あらすじ
読者を謎解きに導く巧みなプロット.犯罪にいたる人間の内面への緻密な洞察.19世紀前半ごろ誕生した探偵小説は,文学に共通する「人間を描く」というテーマに鋭く迫る試みでもある.ディケンズ,コリンズ,ドイル,クリスティーなど,英国の代表的なミステリー作品を取り上げ,探偵小説の系譜,作品の魅力などを読み解く.
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Posted by ブクログ
ありがとうヴィクトリア
というわけで先日読んだ『批評理論入門』があまりに面白かったイギリス文学の研究者として名高い廣野由美子さんおかわりであーる
今回は「探偵小説」
うんうん、それはわいの得意分野でもある
いや、違う
ごめんちょっと見栄はった
得意っていうかただ好きなだけ
だがしかーし!
常々思っていたことを廣野由美子さんが明確に言葉にしてくれたので、大満足の一冊であった
そう、良き「探偵小説」とは人間を描いたものということ
もちろん、誰も見たことのないトリックを探偵と競いながら解き明かすことこそ「探偵小説」の醍醐味だという意見を否定するつもりはない
いやむしろ全くその通りと諸手を上げて賛成する
でも、それだけで終わってしまっては、かなりもったいないと言いたい
そして本書で登場し、廣野由美子さんがその人間描写の巧みさを解き明かしてくれたディケンズ、コリンズ、ドイル、チェスタートン、クリスティーなどの英国古典探偵小説の名手たちの作品を読むときには、やはり人間とは何かというところ、犯罪に際して暴かれる人間の深みみたいなところを楽しみたいし、それが「小説」を読む意味なのじゃなかろうかと主張したい
まだまだ廣野由美子さんの脳髄がしびれる論評を読みたいが、そのためにはもっともっと古典英文学を読まないと!いや楽しまないと!
Posted by ブクログ
ディケンズ、コリンズ、ドイル、チェスタトン、クリスティーと5人のイギリスの作家のミステリー小説の評論です。
英国古典探偵小説は単純なトリックの謎とき話ではなくて、人間の心理や暗部について語る人間性の探究の話でもあるということです。
シャーロック・ホームズ、ポワロ、ミス・マープル、ブラウン神父の話をまた読みたくなりました。
Posted by ブクログ
著者は、NHK Eテレ「100分de名著」、シャーロック・ホームズスペシャルで解説者として登場した。
本人の解説が面白かったので、テレビの画面にうつっていた著作を読むことにした。
ミステリーとは「人間の描写」であると著者はいう。
特に面白いのは、コナン・ドイル、そしてアガサ・クリスティ。
私はそこまで古典のミステリーに詳しいわけではないが、一般常識程度には知っている。
この二人は作品や人柄、キャラクターなど非常に多く語られている。
人間の描写という視点から見てみると、ただミステリーを読んで面白い、ではなかったことに気付く。
その面白いという感覚が何なのかという深い考察に至ることができる。
「英国ミステリーのその後」では、ドラマでもお馴染み、主任刑事モースも挙げられている。
モースは、ドラマでしか見たことがない(しかも、endeavorなどスピンオフの方が好き)。
人間という点に視点を置いて見てみると、インテリという設定があることで、彼の言葉の端端にあるイギリス文学の香りを楽しむことができる。
また、時代設定を現代にすることで現代の人間についても深く感じさせる。
ミステリーとは、人間。
トリックだけがミステリーの面白さではない。
そのことがよりミステリーの面白さを引き立てるのだ。
Posted by ブクログ
書架で見かけて。
アンビバランス、という言葉がある。
ある対象に相反する感情を抱くことだ。
愛と憎しみとか。
この本ほど、この言葉にぴったりくる本はない。
読んだことのなかった、読むつもりもなかった作品を、
探偵小説の歴史とともに、
著者の人間観を明らかにし、
後世への影響も含め、
面白そうに次々と紹介してくれるのは良いのだが、
それ以上はもう書かないでくれ、というほど解説してくれる。
読み進めたいのに、読みたくない。
とても複雑な気持ちになった。
実際、何ページが本当に読まずに次の章に行ってしまった。
長い読書人生、こんなことをしたのは初めてだ。
