あらすじ
鷹村(たかむら)に緊急事態発生!? KO宣言をして完璧に鷹村優勢で進めた第5Rの後、鷹村のスタミナは完全に底をついてしまった!! サンドバッグのごとく、右へ左へなぶられ続ける鷹村、会長や後輩達の思いを背に、復活なるのか!? はたして、ベルトを巻くのはどちらだ!? 鷹村、世界の頂点向かって甦れ!!
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Posted by ブクログ
鷹村守とブライアン・ホークによる世界戦が描かれる。この試合は、単なる技巧やパワーのぶつかり合いではない。むしろ、ホークという“ボクサーらしからぬ存在”がもたらす異質さが、物語の中心に据えられている。
ホークは常識外れのファイターだ。柔軟な身体を活かし、上半身を大きく寝かせた姿勢からのパンチという“常識外”の攻撃を繰り出す――それは、回避と反撃が一体化した動きであり、従来のボクシング理論では捉えきれないもの。試合の舞台が世界戦であるにもかかわらず、どこか“ストリートファイト”のような混沌とした気配すら漂う。それに対して、鷹村は苦戦を強いられる。卓越したボクサーほど、ホークの埒外にある打撃に、判断が遅れてしまう。理論や反射神経では太刀打ちできない、理不尽とも言える相手。同じ凶暴さを秘めた喧嘩屋を相手に、 異種格闘技戦のようなスリルが楽しめる。
戦いの終盤、両者は体力の限界を超えた殴り合いを展開する。ともに野性味を帯びたファイトスタイルの持ち主だが、二人の決定的な違いが浮き彫りになった。ホークはその狂気じみた野生のまま暴れ続ける一方で、鷹村はボクシングを通して己を制し、磨いてきた男。膨大な練習量と、セコンド陣からの深い信頼が、限界を迎えた鷹村を奮い立たせる。
そして、迎えるクライマックス――ホークのカウンターに、鷹村がさらに上をいくカウンターで畳みかけるラストは、息を呑むような迫力に満ちた見開きと、そこに至るまでの過程の重みが完璧に噛み合った、シリーズ屈指の名シーンといえる。