【感想・ネタバレ】すべての道はローマに通ず──ローマ人の物語[電子版]Xのレビュー

あらすじ

歴史上比類なき一大強国を築き上げ、数百年以上にわたり、維持・発展させたローマ帝国。その統治の基礎はどこにあったのか。帝国をすみずみまで繋いだ街道、橋、水道などのハードなインフラ、そして医療、教育などソフトなインフラまで、「インフラの父」と呼ばれたローマ人の最大の強みを解明したシリーズ番外編。 ※当電子版は単行本第X巻(新潮文庫第27、28巻)と同じ内容です。

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インフラの重要性

一部ご紹介します。
・アリスティディス「かつて、ホメロスは語った。大地は全ての人の物であると。ローマは、詩人のこの夢を現実にしたのである。あなた方ローマ人は、傘下に収めた土地の全てを測量し記録した。そしてその後で、河川には橋を架け、平地はもちろんのこと山地にさえも街道を敷設し、帝国のどの地方に住まおうと、往き来が容易になるように整備したのである。しかもそのうえ、帝国全域の安全のための防衛体制を確立し、人種が違おうと、民族が異なろうと、共に生きていくに必要な法律を整備した。これらのこと全てによって、あなた方ローマ人は、ローマ市民でない人々にも秩序ある安定した社会に生きることの重要さを教えたのであった。」
・歴史は知識。それに血を通わせるのは経験。
・道路とは、国家にとっての動脈である。血管の中を通って身体の隅々まで血液が送られてこそ、人間は生きていける。国家が健康に生きていくにも、血管網は不可欠だ。それ故、常にメンテナンスを忘れないようにしてのネットワーク化が必要なのだ。
・建造物はハードなインフラ。システムはソフトなインフラ。
・インフラ無くして、人間が人間らしく生きていくことは不可能だ。だからこそ、壮大なインフラ保持が重要となる。そして、インフラは、それを維持するという強固な意志と力を持つ国家が機能していない限り、いかに良いものを作っても滅ぶしかない。
・キリスト教の台頭により、医療は「公」が中心になって担当する分野であるべきという考え方が主流になった。やがて、医療は莫大な経費を要する事業となった。これがローマ帝国の経済を破産状態にした原因の一つ。
・公衆浴場は、「貧乏人のための宮殿」だった。誰でも公衆浴場に行けば、ギリシャ・ローマの彫像を観ることが出来たのだ。だが、キリスト教の台頭によって、これらの彫像は破壊され、終には、公衆浴場そのものも壊され、教会の建築材料に使われてしまった。
・ローマ帝国滅亡の原因の一つは、キリスト教の台頭である。アテネの「アカデミア」も、アレクサンドリアの「ムセイオン」も廃校となった。疑いを抱くことが研究の基本だが、世の中は「信ずるものは幸いなれ」の一色になったからである。

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2022年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

このシリーズでは異質な一巻です。人物中心ではなく、テーマはローマ帝国を支えたインフラである道、橋、水道などのハード、そして医術、教育などのソフト面のインフラ。ローマ人は子供の時から母国語のラテン語と世界共通語としてのギリシャ語を話したと言う。特に道の建設は当時としても土地の接収から始まる公共事業の大変さの記述など、現代にも通じる記述は迫力があります。ローマが世界帝国として現代に至るまで圧倒的な存在感を持っているもの凄さに圧倒されます。ローマ人とギリシャ人の違い、ローマがいかにインフラを重視し、清潔さを望んだか、ギリシャは美を求める割には、清潔さはあまり求めなかった!永年の繁栄、異常に少ない疫病の流行、パクス・ロマーナの実現は、これなくしてはなかったということが良く分かります。著者は全15巻の中で、この巻の副題、書く内容も決めていたというだけに力が入った作品です。

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2013年08月24日

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