成川裕子のレビュー一覧

  • 悪魔の羽根

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    南アフリカで犯罪者に拘束された過去を持つ女性ジャーナリストが、隠遁したイギリスの片田舎で新たな恐怖に遭遇する。弱者の立場にいた者が復讐劇の渦中に置かれる過程、そしてその意外な顛末と豊かな余韻も楽しめる。主人公をはじめとして逞しい隣人や母親まで、とにかく女性の力強さが印象的。

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    2015年12月13日
  • 悪魔の羽根

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     中編集『養鶏場の殺人・火口箱』を読んでから、少しこの作家への見方がぼくの方で変わった。≪新ミステリの女王≫と誰が呼んでいるのか知らないが、この女流作家はミステリの女王という王道をゆく作家ではなく、むしろ多彩な変化球で打者ならぬ読者を幻惑してくるタイプの語り部であるように思う。

     事件そのものは『遮断地区』特に強く感じられるのだが、時代性と社会性を背景にした骨太のものながら、庶民的な個の感情をベースに人間ドラマをひねり出し、心理の深層を描くことにおいて特に叙述力に秀でた作家なのだと思う。

     本書はミネット・ウォルターズとしては最もページ数を費やした大作長篇であるのだが、種火は西アフリカ、シ

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    2015年08月09日
  • 遮断地区

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    ネタバレ

    イギリスの地方の街で起こった少女の失踪事件を追うミステリーとその事件を受けてパニックに陥る別の街を描いた融合的小説。

    ベースとしては小児性愛者への偏見がテーマとして有、ミステリーサイドは王道的に小児性愛を利用する犯人を追及していく。
    一方の街の事件は、そのテーマが前面に押し出され、パニック状態へ加速していく様、暴動を鎮めようとする主人公たちの善行、最後に失ったものの大きさと残ったものの大きさが見事に描かれている。
    特に群像劇的に始まったアシッド・ロウの話は、思わぬ登場人物が主人公的に浮かび上がってきて、普段の行動とは異なる行動により人たるもののあり方を訴えているように思いました。
    ページ数は

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    2015年08月08日
  • 養鶏場の殺人/火口箱

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     二つの風変わりな中編作品を収録した新ミステリの女王ミネット・ウォルターズの初の中編集である。序文は作者本人によるもので、そこで証されていることにより、ぼくは「風変わりな」と称したのである。

     『火口箱』は1999年、オランダでのブック・ウィーク期間中、普段ミステリを読まない読書家を誘い込むために無償配布された掌編だそうである。

     『養鶏場の殺人』は2006年イギリスのワールドブックデイにクイックリード計画の一環として刊行されたとある。普段本を読まない人に平易な言葉で書かれた読みやすい本として提供されたものであるらしい。

     どちらも読書促進運動という目的をもって書かれた珍しい作品であり、

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    2015年06月05日
  • 養鶏場の殺人/火口箱

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    ネタバレ

    中編のミステリー2編を収録。
    「養鶏場の殺人」はミステリーというよりはホラーっぽい感じだろうか。
    若い男女、人生にも恋愛にもあまりにも未熟なのに互いに「恋愛」を意識しあうも、理想や意思がかみ合わず、若すぎるゆえに相手に思いが伝わらない、相手を思いやることもできず、最後にはあまりにも悲しい結末が待ち受ける。。。
    実際に起こった事件を小説化されたようです。二人の悩みや気持ちを真摯に聞いてくれる家族や友達が周りにいればこんな事件は起きなかったかもしれない。
    それに、女の子の結婚への焦りや家族からのプレッシャーは万国共通なんだなぁ。。。そういう面ではエルシーに少し同情を感じてしまった。彼女のあまりにも

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    2015年04月12日
  • 養鶏場の殺人/火口箱

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    中編2作。
    1作目 実話を元に書かれた作品。
    ニールは本当に有罪だったのか、それとも冤罪だったのか。
    加害者だったのか、被害者になるのか。
    本当の事は今となっては分からないだけに、恐ろしいです。
    2作目 集団意識の恐ろしさ。いじめもこれですよね。。。「正義」って何なんでしょう・・・

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    2015年03月25日
  • 養鶏場の殺人/火口箱

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    団体から読書推進のために作家が執筆を依頼されるって、それだけ英国は読書に熱心なのか、それともそうしなければならないほど読書人口が減っているのか。確かにいつものウォルターズより読み易かった。日本でもそんな試みをする団体があるといいですね。英国がウォルターズなら、日本は宮部みゆき、それとも恩田陸?

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    2014年12月24日
  • 養鶏場の殺人/火口箱

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    英国ミステリの女王ミネット・ウォルターズの新刊。
    趣向のある中編2本です。
    面白く読めました。

    「養鶏場の殺人」は実話をもとにした作品。
    クイック・リードという企画で、本をあまり読みつけていない人にも楽しんでもらえるような作品として書かれたもの。
    1924年に実際に起きた殺人事件で、裁判で主張がわかれ、あのコナン・ドイルが疑義を申し立てたこともあるという。

    エルシーという女性がノーマンという年下の若者に教会で出会い、声をかける。
    親しくなった二人だが、ノーマンが失職、二人の将来には暗雲がたれこめる。
    エルシーの性格にもかなり問題があったのだが‥
    実名のままに経緯を手さばきよく描き、鬼気迫る

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    2014年05月23日
  • 遮断地区

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    おもしろかった。
    集団心理の恐ろしさがとても伝わってきた。
    ただ、女児誘拐のほうは今ひとつピンとこなかったかも。
    捜査側の詰め方が甘いから?

