廣野由美子のレビュー一覧

  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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    三宅さんのおススメの本。いつもただ漫然と小説を読んでいたけどここまで分析する方法があるんだなと大変勉強になった。自分の好きな本のジャンルで同じ事象を様々な人の視点で語られる描き方を「多元内的焦点化」というのを知った。芥川龍之介の藪の中とか。同じ事象であるはずなのに人によってこんなにもとらえ方が違うんだなと初めて読んだ時は目から鱗。

    *固定内的焦点化で書かれた小説ではその語り手の主観やある種の思い込みでの視点であるため、文面通り読むとそこに書かれている内容の範囲内でしか吟味できない。信頼できない語り手であっても自分は鵜吞みにしてしまう。
    三宅さんの本でも書かれていたけど、書かれていない事や書いてあるけど必ずしも正しくなさそうな事を俯瞰して批評的に読むにはどのようなトレーニングがいるのだろう?他の類似作品と比較する、となるとやはりたくさんの読書体験(に限らず様々な作品鑑賞)は必要なのかもしれないなと思った。

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    物事の構造や意図を読み解いたり、情報に対する解像度を上げることができる本。様々な視点、複眼的な思考、本質的な考えを感想に終わらせず言語化する能力がつく。


    小説技法、批評理論

    冒頭:作者が作品全体を見渡して最も苦労して書く部分
    現実と虚構との世界を分かつ敷居。人物の名前、人間関係、時、場所などの情報を記憶しつつ絶えず推測を働かせないと物語についていけず最も負担が大きい部分

    ストーリー:出来事を起こった時間順に並べる
    プロット:(自分が書きたい事を最も効果的に読者に伝わるように)物語が語られる順に出来事を再編成したもの。
    ナレーター(語り手):信頼できる語り手
    信頼できない語り手
    審議を見分けることが可能な世界であるべきで信頼的内語り手を用いる事によって見せかけと現実とのギャップや人間というものがいかに現実を歪めたり隠したりする存在であるかを露にする
    上ずった口調を通して語られる内容を割引きながら聞かなければならない

    物語の骨組み、
    プロット 因果関係で繋がった順番
    焦点化 誰の視点で語られているか。複数の語り部
    外的焦点化:物語世界の外側にいる全知の語り手
    内的焦点化:物語の内部の語りて
     固定~:一人に絞る。自分の知識の範囲内でしか語る事ができない(使者たち、メイジーの知った事)
     不定~:複数(フランケンシュタイン)
     多元~:同じ出来事が複数の人物によって語られる(藪の中、指輪と本)


    提示(show):あるがままの会話を記録・報告
    叙述(tell):語り手が介入して出来事や状況、人物の言動心理・動機について読者に解説

    時間
    アナクロニー:ストーリーの出来事の順序が合致しない事
    フラッシュバック、後説法:過去の出来事や場面に戻る
    フラッシュフォーワード、先説法、伏線:未来に起きる出来事をちらりとほのめかす
    in medias res:ある程度進行してから語りだす

    声:
    モノローグ 作者の単一の意識視点
    ポリフォニー・対話的 多様な考えを示す意識や声
    小説とはいくつもの異なる文体や声を取り込んで多声的なメロディーを織りなす文学形式

    イメジャリー:ある要素で想像力を刺激させ視覚的映像を喚起させるもの
    メタファー あるものを示すために別のものを提示しそれらの間にある共通性を暗示する(風車の森:風車がたくさんある光景)
    シンボル 特に類似性のないものを示して連想されるものを暗示する(月:毎回怪物が現れる)
    アレゴリー 具体的なものを通じて抽象的な概念を暗示し教訓的な含みを持たせる(森に迷う:過ち、文明からの逃避、自由、再生、調和、回帰)

    異化(defamiliarization):ふだん見慣れた事物からその日常性をはぎとり新たな光を当てる事。習慣化によって蝕まれてしまった生を回復する事こそが芸術の目的。
    前景化(foregrounding)ある要素や属性を強調し読者の注意を惹きつけるように際立たせる方法
    まだ事物の名称を知らない怪物によってこの世界に存在する一つ一つのものが新鮮に捉えなおされ異化される。
    ミルトンの失楽園を読んでアダムとサタンを自分と重ね合わせる。

