谷川直子のレビュー一覧

  • その朝は、あっさりと

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    タイトルから想像していた内容ではあったけど、不思議な世界観でした。

    教育者だった父、良い主婦の母、二人の娘と一人の弟。

    父を介護する母と娘たちの日々の描写はリアルで過酷なのに、さらっと淡々と描かれていて。介護される者の本当はわからないけれど、そうだったら良いな、と思えるような父親のこの世とあの世のうつつの境。

    自分はもう準備はできている、お前たちは準備ができているか?と、もし、父が問うてくれていたとしたら…
    自宅で看取ることができたら…
    家族の時間を奪っても?それでも…

    いろいろと考えることはあるのに、読んでいるうちに逝く者と送る者の双方のこころにすっと入り込むだけになってしまった。

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    2025年10月27日
  • その朝は、あっさりと

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    在宅介護を選び、自宅で96歳の父を看取った家族の話

    実際はとんでもなく壮絶な日々であろうに、妻と娘2人が協力し合う毎日が時にユーモラスにしたためられている

    各章は寝たきりの父の頭の中の妄想から始まる
    寝たきりの人の頭の中はこんな風なのかな
    ほんとにそんな感じがする
    過去と今と、あの世とこの世が混ぜ合わさった死を受け入れる準備のような不思議な妄想
    好きだった小林一茶の俳句が時折妄想の中で彼の心を保たせてくれる

    一方家族は排泄のお世話に振り回される日々
    世話焼きの妻、志麻
    同居している独身の姉、洋子
    義父の介護経験者の妹、素子
    文句を言いながらも、時折こちらも父が好きだった一茶の俳句を思い出

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    2025年08月17日
  • その朝は、あっさりと

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    一茶の俳句。いい具合に効いてる。先生のような老人にはなりたくないが、こればかりは本人の意思では…。それでも家族に看取られ、羨ましい限りの“あっさり”とした最期。「早くくたばれと思っているのに、志麻の行為はすべて一日でも長く生き延びるためにいいことばかり」という奥さんに「ありがとうございました」くらい言って逝けばスッキリしたが…。「姥捨てた奴も一つの月夜哉」「いざさらば死にげいこせん花の陰」

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    2024年12月21日
  • その朝は、あっさりと

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    最後は死ぬのに、途中経過の話は可笑しい。
    妻の志摩も娘の洋子も素子も誠も、なんか可笑しい。
    結局人間は可笑しい生き物、でもそれをどうとらえるかで全然違う。
    同じ状況を、別の視点で書いたら悲惨な介護地獄にしかならないはず。
    小林一茶の句と重なりながら、天寿をマ全うした恭輔は幸せである。
    でも残った妻や娘や息子たちは、こんなふうに見送られることはなさそうな気がする。

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    2024年11月09日
  • その朝は、あっさりと

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    いや~これ、うちの実家の話かと思った笑

    まさに私の母が言いそうなこと
    というか言ってることオンパレード!!

    看取りが題材でこんなに笑いながら読んだの初めて。

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    2024年10月17日
  • その朝は、あっさりと

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    4年間寝たきりとなった96才の元教育長の父親、恭輔の今際の際迄を描いた介護家庭の物語。
    介護にまつわる紆余曲折、認知症から身体不自由となり排便処理など、小説からは匂いが届きそうなくらい厳しい現実が描かれる。
    しかし見送った家族の「私もいつか灰になるのだ。その未来が、なんの切なさもなく胸にすとんと落ちてくる。」の言葉が、抗う事のできない人間の死を受け止めるしかない切なさを強く伝えていた。
    誰にも訪れる”その朝”に、自分は…と強く感情移入してしまった小説だった。

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    2024年09月22日
  • その朝は、あっさりと

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    ネタバレ

    ついに寝たきりになった認知症の沢田恭輔(96歳)の頭の中で、死への旅がゆっくりと進んでいる。
    その人の中で何が起こっているのか、周りで介護に汲々とする女たちには知る由もない。
    かつての教え子たちを引率したり、他人の葬式に出ていたと思ったら、周りはみな骸骨に変わっていたり。死んだはずの妹を自転車の後ろに乗せて走るのは子供の頃の記憶。村で死んだじいさんの墓穴を掘っていたらいつの間にか自分が穴の底に横たわっていた。
    時間の流れが行ったり来たりして、人生の中で出会った人々も別れた人も、自由自在に泡沫のように浮かんでは消える。
    記憶の引き出しが全部ひっくり返ったようである。
    俳句好きの恭輔は小林一茶を愛

