オノレ・ド・バルザックのレビュー一覧
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ネタバレ550ページ。長かった。
最後はナタリー夫人によるフェリックスに対する批判で終わった。びっくりした。
この話をひどく簡単にまとめてみると次ような流れである。
青年が恋した人妻はキリスト教徒で操を立てて深く愛しあおうとしない。そのことに欲求不満が高まり続け、妖艶で活動的なイギリス女性に恋をして肉欲に溺れた。それを知った人妻は嫉妬の炎で命まで燃やしてしまい死んでしまった。死の間際に渡された手紙にはどれほど青年を愛していたかが綴られていた。青年はその後女性と関わることをやめようと決意したが、ナタリー夫人に出会い恋をした。これが私の過去です。知って欲しかったので手紙に書きました。
という体裁で540ページ近くの手紙をナタリー夫人に送る。ナタリー夫人の回答は「昔の女の話はやめてくれ。あなたはもう愛せない。亡霊と愛しあっていてくれ」というようなもの。
ここで終わる。
最後の最後にモルソフ夫人の手紙、ナタリー夫人の手紙と2度の転換が訪れる。後半ダドレー夫人と出会ってからモルソフ夫人との仲の雲行きが怪しくなるにつれてどんどんおもしろくなっていくが、それまでは退屈極まりない話だった。
官能と自然描写が非常に長く描写されているが、最も記憶に残ったのはモルソフ伯爵の人間描写である。この自己中心的で自分が一番誰よりも傷ついていると思い込んで周囲を傷つけていく人の実在するかのようなリアリティはすさまじく、モルソフ夫人に同情せざるをえない気持ちなる。同時に胸糞悪いモルソフ伯爵がいなくなる気配が全くない序盤はページを捲る手が進まなかった。
恋だの愛だのに興味がない私にはゴリオ爺さんの方が大傑作でおもろかったがバルザックの人間観察と心理観察の鋭さがよく分かった1冊。 -
Posted by ブクログ
すべてを愛す
裏返しは盲目
カミュの紹介から。
流れるような矢継ぎ早の表現に絡め取られて、煙にまかれてしまいそうになる。
同じパリに生きる人間を描いているというのに、サガンのそれとはまるで違う。サガンはたった数人の人間関係を持続させることで、気怠いパリの空気を吐き続けた。
バルザックは、その気怠さを金と愛の汚泥から容赦なく叩きつける。
描かれる人間それぞれに人生(ドラマ)を与えていて、きちんと役割をこなす。美しいものは美しく、汚れたものはとことん汚く、その予定調和さにどこか嫌悪を覚えてしまう。パリのみせる二面性があまりにもクリアなのだ。
ヴォートランの存在は作品全体に色濃く印象を与えていて、様々な可能性を秘めている。彼は社会への反逆を標榜しているように見えるが、彼のことば通りなら反逆などできるのだろうか。法則が不条理で存在せず、出来事だけというのなら、その時出来事は存在するのだろうか。彼は反抗できないことを知っていて、興味本位からウージェーヌを唆したのだろうか。彼の生き様は気になる。
ボーセアン公爵夫人の気丈さ、それを支える愚かなまでのひたむきさ。隠遁した先で彼女はそんな自分をどう考えるのか。
何よりもゴリオ爺さん。金で買えるものは、金で買えるものでしかない。娘がどんなに大切だろうと、切り売りできるそんな接し方でしかない。それを愛と呼び溺れる、彼の迎える結末。父性なんて自己愛の裏返し。
ひとつの完結した物語でありながら、幾重にも可能性を秘める。どういうわけか、パリはひとを惹きつける。 -
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オノレ・ド・バルザックのシニカルに満ちた役人論エッセイです。王政から民主政への過渡期の時代において、必然的に導入されることになった官僚制について、いち早くその本質を見極め、滑稽に描写したものになっています。
訳者の鹿島茂の指摘通り、官僚機構が非効率で無駄が多い理由として、バルザックは間接選挙で支配者が決まる民主国家そのものの構造にあるとしていて、「賞罰を心得た君主に仕える」のではなく、民主国家に仕えるということは、「すべての人びと」が主人である国家に仕えるということであり、それは「『だれにも』仕えないというに等しい」のであって、報酬と名誉が満たされない以上、だれだって真面目に働こうという気持ちにはならない、としていてその草創期において早くも卓見な見解をしめすに至っています。
