成川裕子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「この社会には煽動家が多すぎるのよ。そして調停する人はあまりにも少ない」
愚か者たちの饗宴といったところかな
それにしてもミネット・ウォルターズ相変わらず字が多いw
原書で読んでもそう感じるのかな?英語もっとちゃんと勉強しておけば良かったな
そして相変わらず設計図が緻密すぎる
緻密すぎる設計図の果てにどこに連れて行かれるんだろうって心配しながら読み進めていました
世の中には自分の考えなしな行動で悲惨な結果を招いたとしても、非は自分にはないって自分を簡単に納得させることができる愚か者が多すぎて、小さな善意は愚かな煽動家たちの行軍に踏み潰されていく…
そんなどうしようもない結末を思い描いていました
んでもそこはミネット・ウォルターズ!ちゃんと救いのある明るい結末が用意されていました
彼女の物語では世の不条理と持てる力を振り絞って闘ったヒーロー、ヒロインは必ず報われるのです
ごめん、途中ちょっと疑ってたよ
どんなに陰鬱な事件の結末にも「あなたも闘え!」ってちょっとだけ背中を押してくれるのがミネット・ウォルターズという作家なのだ! -
Posted by ブクログ
100点
この物語を読み始めて最初に思ったのは、「いやー相変わらず黒いなー」だった
イメージとしての黒ではなく、単純な色としての黒
もうページに文字がびっしりと隙間なくあって本当に黒いんだよね
ただ不思議なのは表現がとても簡潔で分かりやすいんだよね
よくある作家が自分の技術をひけらかすために日曜日の夕方の情景を4通りのやり方で表現するようなことで文字数を使うようなことじゃなくてね
本当に不思議物凄いたくさん字があるのに余ってないんだよね
必要なことしか書かれてない
ミネットの文章好きだ(翻訳がいいのかな)
それにしても100点だ
本当に(自分が好きな)ミステリーのお手本と言ってもいい作品
綿密に積み上げられたロジックが物語が進むにつれてほどかれて行って
あーなるほど!って思わせる説得力がちゃんとあって
最後は主人公にちょっぴり明るい未来を予感させる、朗らかな終わり方
もう(ひまわりめろんの採点基準では)100点の完璧なミステリー
面白かった! -
Posted by ブクログ
ネタバレムッサオモロかった!
低所得者層(社会的底辺の人々)向け住宅街に、前科のある小児性愛者の二人ずれが引っ越してきた。という情報が流れ、そこからその地区で大暴動が起こるさまを描いた小説。
ミステリー要素は薄く、パニック小説の様相である。ちゃんとしたミネットファンは「どうしたんだ?」と言ってるくらいに雰囲気が違う小説らしい。俺はそこまで作者の小説を読んでないので、違和感なく楽しめたが…。
それにしても、日本だけでなくイギリスにもこういう団地があるんだなぁ。大阪のあそことか神戸のあそことか…そういうとこを想像して、この本を読んだらリアル感マシマシ。
本気でワルいヤツを2名だけにして、あとは場の雰囲気で走る一般人っていう設定もリアルだった。お祭り気分で暴動を盛り立てる若者たちの姿は他人事じゃない、日本でだって、自分たちだって十分になりえることだ。注意しないとなぁ。
あと、モロトフカクテルはしっかり蓋をしないといけないこと、余談の話だし、使うこともないんだろうけど、妙に心に残る教訓だった。 -
Posted by ブクログ
「氷の家」と同じ作者だったので。
パニック小説とか、非常事態とかあまり興味がないので、
最初は小児愛者をめぐっての貧困地区の騒ぎは、
少女の行方不明の背景だと思っていた。
だが、ジミーが登場してから、がぜん暴動の動きの方が気になっていく。
刑務所から出たばかりで、
自分が指紋を残して犯人と思われるからと、怪我した女性のために救急に電話し、
彼女を助ける手伝いをすることに。
女が殴られることには、たとえそれが警官だとしても我慢できないジミー。
老女に助けられ、子供たちが逃げる手伝いをし、囚われた女医の救助へ向かう。
巨体に暖かい心を持つジミーの行動が胸を打つ。
男はみてくれじゃないのよ、何をしたかなのよと最後に老女に言われていたが、
本当にその通りだと思う。
人は何を語るかではなく、何を知っているかではなく、その行動で判断されるべきだ。
この作品はミステリーではなく、英雄譚なのだ。 -
Posted by ブクログ
英国ミステリの女王ミネット・ウォルターズの作品。
誘拐された女性記者が立ち向かったのは‥?!
