加藤典洋の作品一覧
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Posted by ブクログ
新書にして600頁越えのボリューム感に怯み、早く読みたいと思いながら、長らく積読状態に置かれていたもの。やっと読めました。しかしこれ、どうせ読むなら早く読んどくべきだな。新たな戦前なんて言われちゃうような今日に読んだからこそ、相当に響くところがあったのかもしらんけど。
まず、枢軸国側と連合国側の争いであった大戦が、終戦後にいつの間にか、民主対共産に置き換えられたとの指摘から始まる。その原因として、根底には原爆投下の責任回避的側面が垣間見え、結果的に、現在まで続くところのアメリカ従属体質が維持され続ける問題にまで論が及ぶ。必然的に憲法第九条に言及される訳だけど、どう改正を声高に叫びつつ、一方で対米従属方針を強めていくべく立ち回る論理矛盾が、いかに荒唐無稽か、すっと腑に落ちる。ではどうすべきか。フィリピンが、対米関係をこじらせることなく、米軍基地の撤廃に成功した例を引き、日本でも同様の可能性が探れると説く。本書上梓から十年が経過し、氏が鬼籍に入られてからも世界の変化は著しい。コロナ禍やウクライナ侵攻・ガザ侵攻で、本書でも一番の拠り所としている国連の、そのプレゼンスは低下している印象を拭い切れない。本書の論旨を、まんま現代に適用するのは、ますます困難になっているけど、それでも十分に通用し得るもの。それだけに、今の世に対する氏の論考がもはや聞けない喪失感が大きい。