廣野由美子のレビュー一覧
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著者は、NHK Eテレ「100分de名著」、シャーロック・ホームズスペシャルで解説者として登場した。
本人の解説が面白かったので、テレビの画面にうつっていた著作を読むことにした。
ミステリーとは「人間の描写」であると著者はいう。
特に面白いのは、コナン・ドイル、そしてアガサ・クリスティ。
私はそこまで古典のミステリーに詳しいわけではないが、一般常識程度には知っている。
この二人は作品や人柄、キャラクターなど非常に多く語られている。
人間の描写という視点から見てみると、ただミステリーを読んで面白い、ではなかったことに気付く。
その面白いという感覚が何なのかという深い考察に至ることができる。
「英国ミステリーのその後」では、ドラマでもお馴染み、主任刑事モースも挙げられている。
モースは、ドラマでしか見たことがない(しかも、endeavorなどスピンオフの方が好き)。
人間という点に視点を置いて見てみると、インテリという設定があることで、彼の言葉の端端にあるイギリス文学の香りを楽しむことができる。
また、時代設定を現代にすることで現代の人間についても深く感じさせる。
ミステリーとは、人間。
トリックだけがミステリーの面白さではない。
そのことがよりミステリーの面白さを引き立てるのだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書の深読みに、
岡田斗司夫さんのアニメや映画の解説に近いものを感じ、
小説の面白がり方が広がった。
例えば、
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『説得』の女主人公アンが
元カレのウェントワースと8年ぶりに再会する場面(p.286)。
「アンの目はウェントワース大佐の目と半ば合った。一方が会釈し、もう一方が膝を曲げて挨拶した。アンにはウェントワースの声が聞こえた。彼はメアリに話しかけ、礼儀正しい挨拶の言葉を述べた。マスグローヴ姉妹にも、打ち解けた調子で何か言った。」
上記の小説の文章に対して、著者は以下のように考察する。
「アンの目はウェントワース大佐の目と半ば合った」から、
アンはまともにウェントワースを見ていない。
お辞儀を交わしたあとは聴覚情報に移行していることから場面の視野が狭められていることがわかる。
このように、視覚情報を制限し、視覚以外の知覚や心理・思考内容などの描写に移行することで、彼女がウェントワースへの思いをいまも引きずっていることが、明らかになる。
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文章を読んだときに、アンが元カレに未練があることが何となくなぜ分かるようになっているのか、どういった表現をしているから伝わるのか。意識したことも考えたこともなかったけれど、こういう表現って映画の撮り方にも通じているところだと思う。
【ジェイン・オースティンの魅力まとめ】
(p.315 エピローグより抜粋)
・哲学でも思想でもなく、ひたすら人間を描いた「純粋な小説」
・地味な日常からも「ドラマ」は展開し、些細な人間関係をとおしても、人間とは何かという「真実」は明らかになる。そうした側面を重視するイギリス的特性を、代表する作家 -
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George Eliot(1819-80)
英国ヴィクトリア期を代表する女流作家。寄宿学校で教育を受けた後、独学で外国語やその他の学問を学び、男性の名前で小説を発表する。男勝りの冷徹な理性で、現実社会の問題を見据え、確かな構成の小説に組み立てていった。
彼女はほとんど独学でギリシア、ラテン、ヘブライ、ドイツ、フランス、イタリア語をマスターしたが、とりわけ若い頃ドイツとドイツ思想の研究に打ち込んだ。彼女はまた、ピューリタン寄りの福音信仰で育ったが、伝統的なキリスト教信仰から離脱していく。
『ミドルマーチ』は町の名前だが、これは彼女が若い時代過ごしたコヴェントリーをモデルにしたと言われている
代表作:『サイラス・マーナー』『ミドルマーチ』 -
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「フランケンシュタイン」を素材に論じた、中公新書前著『批評理論入門』に続く本書は、イギリスの長編大作「ミドルマーチ」を題材として、小説をいかに読むか、どのようにすれば小説の面白さ、深みを味わうことができるか、について具体的な方法を示して解き明かしてくれる。
第Iは、小説テクストの仕組みを分析する技法的側面からのアプローチ。三人称形式における介入する全知の語り手、意識の流れ、象徴性、ポリフォニーといった技法が、小説の中でどのように使われているか、どういった効果が生じるか、例をもって示される。
第IIは、個人の細やかな感情から社会問題まで、社会全体の広範な領域にわたって取り組んだ『ミドルマーチ』について、宗教、経済、社会、政治、歴史、倫理、教育、心理、科学、犯罪、芸術の各部門に分けて、読解例が示される。
