にある.
この問題を敷衍し,帰納したときに得られる仮説は,すべての日本人や日本人が住む地域は,程度の強弱はあれ,何者かによって差別されていた/いるということである.逆にいえば,この階層化を駆け上ろうという欲望や衝動が近代の都市化に具体的な関わりをもっている.
本書では,具体的な字名クラスの地名を避けているが,それでも本書に現われる地名の多くは,列島的な広がりで派生されるほどの重要な要素を含んでる.
その点でも,本書には,路地だけでなく,路地外をも囲いこむ示唆が盛り込まれている.

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Posted by ブクログ 2013年08月18日

被差別部落(穢多・非人)に関するルポルタージュ。
著者も部落出身だが、解放運動の闘士ということもなく、かと言って遠巻きに見る傍観者というでもない、適度な距離感の視点がよかった。
しかし、楽しく読める本では無い。

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Posted by ブクログ 2013年06月08日

関東に長く住んでいるためほとんど馴染みの無い、部落問題について知る事が出来た。肉屋は元々エタの仕事なんだな。今、日本人が牛肉や豚肉を食べているのが不思議な位。
自身が非差別部落出身だったら、どんな気持ちなんだろう?

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Posted by ブクログ 2013年05月31日

FBで友人が読んでいるのを見て、ポチったのは半年前くらい。読むにはちょっと重そうだったので、今まで読まなかった。路地とは被差別エリアのこと。路地出身者の著者が日本中の路地を廻った記録。現地のことを語りながらも自分のことを語っている気がする。自分の地元でこんな路地があるのかないのかも知らないが、こんな...続きを読むことがまだ語られていて驚くとともに、淡々と述べる著者の力量もなかなかのもの。解説が苦役列車の西村さんというのもおもしろい。

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Posted by ブクログ 2014年02月15日

先日読んだ、『橋下徹現象と部落差別』にて、著者が「被差別部落出身者が、自ら育った被差別部落で売文している」と批判されていたので手に取ってみた。

全国各地の「路地」に出向いて、それぞれのルーツを探る。
ときには、著者の過去も照らしに合わせる。

この本を読むだけでは、批判すべきようなものではなく、小...続きを読む林健治氏と被差別部落に関するスタンスが違うだけだと感じる。まあ、小林健治氏が批判したのは、雑誌に橋下徹に関して書いたことだけならばわかるが。

個人的に被差別部落=路地というのは、かなり違和感があるが、中上健次の本を読みたくなった。

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Posted by ブクログ 2012年11月22日

路地=部落のこと。路地出身の著者が日本全国の路地を訪ね歩き、その路地の現在での生活ぶりや伝統的な産業、インタビューに応じてくれた方自身「差別を感じたことはあるか」などを丁寧にまとめた書。
部落という存在は学校で習ったから知ってはいるものの、生まれも育ちも北海道の私には「土地や職業」で差別されるという...続きを読むことがなかなか実感として理解しにくい。
本書は「なぜ差別されなくてはならないのか」「差別反対」という方向ではなく、路地の人びとの生き方や思いを掬っているので心に思い浮かべやすい。

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Posted by ブクログ 2012年10月20日

著者はノンフィクション作家。
路地という言い方は作家中上健次に拠ったもの。
各地の路地を訪ね、路地と密接な職業に従事する方のインタビューや路地の中心となる神社などの宗教施設を訪れ、路地の移り変わり、そこに住む人々の意識の変化を描いていく。
作者自身も路地出身であり、路地を訪ね歩くという行為は、自らの...続きを読む過去を旅する行為でもあるのか、時折「感傷」的な部分が強くなるように感じた。
しかし、文庫本でここまで表現できるということには、少し驚きを感じた。差別に対する禁忌が薄まっているのか、それとも風化が始まっているのか、いずれにせよ、この著者の今後は注視していきたい。

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