【感想・ネタバレ】最後の努力──ローマ人の物語[電子版]XIIIのレビュー

あらすじ

蛮族の侵入や政変が相次ぎ、未曾有の危機に陥った帝国に現れた2人の皇帝。ディオクレティアヌスは皇帝4人による領土の分割統治を実施し四頭政治を導入。跡を継いだコンスタンティヌスは、ローマ帝国に幅広く浸透していたキリスト教公認に踏み切った。しかし、帝国復権を目指した彼らの試みは、皮肉にも衰退を促す結果を生んでいく――。塩野版「ローマ帝国衰亡史」、いよいよ佳境に! ※当電子版は単行本第XIII巻(新潮文庫第35、36、37巻)と同じ内容です。

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変質したローマ帝国

一部ご紹介します。
・アウグストゥス帝の時代は、「先に納税者あり。国家は税収が許す範囲のことしか手掛けない」という小さな政府であった。
・だが、ディオクレティアヌス帝の時代になると、「先に国家あり。国家に必要な経費が、税として納税者に課せられる」という大きな政府になった。そして、元首政から絶対君主政へ移行した。
・軍事力の増強、官僚機構の肥大化は、必要経費の増大(国庫から給料を払う人間の数が増える)と組織や人材の硬直化(縄張り意識の肥大化による流動性の断絶)を招かないでは済まない。
・ローマ帝国をまとめていたのは、「ローマ法」「ローマ皇帝」「ローマの宗教」であった。コンスタンティヌス帝による「キリスト教の公認」は、このまとまりを外してしまった。
・キリスト教会への土地の寄付、キリスト教会の聖職者に対する兵役免除が施行されたことで、教会と聖職者たちのローマ帝国からの独立が起こった。
・現実世界での統治・支配権を君主に与えるのが人間(可知)ならば、委託・リコールもできる。だが、神(不可知)が統治・支配権を与えるとしたら、委託・リコールは不可能ということになる。つまり司教たちを懐柔すれば絶対権力者になれるということだ。
・コンスタンティヌス帝がキリスト教の公認及び多大な優遇措置を行った理由は、キリスト教が支配の道具として有用であることを理解していたからである。これが、事実上、中世が始まるきっかけであった。
・後世の歴史家「これほどまでして、ローマ帝国は生き延びねばならなかったのだろうか。」

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2022年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

4世紀に入り、ローマ帝国は専制君主の帝国へと変質していく。ローマは「共和制」の時代から「帝国」であったことを今更ながら気がついたように思います。小さい政府であったローマ帝国がディオレクティアヌスにより、軍政・税制改革、そして4皇帝による分割統治をどうして検討せざるを得なかったのか。彼の引退の引き際の素晴らしさに拍手するとともに、引退後の権力のなさ(妻と娘が皇帝により冷たくあしらわれ、惨めに殺されて行く・・・)に複雑な思いがします。そしてコンスタンティヌス大帝がどのようにして一人皇帝として権力を握るのか。そして大帝と呼ばれることになった理由として、キリスト教との関わりが言われるが、必ずしも彼はクリスチャンになったわけでもなく、洗礼も受けていない、にも関わらずなぜキリスト教を擁護する立場になったのかは興味深い話しであります。ディオクレティアヌス、コンスタンティヌスという有名な皇帝の努力を中心にローマが官僚体質になり、内外の動向から滅亡の必然性が迫ってきていることを説得力のある表現で力説しています。著者はいつも現代を意識しているように思います。

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2013年08月21日

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