本書と時を同じくして、著者の訳による『ミドルマーチ』が刊行されたが、その読後直後に本書を読むことができて、多角的に面白さを堪能できたのではないかと思う。 -
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銀行家バルストロードの前に、彼の過去の秘密を知る無頼漢ラッフルズが現れ、前巻では、バルストロードの回想の形で読者にもその秘密が明らかにされ、登場人物ウィル・ラディスローとの関わりも明らかになった。
ラッフルズに金をせびられ、気が気ではないバルストロードであったが、ラディスローが突然倒れ、彼の元に運び込まれたことから、医師リドゲイトに治療を頼むことに。看護を任されたバルストロードだったが、適正を欠いた看護もあり、ラッフルズは亡くなってしまった。
また、診療を依頼されたリドゲイトだったが、一旦はバルストロードに断られた借金を受けてもらえることになり、当面生活が立ち行くことになった。
秘密が守られたかと思いきや、生前のラッフルズの自慢語りが次から次へと噂となって伝わり、遂にバルストロードはミドルマーチにおける地位を追われてしまう。また、リドゲイトがバルストロードから受け取った金は賄賂だったのではないかと疑われてしまう。
ここまでが第7部。
町の噂に押しひしがれるリドゲイトに対して、ドロシアは支援の手を差し伸べようと彼と話をする。自分のことを信じてくれる人がいることを知ったリドゲイト。そしてドロシアはリドゲイトの妻ロザモンドを訪ねたところ、そこにはウィルがいた。再び出会った二人。
そこから二人は。
フィナーレとして、登場人物それぞれの人生が簡潔に紹介される。こうして、全8部の大長編小説は幕を閉じる。
リドゲイトとロザモンドの夫婦関係、バルストロードの自分本位の信仰心などは作者の筆の冴えが感じられた。それに比べると、ドロシアとウィルの繋がりがもう一つ納得できなかったのが、全体を通しての感想。
主要登場人物のほか、脇筋的人物も魅力的だし、人物の心理や人間関係の機微がたっぷりと描かれている。また、当時のイギリス社会の状況、例えば政治や新聞、医学などについても、ストーリー展開の中でうまく取り上げられている。
非常に読み応えがあって、小説読みの醍醐味を堪能できた。
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全8部のうち本巻は、折り返しを過ぎ第5部、第6部収録の巻。
結婚であったり遺産相続を巡るドタバタなど、それなりの展開はあったものの、ここまで登場人物たちの生活や考え方が比較的平穏に描かれ、その人物像や関係性が明らかにされてきたが、本編では、各人物に様々な変化が生じ、物語全体が大きな転回を見せる。
先ずはドロシアとカソーボン夫婦。自分亡き後、妻ドロシアが従弟ウィル・ラディスローの意のままになってしまうのではないかと恐れたカソーボンは、自分の死後夫たる自分の希望に従うことを誓ってくれと求める。煩悶するドロシアが答えをしようと夫のところに向かったとき、もはやその答えが夫に届くことはなかった。
野心に燃えてミドルマーチに来た医師リドゲイトは、美しい妻ロザモンドとの結婚生活のため身の丈以上の出費を重ね借金に苦しむことになってしまう。節約を求めても妻は我慢が出来ず、他方妻は、そんなことを求める夫に不満を持つ。お互いの気持ちのすれ違い。
そしてもう一つ。宗教的情熱に燃え、理想的な病院を作ろうとする銀行家バルストロードの前に、彼の過去を知るらしき無頼漢ラッフルズが現れる。何か秘密を握っているらしき素振り。
その秘密に関して、バルストロードは、ウィルに対し、ある提案をするが、ウィルはキッパリと拒絶する。
といったように、ストーリーがかなり動き出して面白さが一気に高まってきた。乞うご期待の最終巻。
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全8部のうち本巻では第3部及び第4部収録。
自分より優れている人のもとで魂の安らぎを得たいと考え、妻として我が身を捧げ、夫の生活を確固たるものにしながら、自分の生活を高めていこうと結婚生活に入ったドロシアであったが、夫カソーボンとの関係は結婚当初から違和に満ちたものとなってしまっていた。
他方医学の発展と自己の成功の大志を抱く医師リドゲイトは、美しいロザモンドに魅せられ、予期していたよりも早い時期に結婚に向かうこととなった。
また、ごうつくばりの老人の遺産を巡るゴタゴタや、政治に関心を示し始めた地主と周囲の者たちとの軋轢など、物語が動き出す速度が早まってきている感がする。
人と人との関わりに関して、それぞれの考え方や思いが綿密に記述され、随所に挟まれる語り手による考察と相俟って、多面的な角度から登場人物に対するイメージを構築できる。
また、一つの地方に暮らす多様な階級の人物が存在感を持って描かれており、社会的地位や財産に伴う上下関係意識や体面の問題、職業に関する意識や価値観、男女・夫婦の役割分担、政治や宗教についての考え方などが、各人の発言や行動を通して多層的に取り上げられる。
本巻終盤では、全体的に不穏な気配を感じさせるようになってきており、どのような展開が待っているのか、次巻が楽しみだ。