    間テクスト性:先行する文学テクストから意識的ないし無意識的に何らかの影響を受けている

    メタフィクション:語り手が前面に出て読者に向かって語り自体の口上を述べる。真実と語りの間には距離がある、あくまでフィクションである。トリストラム・シャンディ 物語が脱線しそれについて語り手が弁明を繰り返す

    閉じられた終わり(closed ending):ハッピーエンド、悲劇的結末、意外な結末
    開かれた終わり(open ending):読者の自由な想像の余地を残す、二重の結末(二通りの解釈の可能性を残す)、円環構造(冒頭に戻る)

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    2026年08月08日
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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    批評って大変だな。勉強になりました。フランケンシュタインを読んでから読んだけど、批評的な視点だったところは3割4割ぐらいかな。文学的な素養が足りないので最後のほうは著者の知識の開示としか感じられなかったです(トホホ)。

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    2026年05月15日
  • NHK「100分de名著」ブックス メアリ・シェリー フランケンシュタイン 本当の「怪物」は、誰なのか

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    『ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる』(小川公代著、岩波新書)という本が積ん読になっている。なかなか手がつかないのは、フランケンシュタインのことを知らない……というかそもそもケアと結びつくような好印象がないからではないかと思っていたところで、この本を見つけて読んでみた。
    面白くて週末の2日間で読み終えちゃった。『フランケンシュタイン』というとホラー小説なのかなって感じだったけど、こうして解題してくれるとストーリーやその裏側に込められたものが見えてきて面白い。ホラーに収まらない(そもそも異ジャンル)フランケンシュタインの物語の深さが感じられる。AIが台頭しつつある現代においてこの人造人間を描いた小説を読み解くというのもオツなもの。と同時に、いつの時代もこの小説から人間は警鐘を聞き取ってしまうのかもしれない。
    冒頭に翻ってケアとフランケンシュタインもかなり結びつきそうな気がしたよ。『ケアの物語』を読むのが楽しみになってきた。

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    2026年05月10日
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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    フランケンシュタインを例に取り、様々な視点からの批評の例示、さらには創作技法まで提示している。
    批評を書きたい人はもちろんだが、小説を書きたい人にも大いに参考になるであろう本

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    2026年05月06日
  • シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』

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    2023年刊。
    第1章は、勢いがあって引き込まれる。シンデレラのコンパクトな解説と脱シンデレラ物語としての『ジェイン・エア』。
    第2章以降は、その『ジェイン・エア』を源流とする系譜、『若草物語』『リンバロストの乙女』『あしながおじさん』『赤毛のアン』『木曜日の子どもたち』。その流れがよくわかる。
    なによりもフェミニズムの土俵にあがらないのがよい。ただ、論の展開が少々強引、個々の作品の解説がちょっとくどいようにも感じられた。ブロンテ姉妹のなかのシャーロットの特異性、アンやエミリとの違いにも言及してほしかったかな。

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    2026年03月22日
  • NHK「100分de名著」ブックス メアリ・シェリー フランケンシュタイン 本当の「怪物」は、誰なのか

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     う~ん、本当の怪物ですか? わたしなら「本を1年で365冊超えて読むひと」と答えます。
     それはさておき、本書はメアリー・シェリー著『フランケンシュタイン』を廣野由美子先生が読み解かれたものです。
     先に『フランケンシュタイン』を読むことをおすすめします。
     廣野先生には『フランケンシュタイン』関連の著作がもう一冊。『批評理論入門』です。
     この『批評理論入門』と本書は重なる部分が多いです。『批評理論入門』から「理論」を抜いて、『フランケンシュタイン』部分を縫い合わせたら大体本書ですか?

