【感想・ネタバレ】鬼平犯科帳[決定版](五)のレビュー

あらすじ

江戸の盗賊たちに「鬼の平蔵」と恐れられている、「鬼平」こと火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官・長谷川平蔵。

火付盗賊改方とは江戸の特別警察とでもいうべき組織。その長官を務める旗本の平蔵は、いまでこそ人あたりもよく笑顔を絶やさないが、若い頃は「本所の銕(てつ)」と呼ばれ、無頼の者からも恐れられた乱暴者だった。「悪を知らぬものが悪を取りしまれるか」と口にする、人情の機微に通じた鬼平が悪を退治する時代小説の金字塔。

中村吉右衛門が鬼平を演じたテレビ版をはじめ映画、舞台、マンガと様々な形で愛されてきたが、2017年に放映されたアニメ「鬼平 ONIHEI」も大きな話題になった。

2017年は「鬼平」が誕生して50周年。これを記念して全24巻を、ふりがなを増やして読みやすくなった決定版で順次、刊行。

第5巻に収録されているのは以下の作品。

・余命いくばくもない「間取りの万三」に平蔵が情をかける「深川・千鳥橋」
・偶然、盗みの計画を聞いてしまった物乞いが意外な行動に出る「乞食坊主」
・盗賊であっても子を思う親の心は同じ。その思いを平蔵がくんだ「女賊」
・記憶を失ってしまった同心の数奇な半生が描かれる「おしゃべり源八」
・第四巻に収録「あばたの新助」では平蔵の手を逃れた網切一味と対決する「兇賊」
・平蔵の従兄のおいらくの恋が大捕り物につながる「山吹屋お勝」
・功名心が生み出す恐ろしさを描いた「鈍牛(のろうし)」

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

“「気に入った‼︎」
「なんとね?」
「いや。気に入りましたよ、平蔵さん」
「なにが?」
「その、いのちがけというやつがね」
「ほほう、そうか」
「その、いのちがけというやつを、私は、もう二十年もさがしつづけて来たのですよ」ーーー「乞食坊主」より”


池波正太郎の『鬼平犯科帳』を
ぽつぽつと読み続けている。
シリーズ物は長続きしない自分だが
なんとも珍しい。

どの作品も味があって面白いが
とりわけ『乞食坊主』がよかった。

小さな社の裏手で、怪しい二人の男の
会話を立ち聞きしてしまった乞食坊主。
身なりこそ見すぼらしいが、
乞食坊主の正体、井関録之助は元剣士。

怪しい男たちの足取りを追ううちに
昔の旧友菅野伊介が、今は悪党の
手先のようなことをしていると知る。
録之助は平蔵のもとを訪れ
なんとか菅野を救い出そうとするという話。

人殺しなどなんとも思わず
盗みを働く悪いやつらがいる。
一方で、身を持ち崩してしまい
止むに止まれぬ事情で
悪事を繰り返す者もいる。

悪者だって時には被害者だ。
平蔵の判断は公明正大だが
時として正しさだけでは
測りきれないことを
自らの物差しで裁くこともある。

“「この御役目はな、善と悪との境目にあるのだ。
それでなくてはつとまらぬのだ。」”

悪党も正義も、
筋が通っていなければ
なんの美学もない。
確固たる意志を、生き様を、
こんなにも貫けるだろうか。

0
2021年07月11日

「歴史・時代」ランキング