あらすじ
とある企業から出入り禁止処分となったスルガシステム社長・六本松。しかし、その企業は大規模案件の発注を控えており、諦めきれない六本松がそのコンペに参加するべく自らの代打として白羽の矢を立てたのは、あろうことか新卒の桜坂工兵だった! 右も左もわからないまま、立華や梢の力を借りて提案書の作成をはじめる工兵だったが……。立ちはだかるのは先方の潔癖キャリアウーマンに業界大手の競合企業たち。はたして小規模会社の新入社員・工兵に勝算はあるのか!?
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Posted by ブクログ
3弾目は
早くも、『提案活動』が題材になっていて、
おー着実にステップアップしてるー。とタイトルだけ見ても解る。
前回と同じく気になった印象的なセリフについて
抜粋していきます。
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『D興業もそうだな。目先の金をケチって運用を買わんくせに、いざトラブルが起こると平気で問い合わせしてきおる。それも初期構築の瑕疵だとか営業対応の範囲内だとかへりくつをこねおってからに。どんな内容であろうとエンジニアを動かす以上金がいる。その事実が連中さっぱり分かっておらん。』
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主人公、工兵の勤務するスルガシステムの社長のお言葉。
SIerの社長ならではの悩みなんだろうけど、よくある話ですよね。
SIerは機器で設けるんじゃなくて、運用もセットで長い目を見て利益を出したいのに、
ユーザーは渋る傾向が・・・。特に不景気な最近は多そう。。。
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『・・・でも、彼らは専門サービス部隊を持っています。室見さんが1週間かけて設計・構築するシステムを既に定型の仕組みとして準備しているんです。パラメータシートを記入すれば後は自動で設定、出荷、設置確認が行われる体制。もちろん運用についても同様です』
『もう一つ言っておきましょうか。私たちは回線や機器を購入する際、担当者単位で業者に問い合せてます。ですが、JT&Wのような大企業は違います。彼らは購買、資材部という専門のバイヤー部隊を持っているんです』
『商品の相場を見極め、複数の調達先とパイプを持ち、常に最良の価格で品物を仕入れる集団です。前案件の取り引きを一窓口で行うから大量仕入れとなり大幅な値引きも交渉できます。私たちが同じ商品を仕入れるよりはるかに安く、場合によっては半値以下で。』
『分かりましたか。仮に彼らと同じ構成を組んでも価格面では絶対に勝てない。では、と構成をレベルアップすればさらに費用が跳ね上がる。どうあがいても太刀打ちできないんです。私たちが小所帯である限り万にい一つも勝機はありません』
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これは中小企業と大企業SIerでの
案件をとれるかの実力の差について梢さんが冷静に分析した結果のセリフ。
長いけど、ホントその通り!って思ったので全て抜粋してみました。
本質をついてる分析なので、
納得させられる中小SIerも多いんじゃないかなぁ。
機器メーカーと機器を担ぐ販社が手を組んでいるのが
日本のSIerの実態。某N関係のSierなんて、色んなメーカーとの太いコネクションがあるから、
中小企業は太刀打ち出来ないのが現状・・・。
日本ならではの変な仕組みだし、
喜ぶのはITゼネコン会社と一部のメーカー位で、
日本の中小企業の発展の妨げになっているのも、これまた現実だったり。
この辺の仕組みを根本的にどうにかしないと、日本のITは世界に遅れをとる一方だと思うんだけどねぇ。。
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『業平産業株式会社 橋本様
お世話になっております。スルガシステムの桜坂です。
先日はRFP説明会へのご招待、ありがとうございました。頂きました資料をもとにベストの提案ができるよう社内で検討させていただいております。
さて、御社担当が弊社六本松から私、桜坂に変わったこともあり、今更ではありますが一度ご挨拶に伺わせていただければと考えております。差し支えなければご都合のよい日程をいくつか教えていただくことは可能でしょうか。
