【感想・ネタバレ】清明―隠蔽捜査8―(新潮文庫)のレビュー

同じキャリア警察官の主人公「竜崎」と、幼馴染「伊丹」の物語。
とにかく「竜崎」のキャラ設定が秀逸!万事の『原理原則』に忠実で、しがらみの多い警察機構の中、ただひたすら『正論』『理屈』を武器に超合理的に全てを進めていく姿が痛快になってくると、あなたは立派な「竜崎」ファンです。堅物過ぎてヤな奴なのは否めませんが、対照キャラの「伊丹」が、それだけじゃないことを読者に説明してくれます。
的確な判断と部下への指示。こんな上司なら一生ついていきたいっす(かなり堅苦しいけど)。
ドラマ出演者が形容したのは「警察版 半沢直樹」。主人公のキャラは全く違えど、組織内の権力争いとスッキリする読後感は確かに似ているかも。1巻ごとの完結ですが、続巻も読みたくなること必至!そして続巻も期待以上です。(書店員・ラーダニーバ)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

今野敏「隠蔽捜査」シリーズ第10作目(2020年1月単行本、2022年6月文庫本)、長編作品としては8作目だ。
今野敏のこのシリーズが一番好きだ。何しろ警察官僚でありながら、組織のしがらみにとらわれず己の信念を貫き通し、結果的にそれが組織をも守ることになり、更に敵対した人物が最後には皆んな竜崎のシンパになっていく胸がスカッとする物語なのだ。
今回は竜崎が大森署署長としての数々の実績により、神奈川県警本部刑事部長に栄転赴任した日からの物語。
シリーズ1作目が警察庁長官官房総務課長としての物語で2〜9作目は全て警視庁大森署署長としての物語。9作目の最後のシーンは大森署の公用車で神奈川県警に竜崎が着いたところで終わっていた。今回はその公用車を降りたところから始まっている。

主な登場人物は今までと変わらない人物が、警視庁刑事部の伊丹刑事部長、田端捜査一課長、岩井管理官。
今回新たに登場するのが神奈川県警の佐藤本部長、石田総務課長、桂木総務課秘書官、神奈川県警刑事部の阿久津参事官、板橋捜査一課長、永田捜査二課長、池辺刑事総務課長など。板橋捜査一課長はシリーズ6作目の『宰領(隠蔽捜査5)』で登場していて、竜崎を嫌い反目していたが最後に竜崎シンパになった人物だ。
勿論竜崎の家族、妻の冴子、娘の美紀も登場する。息子の邦彦はポーランドに留学中で登場しない。

物語は東京の神奈川への飛び地のような町田で身元不明の殺人死体が発見されて、警視庁と神奈川県警の合同捜査本部が警視庁の町田署に開設されたところから始まる。警視庁への神奈川県警のライバル意識は噂以上に酷く、竜崎は辟易しながらも自分の信念を通そうとしたが、阿久津参事官の説得に耳を傾けて取り敢えず上手くやって行くことにする。最終的には竜崎の考え方、行動に神奈川県警の面々も敬服し少しずつ変わって行くことになるのだが。そして警視庁捜査一課の面々も公安部の面々も竜崎の信念と行動力に敬服し信頼、協力関係が強固なものになっていくのだ。

事件の捜査と並行して竜崎の妻の冴子の運転教習所での事故の話が進む。軽い単純な自損事故で勿論教官が同乗している事故なのに冴子は警察署に長時間拘束されていた。教習所の所長の滝口達夫が所轄の交通警官に理不尽な圧力を加えていたのだ。滝口は警察OBで神奈川県警で管理官を勤めたノンキャリアの実力者だった。
この場は竜崎が出しゃばって理詰めで収めるが、その後冴子は教習所で嫌がらせを受けることになる。しかし滝口の現役時代の評判はすこぶる良く、部下からの信頼も厚かった。そして滝口の人脈は豊富で横浜中華街の裏の筋にも人脈があった。実はこの人脈が竜崎を助けることになるのだ。

