【感想・ネタバレ】日本の路地を旅するのレビュー

あらすじ

大宅壮一ノンフィクション賞受賞。中上健次はそこを「路地」と呼んだ。「路地」とは被差別部落のことである。自らの出身地である大阪・更池を出発点に、日本の「路地」を訪ね歩くその旅は、いつしか、少女に対して恥ずべき犯罪を犯して沖縄に流れていった実兄との幼き日の切ない思い出を確認する旅に。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「こうして一人で路地をまわる旅を続けていると、ふらりと一人の男が突然に訪ねてきて話を聞かれるだけでも、路地の人々にとっては、時に身を切られるように辛いことであろうと思ってしまうのだ。そう思うと、いたたまれない気持ちになる。路地をまわり始めて十○年以上になるが、あまりにも気持ちが重く、胃をいためて一年間どこの路地にも出られずにいたこともあった。
だったらこんな、傷口に塩をなすりつけてまわるような旅などしなければいいのにと、自分でも思わないこともないが、不器用な私はいつまでも、このような人の心のひだを覗き込むような旅しかできないでいた。いくら同じように身を切ったとしても、路地の人にとって、それは所詮、他人の血であった。」

西村賢太ってこんな感じだよなあと思ったら西村賢太が後書き書いてた
雰囲気があってすごく好きだなあと思ったけど被差別部落のルポルタージュだからこんな感想を持ったことを言ってはいけないのかなと思ったけど、西村賢太が「感傷的に描いている」と言ってたからこの感想でいいみたい
これを読んだどこかの編集者から小説の依頼も来たみたいだから、やっぱり書き方が上手なんだろうな

西村賢太の後書きも面白かったので
「被差別部落が、"路地"とも称されることは、これまで全く知らなかった。〜だから、そうした予備知識がなく本書のタイトルを眺めた場合、或いはこれを気のいいお散歩エッセイ風の内容に思う人も少なくないように思う。スローライフ提案型の、いかにも素っとぼけた味わいを意識した紀行文と思う人もあるだろう。
が、本書はそんな虫酸の走る、毒にも薬にもならぬようなヤワな駄本ではない。その内容は戦慄を覚える程に毒となり、具合が悪くなるまでの強い薬となり得るものだ」

私これすごく好きだった
こんなシンプルな装丁の小さな本にこんなに広い物語が詰まってると思わなかった
誰かに読んでほしい

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2025年07月20日

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