あらすじ
完顔襄が率いる金国の大軍四万がタタル族討伐のために動き出した。父イェスゲイをタタル族に暗殺されたモンゴル族のテムジンは、金国の要請に応じて三千騎の出兵を決意する。ケレイト王国のトオリル・カンもまた金国の側に立ち、一万五千騎の陣容を整えた。一方、盟友のジャムカは、金国とタタル族の双方を草原の民の敵とみなし、要請に応じない。草原の部族で金国と連合したのは、テムジンとトオリル・カンのみだった。ウルジャ河付近でタタル族と戦闘中の金軍に加わったテムジンは、メグジン・セウルトが率いるタタル族の大軍に突撃する――。モンゴルの草原に大きな流れが生じ、それがテムジンとジャムカの運命を変えていく分水嶺となる第六巻。
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Posted by ブクログ
チンギス紀6断金を読んだ。6も最高に面白かった!
今までの考察、感想を含め自分なりにストーリーを振り返る。
冒頭から、テムジンは金国と連合してタタル族との戦闘を行う。ここでもテムジンは持ち前の速い戦闘を展開し、勝利に大きく貢献。金国に名を売った形となった。一方で、反金国を強く掲げていたジャムカとは、ここで道を分かつ事となった。本巻では、テムジンが6騎でジャンダラン領へ出向き、ジャムカと二人で駆けるシーンがある。ここが感動的だった。2人は共に高い志を持つ親友同士のようなものだが、『どこかで、生きる道が別れた』というセリフが切なかった。さらに偶然の遭遇ではあるもののテムジンとジャムカの戦闘も起こり、やめてくれ!という気持ちだった。ここの所、順調に力を伸ばすテムジンと対照的に、ジャムカは停滞している印象がある。『玄翁という超えるべき存在がいたテムジンといなかった自分で、差がついたのか』とジャムカはいっていたが、麾下のホーロイ含め、ジャムカに対して皆そういう印象が強いんだろう。ただ、ジャムカはここで終わる男ではないはず。タルグダイを巧みに強者に書き換えた北方先生の手腕に期待。
大きな盤面で見ると、テムジンとトオリルカンが金国と連合し、テムジンは金国の力を使って草原での影響力を強める、というのは予想通りだった。ジャムカとの別れがここまで早いとは思わなかったけど。草原は今、はっきりと親金国と親西陵に別れ始めており、いよいよ大国の代理戦争が本格化してきた印象。ただ金国も一枚岩ではない印象があり、タタル戦では金軍総帥のかんがんじょうと朝廷から派遣された者とで意見が異なる雰囲気もあり、さらに朝廷の者はトオリルカン、烏律、センムグと結び付きがある雰囲気だった。金国内部が腐っているという話も度々出てきており、これにテムジンがどうつけ込んでいくのか見所。
金国関連でいえば、かねてから私が気にしていたのがケレイト王国における烏律の金国工作員のような働きである。これが本館では、トオリルカンによる唐突な烏律の暗殺という形で、1つの決着を見た。これは本巻一番の衝撃だった。これでセンムグはケレイトの中で孤立するだろう。ハッキリと老いを意識し始めたトオリルカンが率いるケレイトが、ジャムカ・テムジンと関係の深いジャカガンボによる統制となる日も近いのかもしれない。そうなれば、今はあくまで利害の一致でしか動いていないケレイトとテムジンの同盟が、より強固になる可能性があるね。ただ、その時には、ケレイトとテムジンの挟撃を受ける形になるメルキト族とジャムカのジャンダランが連合し、ケレイト・テムジン連合と戦う流れになるだろう。ジャムカとテムジンの決着も近いのかもしれないな。
また、6ではテムジンが、運命を共にするボオルチュと妹テムルンの両思いに気づかず、母ホエルンに説教されるシーンがあった。知将の印象が強くなりつつあるテムジンの人間らしい一面が見れた気がしてよかった。
また、長らくの伏線であったイェスゲイ暗殺に手を貸したものが、ようやく判明。同じキャト氏の嫡流である、サチャベキが犯人で、テムジンはあっさり彼を倒した。「モンゴル族が統一されて困るのは誰か」と以前あなたは投げかけたので、金国の人間が関わってるのかなと思ってたけど、予想外にサチャベキだった。けど納得。
さて、これで私が記憶する限り大方の伏線
は回収されたかな。強いて言うなら、移動中のホエルンたちを襲わせたのが誰か、ということだがそれもサチャベキだったのかな?次巻は伏線と言うより、草原全体の勢力図に注目。地政学の鉄則でいえば、ランドパワーは常に侵攻される恐怖を抱えるがゆえ、逆に周辺国に攻撃的になる。これはテムジンに対する金国に当てはまる理論な気はするから、今後注目。