あらすじ
井上正紀は戸川屋からの突然の借金取り立てに困惑する。戸川屋の娘は、謀反を企て切腹となった家老、園田頼母の妻女であり、復讐の匂いが濃いが、藩の財政をいかに切りつめてもこの危機は乗り越えられそうもなかった……。待望のシリーズ第三弾!
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難事続きの正紀
利根川高岡河岸の建設は、行徳の塩製造問屋桜井屋の援助で高岡藩に無事完成した。藩財政逼迫状況は少しは改善されるはずだ、と安堵する正紀だ。
しかし、難事は続いたのである。
藩主正国の大阪奉行所代としての赴任に伴う、生活費用の負担増により諸費用が借金で賄われていたのである。その額は120両余りに及び、藩の家老、園田頼母の妻の実家である取手の戸川屋からの借金だった。正国の大阪奉行所務めは、江戸幕府内の出世に影響する重要な出向先である。それと頼母は、前回の高岡河岸建設の際の不祥事で切腹させられている。
小さな藩はこの時代貧乏な所が多い。米作に頼るのみで豊作の年ばかりではなく、天候に恵まれず凶作、不作の年もあり、度々飢饉に見舞われた。播磨龍野藩は淡口醤油を醸造して、名産品に仕立て上げて、大坂や江戸に送ることが出来る。数少ないゆとりある藩であり、そうした藩は西国に多かった。
正紀は、戸川屋からの返済要請に応えようと、馴染みのお店や知人縁戚に借金の依頼で奔走するが断れるばかりだった。貧乏小藩に婿入りした正紀は再度難題が襲われたのだった。
江戸の醤油問屋大松屋が、播磨龍野の名産の淡口醤油を仕入れた時、大松屋を商売敵とする津久井屋がこれを船ごと横取りするという事件が発生した。しかも船頭の酉蔵が死体で発見された。高積み方与力の高野辺は、奉行所の人手不足で町廻り方に代わり事件を調べる。この事件が、やがて盗品の預け先として取手の戸川屋に繋がるのであった。
何とかして借金を返済をしたいと金の工面を考える時、正紀は尾張藩の縁筋でもあるので、家宝の掛け軸や茶道具などの名品を処分する瀬戸際に追い込まれるのだが、事件の解決により救われる形になった。
正紀は、毛並みの良さが自然と湧き出る若者らしい。周りを囲む友人や支援者にも恵まれて、今回も無事乗り切った。後味が爽やかな物語である。
Posted by ブクログ
千野隆司さんの「紫の夢」、おれは一万石シリーズ№3、2018.2発行です。竹腰家次男、正紀18歳は、井上家に婿に、2つ年上の京と祝言を。大名ぎりぎりの一万石、少しでもしくじれば旗本に格下げ。しかも藩の財政は逼迫。そんな中、ふりかかる難題を必死で振り払い解決していく正紀、そして上から目線、姉のようなくちぶりではあるものの一緒に困難に向かってくれる京の姿。二人の仲も徐々に通い合ってきます。今回は「紫」、龍野の淡口醤油をめぐる物語です。色は薄くても味わいは深いです!
Posted by ブクログ
これは時代物小説としては、新しいジャンルといえる。
一石でも削られれば旗本に格下げさせられてしまう1万石の高岡班に婿入りした正紀。
藩のために、何か新しい収入源をと探っている。
今回は親戚筋の淡口龍野醤油をそれ自体が珍しい関東に売り込もう、ひいては高岡河岸をその流通に使ってもらうという野望だ。
醤油卸問屋が、ライバルの問屋から襲われ、初めて関東におろす淡口醤油を奪われてしまう。
そして戸川屋が園田を失墜させたことで、園田の妻の実家であることから、高岡藩、正紀を目の敵にしている。
120両の借用書を持ち出し、返さねば高利にすると脅かす。
今回も藩主の跡取りとは思えぬほどの大活躍!
商いにも開眼!