【感想・ネタバレ】アルキメデスの大戦(9)のレビュー

1933年の日本海軍を舞台にしているのに、主人公のファーストミッションは「超巨大戦艦建造費用の見積もりの調査」というもの。読み始めたときは正直、「え、地味すぎないか?」と思いました。建造費用がどうこうって裏方のさらに裏方の話じゃないですか、と。

しかし、読み進めていくと、自分の浅はかさを思い知らされます。まず、主人公・櫂直がかっこよすぎる。東京帝大中退の数学の天才で、英語・仏語・独語もペラペラ、しかもイケメンで女性にもモテるんです。
戦艦に関する知識はゼロという状態で、海軍省経理局という超絶アウェイにいきなり放り込まれて、数学の才能一本で真実を解き明かしていく――そんな下剋上ファンタジスタぶりを見せつけられるだけでも痛快で面白いのに、国防や戦争が抱える矛盾、上層部の軍人たちの曲者ぶりなど、読者を唸らせる要素がたっぷり盛り込まれています。
さすが、庵野秀明氏、かわぐちかいじ氏、秋本治氏が帯に推薦コメントを書いているだけあります……! このお三方の並び、信頼感しかないですよね。

正義感が強く平和を愛する櫂が、新型戦闘機を開発するなど、図らずも戦争の要となる技術戦略畑に深く関わるようになっていく様が、物語の面白さであると同時に、戦争に向けて動き始めた世界からは誰も逃れられない……という恐ろしさを物語っているようでもあります。『ドラゴン桜』(講談社)や『インベスターZ』(コルク)を世に送り出した三田紀房先生ならではの、“面白くて考えさせられる”作品です!

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Posted by ブクログ 2018年03月22日

戦艦大和建造を阻止するべく、櫂と平山造船中将の直接対決。舞台は呉。大和が建造された造船所での対決です。
大和建造での景気回復、大艦に寄り添う兵士の安心感。政治・経済・感情と様々な方向から櫂の論破・説得を試みる平山造船中将ですが、ことごとく跳ね返されていきます。

ついに自論をあきらめ、大和建造をあき...続きを読むらめることを宣言。ただ、最後の一刺しを櫂に打ち込みます。

最大最強の戦艦大和の完成予想図を、建造反対している櫂自身に提案させるという一刺し。
国防という点から絶対反対の櫂ですが、数学者として完璧な理論を求めるという性があります。おっぱい比率計算するぐらいですからね。
公人としての櫂でなく、私人としての櫂の欲求に訴えかけるという作戦。

自身の理論を駆使して、最大最強の戦艦を作り上げるという誘惑。構想だけならと思い、図面にでもしてしまったら最後です。その図面が盗まれちゃうんだろうなぁ。

さてさて、この小さな一撃が櫂の動向をどう左右するのでしょうか。それが、帝国海軍の行く末を左右することになるのだから。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年09月16日

この巻は面白い。
大和を造らんとする平山中将と櫂のぶつかり合いや議論が面白い。
「国の経済政策に軍が深く関与してはならない」
「大和の存在意義を感情で語ってはならない。物理的合理性で構築し結論すべき」

櫂少佐はつくづく優れたエンジニアだな。
エンジニアは創作したがる。それは本能みたいなものた。だか...続きを読むら作ってはいけないものを作ってしまう。だから経済合理性、数字という共通言語で語るべき。

だが創造したいという本能は櫂少佐にもあり、それに飲み込まれていく様は興味深い。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年12月14日

82 櫂とのタイマンに応じる平山もなかなか。
83 「竣工したころには古くなって使えない!」櫂は、すでにジェットエンジンを想定しているのですかね。
85 特型の吹雪をもってきたのは、第四艦隊事件?手記にもよりますが、戦艦や空母に攻撃が集中されるので、駆逐艦はスルーされることも多いとか。
86 感情論...続きを読むも大事ですが、問題なのは、無策なのを感情論で上書きしてごまかすことが問題。

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