     わたしは、読んでよかったです。廣野先生の関心の焦点がどのへんにあるのか知ることができました。
     じつは「100分de名著」を書籍化するにあたり、「特別章」が追加されています。「AI時代のフランケンシュタイン」です。近頃のAIの発達を考慮されたようです。
     このことから推測するに、廣野先生の焦点のひとつは「科学」にあるようです。
    自分なりに、ざっくりまとめてみました。
    ・ヴィクター・フランケンシュタイン=あぶないやつ≒科学者
    ・怪物作成=怖い≒科学技術
    つまり、科学者と科学技術は信用ならん!、みたいかなと思いました。(ざっくりすぎるかな?)
     不信感を持たれるのはもっともだなと思います。しかし、ちょっと強すぎじゃないですか? と感じます。
     『批評理論入門』では「百人百通りの感想」にダメだしされていました。批評理論により、一定の方向に収まるはずと。
     わたしは本書を読んで、批評理論を駆使するまえに、批評するひとの常識や考え方によても批評の内容って変わるんだと、しごくあたりまえの事に思い至りました。
     あっ、それで「○○批評」があんなにいっぱいあるの?
     もしもわたしが批評したら、「科学持ち上げ主義批評」とか「楽観し主義批評」とか呼ばれたりして。

     もうひとつ、読んでよかったところがあります。
     それは『フランケンシュタイン』の文学的価値について、しっかりと知ることができたことです。
     廣野先生が大学院生だったとき、イギリス人研究者に「『フランケンシュタイン』は玉ねぎのような作品」と言われたそうです。すぐさま、廣野先生はその「価値」に気づかれたとか。
     わたしもぼんやり感じました。『フランケンシュタイン』は特許?でいうとろの「基本特許」ですか?
     「基本特許」はある分野で、使わざるおえない支配的で最強の特許です。同様に文学で「人間と科学、そしてその悲劇」をあつかうならば、まず『フランケンシュタイン』からとなるみたいです。そのことから「現代的なSFの元祖」と呼ばれているそうです。
     メアリーさんは『フランケンシュタイン』執筆当時にはやっていたゴシック小説へ「科学者と科学、そして、その悲劇」のアイデアを持ち込み「基本特許」を確立したのです。
     メアリー・シェリーさんのアイデアの勝利です!

     最後に廣野先生の本書での「図解」についてお伝えします。
     小説って図解できるんですね、ほんとにすばらしかったですよ。

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    2026年03月20日
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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     前半の小説技法篇の方が分かりやすい内容である上に、他作品にも適用して理解することができたので面白かった。後半の批評理論篇はちと難しかったが、「批評」が一体どういうものなのかを、数々の具体的事例を通じて知ることができ、新鮮な学びとなった。
     繰り返し読み、その中身を己の血肉としたい一冊。

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    2026年02月25日
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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    自分が読むときは、小説はとかくストーリーを追いがちで、主人公もしくは作者に共感して終わりとなる。しかしこれからは、少なくともストーリーを追う楽しみだけでなく、2、3の角度から読むことができるような気がする。作者の生い立ちを先に調べるかもしれないし、疑問点をメモしながら読むかもしれない。最後まで読んで解決しなければ、主人公の世界に入り込んで推測するかもしれない。これは小説を読む楽しさを何倍にもしてくれる素晴らしい指南書であると思う。

    構造主義、脱構築についても入門から読んでみたいと思った。

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    2026年02月07日
  • シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』

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    英米文学者の廣野由美子さんと「少女小説」について考える

    今回もがっつりイギリス文学の名作『ジェイン・エア』についてネタバレしているが、大丈夫!先に『ジェイン・エア』読んだから

    絵に描いたような「本末転倒」やったぜ!(なぜ自慢げ?)

    まぁ、でも廣野由美子さんの書く本の主旨から言ってネタバレしてないと話進まないので、廣野由美子さんにネタバレなしを期待するわいが悪い
    廣野由美子さんは全く悪くない

    はい、今回はいわゆるシンデレラストーリーの少女小説から離れ、少女が自らの力で成長し、ハッピーエンドを掴み取るという『ジェイン・エア』に端を発する作品群を「ジェイン・エアシンドローム」と名付け、再発見して行こうとい試み

    廣野由美子さんが『ジェイン・エア』の娘たちと呼ぶ作品には英米文学の不朽の名作たちが並びます

    なるほどな〜
    そういう視点もあるんやな〜
    と新しい作品の読み方を教えてもらった気持ち

    それにしても、やっぱり古典の名作は面白いよね
    『ジェイン・エア』とか160年前ですよ
    なぜこれほどまでに残るのか?
    答えは至極簡単、「面白いから」

    日本も含め古典もっとどんどん読まないと!たいへんだ!