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    2014年02月19日
  • 遮断地区

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    久々にウォルターズを読む。
    あらためて見直してみると邦訳はほとんど読んでいる…。
    これまでのウォルターズ作品と一味ちがい、スピーディな展開で、つねにアクセル全開という感じ。
    でもジェットコースター的なあざとさはないのがウォルターズの巧さだと思う。
    これまでの作品と同様、マイノリティーと呼ばれ、世間から忘れられがちな人たちに主眼を置いた作品。

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    2014年02月15日
  • 遮断地区

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    治安の悪い地区に居住することになった小児性犯罪の前科者をめぐり、彼らを排除しようとする人々の動きが暴動に発展してしまう。極めてイマ的なサスペンスに少女失踪事件を絡ませた読みごたえたっぷりのミステリ。

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    2014年01月25日
  • 遮断地区

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    『氷の家』『女彫刻家』などで有名なイギリスの女流ミステリー作家の英訳。以前とちょっと雰囲気の違った作品。低所得者層が住む閉じた団地で起こる、大暴動の1日。少女失踪という別事件も平行し、一気にラストへ。人種、家族、偏見などのテーマを背景に、「あり得る」話だと思うリアルさがある。

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    2014年01月18日
  • 遮断地区

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    久しぶりのウォルターズ、堪能!静的な印象のあった作家ですが、どうしてどうしてこのスピーディでサスペンスフルな展開。一気読みでした。まあ、相変わらず読後感はどんよりなんだけどね( ̄◇ ̄;)…。でも今作は、ソフィーとジミーのその後がよかったので、ちょっと救われました。

    人間、その行いによってのみ評価されるってのは、しみじみと同感。思っててもやらないのは、思わないのと一緒。今年最初の含蓄でした。

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    2014年01月03日
  • 遮断地区

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    久しぶりにミネット・ウォルターズの作品を読んだが、これまで読んだ『氷の家』や『女性彫刻家』などとは全く作風の異なる作品だった。

    かなり過激で、スピード感のある暴力的な内容に驚かされる。

    アシッド・ロウという問題の多い街に小児性愛者と思しき老人と息子が引っ越して来たことを契機に抗議デモが起こる。彼らが住んでいた街では十歳の少女が失踪する事件をきっかけに暴動が起こる。暴徒によりバリケードで封鎖されたアシッド・ロウの中で主人公のソフィーは親子に監禁されるのだが…

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    2013年07月18日
  • 破壊者

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    ネタバレ

    久々のミネット・ウォルターズ。安定感があるなあ。解説をみると、すでに読んだ『囁く谺』と『蛇の形』の間に発表された作品らしい。どうして邦訳が遅れたのかは、謎。さらに、『病める狐』と『蛇の形』の間に発表されたAcid Rowという未邦訳も。そして、2003〜2007年までに3作。その後は…ないのか??

    地味だけど人間味のある、好感が持てる警官たちと、被害者・被疑者たちの様々な鬱屈、アンバランスな人間性の対比がくっきり。

    所々に出てくる、シンプルだけど含蓄のある言い回し、文章にはっとさせられた。奇をてらわず、勢いだけもなく、地に足の着いた、そういう文章がぐっとくる。

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    2012年04月12日
  • 破壊者

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    ネタバレ

    最初読むのめんどくさいかなあ、と思っていたが、調書が挟まれるようになってから一気読み。
    只犯人にはちょっと納得いかず。

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    2012年03月24日
  • 破壊者

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    暴行された女性の遺体が入江で発見され、その3歳の娘は遠く離れた町で一人で歩いているところを保護された。いったい何があったのか…
    レイプ殺人は単に被害者の肉体や生命を奪うだけでなく、そのプライバシーや尊厳をも破壊する。派手な展開はなく、捜査の過程が地道に描かれる重苦しい作品だが、次第に明らかになっていく被害者や容疑者の多面性が深く、物語に深く引き込まれた。
    ウォルターズの作品は毎回ヒロイン造型が素晴らしいと思う。この作品ではそれほど突出した存在ではないが、彼女の再生が重く辛い物語に一筋の光を与えており、読後感は辛いばかりではなかった。

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    2012年03月02日
  • 破壊者

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    破壊されるのは、レイプされ海に捨てられ、砂浜に打ち上げられた全裸遺体の被害者だ。死してなお、彼女は「破壊」される。彼女を知っていたはずの人々から。最後の最後まで、彼女は「破壊」され続ける、真実を捻じ曲げて悪びれない加害者によって。
    ウォルターズは犯人を徹底して自己保身、自己弁護のために被害者を「破壊」する人間に書いた。だからこそ、歯がゆいほどの地道さで事件を手繰り寄せる捜査官たちがたのもしいのだと思う。

    苦々しい物語。

    だからよけいに、器用じゃなくてじれったいロマンスが微笑ましい。

    やっぱりうまいわ、ウォルターズ。

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    2012年02月29日
  • 破壊者

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    奇を衒うことなく、一歩ずつじわじわと書かれた作品。
    テーマが重いものだけに、読後感はやるせないが、満足度はかなり高い。

    85点(100点満点)

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    2012年09月15日
  • 病める狐 下

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    群像劇ではなくミステリだった。
    思わぬところでラブ発生。
    ウルフィーが予想外に可愛く成長。
    誰が盗まれた金額を支払ってくれるのか心配。


    お、面白かったー。

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    2012年02月22日