成川裕子のレビュー一覧
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ノルウェーの作家カーリン・フォッスム、1997年発表のミステリー小説。
森の中の一軒家に一人暮らしの老女が殺される。発見者は少年院に住む12歳の少年。精神病院を脱走した統合失調症の青年が現場で目撃され・・・。
一応警察ドラマですが、犯罪捜査の場面は添え物のような物語り。多数の登場人物の間で視点が次々と切り替わり各々の心理描写がかなり克明に細々と描かれる群像劇のようなスタイルです。あまりに細々としたどうでもいいような描写にうんざりする部分もありますが、これがこの著者の持ち味なのでしょう。悪くはないです。
ミステリーとしては他愛無い話で、物語りの要は銀行強盗をした間抜けな若者と彼が逃亡する際人質 -
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シエラレオネで女性が五人殺害された。
記者コニーはある男を犯人ではと疑っていた。
そんなコニーが拉致監禁されるが、数日後解放された彼女は事件について多くを語らないまま身を隠してしまう。
事件の犯人は主人公の思う通りなためミステリーではなくサスペンスなのだが、事件の経過を読むというよりは、恐ろしい体験をした女性の心理を読むといった物語。
主人公コニーのまさに揺れる思いが描かれる。
恐怖というものは明らかに恐ろしい何かに対してというより、何かはっきりしないものにいつ何をされるかわからないことにある。
そういう恐怖に怯える心理が読み手にも伝わってくる。
ただ、事件の犯人を考えたり事件の顛末に興 -
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コニーは取材中に拉致監禁される。
無傷で帰ってきた彼女はあいまいな証言を繰り返し、犬を恐れ、自分を精神的に追い詰めた男の影に常に怯えている。
何があったのか。
そして彼女はどうするのか。
マッケンジーと対決する場面は緊迫感がある。
彼女が彼に対してハッタリをかますシーンはドキドキする。
コニーは彼をとても恐れていた。
人格を破壊される直前まで辱めを受けたのだから。
しかしその一方で彼女は彼に復讐したいとも思っていた。
相反する二つの気持ち。
この気持ちのどちらが打ち勝つのか。
ある意味で彼女は千載一遇のチャンスをものにしたのだ。
そして。
マッケンジーはどうなったのかわからない。
おそらく -
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前回読んだ中編の感触がよかったので、久々に長編にトライしてみた。結果はビミョー。
上記のあらすじは序盤。解放後、身を隠すために移り住んだ農村での人間関係が、もうひとつの軸となる。相手の出方を窺いながら徐々に心を通わせる偽名の生活と、記者コニーとしてのメールのやりとりからくる緊迫感の対比が興味深い。でも中盤はちょっと退屈したかも。
後半は、インパクト大の出来事から一気に展開する。前半はサスペンスで、後半は本格ミステリかな。追及する者とされる者。そこに心理描写の上塗りが加わり、前半とはまた違った緊張感で読ませる。
ミステリとしては非常によくできていると思う。伏線を回収し、心理戦を仕掛け、ロジ -
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被害者加害者が濃密な関係を持っていて悲劇的な結果を迎えた時、加害者だけが悪い、といえるのだろうか──という作者の前書きにもあるように、当初の関係が悪意や思い込みによって徐々に破綻していくプロセスが面白い。中編なのであっさり描いてあるものの、それでも刻々と変化していく心理描写の上塗りはさすがウォルターズ。キャラ造形が巧いので、シーン毎に共感し反発し、常に不快感を覚えながらも、目が離せない人間ドラマは読み応え抜群。ここにハマると抜けられないよねえ。
『養鶏場』の方が好み。実話っていうところが更に惹かれます。ミステリ色の濃い作者の見解にも納得。『火口箱』は、やや中弛み。『蛇の形』で経験した“しつこ -
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ネタバレ行き遅れた女の結婚に対する執念怖~~~!(他人事じゃない)(笑)(えない/(^o^)\)な、【養鶏場の殺人】と、イングリッシュ・アイリッシュ間の偏見が交錯する【火口箱】の2編を収録した中編集です。
私にとっての記念すべき初・ウォルターズ作品。既刊も何度か店頭で見ていたんですが、装丁とか説明文がいまいちそそらなかったのですよね(゜-゜)でも、今回の内容説明は面白そうだわ~!というわけで、一目惚れ買いでございます。
まずは、適齢期を過ぎて焦り始めた女の執念が恐ろしい、【養鶏場の殺人】。
実際に英国で起こった事件に題を取っているそうで、何とあのサー・ドイルもこの事件について言及しているんですね~