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    2026年01月18日
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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    フランケンシュタインを題材に、様々な批評理論を紹介する本。

    2部構成になっていて、1部はフランケンシュタインの解説。2部は様々な批評論文の紹介になっており、原作版フランケンシュタイン未読でも安心です。

    私もフランケンシュタインについては人造人間のイメージしかない状態で読み始めたので、主人公の名前がフランケンシュタイン氏で、人造人間は名無しの「怪物」だったとは驚きでした…

    2部は少し難しく感じましたが、「批評理論とは〇〇という観点から物語を読み解こうとする試み」ということが分かると、少し理解が進みました。

    個人的に面白かったのは「文化批評」の項。フランケンシュタインが様々な舞台や映画のモチーフになるにあたり、時代に合わせて原作ブレイクとも言えるほどの改変がなされて行きます。実際、私も全然違うイメージを持ってました…。作者のメアリが知ったらなんて言うんでしょうね?

    わたしはガッツリ理系ですが、「大人のための国語の授業」って感じで楽しく読めました!

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    2025年11月14日
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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    小説技法に注目した内在的アプローチと、批評理論に基づく外在的アプローチの2つを駆使して、小説「フランケンシュタイン」を題材に、小説の読み方を解説した1冊。

    小説は娯楽であり、個人の好きなままに読めば良い代物ではある。しかし、個人の貧弱な感性のみでは「面白かった」「感動した」等の陳腐な感想しか出てこない。本書を読めば、より深層に迫る読み方が出来るようになるだろう。

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    2025年09月24日
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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    文学理論について分かりやすく書かれた新書。
    小説のフランケンシュタインを題材にさまざまな理論、方向性から分析している。
    難しい理論も、フランケンシュタインを通して解説されるのでわかりやすかった。
    さまざまな批評の中で、フェミニズム批評やジェンダー批評など、フランケンシュタインとはおおよそ結びつかないと思ってたものも取上げられて面白かった。

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    2025年09月07日
  • 批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義

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    自分がいかに小説の上部だけしか読めてなかったか…
    「こういう読み方は無粋かな」という気持ちになるような事でも
    むしろ、そんな読み方こそしていいんだという気にしてくれた

    特に
    ・怪物とドラ・セーのとやりとり
    ・エリザベスからの手紙から読み解く彼女の本心
    ・フランケンシュタインとクラヴァルに見る友情以上の関係性
    ・フランケンシュタインの弟アーネストはその後どこへ行ったのか
    など興味深く原作小説をもう一度読み直してしまった

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    2025年07月14日
  • 説得

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    オースティン。かつて婚約していたが親戚の忠告を受け婚約破棄した女性が数年後に再会する話。
    恋愛小説は普段読まないが、この作者は好きなので手にとった。随所にオースティンの皮肉がひかるが
    登場人物にチャールズを3人も出すなと言いたい

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    2025年06月11日
  • シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』

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    『若草物語』『赤毛のアン』『秘密の花園』『あしながおじさん』、このあたりが小さい頃から大好きで、『小公女』もアニメで慣れ親しんでいたため、全体的に非常に面白かった。

    現状に抗い、自分で自分自身の未来を切り開く新しいヒロイン像は、確かに今の自分に多大な影響を与えていると思う。読んだことはないが『ジェイン・エア』など仲間として紹介された本も読んでみたい。

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    2025年06月05日
  • 説得

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    ネタバレ

    この作品で初めてオースティンを知ったが、面白い!
    最近恋愛小説を体が受け付けなくなっていたのだが、『説得』は精神的に成熟した大人の恋愛が描かれており、主人公が情動的で不合理な行動をとるようなこともなかったので、いらいらせず読むことができた。