コニー・バーンズはロイター通信の記者。
アフリカのシエラレオネで連続暴行殺人事件が起き、犯人は逮捕されたが、コニーは傭兵のマッケンジーに疑いを抱く。
後に、コニーは何者かに誘拐される。
当時、記者が誘拐される事件は相次いでいて、解放された後にマスコミに多くを語る女性もいた。
コニーはほとんど語らずに帰国し、不審に思われながら田舎の村に身を潜める。
国際的な状況を背景に、実はアフリカ生まれの女性であったりと、これまでになく視野を広げた設定。
後半は小さな村の古い屋敷の中に、事件が収束していきます。
何一つ証拠がなく、おそらく脅迫もあったために、コニーは一切を語らず、マスコミや警察にさらにボロボロにされることを避けたのでしょう。
借りた屋敷は予想よりも村はずれにあり、ネットさえ繋ぎにくい。その無防備さは、ほとんどホラー。(いずれ傭兵マッケンジーが来ることを思うと‥)
隣の敷地で農園を営む女性ジェスが、何かと様子を見に来てくれる。
中性的で年齢不詳な外見で、村人からはほとんど相手にされていない変わり者。
屋敷の持ち主の老婦人リリーの面倒も見ていたらしいのだが‥?
ジェスを煙ったく思いながら、だんだんと心を通わせるコニー。
リリーとその娘、ジェスとの間に何があったかも次第に明らかに。
コニーは事情を解明していく過程で、恐怖に打ちひしがれていた状態から回復していきます。
平凡な村で起きた誤解や無関心の恐ろしさ。
アフリカでの事件とはまったく異質な‥この対比がすごいです。
いや人間の起こす事件としては、通じるものがあるのかも。
新鮮な切り口ですが、ミネット・ウォルターズの過去の作品のモチーフも、長年の読者の目にはちらほら散見します。
抑えているようで実は熱っぽい。
最後はたたみかけるような怒涛の展開に。
結末は明快にはしませんが、何が起きたかは十分わかります。
うねるような勢いが魅力的で、面白かったです☆ -
Posted by ブクログ
コニーは、ロイターの記者で、彼女が殺人犯ではないかと疑っている男に拉致監禁される。三日後彼女はほぼ無傷で開放されたが、彼女の証言は曖昧でしかない。そして彼女は、イギリスの田舎に隠れ住む。
なんとも難しい設定にしたもんだと思った。
主人公が記者で、しかも彼女の視点のみで描かれている。つまり、彼女は物事を客観的にとらえることにたけていると同時に、この作中で一番信用のできない語り手なのだ。
そのうえ、彼女は助けを必要としていない。
結局のところ、田舎町で知り合った世捨て人のような女性の助けを得ることになるのだけれど、二人ともがそういうコミュニケーションに対して不器用なのですんなりといかない。
世捨て人のようなジェスも、大きなトラウマを抱えている。
そして、二人してそれぞれのトラウマを乗り越えていくのだけど、すっきりはしない。
人間の中には<善>と<悪>が常に存在している。
同じように<強さ>と<弱さ>もあり、それらは主観と行動によって真逆にだってなりえる。
そういうことを全て抱え込んで物語を成立させているのだから、すごい、としか言いようがない。
前作の「遮断地区」でもちょっと感じたけど、ウォルターズは<新しい価値観>みたいなものを模索してる気がする。今までの概念を超えたものを創り出そうとしているように思う。
面白かった。 -
Posted by ブクログ
英国ミステリの女王の新作。といっても翻訳の上でですが。
推理小説というよりパニックものだからか、翻訳する順番が後になったようです。
スリルと爽快感があり、面白かったですよ。
低所得層が暮らすバシンデール団地。
1950年代に建てられた団地は、しだいに孤独な老人や未婚の母と父親のいない子供でいっぱいになっていた。
通称アシッド・ロウ(LSD団地)というのは、麻薬がすぐに手に入るという意味なのだ。
医師のソフィーは、金持ちが住む街での診察よりもむしろ生きがいを感じていた。
同じような悩みを抱えつつも必死でそれを隠そうとする上流の人間よりも、あっけらかんとたくましい人々に必要とされるほうが付き合いやすかったのだ。
ソフィの患者の一人で未婚の母のメラニーは白人だが、恋人ジミーは黒人で以前の罪で服役して出所したばかり。
大男のジミーは育ちから当たり前のようにぐれて、今も見た目は黒服にゴールドのアクセサリーでいかにも犯罪者だが、メラニーとの間に子供が出来てから1年は改心して真面目に働いていた。