ご検討ください。
よろしくお願いいたします。』
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これは、RFPをもとに提案に行き詰まった際の、
『挨拶』という建前で、ヒアリングしようという、工兵のメール。
これは客先担当者から、RFP選考が終わってから挨拶にきてね。
と断られる。んだけど、
説明会とか終わってから、ミョーにSIerは挨拶をしたがるのも、事実。
挨拶はササッと終わらせて、
『ちなみに先日の説明会の件ですが・・・』と切り出す営業を見てると、
またかぁー。と少し恥ずかしくもなるんだけど、
案件を取りにいく為になりふりかまってられないんだよね^^;
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『各システムの中身は完全にブラックボックス、ユーザーが開示されているドキュメントは何一つなく運用要員の数も非公開、挙げ句に月額費用はアウトソーシング1式X千万円と丸められている有様です。資料公開を求めても業者は『サービス設備』だからと拒否する始末、運用要員数も同じく『シェアード窓口』と言ってごまかされる状況でした』
『顧客内部にシステムの内情をしってる人間はいません。インフラの規模、月額の運用稼働、現状の構成、全てブラックボックスです。そんな状態でどこのベンダーがリプレース提案をかけられるですか。最適構成を見積もれるんですか』
『最善を尽くしました。現地サーベイを行い、ヒアリングを実施し、過去の資料を漁り、必死になってシステムの全貌を明らかに使用としました。ですが・・・無駄でした。内情を知る既存ベンダーの協力なしに現状調査を行うことは不可能だったんです。』
『私はコンサルティングファームの仕事に限界を感じ、ユーザー企業の情シスに入りました。以来、たった一つのことだけを守り今日まで仕事し続けています。なんだかわかりますか。
自分たちのシステムは自分たちでコントロールする。情報を管理し、特定ベンダーとの付き合いを深めない。これが全てです。違えるつもりはありませんし妥協するつもりもありません。』
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これも長くなってしまった・・・。
客先担当者が前職でSIerやっていたときのエピソード。
一つのベンダーと独占的に付き合ってきた結果、
相手の思うつぼになって、調子に乗られて金額は上げられるけど、頼むしかない。って失敗談。
この失敗から、ユーザー企業に入ったけど、ベンダーを全く信じずフラットに接しすぎる事に。。。
いやぁ、。このリスクもありますよねー。
全て丸投げしてしまうと、ユーザーの手をドンドン離れ、
ベンダーの思う通りになってしまうパターンもよく聞きます。
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『知ってる?JT&Wって案件の実働部隊に正社員はほとんどいないの。契約社員や協力会社、派遣に業務委託。一度なんてプロパーの全くいないチームに配属されたこともあったわ』
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大手ベンダーの内部実情でしょう。
これもこの業界のおかしくもあり、改善されないところ。
僕も昔派遣で、大手に出向になった時に、社員さんがほとんどいなかったのに違和感を感じた。
隣の人と逆サイドの席の人とも
みんな違う会社から派遣に来てたり、業務委託できてたり。
ユーザーに会うときは自分の会社名を言うのはご法度で、案件によって自分の会社名もたくみに変えて言わなきゃならないという・・・。なんだかブラック業界な気がしてきたわw
と、長くなってしまいましたが、
なれるSEの第3弾目。
今回が一番ストーリー的に良く出来ていたし、
IT業界の現状を再認識する意味でもとても勉強になりました。
それにしても
主人公の工兵の成長っぷりが凄過ぎる!!
コレは第4弾にまだ続くのかなー?
いや、是非続いてください。
楽しみにしてるので!
Posted by ブクログ
おもしろかったー!!!提案という仕事が、自分の仕事にも通じるような内容でした。専門用語がわかったらもっとおもしろいんだろうなぁと、ITに関連することを勉強してみたいものの、なかなか手をつけられていません。こんなおもしろくて読みやすい本がたくさんあればいいのに。とりあえず、4巻いってみよう!