    物語の序盤では「盛りを過ぎた」と表現されていた主人公アンが、物語が進むに連れてどんどん輝きを取り戻していく様は読んでいて幸せな気持ちになった。というか、アンができた人間すぎる!(父と姉以外の)登場人物皆がアンに好意を持つのも頷ける。
    他方で、メアリの自己中心っぷりには驚かされた。邪悪な人間ではないのだと思うが、彼女の我儘によってアンとウェントワース大佐の仲が拗れやしないかとヒヤヒヤさせられた。

    物語の鍵である「善意に基づく警告に耳を傾けるのが正しかったのか、危険を冒してでも、自分の心が命じるままに従うべきだったのか?」(「解説」p510.ℓ9-10)という問いについては、今の自分の境遇(独身、20代後半)がアンに近いため、自分ごととして身に迫ってきた。私はまだ若輩者だが、「経験」の偉大さは徐々に感じ始めており、特に善意と良識のある年長者の意見を聞くことは、より困難の少ない人生を歩むためには不可欠なのではないかと思っている。他方で、若い時分に情熱のまま人生の舵を切るという選択は、たとえ一時的にであれ、前者の選択では決して得られないような燃えるような幸福、陶酔をもたらすのかもしれない、とも思う。要は、長期的な幸福をとるか、長期的な幸福を捨てる覚悟をした上で、一瞬の爆発的な幸福に身を委ねるか、ということか。

    現代においては、この問いにぶち当たった時、アンがとり得た二つの選択とは別の、第3の選択肢を選ぶことが可能であろう。それは、周囲の警告に耳を傾けた上で、彼らの危惧する危険(ex.経済的不安)を(女性)自らの力で取り払うというものである。自立的な生活能力を身につけることで、情熱的な恋と長期的な幸福の両方を獲得できるだろうと考えるのは、早計だろうか。

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    2024年06月02日
  • シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』

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    いつか王子様が・・・のシンデレラの寓話から、
    自ら行動を起こす少女が主人公の少女小説へ。
    そのきっかけは「ジェイン・エア」だった。
    序 『ジェイン・エア』から少女小説へ
    第1章 脱シンデレラ物語の原型
    第2章 アメリカへ渡った「ジェイン・エア」の娘たち
    第3章 カナダで誕生した不滅の少女小説
    第4章 イギリスでの変転とその後の「ジェイン・エア」
    終章 変わりゆく物語
    ・あとがき
    参考文献有り。

    世界中に異本がある「シンデレラ」の起源と伝播による変容。
    イギリスの感傷小説に、ゴシック小説にも「シンデレラ」は
    影響を与えた。
    そこに登場した「ジェイン・エア」は「シンデレラ」とは
    真逆の主人公の物語。孤児の彼女は自ら行動し、
    経験とキャリアを積み、波乱の人生を歩む。
    対等なパートナーを得、そして更にその先へ。
    「ジェイン・エア」はアメリカの女性たちに受け入れられる。
    開拓精神と相通じる自己解放は、オルコット、ポーター、
    ウェブスターたちに行動力のある少女たちの物語を描かせる。
    カナダでは、モンゴメリが赤毛のアンのシリーズを執筆。
    「ジェイン・エア」のちのイギリスではジョージ・エリオット。
    アメリカとイギリスを行き来したバーネット。
    そしてゴッデンの、シンデレラ型とジェイン・エア型が
    入り混じった家族の葛藤の物語が登場する。
    現代のディズニー映画でもプリンセスたちは変容している。
    小学生時代に愛読し、現在も思い返したように読んでる作品が、
    多く登場していたのも楽しかったし、
    我が道を恐れずに歩む主人公たちの行動する姿には、
    「ジェイン・エア」が影響を与えていることも、
    新たな発見となりました。
    それぞれの作品の内容が分かり易く要約され、未読の
    「リンバロストの乙女」と「木曜日の子どもたち」は
    読みたくなってしまいました。

