あらすじ
モンゴル族の統一をかけた大きな戦いに結着がつくも、敗れた者たちはそれぞれに生き延びる。その中には、命ある限りテムジンの首を狙い続ける者もいた。テムジンはモンゴル族統一後も、遊牧だけではない生活を見据え、積極的に動く。軍の南の拠点となるダイルの城砦を訪れ、さらに大同府へと向かう。大同府には、かつて一時期を過ごした蕭源基の妓楼があった。そこでテムジンは轟交賈の男と出会う。しかし、そのような状況下、草原を生きる者たちに激震をもたらす出来事が、ふたたびテムジンを待ち受けていた。好評第八巻。
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Posted by ブクログ
大戦争だった7と打って変わって、8は戦が少なく登場人物一人一人を丁寧に描く回だった気がする。その分私も、一人一人と深く向き合えた。
敗走した3人のうち、タルグダイははるか南、今でいう台湾の対岸の場所でラシャーンと二人で暮らし始めていた。ラシャーンがいつか夢見たタルグダイに海を見せる事が、叶ったのはひとつのハッピーエンドだと思った。多分2人はもう出てこないだろう。テムジンが南から戻ったその時から、ずっとキャト氏の行く手を阻み続けたタルグダイ。かつては臆病な小物だったが、いつからか覚醒し、最後には勇猛果敢な武将になった。そんな彼が愛する妻とこのまま静かに余生を過ごしたとしても、誰も責める民はいないだろう。よく頑張った。
アインガは相変わらず強敵だが、今のところテムジンとの戦闘の意思は持っていない。草原の統一は、全部族を滅ぼすのが当たり前だと思っていたが、このまま戦う意思がなく内政に目を向けるなら、メルキト族は滅びずにひっそり生き続けるのかなと思った。
ジャムカだけは、相変わらずテムジンを倒すために動き続けていた。序盤、ジャムカが自らの老いを感じるシーンに衝撃を受けた。私の中で、彼はまだ13歳で、自領に侵入したメルキトの者を皆殺しにした血気盛んな若者だったので、それほどの時が立ったことに驚いた。チンギス紀では、意図してか意図せずか、年号を示す情報が全くない。だから、思ったより時が経ってるんだよね。また、ジャムカの息子マルガーシが、周囲の過保護を拒否し、たくましい戦士としてテムジンの前に立ちはだかりそうな気がした。盟友だったジャムカとテムジンの因縁は、ジャムカの息子マルガーシに引き継がれるのかもしれない。
また、ヌオやしょうげんきと言った古くからの仲間の死もあり、テムジンが様々なものを背負って進む様子を感じた。テムジンは人の心は無限だと知ってから、草原の長として相応しい人格に育ちつつあると感じた。ものではなく人を見ており、また周囲にはボオルチュやダイルのように冗談を言える関係性の部下もいる。トオリルカンのように裸の王様になることなく、国を大きくしているのは、リーダーの資質に富んでいることを示唆していると思う。
大きな盤面でいえば、ケレイトの裏切りを読み切ったテムジンが、あっけなくケレイトを滅ぼし併合させた。テムジン自身も語っていたように、今のテムジンは草原では抜きん出た力を持っており、際どい戦などなく邪魔するものを蹴散らすだけの戦いになりつつあり、特に今回はテムジンの強さが際立つ戦だった。テムジンにとってジャムカに次ぐ友と言えたジャカガンボが、最後まで報われることなく草原を放浪することを選んだのは少し悲しかった。
8は、全体的に戦よりも国力増強の方が重点的に描かれていて、何も無いところから国が出来上がる過程を見れて楽しい。生産、貿易、交通、教育、そして医療。いまやテムジンの行った様々な取り組みは、たしかに国を強くするのに役立っており、全てが花開けば金国にも負けない強大な帝国になることは間違いないと思った。
9の展開予想としては、ナイマンとの戦は何だかんだモンゴル族が勝つと思う。次で
テムジン率いるモンゴル族は、ナイマンの併合まで果たすのではないか。そして、金国や西遼との覇権争いに移っていきそう。