後半になって読んだことのある作品を、解説されるようになって、少し落ち着いてきたし、
紹介されていて嬉しくなってきた。
特に最後の「フロスト警部」が、ためらいとともに掲載されていたのには、
ガッツポーズをしたいぐらいだった。
そう、「フロスト警部」は面白い。
とにかく、ただのミステリーの紹介の本ではない。
それなら、ここまであらすじを書かないし、
こんなに全ての本を読みたくなったりはしない。
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
読者を謎解きに導く巧みなプロット。
犯罪にいたる人間心理への緻密な洞察。
一九世紀前半ごろ誕生した探偵小説は、文学に共通する「人間を描く」というテーマに鋭く迫る試みでもある。
ディケンズ、コリンズ、ドイル、チェスタトン、クリスティーなどの、代表的な英国ミステリー作品を取り上げ、探偵小説の系譜、作品の魅力などを読み解く。
[ 目次 ]
序章 探偵小説の誕生
第1章 心の闇を探る―チャールズ・ディケンズ
第2章 被害者はこうしてつくられる―ウィルキー・コリンズ
第3章 世界一有名な探偵の登場―アーサー・コナン・ドイル
第4章 トリックと人間性―G.K.チェスタトン
第5章 暴かれるのは誰か―アガサ・クリスティー
終章 英国ミステリーのその後―「人間学」の系譜
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
廣野先生の文学批評だから、もっとテクニカルなものと思っていたけど、作品に描かれた「人間」を深掘りする。近代英文学史をミステリーに特化して概観してるので、元々造詣が深い人には納得しながら読めるかも。ドイルとクリスティーだけしか読んでない人にはちょっと厳しそう(自分がそうだった)。
英ミステリーの古典(文学史的には近代なのに、ミステリー史としては古典なのは不思議)を幅広く読みたいと思ってる人には、最適な読書案内かも。
Posted by ブクログ
チャールズ・ディケンズ、ウィルキー・コリンズ、コナン・ドイル、G・K・チェスタトン、アガサ・クリスティを中心に取り上げ、イギリスのミステリの古典における人間に対するまなざしのありようを論じた本です。
「探偵小説とは人間を描くものであり、とりわけ人間性の暗部を描き出すうえで、特殊な方法論を有するジャンルである」と著者は規定し、こうした側面から、それぞれの作家が作品中でどのようなミステリの手法を用いて、人間についての探究をおこなっているのかを明らかにしています。
ミステリというジャンルが形成されるプロセスとミステリの特徴について一般的に規定した上で、個々の作品に立ち入って議論をおこなっています。ただし、文学史の中でミステリというジャンルを位置づける議論はあるものの、ミステリ史そのものに立ち入った議論はあまりなされていません。推理小説マニア向けの本というより、英文学史の中でミステリの位置づけを考察した本だと思います。
Posted by ブクログ
フランケンシュタインのほうを面白く読んだのでこちらにも手を伸ばしましたが、こちらはそれほどでもなく。
結論が人間性への興味ということに尽きている感じで、おそらく多くのミステリー好きにとっては分析と感じられない。あらすじ満載なので、個人的には今から読むのはつらいかも?な古いミステリーを少し詳しく知っておくには便利、という位置づけ。
Posted by ブクログ
ミステリーって響きだけにつられて読み始めたけど、全然ピンとこず、結構最初の方でリタイア。ってか、このタイトルを見て何を求めたんだろう?って、自分でもよく分からんくなった。積読けど、読み返すことはなさそう。
Posted by ブクログ
ミステリの人間学、と題しているが、読んだ限りでは「英国ミステリ分析」という感じか。題名に期待していたものは得られなかったが、しかし、有益な分析を読んだ。因みに、あらすじ満載なので、未読の本があるときは危険だ。
「人間に焦点を当てる」ことで、作者と探偵の「橋渡し」をしている。また、探偵比較もしていて、面白い。
そして、「推理小説」の意義についても考えさせられた。著者が意図した事ではないであろうが、中々に始めの章は重要なものである。