内容としては一般大衆向けに役人の「生態」をこれでもかと笑い飛ばす軽い読み物なので、少し可哀そうなところもあるのですが、こうした本質をつく鋭い洞察力により今日でも活きている部分があるのと同時に、鹿島茂によれば現代ではサラリーマン社会全体に適用されるものだということで、そう言われてみれば身に滲みる部分もかなりあるなあという気にもなってきました。(笑)そういう意味ではむしろ併録のモーパッサンの『役人』の方がより身に滲みたかな。(笑)
キャッチコピーのいう「抱腹絶倒のスーパー・エッセイ」といわれると、さすがに現代にはマッチしない部分や当時のフランス社会を風刺している部分などはわからないので、そこまで抱腹はできませんでしたが(笑)、バルザックの鋭い観察眼に接するだけでも楽しめたかなと思います。
その他の併録としては、バルザックの小説『役人』の概要と、フローベルの『博物学の一講義・書記属』で、フローベルの方はバルザックに負けじとシニカルな文章です。
『役人の生理学』の「退職者」の章では、ああ早く定年にならないかなあと待っているという話でしたが、自分も図星をつかれたようで、これまた「公理」ですね。(笑) -
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フランス七月王政期あたり、フランスが近代国家の形を成しはじめた頃の、役人の生態を描くエッセイ。付録にバルザックの小説抄訳とフロベール・モーパッサンのエッセイがついている。それらの時代背景等については、巻末の訳者解説223頁~229頁に実にうまくまとめられている。現代のサラリーマン的な生活様式が、たしかに200年近く前に生まれたことが、同時代を生きた筆者たちの筆により確認できる。月並みだが、本当に今の役人・サラリーマンと変わらないと思った。またバルザックの抄訳小説では、「小さな政府」論が展開されており、そうした論が近代的な政府の成立とほぼ同時に生まれていたことに驚きもした。
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高校三年生の夏の読書感想文で読ませられました。
私にはまったく理解不可能な世界でした。
主人公たちは恋に恋している模様。
結局あんたら何したいわけ?とツッコミながら読んでおりました。
500ページも読ませた揚句、あの結末はないよな、と思いました。
痛快と言えば痛快なのですが、そこまでのくだりが長い……。
比喩表現の勉強になるのかな……?と、苦痛を伴う抒情的文章(笑)
読むの、疲れました。
むしろ消化不良の感。
「こんな図書推薦しやがってふざけんな」という思いを胸に秘めつつ、6000字の小論文を書きました。
屁理屈でもこねないと、この物語は楽しめない。
この作品自体では楽しめない。
でも妙に惹かれる作品でもある。 -
Posted by ブクログ
高校の頃、一度読みました。
最近は外国文学はあまり読まないのですが、急に思い立って購入。
折り重なる言葉のひだの多さに圧倒される。
最近読んでいた本とのあまりの違いに、同じ文章でこんなにも違うものかと。
登場人物の手紙の長いことと言ったら・・・作者はフランス革命時代の人ですが、その時代には、教養ある人々は、こんな長い手紙を書いていたんでしょうか?
人物の、揺れる心理描写もすごい。
でも、これ、覚えある。
日本文学にもある。
それは源氏物語。
特に、宇治十帖と・・・
自分でも認めたくない嫉妬で弱って死んでいく紫の上、かな。
男女の機微に洋の東西はないのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
「ゴリオ爺さん」以来のバルザック。
四篇の中では、面白かった順に、「マダム・フィルミアーニ」、「グランド・ブルテーシュ奇譚」、「ファチーノ・カーネ」、「ことづて」
「マダム〜」は、ここまで絶賛される女性が実在するならば見てみたい。マダムに感化されて、オクターヴ・ド・カンが高潔な精神を発揮し、一旦は一文無しになるものの、ハッピーエンドを迎えるのは、気持ちよく読めた。
それに対して表題作の「グランド〜」は、恐ろしい、のひとこと。神に誓うことの重要性は、一神教徒でない自分にはなかなかピンと来ないが、妻の情事に気が付いた夫の意趣返しの醜悪さたるや。