バシンデール地区に小児性愛者が引っ越してきたと情報をもらした人間がいて噂が広まり、近くの団地で10歳の少女エイミーが行方不明になったことから、抗議のデモが始まる。
小さな子供の多い地域から危険人物を追い出そうとするのだが、実際には大人しく、未成年との交際があっただけで、そういう危険のある人物ではまったくなかった。
暴動は酒に酔った2千人の若者が押しかけてバリケードの中に立てこもる状態に発展してしまい、最初にデモを思いついたメラニーらが止めようとしても止まらない。
ソフィーは事情を知らないまま診察に行って、暴徒に囲まれた父子の人質にとられてしまう。
一方、少女エイミーを待ち続ける母のローラ。
弁護士でずっと年上の支配的な夫とは離婚したが、恋人とも別れ、別な男の元に身を寄せている。
ローラとエイミーの家庭の破綻ぶりも、なんともリアルで複雑。
エイミーの周囲の怪しい人物も、危険人物と目された息子と息子よりずっと危険なその父親も、一筋縄ではいかない屈折を抱えた人間たち。
予想される胸の悪くなるような話にはならないのがさすがウォルターズだが、これはこれで軽くはないというのがまた。
天使のような顔をした不良少年ウェズリーは、薬で興奮した状態で暴動をあおる。
恋人メラニーを助けようとして暴動に巻き込まれたジミーは、携帯で警察と連絡を取り、事態を救う重要な役目を期待されることに。
血だらけの大男ジミーを救うか細い老婦人(元看護師)の活躍も。
第7作「蛇の形」と第9作「病める狐」の間に発表されています。
ほぼ毎年、こんな力作を発表しているとは。
2001年の発表当時、犯罪を起こした小児性愛者の名前を公表するという問題が起きていたんですね。
混同された無関係な人が攻撃される事件が、現実にも起きたばかりだったよう。
骨太な作品ですが、緊迫した様子がテンポよく描かれ、ユーモアもあり、気丈なソフィーと気のいいジミーの活躍で、読後感はいいですよ。 -
Posted by ブクログ
ミネット・ウォルターズの長編第三作。原題の『Scold's Bridle』というのは、昔の英国で使用されていた舌を押さえる金具の付いた拘束具のことで、口うるさい女性に罰として被せていたものなのだそうです。
事件は、ある資産家の老婦人、マチルダが手首を切って浴槽で死んでいたことから始まります。それだけなら自殺のようにも見えるのですが、死者の頭には野菊や刺草で飾られたスコウルズ・ブライドルが被せられていました。果たして彼女は自殺なのか、それとも誰かに殺されたのか、この謎を追ってストーリーが展開していきます。
なのですが、読み進めていくうちに、そうした事件の謎よりも、次第にマチルダとはいったいどんな人物だったのか、その真意はどこにあったのか、そのことにすっかり意識を持っていかれてしまいました。推理小説を読んでいるのに誰が犯人かとか、どうやって殺したのかとか全く気にならなくなると言うのは、思えばちょっと不思議な状況です。
数冊読んでみての印象ですが、ミネット・ウォルターズのミステリは、誰が犯人かといった事件の謎を解き明かすことよりも、それに関わる人物自身を解き明かすことを主眼に置いているような気がします。しかし、人物を解き明かすといっても、その過程は、作者の創作したキャラクターを読者に一方的に押し付けると言うような単調なものではありません。というか、彼女のミステリでは、登場人物に対する安易な理解というのはあっさりと拒絶されてしまいます。人物の謎は登場人物たちが一方的に解き明かしていくのではなく、読み手も同じように考えさせられてしまうのです。そして、それが読者を物語に引き込む原動力にもなっていて、決して心地よいとは言えないけれど、深い余韻を残す読後感を生み出しているように思います。
ミネット・ウォルターズの描く人物はいい人とか悪い人とかで割り切れるほど簡単ではなく、作中で登場するマチルダの肖像画のようにとても複雑です。偏見や先入観に基づいた理解もそうですが、一面だけみて好意的に解釈することも表面的な理解という点では同じことなのかもしれません。物語最後のジャックの言葉は、それだけ抜き出しても特に心動かされるものではないと思いますが、登場人物たちと共に事件を追ってきた読者の胸には強い印象を与える言葉として響くのではないかと思います。
ちょっと堅苦しい感想になってしましましたが、物語の進行もテンポ良く、恋愛要素やサブストーリーも充実していて、エンターテイメント小説としてとても楽しめます。おすすめの一冊です。 -