Posted by ブクログ
思ったよりかは面白かったし、ちょっと社会人的にそれはどうだろう?と思うような主人公の行動もありつつも、王道的な物語展開だったので、そうゆうものだと思えば楽しめる作品。
一方で、IT業界関係者が読めば少々鼻白む箇所もチラホラあるのは確か(例えばDRサイトを2日間で構築(しかも検証済みで成果物が出来ている!)とか、それが決め手でコンペに勝ったりとか)。まぁラノベなので、そのへんはあまり細かく言ってもアレだが。そういった一部の誇張表現を除けば、ITに関して嘘はついていない印象。IT業界関係者を含む多くの読者に受け入れられているのも頷ける。
総合的には、面白かったし、既刊も読みたくなる作品である。
ただ、ハーレム展開ってのは頂けないですね、女性に縁のないエンジニアとしては!
Posted by ブクログ
なぜか営業的なことをしている主人公ってのが今回の話。
今回はイレギュラーだなあと。
お客さんが別会社に頼みたいとかそういう思惑を組んで提案するとか、先に開発しちゃってるから、安くできますよーとか。
普通の提案活動ではないなあと思った。特に先に開発はないだろう。失注したら、その分の稼働はどうするんだ。
にしてもネットの情報から、いろいろと推理して走り回った主人公のチートっぷりがすがすがしい。
Posted by ブクログ
RFPへの提案作成の話。主人公が自分の頭で考えて体当たりで問題を解決に導くプロセスが痛快。橋本課長と会話の機会を得たシーンは鳥肌ものだった。
登場人物が仕事に対して誠実であって努力を惜しまない。そんな姿に心動かされる一冊だった。
Posted by ブクログ
巻を追う毎にスーパーマンぶりに拍車がかかる主人公ですが、本巻でも更にパワーアップ。
さすがにどうかと思う展開なのだけど、文章が読みやすいので一気に読めてしまう。恐るべしラノベ。
Posted by ブクログ
2011年33冊目。
282頁。
書店で購入。
≪本文引用≫
p.82
瞬間、工兵は理解した。
梅林が大人しくJT&Wの非を認めた理由、工兵に頭を下げてきた理由。
そうすることが一番効率よくトラブルを収束させられるからだ。
p.113
「細かい技術論なんてお客さんにはどうでもいいんです。そうではなくて価格とかサポートレベルとか、あるいは新しいワークスタイルの提供とか。・・・・・・要はお客さんのビジネスにどういうメリットが生まれるか具体的・定量的に説明できますかって訊いてるんです」
p.143
「提案書を章立ての観点で検討するメリットはいくつかあります。まず提出物の確認でお話ししたのと同じ、全体の作業ボリュームを見積もれるということ。次に提案書のページ数を事前に決められること。-今回はともかく、案件によっては提案書のページ数に制限をかけてくるところもありますから。そういう場合、全体で何ページ使えるかあらかじめ分かっている方が望ましいわけです。そして最後に一個、これが重要なんですけど、章立てを決めておけば複数の担当者がパラレルで作業を進められる。各章を分担してあとで一つにまとめあげられるでしょう?事前に全体構成が決まってなかったらこんなことできません。提案書の規模が大きくなればなるほど章立ての事前検討は必須になっていくわけです」
p.178
『坊ちゃん、坊ちゃん。お客さんはね。自分の欲しいものが何か、意外と説明できないものなんですよ』
p.289
「提案は企業がするんじゃない、人がするんです」
p.295
ある業界に就職してよいかを判断する方法は一つ「その仕事、年中無休でやってても楽しめる?」と自問自答してみることかもしれません。
Posted by ブクログ
大手SIerとのバトル巻。
顧客の元に足繁く通い、テンプレのような悪役大手SIerに勝利するという、ある意味ありきたりな展開。
ただ、勝負を決めたきっかけの部分は、実際そういうことがあるのかは知りませんが面白かったです。
そして、よいツンデレでした。