    0
    2024年02月05日
  • シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』

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    ディズニープリンセスも、現在のヒロインは自らの能力で未来を切り開くタイプが多い。「いつか王子様が」と受け身ではない。見た目も口が大きくなり、どんどん前に出る女性像になっている。
    このヒロインの原形を「ジェイン・エア」にとる。面白いのはジェインの末裔は本国イギリスではなく、新大陸に渡ったこと。代表例は「赤毛のアン」ということになる。なるほどね。

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    2023年12月27日
  • シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』

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    個人的には著者の『批評理論入門』にだいぶお世話になった。
    そういう経緯があるので、本書を読んでみた。
    近代英語文学の中の女性像の変遷を主題とする本。
    びっくりするほど読みやすい。

    取り上げる物語の原型は二つ。
    一つはシンデレラ。
    言うまでもなく、美しく従順で淑やかな女性が、苦難の末、社会的に高位の男性に見初められ、結婚により階級上昇する物語。
    18世紀の大人向けの小説の中にさえ、この影響がみられる作品があるとのことだった。

    このシンデレラ型の物語を超えようとするものが現れる。
    それがシャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』を祖型とするものだという。
    器量に恵まれてもおらず、親が死んだり、無関心だったりして「見捨てられた」子どもが、強烈な自立心により学問にはげみ、精神的にも成長し、やがて成功を収めるというパターンである。

    イギリスではこのパターンに当初あまり反応がなく、むしろ新大陸アメリカ、カナダで、ジェイン型の物語が書き続けられていったのだそうだ。
    『若草物語』のジョー、『リンバロストの乙女』、『あしながおじさん』『赤毛のアン』。

    本書では、これらの小説のストーリーが丁寧に復習され、脱シンデレラ物語であることが確認されていくので、取り上げられている本を読んだことがなくても、それほど不自由しない。
    『若草物語』など、私は子どもの頃よく読んでいたので、そうだった、とか、そんなだったっけ、と、ちょっと懐かしい気持ちになりながら読んだ。

    今でも学力はその人の社会的・経済的自立に影響があると思うが、廣野さんの引用から、この当時の女性が学問に期待する熱量の違いが感じられる。
    と同時に、彼女たちの、体を壊しかねない頑張りぶりに痛々しい思いを感じることさえもある。

    4章以降は、ジェイン・エアにダイレクトにつながる作品が見られないイギリスの、19世紀末から20世紀前半での展開を紹介していた。
    ルーマー・ゴッデン『木曜日の子どもたち』が中心に取り上げられる。
    ジェイン型の女性が毒母になってしまうという、原形の変形、反転が分析されていて、このあたりが本書の中で最も興味深いところだった。
    自分の夢を娘のクリスタルに押し付け、バレリーナの道を歩ませるペニー夫人。
    末の男の子のデューンは、音楽とバレエの才能に恵まれていながら、母から見向きもされない。
    姉のクリスタルは驕慢に育ち、デューンをいじめたりもする。
    弟は父(影が薄い!)と周囲の人物に助けられ、才能を開花させ、世に出ていく。
    この辺りはむしろシンデレラ・ボーイの物語。
    一方、姉のクリスタルは、バレエが校での厳しい競争や手痛い失恋などを経て、次第に精神的に成長していく。
    まったく読んだこともない作品だが、こんな風に二つの型が変形して組合されていくさまがよくわかり、とても興味深かった。

    最後にディズニーの実写版のプリンセスの変容なども分析されていて、それも面白い。

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    2023年12月17日
  • シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』

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    著者も」序章で「ジェイン・エア」や他のいわゆる少女小説といわれている名作群がなければ今の自分はなかったと述べているが、(私は普通の読者にすぎないが)全く同感である。自分もまた親とこれらの文学作品に育てられたと思っている。まだ児童書の中でヤングアダルトという分野がさほどはっきりと意識されていなかったころだがまさに「ジェイン」は私にとって思春期に多大な影響を受けた作品のひとつで、繰り返し読んだ記憶がある。(河出の世界文学全集で)今回著者がとりあげている作品はどれも大好きで、ゴッデンの「木曜日の子どもたち(バレエダンサー)」の解釈には考えさせられる部分が多かった。再読しようと思う。「ジェイン」も新訳で読もう。

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    2023年12月08日