成川裕子のレビュー一覧

  • 悪魔の羽根
    本作では、人生における危機や悲劇を乗り越えた人たちの「その後」を心理的に解き明かしていく。
    冒頭、英国系ジンバブエ人の主人公がアフリカで取材中に拉致され、3日後に解放される。普通のミステリーならそれだけで1冊終わってしまいそうだが、本書ではこれは、言うならば起承転結の「起」だ。
    しかも、ここから端を...続きを読む
  • 悪魔の羽根
    南アフリカで犯罪者に拘束された過去を持つ女性ジャーナリストが、隠遁したイギリスの片田舎で新たな恐怖に遭遇する。弱者の立場にいた者が復讐劇の渦中に置かれる過程、そしてその意外な顛末と豊かな余韻も楽しめる。主人公をはじめとして逞しい隣人や母親まで、とにかく女性の力強さが印象的。
  • 悪魔の羽根
     中編集『養鶏場の殺人・火口箱』を読んでから、少しこの作家への見方がぼくの方で変わった。≪新ミステリの女王≫と誰が呼んでいるのか知らないが、この女流作家はミステリの女王という王道をゆく作家ではなく、むしろ多彩な変化球で打者ならぬ読者を幻惑してくるタイプの語り部であるように思う。

     事件そのものは『...続きを読む
  • 遮断地区
    イギリスの地方の街で起こった少女の失踪事件を追うミステリーとその事件を受けてパニックに陥る別の街を描いた融合的小説。

    ベースとしては小児性愛者への偏見がテーマとして有、ミステリーサイドは王道的に小児性愛を利用する犯人を追及していく。
    一方の街の事件は、そのテーマが前面に押し出され、パニック状態へ加...続きを読む
  • 養鶏場の殺人/火口箱
     二つの風変わりな中編作品を収録した新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの初の中編集である。序文は作者本人によるもので、そこで証されていることにより、ぼくは「風変わりな」と称したのである。

     『火口箱』は1999年、オランダでのブック・ウィーク期間中、普段ミステリを読まない読書家を誘い込むために...続きを読む
  • 養鶏場の殺人/火口箱
    中編のミステリー2編を収録。
    「養鶏場の殺人」はミステリーというよりはホラーっぽい感じだろうか。
    若い男女、人生にも恋愛にもあまりにも未熟なのに互いに「恋愛」を意識しあうも、理想や意思がかみ合わず、若すぎるゆえに相手に思いが伝わらない、相手を思いやることもできず、最後にはあまりにも悲しい結末が待ち受...続きを読む
  • 養鶏場の殺人/火口箱
    中編2作。
    1作目 実話を元に書かれた作品。
    ニールは本当に有罪だったのか、それとも冤罪だったのか。
    加害者だったのか、被害者になるのか。
    本当の事は今となっては分からないだけに、恐ろしいです。
    2作目 集団意識の恐ろしさ。いじめもこれですよね。。。「正義」って何なんでしょう・・・
  • 養鶏場の殺人/火口箱
    団体から読書推進のために作家が執筆を依頼されるって、それだけ英国は読書に熱心なのか、それともそうしなければならないほど読書人口が減っているのか。確かにいつものウォルターズより読み易かった。日本でもそんな試みをする団体があるといいですね。英国がウォルターズなら、日本は宮部みゆき、それとも恩田陸?
  • 養鶏場の殺人/火口箱
    英国ミステリの女王ミネット・ウォルターズの新刊。
    趣向のある中編2本です。
    面白く読めました。

    「養鶏場の殺人」は実話をもとにした作品。
    クイック・リードという企画で、本をあまり読みつけていない人にも楽しんでもらえるような作品として書かれたもの。
    1924年に実際に起きた殺人事件で、裁判で主張がわ...続きを読む
  • 遮断地区
    おもしろかった。
    集団心理の恐ろしさがとても伝わってきた。
    ただ、女児誘拐のほうは今ひとつピンとこなかったかも。
    捜査側の詰め方が甘いから?
  • 遮断地区
    久々にウォルターズを読む。
    あらためて見直してみると邦訳はほとんど読んでいる…。
    これまでのウォルターズ作品と一味ちがい、スピーディな展開で、つねにアクセル全開という感じ。
    でもジェットコースター的なあざとさはないのがウォルターズの巧さだと思う。
    これまでの作品と同様、マイノリティーと呼ばれ、世間か...続きを読む
  • 遮断地区
    治安の悪い地区に居住することになった小児性犯罪の前科者をめぐり、彼らを排除しようとする人々の動きが暴動に発展してしまう。極めてイマ的なサスペンスに少女失踪事件を絡ませた読みごたえたっぷりのミステリ。
  • 遮断地区
    『氷の家』『女彫刻家』などで有名なイギリスの女流ミステリー作家の英訳。以前とちょっと雰囲気の違った作品。低所得者層が住む閉じた団地で起こる、大暴動の1日。少女失踪という別事件も平行し、一気にラストへ。人種、家族、偏見などのテーマを背景に、「あり得る」話だと思うリアルさがある。
  • 遮断地区
    久しぶりのウォルターズ、堪能!静的な印象のあった作家ですが、どうしてどうしてこのスピーディでサスペンスフルな展開。一気読みでした。まあ、相変わらず読後感はどんよりなんだけどね( ̄◇ ̄;)…。でも今作は、ソフィーとジミーのその後がよかったので、ちょっと救われました。

    人間、その行いによってのみ評価さ...続きを読む
  • 遮断地区
     <新ミステリーの女王>としては、何ともミステリーらしからぬ作品を書いたものだ。それもいい意味で。

     タイトルのとおり、本書は暴徒に遮断された地区とそこで起きた真実について描かれた作品である。舞台は、最下層の人々の住むバシンデール団地、通称アシッド・ロウ。道路は扇形の外周を回るが、隣地とは壁によっ...続きを読む
  • 遮断地区
    著者の今までの作品より緊迫感とスピ-ド感があって、私の好み。遮断区域でどう生き延びるか、ここがサスペンス。悪い奴にはそれなりの最期があり、カタルシスも味わえる。
  • 女彫刻家
     本書は、六年前に起こった母と妹を殺害した凄惨な事件、その容疑者であるオリーブ・マーティンは本当に凶悪な犯罪者なのか、それとも事件の真相は別にあるのか、というシンプルな謎を追って物語が進行していきます。しかし、謎そのものは単純ですが、これが一筋縄ではいきません。

     前作『氷の家』を読んだ時にも感じ...続きを読む
  • 破壊者
    久々のミネット・ウォルターズ。安定感があるなあ。解説をみると、すでに読んだ『囁く谺』と『蛇の形』の間に発表された作品らしい。どうして邦訳が遅れたのかは、謎。さらに、『病める狐』と『蛇の形』の間に発表されたAcid Rowという未邦訳も。そして、2003〜2007年までに3作。その後は…ないのか??
    ...続きを読む
  • 破壊者
    最初読むのめんどくさいかなあ、と思っていたが、調書が挟まれるようになってから一気読み。
    只犯人にはちょっと納得いかず。
  • 破壊者
    暴行された女性の遺体が入江で発見され、その3歳の娘は遠く離れた町で一人で歩いているところを保護された。いったい何があったのか…
    レイプ殺人は単に被害者の肉体や生命を奪うだけでなく、そのプライバシーや尊厳をも破壊する。派手な展開はなく、捜査の過程が地道に描かれる重苦しい作品だが、次第に明らかになってい...続きを読む