1933年の日本海軍を舞台にしているのに、主人公のファーストミッションは「超巨大戦艦建造費用の見積もりの調査」というもの。読み始めたときは正直、「え、地味すぎないか?」と思いました。建造費用がどうこうって裏方のさらに裏方の話じゃないですか、と。
しかし、読み進めていくと、自分の浅はかさを思い知らされます。まず、主人公・櫂直がかっこよすぎる。東京帝大中退の数学の天才で、英語・仏語・独語もペラペラ、しかもイケメンで女性にもモテるんです。
戦艦に関する知識はゼロという状態で、海軍省経理局という超絶アウェイにいきなり放り込まれて、数学の才能一本で真実を解き明かしていく――そんな下剋上ファンタジスタぶりを見せつけられるだけでも痛快で面白いのに、国防や戦争が抱える矛盾、上層部の軍人たちの曲者ぶりなど、読者を唸らせる要素がたっぷり盛り込まれています。
さすが、庵野秀明氏、かわぐちかいじ氏、秋本治氏が帯に推薦コメントを書いているだけあります……! このお三方の並び、信頼感しかないですよね。
正義感が強く平和を愛する櫂が、新型戦闘機を開発するなど、図らずも戦争の要となる技術戦略畑に深く関わるようになっていく様が、物語の面白さであると同時に、戦争に向けて動き始めた世界からは誰も逃れられない……という恐ろしさを物語っているようでもあります。『ドラゴン桜』(講談社)や『インベスターZ』(コルク)を世に送り出した三田紀房先生ならではの、“面白くて考えさせられる”作品です!
感情タグBEST3
昨今、大河ドラマ的な漫画がたくさんあるが、まともに終結されないものも少なくない。この作品は(まさに作品というに相応しい)、実際に起こった日本の戦争をifでSF的な展開をしつつも難しい終結をSFでごまかさず、避けること無く描き切った。この様な展開には通常、作画とは別に原作者が必要と思われるが、それを...続きを読むせず1人で描き切った事を評価したい。まあ、実際には担当編集者などのアドバイス、協力が合ったとは思いますが。
戦後編が余りにも短いので、何かの機会にスピンオフの物語を期待したい。
気になるのは、マッカーサーとの対面場面で戦艦大和の特攻出撃を日本人のものの哀れと表現したが、チョット意味不明の部分もあるので、ここも合本版作成の機会があれば、other endingとしてブラッシュアップしてほしいです。また、原爆投下について絵面含めて全く触れないのも余りにも不自然でしょう。であるとしても、作品評価は変わりません。
今後の作品に期待します。
Posted by ブクログ 2024年02月15日
【あらすじ】
追い詰められ、自責に駆られ、その先に櫂が見出したものとは。
櫂と東條、因縁の二人が最後に交わした言葉。櫂の口から語られる「大和」の最期。数学で戦争を止めようとした男・櫂直。彼が辿り着いた未来がここに。
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数学の力、つまり合理性をもって日本国...続きを読むのために考え抜き、軍や米国と戦い続けた男・櫂直の物語、終幕です。櫂という男の存在自体はフィクションとのことですが、軍上層部とのやりとりのシーンなどは「本当にあったことなのでは?」と思えるようなリアルさがありました。
現在、再び世界を巻き込む大戦が近づきつつあります。(実はもう始まっているかも) 日本は第二次世界大戦の失敗を教訓として活かせるのか。合理性に基づき冷静な判断を下せる指導者がいるのか。…とても不安です。
つまらない結末
匿名 2024年01月07日
最初こそ主人公の活躍により史実とは違って日本が勝たないまでも、アメリカに一泡吹かせて日本に有利な状況で戦争を収めるのかと思ったら、ほぼ史実通りの結末。
爽快感が全くないし、史実通りの結末ならこの作品を購入した意味がない。特に30巻以降はイライラする展開ばかりで、そのせいか、日米開戦後から最終巻まで一...続きを読む気に話が進んだのは読者から見放されての打ち切りっぽい。買って損した。
ちなみにこの巻は他の電子書籍サイトで購入はしてます。