Posted by ブクログ
英国ミステリの女王ウォルターズの新刊。
イングランド南端のチャプマンズ入江。
男の子の兄弟が、浜辺で女性の死体を発見する。
あわてふためく二人をなだめて、事態がよくわからないまま携帯で通報したのは、たまたま散歩していた俳優のスティーヴン・ハーディング。
そこへやって来たのは、近所の馬預かり所の経営者マギー・ジェナー。30代半ばで、とても美しい女性。
通報で駆けつけたのは、地元警官のニック・イングラム巡査。
マギーは地元で育った人間で、地区担当のニックとは旧知の間柄だったが、良い思い出ではなかった。
捜査はニックら警察が行うけど、内容的にはマギーの物語としても読める小説です。
スティーブは俳優としては売れていなかったが、女性が目を離せなくなるほどのハンサムで、モデルとしては不自由ないらしい。
暑い中を散歩するには短パンと軽装で、水さえ持っていなかったことに、ニックは疑惑を抱く。
死体はケイト・エリザベス・サムナーという女性で、実はスティーブとは家が近かった。
ただの知り合いだとスティーヴは言うが、ケイトの夫は妻はスティーブを嫌っていたという。
スティーブに言い寄られていたとか、ケイトがストーカーだったとか、人によって証言は食い違う。
ケイトは小柄な美女で、夫ウィリアムは製薬会社の研究者。年上の地味な男で、まったく共通点がないらしい。
姑の暮らす老人ホームから距離を取って、この地でいい家に住むのがケイトの望みだったようだ。
二人の間の娘ハナは3歳だがほとんど口を利かず、どこか様子がおかしい。
猫かわいがりする妻と、途方に暮れる夫。
娘は何もかもわかっているように見えるときもあるのだが。
スティーブの友達トニーは、高校教師だが、かなりろくでなし。
祖父は資産家という階層の出なのだが。
スティーブは自分のスループ船「クレイジー・デイズ」号を大事にしていて、舟仲間には評判が良かった。
自己中心的だが女にはもてて華やかなスティーブと、大人しい分だけ鬱憤が溜まっているかも知れないケイトの夫。
対照的な二人の男を調べていくニックら捜査官たち。
ケイトも強烈な性格。
階層が上の夫を見事ゲットしたということで、イギリスが階層社会だという本「不機嫌なメアリー・ポピンズ」の内容を思い出しました。
それぞれの人間が色々な面を見せ、最初は人によっても見方が違うのですが、その嘘か本当かわからない断片が次第にまとまってくるのが圧巻。
どうしてここまで性格が変わらないのかと呆れるほど、こだわりや弱点がじつは一貫しているのだ。どうしようもないのか…?
ニック・イングラム巡査は、大柄で誠実ないい男で、ここぞというときに活躍。
マギーは名家の出。(ここでも階層の違いが…)
若いときに結婚相手に騙されて財産を失い、身近な人にも迷惑をかけた過去を背負っています。
病気の母を抱えて、古い館の手入れも出来ないまま、苦しい生活をしていた。
その当時、イングラムは役に立たなかった悔いがある。
誇り高いマギーの母も個性的。
ニックとマギーのこじれた関係が、じわじわと上手くいくようになるのも楽しい。
翻訳発行は最近ですが、原著は1998年で、6作目。
「囁く谺」と「蛇の形」の間になります。
「囁く谺」は男性の私立探偵と運命の女性の話で、男性作家が書いたかのような雰囲気で、こういうのも書けるのよって感じだったかな。
「蛇の形」はウォルターズ以外には書けないだろうという傑作。
その間にあった~なかなか力強い作品です。 -
Posted by ブクログ
海岸に女性の遺体が打ち上げられる。その海岸から離れた街では、彼女の三歳の娘が保護されていた。
レイプし殺した犯人を追うということは、被害者のことも知るということになる。この被害者の人となりがわかればわかるほど、憂鬱な気持ちになっていくのだ。人は誰だって秘密があり、暗部がある。皆それを隠して生きている。が、犯罪に巻き込まれるということは、それを否応なしに白日にさらすことなのだ。
しかも、彼女にはそうやってさらされることを拒否する、彼女を思う人もいない。
徐々に明らかになる犯人の行動や心理も、残酷でやるせないのだけど、やはりこういう形で尊厳を奪われて行く被害者が哀れでしかたなかった。
そんな陰鬱な中で、不器用な警官と、素直になれない元資産家の娘の二人が安らぎだ。
まさに、ビター&スイートっていった感じ。
面白かった。