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    2024年09月20日
  • その朝は、あっさりと

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     九十六歳・老衰でこの世とのお別れを迎えた元学校教師・恭輔。認知症によるドタバタ介護に日々振り回される家族。ある日、娘の素子が恭輔の部屋にあった「一茶句集」と句集に記入された父の書き込みを発見。これらをヒントに句を読み解くにつれ、彼の考えたであろう生死観への理解を深めていく。
     各章冒頭プロローグの夢のような不思議世界に引き寄せられた。現世との繋がりが残り少ない事を予感させる表現がリアル過ぎて少し怖かった。
     *個人的には「雨の音のようにそっと世のために働いていよう。雨があがるように静かに死んでゆこう。:八木重吉」が理想だがうまくいきますかどうか。もう一回「死に稽古」シミュレーション必要か? 

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    2024年08月15日
  • 四月は少しつめたくて

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    ネタバレ

    数年前に知人に紹介された気になっていた本。文庫化されていないので、単行本で。

    話は詩人・藤堂孝雄を編集者の立場として向きあう女性・今泉桜子から見たものと、藤堂の詩の教室に通う50代の主婦・清水まひろの2つの視点から語られていく。
    編集者の今泉に見せる藤堂は、昔は名の知れた詩人だったが、もう13年も詩を書いていない、いや、もう書けないのか?というダメなおじさん。そこでは競馬をしたり、キャバクラに行ったり、いったいこの人は何を考えてるんだろう? そして、しばらく年齢不詳な今泉桜子も、何やら抱えている様子。そんな二人がいつか心を通わせる(男女の恋愛という意味ではなく)ときが来るのかなぁ~と予想しな

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    2023年01月06日
  • 愛という名の切り札

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    ネタバレ

    普段色々考えさせられてしまうことの多いことが、これでもか!と全部盛り。

    地球上にある、わたしがまだ見たことのない美しいもの 景色、自然、人間が作ったもの、人間の営み、そこにいる人々を見たい、交流したいという好奇心が生きてる意味かも。
    仕事でも旅でも、本や美術館でも満たされる。
    ごくたまに、アウトプットして自分も美しいものを表現したくなる。

    大切な家族を守るためだと、家事も頑張れる。頑張りたくないなーと思ったということは、実は結婚したくないのかもしれない 笑。欲しけりゃ結婚も子供も機会あった時にやってるのよ、たぶん。もう一度、生きづらい子供時代の伴走、気が遠くなりそうだなぁと足がすくむんだよ

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    2022年11月12日
  • 四月は少しつめたくて

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    簡単に消費されていく時代
    音楽も絵画も写真も文学も
    そんな小手先で操る日常のなかで
    消費されているのは自分たちじゃないかって
    このお話を通してそんなことに気付かされた
    この大消費時代、忙しすぎて
    自分の核の部分を見つめて言葉として掘り出すのは大変だけど、怠ってはいけないなと思った
    もっと本当は大切に生きるべきかもしれない

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    2021年09月06日
  • あなたがはいというから

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    37年ぶりに出会った大学同級生で元恋人同士の瞳子と亮。全く別々の人生を歩んできた二人だったが、今でも互いを好きである気持ちに気づく。しかし再び友人となるにはそれぞれの家庭が抱える傷が大きすぎた。作家の亮が書く現実のような小説、病院長婦人の瞳子が悩む小説のような現実。現実と小説の違いは何か。「小説が何のためにあるのか。それは人が自分以外の誰かになるためなのよ。」「手に負えない現実におじけづいている瞳子に、それを物語として解釈することで、現実に立ち向かえと教えてくれる。」 瞳子と亮、生まれ変わって再び巡り合ったら迷いなく一緒になって幸せになりますよう。

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    2021年02月14日
  • 私が誰かわかりますか

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    谷川直子さんの軽妙な文体がその軽妙さとは裏腹に薄っすらと寒気を感じるような怖さが時折迫ってくる、そんな小説でした。地方の村落共同体、義父の介護、長男の嫁という強烈なワードでこの物語は語られる。いまだ機能し続ける地方における『世間』。ここでは個人は個人として振舞うことを決して許されず、共同体の構成員は主に役割に相応しい振る舞いが半ば強制されている。そこに介護が絡むともはや無間地獄かと思われるが、地獄は地獄でも時折ボケ老人のチャーミングな言動や、そこに生きるたくましい女たちのバイタリティと処世術に、ふと学ぶことの多さを感じる。歳をとって失うものはたしかに増え続けるが、そこで削ぎ落とされて露わになっ

