成川裕子のレビュー一覧
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ネタバレ長いけど、あまり長さを気にせずに最後まで読めた。
犯人と真相がわかると前半の元婚約者に対する中尉の反応とか、元婚約者の行動が腑に落ちて、こんな心理状況だったのかなってのが理解できる。それがわかるまではどういうことなのか考えながら読み進めていくのでそれも楽しい。
途中で出てくるホームレスの少年も嘘つきまくりでどこまでが真実なのか、刑事と一緒に混乱させられた。
この作者らしく、登場人物の行動から内面や心理状態を想像させてくれて読み応えあり。
どなたかも感想で書いていたけど、最初と後半の中尉の性格?行動?が少し一致しなかったように思った。一致しないと言うか変化が急激だった感。そこの変化を少しわかりやすく書いてもらえればよかった。
途中から中尉の世話をやいてくれるレズのお医者さん、すごいいいキャラ!洞察力あって、自分があって、絶対正しいことをしてくれる安心感があるキャラだけど、そんな人も中尉の人間性を見誤ってたかもと不安になったり、そういう描写があってリアル。だから強烈に個性的なキャラだけど現実味があるのかなって思う。
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ネタバレ戦地での事故により、2人の部下と顔の半分を失ったアクランド中尉。
一命を取り留めたものの、事故後ときにかっと暴力的になり、特に女性に対する嫌悪を強く示すような性格の変容が。
その暴力性が仇となり、市中をにぎわせロンドン警視庁の重要案件となっていた元軍人の連続殴打殺人への容疑者となってしまう。
怪我を理由に退役を余儀なくされたアクランドの社会復帰を支えようとするレズビアン医師のジャクソンの関わりによって心が開かれ、云われない嫌疑が晴れる方向に向かうのかと思いきや、話が進めば進むほど事件との関係が色濃く見え始め、むしろ怪しさの増すアクランド。
運命的な偶然、共時性では片づけられないほどの証拠の重なり、少なくとも何か知っているか、思うところはあるはずだが、一向にまともに口を利こうとしない。
一方、ときに聡明さ発揮し、悪人らしからぬ言動をする。
アクランドの人柄に魅力を感じ、もっと素直になれよと応援しながらも、どこか疑いが拭いきれない。
心理サスペンスの名手ウォルターズによる秀作容疑者ミステリ。 -
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ミネットウォルターズの代表作との呼び声も高い「遮断地区」。ドラッグが蔓延し争い事が日常茶飯時、LSD街と揶揄される低所得者向け団地。近くの団地で少女が行方不明になると、小児性愛者と疑われた親子を排斥するデモは暴動に変わり、往診に来ていた女医のソフィーは暴徒に襲撃された親子に監禁される。親子は小児性愛者ではなく異常サディストとその被害者でおかしくなった息子だった。警察は少女の捜査のために暴動まで手が回らない。そして団地に火を放ち、呆けた老人を小児性愛者と思い込んでリンチする半グレたち。
マイノリティへの偏見をテーマにしたリアルでサスペンスフルなカタルシス小説!パニック、暴力、犯罪。血だらけの暴動の中で冷静と信頼と希望をもたらすのは刑務所帰りの黒人ジミー。勧善懲悪のヒーローではない。混乱の中で彼は警察や病院にその役割を頼まれる。思いやりは山ほどあるのにクソのような罪人に対しては容赦しない男。自己弁護する理屈も言い訳もいらない。そんなものは誰も信じない。肝に銘じよう。言葉よりも「人はその行動で判断される」。 -
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実に5年ぶりのお目見えとなる作品。値段の割に邦訳が遅いのが気になる。この作家を思い出すのに、以下の前作『悪魔の羽』についての我がレビューを少し振り返りたい。
(以下前作レビュー)
中編集『養鶏場の殺人・火口箱』を読んでから、少しこの作家への見方がぼくの方で変わった。≪新ミステリの女王≫と誰が呼んでいるのか知らないが、この女流作家はミステリの女王という王道をゆく作家ではなく、むしろ多彩な変化球で打者ならぬ読者を幻惑してくるタイプの語り部であるように思う。
事件そのものは『遮断地区』でも特に強く感じられるのだが、時代性と社会性を背景にした骨太のものながら、庶民的な個の感情をベースに人間ドラマをひねり出し、心理の深層を描くことにおいて特に叙述力に秀でた作家なのだと思う。
(以上)
本書はイラクの戦場の砂塵のうちにスタートする。いきなりの爆破。本作ヒーロー、アクランド中尉の顔の左半分が、左目と共に失われる。ハンサムな若者は異形の帰還兵となって世界からスポイルアウトされる。そして連続殺人事件の容疑者としてマークされる。
アクランド中尉の個性、あるいは負傷によって変容してしまったかもしれない個性、が何よりも本書の読みどころであった気がする。何しろ、事件の捜査が動的に移ろいゆく中で、負傷兵としての、あるいは戦場の英雄としての彼は、さらに移ろいやすい存在であるかに見える。しかしむしろ真逆の頑迷さと不変性に鎧われた迷いなき強靭な意志の持ち主のようにも。
禁欲的で、口数が少なく、時に発作に見舞われる後遺症持ちの戦場帰り。こういうキャラクターをミステリの中心に据えて、彼に寄り添うのが、アーノルド・シュワルツェネッガーのような恰好をした巨体の女医師ジャクソン。捜査の中心となる冷徹なベテラン警視ジョーンズ。それぞれにキャラの立った個性的で存在感溢れるバイプレーヤーたち。
さらにロンドンの犯罪の温床みたいな暗闇に蠢く、薬中、ホームレス、男娼、そして謎に満ちた孤独な被害者たち。暴力と犯罪の匂いに満ちた街を、アクランド中尉とその周囲を回遊する人間たちの目くるめく深夜。中尉の元彼女はユナ・サーマン似のコケティッシュな美女として、アクランド中尉とのどうにも掴みにくい距離感を往還する。
迷宮のようにしか見えない国家と個人との隘路を辿る捜査の背景に見えてくる病的な社会と時代を、名手ミネット・ウォルターズはまたしても不思議なメスさばきで、解体してみせる。物語にオフビートなリズムを交えながら、あくまで個性的な物語を紡ぐ作者のペンの切れ味にただただ酔うばかりの一作である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かったです。
北欧ミステリーは暗くて良いです。
世間から完全にはみ出している、周りの人と関われないエリケが、ひたすら哀しかったです。何か悪いことが起これば、全てエリケのせい。。
頭の中で声がする…というのは言及されている病気があるのですが、セイエル警部は彼を理解しようと様々な人に話を聞きに行くのが良かったです。町の人も、警官でさえ老婆殺しの犯人はエリケだと決め付けているのに。
そんなエリケは銀行強盗に巻き込まれて、強盗犯のモルガンと行動を共にしているのですが、エリケとモルガンの心が少し通っているのも良かった。そんな中での悲劇なのですが。
しかし真相がまさかの、エリケを殺したカニックが老婆まで殺していたとは。
やりきれません。エリケの生って何だったんだろう…と思ってしまいました。
普通に生きられない人たちへの作者の眼差しが優しくて良かったです。
シリーズものなのかな、他の作品も読んでみたいです。