あらすじ
浜松藩井上家本家が、菩提寺である浄心寺改修のため、それぞれ金二百両の供出を分家である高岡藩井上家、下妻藩井上家に言い渡した。困惑する正紀と正広だが、本家の意向に逆らうわけにはいかない。またもや訪れたこの危機をどう乗り切るのか!? 待望のシリーズ第四弾!
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若殿に難題が襲い続ける
天明7年春、昨年一昨年と関東以北は冷害による凶作で、江戸では米不足と共に米価上昇の影響で諸物価が上昇して、平穏で不安のない暮らしが送れない状況だった。地方も飢饉ゆえ食うにも困る有様で、穀物の不足が続く中、生活を維持するだけでも精一杯となり、安定した暮らしを諦めてまで生計を立てようとする人々が増え、江戸へ流入する 大勢の人がいた。江戸奉行所は、街の治安を守る責務に追われ、日々の事件の始末に忙殺される日々を送っていた。
上総高岡藩の若殿井上正紀は、藩財政の逼迫を憂え、資金繰りの難局に立ち向かいながら、これまでに利根川堤の補強を進め、高岡河岸の整備を図り、取手の商店からの借財返済を確実に果たすべく尽力してきた。
井上家は三河浜松藩が本家である。正紀の高岡藩と正広が後継ぎの下妻藩は共に井上家の分家になる。この三家が集まる会合があり、井上家菩提寺、浄心寺の本堂改築の件が提案され、既にこの計画が進んでいるのだった。
本堂建て替えの費用は1300両で、浜松藩がこの半分600両を負担する。高岡藩と下妻藩は200両ずつを拠出し、残りは寺の檀家衆に寄付を募るという。
難題が次から次へと正紀を襲う。
正紀は高岡藩に婿入りする際、江戸家老と国家老の妨害を徹底的に排除し、最終的に彼らを切腹に追い込んだ。下妻藩の正広も、後継者問題で家来の多くが藩主正棠に従い分裂状態にある。
それゆえ、浄心寺の改築について、正紀と正広が失態を犯せば若殿の座を退くことになりかねない。
そのために何としても200両ずつを確保しなければならない。二人は100両は勘定方の力を借りて工面したが、残り半分は当てがなかった。
正紀は、江戸街中で破落戸に因縁を付けられて暴力を受けそうになる両替屋の房太郎という若者を助けた。房太郎は、予々米などの穀類の値段の動きを調査していた。房太郎は正紀に、この先大麦の値が上がると助言した。
早速、正紀と正広は併せて160両買い入れて、相場が上がるのを待った。やがて房太郎の言うとおり数日後には2倍近い値になり、売り抜けたのである。その後も房太郎の助言で為替相場を利用、200両ずつを調達出来た。
物語のこうした筋書は魔法のように感じる。展開して益々謎を深め、終盤には将軍らしい人物が姿を現す。天が見捨てぬ人、正紀と正広だったのだと示唆される。読み終えて誠に不思議な物語だと実感した。
Posted by ブクログ
大藩の一門浜松藩から菩提寺改修の折の責任者となり、分担金200両を割当てられる正紀と正広。
互いに小藩で金はない。
そして足を引っ張る敵対するものがいる。
今回は飢饉が続く米に入れて嵩を増やすための大麦の相場に足を踏み入れる。
大きな両替屋ではないが、銭の両替を営む跡取りの房太郎と、偶然知り合いになって二人は新しい分野へと分け入るのだった。
江戸の経済にまで踏み込んだ面白いアプローチの時代小説。