廣野由美子のレビュー一覧
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ネタバレこの作品で初めてオースティンを知ったが、面白い!
最近恋愛小説を体が受け付けなくなっていたのだが、『説得』は精神的に成熟した大人の恋愛が描かれており、主人公が情動的で不合理な行動をとるようなこともなかったので、いらいらせず読むことができた。
物語の序盤では「盛りを過ぎた」と表現されていた主人公アンが、物語が進むに連れてどんどん輝きを取り戻していく様は読んでいて幸せな気持ちになった。というか、アンができた人間すぎる!(父と姉以外の)登場人物皆がアンに好意を持つのも頷ける。
他方で、メアリの自己中心っぷりには驚かされた。邪悪な人間ではないのだと思うが、彼女の我儘によってアンとウェントワース大佐の -
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いつか王子様が・・・のシンデレラの寓話から、
自ら行動を起こす少女が主人公の少女小説へ。
そのきっかけは「ジェイン・エア」だった。
序 『ジェイン・エア』から少女小説へ
第1章 脱シンデレラ物語の原型
第2章 アメリカへ渡った「ジェイン・エア」の娘たち
第3章 カナダで誕生した不滅の少女小説
第4章 イギリスでの変転とその後の「ジェイン・エア」
終章 変わりゆく物語
・あとがき
参考文献有り。
世界中に異本がある「シンデレラ」の起源と伝播による変容。
イギリスの感傷小説に、ゴシック小説にも「シンデレラ」は
影響を与えた。
そこに登場した「ジェイン・エア」は「シンデレラ」とは
真逆の主人公の物 -
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個人的には著者の『批評理論入門』にだいぶお世話になった。
そういう経緯があるので、本書を読んでみた。
近代英語文学の中の女性像の変遷を主題とする本。
びっくりするほど読みやすい。
取り上げる物語の原型は二つ。
一つはシンデレラ。
言うまでもなく、美しく従順で淑やかな女性が、苦難の末、社会的に高位の男性に見初められ、結婚により階級上昇する物語。
18世紀の大人向けの小説の中にさえ、この影響がみられる作品があるとのことだった。
このシンデレラ型の物語を超えようとするものが現れる。
それがシャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』を祖型とするものだという。
器量に恵まれてもおらず、親が死んだり、無 -
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著者も」序章で「ジェイン・エア」や他のいわゆる少女小説といわれている名作群がなければ今の自分はなかったと述べているが、(私は普通の読者にすぎないが)全く同感である。自分もまた親とこれらの文学作品に育てられたと思っている。まだ児童書の中でヤングアダルトという分野がさほどはっきりと意識されていなかったころだがまさに「ジェイン」は私にとって思春期に多大な影響を受けた作品のひとつで、繰り返し読んだ記憶がある。(河出の世界文学全集で)今回著者がとりあげている作品はどれも大好きで、ゴッデンの「木曜日の子どもたち(バレエダンサー)」の解釈には考えさせられる部分が多かった。再読しようと思う。「ジェイン」も新訳
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著者は、NHK Eテレ「100分de名著」、シャーロック・ホームズスペシャルで解説者として登場した。
本人の解説が面白かったので、テレビの画面にうつっていた著作を読むことにした。
ミステリーとは「人間の描写」であると著者はいう。
特に面白いのは、コナン・ドイル、そしてアガサ・クリスティ。
私はそこまで古典のミステリーに詳しいわけではないが、一般常識程度には知っている。
この二人は作品や人柄、キャラクターなど非常に多く語られている。
人間の描写という視点から見てみると、ただミステリーを読んで面白い、ではなかったことに気付く。
その面白いという感覚が何なのかという深い考察に至ることができる。
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ネタバレ本書の深読みに、
岡田斗司夫さんのアニメや映画の解説に近いものを感じ、
小説の面白がり方が広がった。
例えば、
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『説得』の女主人公アンが
元カレのウェントワースと8年ぶりに再会する場面(p.286)。
「アンの目はウェントワース大佐の目と半ば合った。一方が会釈し、もう一方が膝を曲げて挨拶した。アンにはウェントワースの声が聞こえた。彼はメアリに話しかけ、礼儀正しい挨拶の言葉を述べた。マスグローヴ姉妹にも、打ち解けた調子で何か言った。」
上記の小説の文章に対して、著者は以下のように考察する。
「アンの目はウェントワース大佐の目と半ば合った」から、
アンはまともにウェントワースを見てい -
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前半が小説の書き方、後半が文学作品の批評理論について書かれた本。
批評や書評にはしっかり書き方があると知って、「批評の教室」北村紗衣(ちくま新書)を以前読んで大いに勉強し、そしてその本に批評理論について書かれていると紹介されていたのが本書。本書は小説「フランケンシュタイン」を題材に、小説の書き方と批評理論を説明して行くというコンセプトの本。「フランケンシュタイン」はこういうことに耐えうる様々な読み方ができる奥の深い怪物みたいな物語で、まさに怪物も出てくるし、ただよく言われるのは、怪物とフランケンシュタインを混同してしまいがちで、実際間違える。
批評理論というのは、いくつか切り口があるとして