あらすじ
横なぐりに脇差をたたきつけてきた。かわしきれなかった。浅手ながら左肩を切り裂かれた平蔵。「鬼平。お前もこれまでだな」闇の底から、網切の甚五郎の声が聞こえた。……鬼平の危機せまるスリルを描く「兇賊」をはじめ、「深川・千鳥橋」「乞食坊主」「女賊(おんなぞく)」「おしゃべり源八」「山吹屋お勝」「鈍牛(のろうし)」の七篇を収録。間取りの万三、猿塚のお千代、霧(なご)の七郎、芋酒やのおやじこと鷺原の九平などの名キャラクターも次々登場!
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Posted by ブクログ
今回も平蔵の魅力満載(笑) 『深川・千鳥橋』の万三や『女賊』の小兵衛への、平蔵の計らいがいい! 清濁併せ呑む平蔵の男気を沢山感じることが出来て、爽快な巻でした。
Posted by ブクログ
第5巻。
「女賊」
40を超えてなお強烈な艶やかさと、若さをそなえる、冷酷な女賊、千代。幼いころから、その美貌で男を意のままに操り、富を思うがままにした。「だがな、おまさ。女という生きものは、こころがけしだい、いつでも千代のようなばけものになれるのもなのだよ」と平蔵は言う。
「凶賊」
足を洗った老盗賊が営む居酒屋に平蔵がふと立ち寄り、そこにいた夜鷹相手に、酒を飲んでいた。年増の夜鷹を、一人の女として、いや人間として向き合う平蔵の姿に心を打たれた老盗賊が、平蔵の危機を救う。
「鈍牛」
白痴の亀吉が火付けを犯して捕まった。木造住居が立ち並び、消火技術も大したことのない当時において、放火は非常に重い罪である。しかし、真相は冤罪であった。同心の田中が功を焦った結果である。自分の身分を保守することをせず、部下の過ちを正す平蔵の、切なくも潔い立ち振る舞い。
特に「鈍牛」が印象的だ。部下の過ちを正すその意味は、あくまで正義を徹するという平蔵の信念からか。それをしてしまえば、平蔵もただでは済まないのにもかかわらず。自分の身分を危うくし、部下を裁かなければならない、切なさよりも、一人の白痴の死という不義を重んじる平蔵の姿に考えさせられた。