身元不明の被害者は張浩然(チャン・ハオラン)という不法入国した36歳の中国人だとわかる。日本人の52歳の手配師で元弁護士の山東喜一という者が長浩然(その時は楊宇軒と言う偽名を名乗っていた)の働き口の世話をした関係で身元が確認される。二人の通訳をした黄梓豪(ファン・ズハオ)もまた警察に証言の協力して身元は確認された。
張公然は最初は横浜中華街の縁者に助けを求めたが拒絶されたのもわかった。普通は華僑はよっぽどのことがない限り拒絶しない。神奈川県警も中華街の華僑への人脈はなかった。何故受け入れられなかったのか、竜崎は独自の調査を始める。
神奈川県警OBの滝口所長は現役時代から裏の人脈も多く持っていた。竜崎は滝口に巧みに話しを持ちかけ、妻の件で敵対していた滝口をも竜崎シンパにして中華街の華僑の顔役とも言われる呉博文(ウー・ヴォエン)に面会する。華僑が張公然を拒絶した理由が政治的な理由かもしれないということを知らされる。新華僑や新新華僑の中には本国での弾圧を逃れて日本にやってきた者もいて、その者達は政治的トラブルが持ち込まれるのを恐れると言う。竜崎は張公然の事件に政治的な背景を感じ取り、公安部に協力を求めるのだが…

ここからいつもの竜崎本領発揮が始まり、興奮するのを抑えられない醍醐味なのだ。組織の原理は後回し、己の信念の原理原則優先の行動力を遺憾無く発揮していく。
捜査本部に入っていた二人の公安外事二課の刑事が黄梓豪をマークしている事実を問い詰め、黄梓豪が中国国家安全部の局員であること、張公然は民主化運動家だったことを知り、事件のストーリーが見えてくる。黄梓豪は中国の情報員で張公然を監視していたが、何らかのトラブルで殺害したと考えられた。
しかし公安はわかっていながら、野放しにした。外交問題を視野に入れた判断だと言う。竜崎は真の外交を説き、黄梓豪の逮捕に向けて二人に協力を求め、逮捕にこぎつけるのだった。
そしてここからが本当の本領発揮なのだが、記者会見で黄梓豪が中国の情報員であることも含めて全て隠さずマスコミに発表説明することを竜崎は指示する。当然公安の二人は反対したが、本音は竜崎に賛同していた。あとは公安部長の吉村に話して許可を得るだけだったが、吉村は頭から秘匿前提の別のストーリーを考えろと言う。しかし竜崎は無視してありのままを発表させる。
警視庁は大騒ぎになって、竜崎は左遷も覚悟したが後悔はなかった。ところが外務省は中国に対して断固たる態度を見せることで逆に溜飲を下げたらしく、警視庁にお褒めの言葉があったと言うことで決着。竜崎の信念が国家を救ったのだった。






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2022年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久々の竜崎シリーズ。隠蔽捜査8
またもや同居人からのプレゼント。
神奈川県警刑事部長となった竜崎さん。
いろいろ柔軟な対応ができるようになっているのが面白い。
冴子の事故にかけつけるとか、以前は有り得たかな?
あと伊丹のちょっとした態度に気がつくとか細かい。
事件は中国絡みでちょっと大ごとになるのかしら?と思わせといて、結果褒められるとか、竜崎あるあるで笑った。
このシリーズよほどでないかぎり嫌な人がいないのも良いかも。
公安部長はちょっとだけど。
県警OBの滝口もまあ良かったけど、最初の対応はいかがなものか。
ちょっとした嫌がらせ?大人はそんなことやめようよ。
ここでも人との接し方で成長しまくっている竜崎が素晴らしすぎ

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2022年07月18日

ネタバレ 購入済み

安定の…

安定の竜崎節炸裂って感じでいいですね〜。
でも、少し変わったような? やっぱり大森署での経験から周りに対する接し方が人間味を持ってきたように感じます。次も楽しみ。

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2022年07月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

シリーズ第十弾。久々の竜崎伸也だったが、やはり面白かった。大森署署長から神奈川県警刑事部長に異動した竜崎。建前など無く、いつも本音勝負、それで上手くいってしまうのが心地よい。県警OBや公安と対立しそうになるが、結局は味方にしてしまう。殺人犯は中国国家安全部の局員、それでもマスコミに隠すことなく発表。これを隠すのが普通と思うって怖いことだ。

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2023年12月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今回も竜崎のはっきりした物言いが良かった。
無駄を省いて効率が良いことを優先すること、立場関係なく自分の信念を曲げないこと。
それに対するスッキリ感は良かったけれど、最後はなんかスピード上げて事件解決に持って行った感じがあって、あっけなかった。

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2023年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

竜崎が神奈川県警刑事部長に栄転となり、前職の大森署から移動してくるところから始まる。
しかし今作では権限などについてはこれまでとほとんど変わりがないようだ。
続編ではもっと大きな変化を期待したい。

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2023年01月13日

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