成川裕子のレビュー一覧
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ミネットウォルターズの代表作との呼び声も高い「遮断地区」。ドラッグが蔓延し争い事が日常茶飯時、LSD街と揶揄される低所得者向け団地。近くの団地で少女が行方不明になると、小児性愛者と疑われた親子を排斥するデモは暴動に変わり、往診に来ていた女医のソフィーは暴徒に襲撃された親子に監禁される。親子は小児性愛者ではなく異常サディストとその被害者でおかしくなった息子だった。警察は少女の捜査のために暴動まで手が回らない。そして団地に火を放ち、呆けた老人を小児性愛者と思い込んでリンチする半グレたち。
マイノリティへの偏見をテーマにしたリアルでサスペンスフルなカタルシス小説!パニック、暴力、犯罪。血だらけの暴動 -
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実に5年ぶりのお目見えとなる作品。値段の割に邦訳が遅いのが気になる。この作家を思い出すのに、以下の前作『悪魔の羽』についての我がレビューを少し振り返りたい。
(以下前作レビュー)
中編集『養鶏場の殺人・火口箱』を読んでから、少しこの作家への見方がぼくの方で変わった。≪新ミステリの女王≫と誰が呼んでいるのか知らないが、この女流作家はミステリの女王という王道をゆく作家ではなく、むしろ多彩な変化球で打者ならぬ読者を幻惑してくるタイプの語り部であるように思う。
事件そのものは『遮断地区』でも特に強く感じられるのだが、時代性と社会性を背景にした骨太のものながら、庶民的な個の感情をベースに人間ド -
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ネタバレ面白かったです。
北欧ミステリーは暗くて良いです。
世間から完全にはみ出している、周りの人と関われないエリケが、ひたすら哀しかったです。何か悪いことが起これば、全てエリケのせい。。
頭の中で声がする…というのは言及されている病気があるのですが、セイエル警部は彼を理解しようと様々な人に話を聞きに行くのが良かったです。町の人も、警官でさえ老婆殺しの犯人はエリケだと決め付けているのに。
そんなエリケは銀行強盗に巻き込まれて、強盗犯のモルガンと行動を共にしているのですが、エリケとモルガンの心が少し通っているのも良かった。そんな中での悲劇なのですが。
しかし真相がまさかの、エリケを殺したカニックが老婆 -
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ネタバレ2002年、シエラレオネで5人の女性が殺害され犯人も逮捕されたが、ロイター通信社の記者コニーはイギリス人のマッケンジーを疑っていた。
マッケンジーは女性に対して非常に暴力的な男だった。
コニーはシエラレオネを立ち去るが、去り際、マッケンジーに脅迫めいた言葉を告げられる。
そして2年後、バグダッドでマッケンジーと出会ったコニーは拉致監禁されてしまう。
3日後、一見無傷で解放されたコニーは、その間にあった事を黙して語らない。
コニーの狂言だったのではないかという見方も出る中で、コニーは行方を晦ます。
コニーがマッケンジーから逃れるように身を潜めたのはイギリスのとある谷あいの村だった。
そこでコニー -
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本作では、人生における危機や悲劇を乗り越えた人たちの「その後」を心理的に解き明かしていく。
冒頭、英国系ジンバブエ人の主人公がアフリカで取材中に拉致され、3日後に解放される。普通のミステリーならそれだけで1冊終わってしまいそうだが、本書ではこれは、言うならば起承転結の「起」だ。
しかも、ここから端を発する事件は「転」が足早にやってくる。ところがこのシーンを迎えてもまだ、物語はどんどん続いていく。
そう、だって、それが人生だからだ。大きな危機を乗り越えて命は救われた、めでたしめでたし、で終わるなんて、現実は許さない。
一人称によって語られる物語だが、なにせこの「わたし」が信用ならない語り手なので