あらすじ
知的で美しいドロシア・ブルックは二十歳前の娘だが、自分の人生を偉大な目的に捧げることを熱烈に願い、温厚でハンサムな准男爵を退けて、学究生活に打ち込んでいる厳めしい五十がらみの牧師と婚約する……。地方都市ミドルマーチを舞台に緻密な人間描写で織りなす壮大な物語。「偉大なイギリス小説100」第1位(2015年、BBC調べ)に選ばれた、英国小説の最高峰、ついに開幕。〈全4巻〉
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
学生時代、ずっと読みたかったのですが、廃版になってて読めずじまいのままでしたが、光文社が新訳を発刊してくれたおかげでようやく読むことができました。
生きていた時代もテーマも異なるのですが、オースティンと比べてしまうところがあります。
エリオットに出てくる人物は良くも悪くも、もっと世俗的で、複雑な人物として描写されていることが多いように思えます。
そのせいもあって、ドロシアを含めた登場人物のそれぞれの心情や行動に対して共感できる一方で理解に苦しんだり・・・まあでもドロシアに対しては終始理解に苦しむところがあったかもしれません。
いろんな人の人生そのものなんだなと思いました。19世紀のイギリスの等身大というか、息づく人たちを垣間見れてよかったです
Posted by ブクログ
本年ベストの読書体験になる予感がする!!!ヴィクトリア朝を代表する作家、ジョージ・エリオットの最高傑作。
ミドルマーチとは、イングランド中部に設定される架空の地方都市の名前である。本作は19世紀前半、産業革命の影響により、社会に大きな変動が起こっていた時代――資本主義経済や民主体制への移行、その結果として生み出された新たな階級社会、揺れ動く人心の独特な雰囲気――のなかで、二人の主人公を軸に、多層化する人々の生活・心理を幅広く描いた作品である。それぞれの宗教・信条・階級・経済力・年齢・性格などから、当時の社会と人間精神を深くえぐり出している。
知的で美しい人妻・ドロシアと、高潔な理想を掲げる青年医師・リドゲイトの二つの物語が交差して作品世界が構築されていく。この構造は、トルストイの「アンナ・カレーニナ」に通じるものがあり、初読ではダレてしまうほど長い文章でありながら、読み込むほどに理解と味わいが深まっていくところも共通していると思う。
やはり多くの名作文学にも共通する、人物の掘り下げと描写がすごい。身分としては今のところ地主階級の上下あたりの層がメインだが、年齢的にも立場的にも様々な人物が登場しては、次々と面白いキャラクター性を見せてくれるので、興味がつきない。
本巻での最大の読みどころは、新婚旅行における最初の衝突のシーンだ。詳細はネタバレしないが、最初はよくわからなかったので、二度三度と読み直した。人間心理の機微をよくもこれほど仔細に書き込めたものだと感心。さらに、これは個人的なことすぎるのでわからない人にはわかってもらえないとは思うが、カソーボン氏の秘めている悩みに強く共感する!それなんだよそれ、それで悩んでいるんです私……。ざっと一読しただけではよくわからないドロシアとカソーボンの心理バトルも、巻末の読書ガイドを読むとよくわかるのでご安心を。こんなカソーボンを批判するのがラディスローだが、彼自身、欠点をカソーボンに見抜かれているという、このあたりの人間描写の細やかさ、鋭さには驚かされる。
各章の頭には題辞が掲げられ、最初はよくわからないものの、あとで読み返すと意味がわかるような暗示的な内容で、小説の面白さ、味わい深さに彩りを添えている。
本作には『地方生活の研究』という副題がついており、舞台となる1829~1831年のイングランドにおける、宗教や精神文化、経済や階級などといった当時の社会的背景についての理解が、読み解く上で必要になってくる。そこが本作を重層的で奥深い作品世界にしている魅力でもある。自分はこのあたりも巻末の読書ガイド頼みで、さらに掘り下げて調べるのも興味深いところだが、さしあたり小説を楽しむにはこれで十分かも。
1巻を読んだだけでこの充実度!個人的には昨年通読して自分ベストになった「アンナ・カレーニナ」に迫る読書体験になりそうで、今から期待している。
Posted by ブクログ
古い作品だからこそかもしれないが、新しい感覚を覚える。
人生への警句と洞察が、物語と一体となって綴られていく。
解説を読んで、作者の宗教観、社会観が作品に反映され、一筋縄ではない大作であることを予感する。
Posted by ブクログ
心理描写等ジェイン・オースティンから多くの影響を受けているところもあるだろうが,それよりもさらに地域社会の観察に特化した書と言える。人々の変化はそれなりに大きかったが地域としての変化は少ない,と感じたことは覚えておく。訳者については,解説にある「〈分別〉と〈多感〉」という視点が興味深い。
Posted by ブクログ
George Eliot(1819-80)
英国ヴィクトリア期を代表する女流作家。寄宿学校で教育を受けた後、独学で外国語やその他の学問を学び、男性の名前で小説を発表する。男勝りの冷徹な理性で、現実社会の問題を見据え、確かな構成の小説に組み立てていった。
彼女はほとんど独学でギリシア、ラテン、ヘブライ、ドイツ、フランス、イタリア語をマスターしたが、とりわけ若い頃ドイツとドイツ思想の研究に打ち込んだ。彼女はまた、ピューリタン寄りの福音信仰で育ったが、伝統的なキリスト教信仰から離脱していく。
『ミドルマーチ』は町の名前だが、これは彼女が若い時代過ごしたコヴェントリーをモデルにしたと言われている
代表作:『サイラス・マーナー』『ミドルマーチ』
Posted by ブクログ
2019年「ジョージ・エリオット生誕200年」や、「偉大なイギリス小説100第1位(2015年BBC)」という帯に惹かれて読み始めました。
1巻を読み終わるのに、かなり時間がかかってしまった。2〜4巻をゆっくり読んでいきたい...
Posted by ブクログ
宗教や社会階級や個人の生きがいや結婚問題,生活のすべなどがミドルマーチという架空の田舎町を舞台に繰り広げられていく.誰が主人公でも面白い人物造形と丁寧な心理描写で物語世界にどんどん引き込まれていった.まだ1巻目なのでこの先の展開が楽しみである.
Posted by ブクログ
サイラス・マーナーの感触が良かったので、安心して手に取ってみたのだが。。。
結構読みにくい。情報量が多いわけではないんだが、感情移入できないというか。この人の作品は姫野カオルコさんの作品にも通づる、ジェンダー縛りな世の中の生きづらさと戦うことへのアホらしさと大事さを通して「死ぬまでにどんだけ自分に対して頑張れたのかよお前」っていうのがテーマで。頭からっぽな人間に限って表面しか見えないグレーズドドーナツみたいな考えを人に押し付けるが、しかし本質を知っている人間が幸せかと言ったらそーでもないんだよな。
Posted by ブクログ
主要人物が登場し、いかなる性格で、どのようなことを考えているのか、どんな社会的地位にあるのか、家族関係や財産の多寡はどうなのかといったことが少しずつ明らかになってくる。
うら若き女性が、かなり年上の学問に打ち込む牧師と短期間で結婚に至るというまとまりが一つ。医学の道に進み、成功を目指して新しい地にやってきた医師を巡るまとまりがもう一つ。
登場人物の性格が会話のやり取りなどからクッキリと浮き彫りになってくるし、夫婦間、親子間、友人間などにおける認識や気持ちのズレなども実に細かく描かれている。
19世紀小説に良く見られる、随所に挟み込まれる"全知の語り手"による考察も、時代は変われども成程と思わされるところが多い。
どのように展開していくのか、先が楽しみだ。