私の後始末
著:曽野 綾子
ポプラ新書 164
いい人にならず、本音で老いを愉しむ269の極意とあり
世間体を気にして、生きるのではなく、自分に正直に生きる
「今日一日をせいいっぱい生きる」というのがいい
信じる宗教は違えど、兼好法師や親鸞らと同様、彼女も日本の伝統的精神の時の流れの中にいると感じました
また、「いい加減でもいい」、というのもいい
手抜き歓迎、生きぬくためであれば、悪もまたしかり、言葉だけの正義ではなく、人として生きる
気になったのは以下です
■本音こそ人生の歓び
・あとは野となれ、山となれ
・日本人の多くは、性善説である。そのほうがうるわしいことは分かり切...続きを読む っているのだが、私は自分の心を眺めて、昔から性悪説を取ることにしたのである
・どんなに親しくても、しょせんは別の人間です。性格も、考え方も、感性も違うのですから、人を完全に理解できるはずはない。だから、自分のことも、ほんとうに理解してもらえるなどということは不可能だと思い、あきらめています。
・「人は皆平等」などというのはウソっぱちです
「実際に平等である」ということでも、「人は平等になれる」という保証でもありません
・まわりに合わせたがるというのは、一番卑屈な精神のように思えます
付和雷同するという勇気のなさを示していてもっとも魅力がないものに映ります
・人間は一人で生まれて来て、一人で死ぬ
・要するに、どんな死に方でもいいのだ。一生懸命死ぬことである
・驚くべきことに、青春さえも本当に理解できるのは、晩年になってからだということが、私はこの年になって知ったのである
・現世はろくな場所ではない、と思ったおかげで、私はその後、それよりはるかにましな世界を見た。
すべてのものは比較の問題なのだ
・人がするからいい、のではないのである
人がしてもしないし、人がしなくてもする、というのが勇気であり品位である
■ままならぬ状況を生きる
・人生は、何が勝ちで何が負けなのか、その時々にわからないことだらけです
・光を描くには、影を描くより仕方ないんです
光そのものは描けないから
・すべて人生のことは「させられる」と思うから辛かったり惨めになるので、「してみよう」と思うと何でも道楽になる
・人して生きていく以上、自分には、裏表がある、という自覚が必要です
・これだけ、おもしろい人生を送ったのだから、もういつ死んでもいいと思うような心理的決済を常につけておく習慣をつけるといい
・人間は死ぬまでに、いくら年を取っていても、死の前日でも、いつでも生き直すことができる
・手抜きだから続くこともあり、ずるいから追いつめられもせず、怠けの精神が強いからこそ、新しい機械やシステムの開発につながる
■「いい人」を今すぐやめなさい
・世間からどう思われていい
人間は、確実に他人を正しく評価などできないだから
・何でもいいから大勢とはとにかく反対の方角で、しかも少し自分が好きなことができたら、確実に生きられるだろう、と思いますね
・私たちは自分の目に入るすべてのことを、すべて一度は疑うべきです
人を疑う能力がなければ、ほんとうには人を信じることもできません
・人は大体誰もが平凡で、「ろくでなし」で「能なし」である
今までうまくやってきたとすれば、運がよかったか、他人が図らずもかばってくれていたからに過ぎない
・人間関係の普遍的な基本形は、ぎくしゃくしたものなのである
・品を保つということは、一人で人生を戦うことなのだろう
自分を失わずに、誰とでも穏やかに心を開いて会話ができ、相手と同感するところ、拒否すべき点を明確に見極め、その中にあって、決して流されてないことである
その人自身が、川の流れの中に立つ杭のようでなければならない
■あきらめる生き方
・諦めることは成熟に通じる
・求めるより与えることで満たされる
・どのような境遇の中でも、心を開ければ必ず何かしら感動することはある
それを丹念に拾い上げ、味わい、そして多くを望まなければ、これを味わっただけでまあ、生まれないよりはましだった、と思えるものである
・私は何でもすぐ「そんなことでは、人は死なない」と言うのが癖になった
「少しぐらいゴミがあっても死なない」
「少しぐらい食べなくても死なない」
「少しぐらい汚くて死なない」
・不運は簡単にやって来るが、幸運は当てにならない
■自由になるための究極の選択
・最終的な幸せは「考えて行動する」ことにかかっている
・報われなくてもやろう、と思う時に悲惨な現実を超える
・誰かに理解されなかろうと、どんなふうに思われようと、庶民にとっては大したことないんです
自分がいいと信じることを、最終的には静かに命の尽きる時までやる
・片隅に生きるということはほんとうにすばらしいことなのだ
悪の影響は薄まり、思い上がるということなく済み、かつ、基本的な自由を謳歌できる
・したいことをするのが自由ではない
人間としてすべきことをするのが自由なのです
しかもすべきことを、気張ってやるのではなく、普通にさりげなくする
■あるがままのどこが悪い
・神は与えられた以上の能力を要求しない
できる時に励み、できなくなったら祝福に包まれて休めばいい
・たまたま自分が生まれ合わせた時代の、たまたまそこに居合わせた場所で、最善と尽くして生きればいいだけなのである
・どこでも死んでも同じである
故郷で死ねば何かいいことがあるというわけではない
・人生の理解という事を、おそらく、七、八十年かけてもなしえないままに人間は死ぬのである
東大に入るための勉強などというのは、学問でも教養でもない
それは恐らく勉強という名の職人芸なのである
目次
前書き
第1章 本音こそ人生の歓び
第2章 ままならぬ状況を生きる
第3章 「いい人」を今すぐやめなさい
第4章 あきらめる生き方
第5章 自由になるための究極の選択
第6章 あるがままのどこが悪い
出典著作一覧
ISBN:9784591162064
出版社:ポプラ社
判型:新書
ページ数:223ページ
定価:800円(本体)
2019年01月22日第1刷発行