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    2018年11月13日
  • 私が誰かわかりますか

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    認知症になった夫の父親を、長男の嫁として看取った桃子の話。

    姉妹の長女で、一人息子の長男の嫁である私は、70代後半の両方の両親が幸いとても元気でいてくれているので、この先の4人の介護には、ある意味心づもりはしています。でも、もしかしたらまだ覚悟は出来ていないのかもしれません。

    この手の本を読む度に、他人事でない、切実、とあれこれ思いを巡らせますが、いつか来るその時には、人としての尊厳を大切に、尊敬の念を持って接する介護が出来たらと思っています。

    最後の5ページ、死と老いと世間への考察が深い。
    世間に縛られていた桃子でしたが、介護には世間の目が必要と気づき、義務感が義父への愛情へと変わって

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    2018年11月02日
  • 世界一ありふれた答え

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    ジャケ買いだったし
    どうしても読みたいわけでもなかった。
    でも読み始めたら最後まで読み終えるのに
    時間はかからなかった。

    心の中のもやもやは
    病名がつく、つかないに関係なく
    いつも自分を支配し続ける。

    傷を舐めあいたいわけじゃない。
    知った気になんかなってほしくない。

    誰かのしあわせを願う気持ちの
    なんと尊いことか。
    自分以外の誰かのための時間。祈り。

    生きようとするとき、そのエネルギーの源は
    『誰かへの想い』なのかもしれない。

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    2018年05月13日
  • 世界一ありふれた答え

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    2冊目の谷川直子さん。
    人が「治る」ってこういうことなんだなぁと。
    世界が外に開く瞬間みたいなものが丁寧に描かれている。
    この人の書く文章はなんだか独特。
    何が独特なのかわからないけど。
    なんだろうぁ、この感覚。

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    2017年08月05日
  • 四月は少しつめたくて

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    しみじみ素敵な本だった。
    ストーリーとか展開とかなんかそんなのはもうどうでもよくって。
    よくはないんだけど。
    お話があってこその言葉なんだけど。
    言葉がぎゅーっと胸にしみる。

    ー愛していると口にしようとしたら、その言葉がからっぽなのを発見した。

    クルミの「つらかった」の一言が
    ほんとうに胸にすーっと沁みてきて
    救われるってこういうことなのかなって。

    「霧が晴れたら」
     そぼ降る雨の中を きみは濡れてやってきた 
     ふくらんだポケットからそっと取り出したのは
     生まれたての言葉
     歩けるようになるまでわたしが育てるわ
     湿った髪を右手でかき上げ きみはきまじめに言った
     息をしているのかい

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    2017年06月26日
  • 四月は少しつめたくて

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    詩が書けない藤堂とその周囲の人をめぐるお話。

    詩とは「心の内側に降りていく階段」であって,
    世間にあふれている言葉ではダメなんだ。
    そのことが強く伝わってきました。

    普段,気にせず使っている言葉。
    だけども,本当は,言葉は大切に扱わなくちゃならないんだ。
    そう感じました。

    言葉を使うっていうことは難しいですね。

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    2016年01月05日
  • 四月は少しつめたくて

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    文句なしの「良い」一冊。

    日々、生活の中で
    言葉を選んでいるのは、それらを紡ぐ一人一人。
    その各々、本に登場するみんなが
    品を持っている。
    だから文章に無駄がない。

    詩人と、編集者の関係は
    どこか滑稽。
    でもその距離に、二人の
    控えめな主張と深い悲しみが
    現れているようです。

    教室の生徒さんと、
    そのご家族たちも、
    誰一人、不要なキャラクターがいない。

    とても満足度の高い一冊でした。

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    2015年10月23日
  • 四月は少しつめたくて

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    もう10年以上、詩を書けずにいる大詩人。彼に詩を書いてほしいと願う編集者。娘が事件に巻きこまれて以来、言葉を発しなくなってしまったことを気にやむ母親。
    みんなが誰かに伝えるための言葉を渇望している。意味のある言葉を使って意味のある会話をしたい。けれど、「ほんとうの言葉」って何だろう。借り物ではない自分の言葉で、気持ちを伝えたい。それにはどうしたらいいのか。
    答えは、詩の中にあった。大詩人が最後に見つけた、「詩とは、自分の心の内側に下りていくための階段」という言葉が、深く深く僕の心に響いた。

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    2015年06月12日